3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

『胸騒ぎのシチリア』

 ロックスターのマリアン(ティルダ・スウィントン)は声帯手術後の保養の為、恋人のカメラマン・ポール(マティアス・スーナールツ)とシチリアのバンテッドリーア島で過ごしていた。そこへマリアンの元夫で音楽プロデューサーのハリー(レイフ・ファインズ)が、最近娘だとわかったというペン(ダコタ・ジョンソン)を連れてやってくる。ハリーはマリアンとの復縁を望んでいた。監督はルカ・グァダニーノ。
 シチリアの風景はものすごくきれい!観光映画としても効果抜群なのだが、ちょっと変てこな印象。出てくる映像はキラキラしたシチリア海と浜辺があって風情のあるコテージと田舎町があって、そこで美しい男女がいちゃついたり諍いを起こしたりして、というような、イタリア映画黄金時代を(私が勝手に)思い起こすようなものなのだが、ショットのつなぎ方にやたらと躍動感がある。本作、マリアンがロックスターということもあってロック、特にローリングストーンズの音楽が印象的な使われ方をしているのだが、映像のリズムがロックっぽいのだ。イタリア映画的なムーディーな音楽は殆ど出てこなかったように思う。
 登場人物はほぼ4人のみでマリアンとハリーはおそらく50歳前後、ポールはマリアンより若く、ペンはぐっと離れて20歳前後といったところだ。この配置からすると、若く美しい女性が年長の3人の関係を引っ掻き回すパターンが定番だろうし、実際ペンはポールに対して気を引こうとするし、半分くらいは成功しているように見える。
 が、やはり本作での人間関係のゆらぎはマリアンを中心としてハリー、ポールの3人の間で生じているように思う。マリアンとハリーは離婚したとは言えお互いの仕事に理解もあり、ウマは合うので再会すれば親密な空気は生じる。一方で、ハリーとポールの間にも親密さがあるところが面白い。そもそもポールをマリアンに紹介したのはハリーなので、この3人が共犯関係のようにも見えてくる。とはいえ、ハリーがマリアンとの復縁を望んでいる以上、マリアンと(ぱっと見)円満なポールとの間には嫉妬が生じる。親密さと嫉妬とがそれぞれを反対方向にひっぱり、なんとも面倒臭い感じになっているのだ。ペンは結局、榧の外だったように思う。彼女の若さと聡明さも、3人の因縁に対するアドバンテージにならないのだ。マリンは当初、ペンに対してすごく若いしハリーに付き合わされて(父親の元妻とその恋人の家に連れて行かれてもな・・・きまずいよねってことだろう)かわいそう、みたいな態度を見せていたのだが、案外それが実際の所だったのかもしれない。

『虫とけものと家族たち』

ジェラルド・ダレル著、池澤夏樹訳
個性派揃いのダレル一家は、日の光を求めてイギリスからギリシアのコルフ島へ引っ越した。動植物をこよなく愛する末っ子のジェリー少年は、イギリスでは見慣れない虫や動物たちに夢中になる。著者はイギリスのナチュラリストで作家。本著はベストセラーとして長年愛されているそうだ。すごくいい夏休み小説!厳密にはバカンスでコルフ島に来ているわけではないのだが、ちょっと非日常な時間と場所を家族と過ごすところが、夏休みっぽい。ジェリーの虫や動物、鳥に対する時に行きすぎた愛と情熱、そして観察力で、世界が生き生きと描かれる。彼と彼が集めてきた生き物たち、そして何より素っ頓狂な家族が巻き起こす事件も愉快なのだが、何よりジェリーが世界に注ぐまなざしの真摯さ、風景・情景のディティール描写の豊かさが大きな魅力だ。師匠的存在かつ親友であるセオドアの、ジェリーに対する接し方がよかった。ジェリーは子供だが、同じ「研究者」として、一貫して対等に接するのだ。なお、ジェリーの兄ラリーは、後の小説家ロレンス・ダレルなのだが、誇張されているだろうとは言えこんな困った人だったのかー!屁理屈我儘ばかりで周囲を振り回すわ、目立ちたがりだわでとんだトラブルメーカー。しかし他の兄弟も似たり寄ったりか・・・。
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