アリスン・モントクレア著、山田久美子訳
1946年、第二次大戦後のロンドン。戦時中に特殊工作員として活躍したアイリス・スパークスと、名家出身の夫を戦争で亡くしたグウェン・ベインブリッジは結婚相談所を共同経営している。若い美女に会計士の青年を紹介した所、その女性が殺害され、会計士に殺人容疑がかけられてしまう。彼が犯人をは思えない2人は、冤罪を晴らすために真犯人探しに乗り出す。
生まれも育ちも全然違う女性2人が、なぜかうまがあい起業しているという相棒探偵ものとして、とても楽しい。頭脳明晰で大胆、特殊な技能も持つアイリスと、人間に対する深い洞察力を持ち心優しいグウェンの個性が効いている。アイリスには過去の経歴上明かせないことが色々とあることがグウェンにはもどかしい。グウェンがおかれた「名家の嫁」という立場、亡き夫への深い想いはアイリスには若干ぴんとこない所もあるだろう。それでもお互いの違いを尊重したパートナーシップが確立している。お互いにお互いの知恵と勇気と誠実さを信じている姿が清々しかった。全然違うタイプなのに、時に無鉄砲に調査に突き進む所はなぜか気が合っている。当人たちは認めないかもしれないが、スリルを愛する2人だという所が危なっかしくもチャーミング。
2人の会話の掛け合いはテンポがよくユーモアを忘れない。様々な形での減らず口が飛び交うのだ。ちょっと軽すぎる、人工的すぎると思う人もいるかもしれないが、脚本に起して連続ドラマにでもすると良さそう。戦後ロンドンの物資が不足している様、闇市の発展やなど時代背景が垣間見える所も面白かった。まだ配給切符制で買い物していたのか!という驚きがあった。戦勝国でもアメリカとは大分事情が違う(戦争していた年数が違うし資源量が違うから無理ないんだろうけど)んだなと実感した。このあたりの雰囲気も映像で見てみたくなった。