織田作之助著
豊かな商家「ぼんぼん」だった柳吉と、てんぷら屋の娘として生まれ芸者になった蝶子は所帯を構える。柳吉はふらふらと遊んでばかりで蝶子が芸者で稼ぎ、やがて商売を始めるが。他、主に戦中期の代表作を収録した中短編集。岩波文庫版で読んだ。
「おっさん」「おばはん」と呼び合い喧嘩が絶えないが別れることもできず、住まいと商売を転々としていく。とにかく商売を始めてはつぶし、また始めてはつぶし、その折々で柳吉が浮気するという繰り返し。このループのみで小説が成立してしまっているというのも何だかすごい。ループするうちに不思議なグルーヴ感が生まれてくるのだ。構成に締りがないようでいて、だらだら続くこと自体が小説の駆動力になっている。ずっとお金の話と夫婦の愚痴が続いているような話なのになぁ・・・。柳吉のだらしなさ、流されやすさには、こんな男とは絶対付き合いたくないと思うが、この夫婦のどこにでも流れて生きていける感じはちょっとうらやましい。少ないお金で生活していける時代だったというのもあるんだろうけど、土地にも商売の種類にも拘らずどんどん転がり続けるタフさというか、性懲りのなさがある。他の作品もとかくお金、お金なのだが不思議と息苦しくない。上に這い上がれない人には這いあがれない人なりの人生が用意されているからか。


夫婦善哉 正続 他十二篇 (岩波文庫)
織田 作之助
岩波書店
2013-07-18

夫婦善哉 [DVD]
森繁久弥
東宝
2005-02-25