3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。

諸々

『2018年ベスト本』

相変わらず今年の新刊よりも昨年、一昨年の新刊を読むことが多いのだが、本のいい所は待っていてくれる所だから・・・。

1.『ノーラ・ウェブスター』コルム・トビーン著、栩木 伸明
 自分はどのような人間か、1人の女性が再度掴み直していく様が、瑞々しくユーモアを交えて描かれていた。自分の子供時代と被るところもあり余計に刺さった。

2.『ふたつの人生』ウィリアム・トレヴァー著、栩木伸明訳
 奇しくも上位2作がアイルランドの小説で翻訳家が同じだった。あったかもしれない人生が胸をえぐってくる表題作にやられた。きつい・・・。

3.『ビューティフル・デイ』ジョナサン・エイムズ著、唐木田みゆき訳
 殺伐さを感じる域までそぎ落とされた文章のスタイルが大変好みだった。ストイックだがどこかしらユーモラスさも感じさせる。映画化された作品だが私は原作小説の方がコンパクトで好き。

4.『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』ケン・リュウ編、中原尚哉他訳
 中国SFきてるな!すごく勢いとセンスの良さを感じるバラエティに富んだアンソロジー。これは今後も期待してしまう。

5.『港の底』ジョゼフ・ミッチェル著、上野元美訳
 こんな文筆家がいたのか、と新鮮な気持ちになった。1940~50年代のNYで生きる労働者たちの姿を描いたエッセイ集だが、小説のような味わいがある。その時代の街とそこに住む人々の息吹が生き生きと感じられる。

6.『花殺し月の殺人 インディアン連続殺人とFBIの誕生』デイヴィッド・グラン著、倉田真木訳
 こんなとんでもない事件が実際にあったなんて・・・。読み進めるほどに愕然とする。ある条件や先入観があれば、人間はいくらでもひどいことをしてしまう。事件の根っこは未だに深く根絶されてはいない。大変な力作ルポ。

7.『傍らにいた人』堀江敏幸著
 今年は新刊ラッシュだった著者だが、主に文学者や小説の作中の人物にスポットを当てた本作が一番読み応えがあった。優れた文学批評でもあり、取り上げられている作品を読みたくなる。

8.『IQ』ジョー・イデ著、熊谷千寿訳
 私にとって今年一番のキャラクター小説。クールかつ生真面目なIQことアイゼイアと、トラブルメーカーで俺様体質だがどこか憎めないドットソンの不協和音。続編あるようなので楽しみにしている。

9.『オンブレ』エルモア・レナード著、村上春樹訳
 表題作よりも『3時10分ユマ行き』を推したい。映画化された作品(『3時10分、決断の時』ジェームズ・マンゴールド監督)が私は大好きでですね・・・。

 帰ってきた探偵・沢崎、そして原尞先生。私にとって今年最大のイベントだったからね・・・。




ビューティフル・デイ (ハヤカワ文庫NV)
ジョナサン エイムズ
早川書房
2018-05-19









港の底 (ジョゼフ・ミッチェル作品集)
ジョゼフ ミッチェル
柏書房
2017-11-01



傍らにいた人
堀江 敏幸
日本経済新聞出版社
2018-11-02


IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョー イデ
早川書房
2018-06-19


オンブレ (新潮文庫)
エルモア レナード
新潮社
2018-01-27


それまでの明日
原 りょう
早川書房
2018-02-28



『2017年ベスト本』

 映画の観賞本数が徐々に減るのと同時に、読書のスピードも下がってきた。これが加齢ということか。しかし、古典文学の面白さがちょっとづつわかってきたような気がする。そりゃあ生き残っているだけのことはあるよな!ベストには殆ど入れなかったけど(笑)、すこしずつ読み続けたい。なお以下の順位は限りなく順不同。

1.『夜の果て、東へ』ビル・ビバリー著、熊谷千寿訳
ノワール的、ビルドゥクスロマン的でありロードノベルでもある。デビュー作でこのクオリティか!という衝撃。とても好きなタイプの小説。

2.『フロスト始末(上、下)』R・D・ウイングフィールド著、芹澤惠訳
著者の死亡によりシリーズ最後の作品になってしまった。寂しい。

3.『その犬の歩むところ』ボストン・テラン著、田口俊樹訳
犬を通して描くアメリカの神話とでも言えばいいのか。一歩間違うと地獄めぐりになりそうなところ、ちゃんと希望を描くのが良い。

4.『シャム双子の秘密』エラリー・クイーン著、越前敏弥・北田恵理子訳
私、本作でクイーンが何を意図していたのかがやっとわかりましたよ!そしてなぜ名作本格ミステリなのか理解した!新訳ってやっぱり必要ねー。

