3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

『ペインスケール ロングビーチ市警殺人課』

タイラー・ディルツ著、安達眞弓訳
 ロングビーチの高級住宅街で、下級議員の息子ベントン三世の妻と幼い子供2人が殺害された。妻の遺体は拘束された上切り裂かれており、強盗から政治がらみの怨恨まで様々な動機が考えられるものの、決め手に欠ける。重傷による休職から復帰したばかりのダニーと、相棒のジェンは捜査に奔走する。
 シリーズ2作目。事件自体は独立しているのだが、ダニーの状態が前作の出来事から引き継がれているので1作目を読んでから本作を読むことをお勧めする。1作目は地味な刑事小説という感じで若干フックに欠けたが、本作は展開がよりスピーディ。特に序盤の動かし方が上手くなっており引きが強い。ダニーは過去の記憶に由来する心の痛みだけではなく、肉体的な痛みにも苦しめられる。その痛みを図るのが「ペインスケール」なのだ。
 残忍な事件だが、事件の背景には被害者はそういう扱いをしてもいい存在だと思っている人がいるという現実があり、それがやりきれない。前作の被害者にも、彼女が男性だったら受けないような仕打を受けた過去があったが、本作にもその要素はある。そもそもそんなことでこの惨劇か!という真相なのだが、「そんなこと」と思えないほど価値観がずれてしまった人がいるということだし、事件の発端から全ての歯車がずれていたとも言えるのだ。その為すっきりしない後味なのだが、警察の仕事を描いているという意味ではこれもありか。






『弁護士の血』

スティーヴ・キャヴァナー著、横山啓明訳
裁判所に泊まり込むほど仕事にのめり込み、家庭を顧みなかった弁護士のエディー・フリンは、妻子に見放され、酒に溺れ失業同然の状態だった。そんな時、ロシアンマフィアの大物が彼を拉致する。突きつけられた要求は、娘を殺されたくなければ自分を弁護し、自分に不利な証言者を爆弾で殺せというものだった。フリンは娘を取り戻すため、かつては凄腕と言われた弁護士のスキル、そして弁護士になる前の「仕事」であった詐欺のスキルを駆使して難題に挑む。面白かった!数日間という限られた時間の中でスピーディーに展開され、かつ派手な見せ場(まさかのアクション要素も)も多いので映画化にも向いていそうだ。テンポがよくぐいぐい読ませる。フリンは弁護士としては有能だが勝つ手段は選ばないくそったれでもあり、元々詐欺師だという後ろ暗さもある。決して「いい人」というわけではないのだが、娘に対する愛だけは本物。その娘を守る為になりふりかまわず戦う姿は、だんだんかっこよく見えてくる。八方塞の中、彼の心を支えるのは娘の存在だけなのだ。折々で娘とのやりとりが回想されるのだが、これがなかなか(ちょっと理想的な娘すぎるんだけど)いい。フリンにとって娘の存在だけがよりどころになっていることがよくわかるのだ。シチュエーションとしてはそれほど斬新ではないと思うが、こういうディティールの作り方と、話のスピード感で読ませる。なお、弁護士としての答弁のコツと詐欺のテクニックが似ており、いい詐欺師はいい弁護士になりうるのかと妙に納得・・・しちゃいかんか(笑)。しかしこういう風に陪審員をコントロールするのか!といった部分の面白さもあった。

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