3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

『緑衣の女』

アーナルデュル・インドリダソン著、柳沢由実子訳
 工事現場で人間の骨のかけらが発見された。事件か事故かはわからないが、最近埋めたものとは思えなかった。かつて現場近くにはサマーハウスがあり、戦争末期に駐在していたイギリス軍やアメリカ軍のキャンプもあったらしい。捜査官エーレンデュルは被害者はこの付近に住んでいたのではと仮定し、昔を知る人への聞き込みを続ける。ある住民から、現場近くで緑色の服を着た女を見かけたという証言が得られた。彼女は事件の関係者なのか。
 エーレンデュルたちの捜査に派手さはなく、地道な情報収集を重ねていく「仕事」っぽさがいい。また、捜査官それぞれの仕事外の顔も描かれ、決して模範的とはいえない所も人間味がある。エーレンデュル自身は娘との確執を抱え、立ちすくんでいる状態だ。彼は子供達が幼い頃に離婚し、交流は途絶えていた。自分がなぜ妻子を置いていったのか、自分は娘に対してどんな感情を抱いていたのか、彼が少しずつ自覚していく様が胸を打つ。また、エーレンデュルはアイスランドの失踪者についての本を何冊も読んでいるのだが、その理由がわかる部分は痛切。
 捜査と並列して、ある家庭の様子が描かれるが、これがかなりしんどかった。DVの恐ろしさとそれに対する怒りが深く感じられる。物理的な暴力はもちろんなのだが、相手の尊厳、自己肯定感を奪い、本当に何もできない人にしてしまうところが、より恐ろしい。

『猟犬』

ヨルン・リーエル・ホルスト著、猪股和夫訳
17年前に起きた若い女性の誘拐殺人事件で有罪の決め手となった証拠品は、ねつ造されていた疑いが生じた。当時捜査の指揮をとっていた刑事ヴィスティングは責任を取って停職処分に。ねつ造は事実なのか?だとしたら誰がやったのか?一方、ヴィスティングの娘で新聞記者のリーネは、男性が殺害された事件を追っていた。被害者の自宅を訪問した際に、リーネは覆面の男と鉢合わせしてしまう。ガラスの鍵賞、マルティン・ベック賞、ゴールデン・リボルバー賞の3冠を受賞したとの触れ込みだが、受賞も納得。一気読みしちゃう系の面白さ!中盤まではヴィスティングとリーネのパートが交互に配置されており、それぞれの事件の展開から目がはなせない。連続ドラマっぽい引きの強さがある。と言っても、そんなに華やかというわけではない。ヴィスティングはメディアに露出はするが目立ちたがり屋ではなく、私生活もそんなに派手ではない。何より有能な刑事ではあるが、見落としや間違いもあり得ることを自覚している。だからこそ証拠捏造を疑われ落ち込み、深く悩むのだ。この地に足の着いた感じが、事件や犯人像の派手さを緩和し落ち着いたものにしていると思う。
ギャラリー
最新コメント
アーカイブ
記事検索
  • ライブドアブログ