5.『その雪と血を』ジョー・ネスボ著、鈴木恵訳
センチメンタルなノワール。夢なんて見るものじゃないのかもしれない。

6.『リラとわたし ナポリの物語Ⅰ』エレナ・フェッランテ著、飯田亮介訳
同性に対する憧れ、友情、そして羨望ともしかすると憎しみ。続編が楽しみ。

7.『コードネーム・ヴェリティ』エリザベス・ウェイン著、吉澤康子訳
これもまた女性同士の絆を描く作品だが、時代に翻弄される人たちのきらめきと必死さが胸を打つ。最後の「キスしてくれ、ハーディ」に泣く。

8.『羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季』ジェイムズ・リー・バンクス著、濱野大道訳
ある職業の仕事のやり方や暮らし方を記したノンフィクションであると同時に、著者個人の物語になっている点がとても面白かった。

9.『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ著、御輿哲也訳
なるほどウルフは面白い!時間の圧縮・膨張のふり幅と、意外とこんな人現代でもいそうだという人物造形の細やかさ、女性たちへのまなざしに引き込まれた。

10.『おばあさん』ボジェナ・ニェムツォヴォー著、栗栖継訳
本作、私の母が子供頃に読んで好きだった作品をもう一度読みたいというので、題名も著者名もわからないままおぼろげな情報をたどり、ようやく入手に至ったという1冊。なので、作品の内容というよりも謎の作品の正体がやっとわかったぞー!という達成感のインパクト(笑)。こういう事情でもないと存在にすら気付かないままだった作品だけど、自然描写が美しく、意外と現代的な所もあり面白かった。



フロスト始末〈上〉 (創元推理文庫)
R・D・ウィングフィールド
東京創元社
2017-06-30


フロスト始末〈下〉 (創元推理文庫)
R・D・ウィングフィールド
東京創元社
2017-06-30


その犬の歩むところ (文春文庫)
ボストン テラン
文藝春秋
2017-06-08


シャム双子の秘密 (角川文庫)
エラリー・クイーン
KADOKAWA/角川書店
2014-10-25






コードネーム・ヴェリティ (創元推理文庫)
エリザベス・ウェイン
東京創元社
2017-03-18


羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季
ジェイムズ リーバンクス
早川書房
2017-01-24


灯台へ (岩波文庫)
ヴァージニア ウルフ
岩波書店
2004-12-16


おばあさん (岩波文庫 赤 772-1)
ニェムツォヴァー
岩波書店
1971-09-16





『2017年ベスト映画』

 今年は世の中の出来事にしろプライベートにしろ、色々と辛くげんなりすることが多かったのだが、そんな中でもやっぱり映画は面白いし、なんだかんだでいい映画がまだまだあるなと思った1年だった。映画は時代を写す鏡だと実感した作品も多かった。

1.『パターソン』
どうということない毎日の連続に見えても、1日1日はそれぞれ違い、違った美しさをその都度見せる。ジム・ジャームッシュ監督による人生賛歌、そして表現者としての意思表明と言ってもいいのでは

2.『わたしは、ダニエル・ブレイク』
ケン・ローチが怒ってる!わたし(たち)も、ダニエル・ブレイクなのだ。正に今見るべき作品。フードバンクのシーンが本当に辛くてなぁ・・・

3.『ムーンライト』
1人の少年の人生の変遷。ある人物の振る舞いが、他人への思いやり、優しさとはこういうものかと胸に迫ってきた。なかなかこういうふうには出来ないよ。

4.『ラビング 愛という名のふたり』
本作もまた思いやり、そして愛のあり方と人間の尊厳を守る為の闘いの物語。やはり、なかなかこういうふうには出来ない境地。染みる。

5.『立ち去った女』
とにかくモノクロのビジュアルがかっこいい。228分という長尺が苦に感じられない強度。フィリピン映画界すごいことになってるんだな。

6.『沈黙 サイレンス』
信仰とは何か問う大変な力作。マーティン・スコセッシ監督作品の中では一番心揺さぶられた(私はスコセッシ監督作基本的に苦手なんで・・・)。俳優が皆熱演でキャスティングの妙もあり。浅野忠信が良かった。

7.『スパイダーマン ホームカミング』
今年No.1の青春映画、そして「今」学園ものをやるとこうなるという良い一例だったと思う。「皆の隣人」としての新たなスパイダーマンの今後の活躍に期待。

8.『20センチュリー・ウーマン』
世代の違う3人の女性、それぞれの生きる姿がいとおしい。時代の間を感じさせる。

9.『夜は短し歩けよ乙女』
アニメーションという表現方法のチャーミングさを目いっぱい詰め込んだ快作。

10.『ありがとう、トニ・エルドマン』
まさか爆笑するようなシーンがある作品だと思わなかったので、ほんとびっくりしましたよ・・・

パターソン [Blu-ray]
アダム・ドライバー
バップ
2018-03-07


わたしは、ダニエル・ブレイク [DVD]
デイヴ・ジョーンズ
バップ
2017-09-06


ムーンライト スタンダード・エディション [Blu-ray]
トレヴァンテ・ローズ
TCエンタテインメント
2017-09-15


ラビング 愛という名前のふたり [DVD]
ジョエル・エドガートン
ギャガ
2017-09-15


沈黙-サイレンス- [Blu-ray]
アンドリュー・ガーフィールド
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2017-08-02




