コートニー・サマーズ著、高山真由美訳
ニューヨークでラジオ番組のDJをしているマクレイに、1人の女性から電話がかかってくる。彼女が大家をしているトレーラーハウスに入居していた19歳の少女セイディが姿を消したというのだ。彼女は殺害された妹・マティの復讐を計画していたのではないか。マクレイはセイディに関するドキュメンタリー番組制作の為、彼女の痕跡を追っていく。
マクレイが取材していく過程がラジオ番組の形式になっている所がユニーク。基本、マクレイと取材相手、スタッフの会話のみで構成されている。このパートでは周囲の人から見たセイディの行動を追っていくので、当然彼女の真の目的や内面についてはわからない。もう一方のセイディ自身の視点の章によって、彼女に何があったのか、何を考えていたのかがわかってくる。マクレイの辿る道はセイディの後追いなので、彼女が果たして今どういう状態なのかはずっとわからない。それがやりきれないのだ。そしてセイディの向こうには、同じように消えていった大勢の少女がいる。
セイディはある目的の為に正に身一つで進んでいくのだが、この捨て身の姿勢がひりひりと焼け付くみたいに強烈。ある意味愚直なくらい真っすぐに進むのだ。妹への愛だけでそこまでできるのか、なぜそうせざるを得ないのかという部分が明らかになるとやりきれなくなった。彼女の人生にはあまりに選択肢がない。そしてその選択肢のなさは、彼女の責任ではなく周囲の大人が作った環境によるものだ。保護者が保護者になっていないというのは本当にきついな…。