20 センチュリー・ウーマン [DVD]
アネット・ベニング
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2017-12-06




ありがとう、トニ・エルドマン [DVD]
ペーター・ジモニシェック
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2018-01-06


『2016年ベスト本』

相変わらず今年も新刊はあまり読めなかった。SF小説に少し慣れてきたので、もうちょっと読もうと思っている。

1.カーソン・マッカラーズ著、村上春樹訳『結婚式のメンバー』
新潮文庫の「村上・柴田翻訳堂」はいいシリーズだが、その中でも最も心抉られた作品だった。10代の頃に読まなくてよかった(笑)

2.ジェイムズ・エルロイ著、佐々田雅子訳『背信の都』
真珠湾攻撃前後のアメリカが舞台なのだが、むしろ現代のアメリカの姿が立ちあがってくることに震える。

3.『クィア短編小説集 名付けえぬ欲望の物語』
サブタイトルの通り、様々な形の名付けえぬ欲望が垣間見え、裾野が広いアンソロジー。カテゴライズしにくいものを集めた面白さがある。

4.ロバート・エイクマン著、今本渉訳『奥の部屋』
エイクマンの作品は初めて読んだのだが、じわじわ怖い。ホラー苦手な私でも大丈夫なタイプの怖さ。ちょっと黒沢清の映画っぽいかも。

5.アンディ・ウィアー著、小野田和子訳『火星の人』
深刻なのにユーモラス!オプティミズムに裏打ちされた、知恵と勇気の物語。そして科学の知識大切。

6.アン・ウォームズリー著、向井和美訳『プリズン・ブック・クラブ』
刑務所での読書会運営に携わった著者によるルポ。読書は1人でやることだと思っていたが、グループで読むからわかることもある。

7.堀江敏幸著『その姿の消し方』
自分とは時代も場所も違う、全く無関係なはずの人たちとの縁ができていくようでもあった。

8.アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ著、ヘレンハルメ美穂 羽根由訳『熊と踊れ(上下)』
血のしがらみ、暴力の記憶と継承。面白いが恐ろしく悲しい。

9.ピエール・ルメートル著、橘明美訳『傷だらけのカミーユ』
本年度一気読み大賞。カミーユ三部作完結編だが、ほんとに傷だらけ!辛い!

10.長嶋有『三の隣は五号室』
40年に渡る人々の生活の記録という側面もあるのだが、読んでいる間はあまりそれを意識しない。しかしはっと、生きている人たち1人1人の生活の積み重ねが40年を作っていると気づく。

2016年ベスト映画

今年も色々映画を見たが、以前よりも本数はこなせなくなってきているなと実感する。それでもやはり映画は面白いし幅広く見たいなとは思っている。

1.『ダゲレオタイプの女』
今年は『クリーピー』もあり黒沢清イヤーであった。生者と死者の交わり合いと断絶を描く理想の幽霊譚。どの国で、どのキャストで映画撮っても黒沢清は黒沢清に他ならない。

2.『ヴィオレット ある作家の肖像』
本作が日本公開された2015年のベストに入れるべきだったんだろうが、年明けてようやく見られた。1人の女性が自分自身として生きるようとすること、表現することの切実さが迫ってくる。

3.『キャロル』
これもまた女性たちが自分自身を生きようとする物語。たとえそれが世間から望まれないものだとしても。色調、質感が素晴らしく美しい。8.

4.『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
こなさなければならない材料がてんこ盛りだが見事に調理するルッソ兄弟の手腕に唸る、アメコミ映画の極北。アベンジャーズの続編的でありつつ、最終的にはスティーブ・ロジャースという人の物語に着地していく。しかしスタークは気の毒でしたね・・・。

5.『ブルックリン』
原作も良かったのだが、映画の方がより現代に通ずるものがある。1人の女性が自分の居場所を選びとっていく様が瑞々しい。

6.『スポットライト 世紀のスクープ』
報道とは、職業倫理とは、ひいては人を信じることとはと問いかけてくる、今だからこそ見たい作品。

7.『団地』
終わっていく場所としての団地、そしてそこから通じる異空間!阪本順治の快作であり怪作。

8.『この世界の片隅に』
メインストリームではないが時代を越えて残る作品だと思うし、そこにこそこの作品が作られた意味があると思う。

9.『コップ・カー』
スタンドバイミー的な世界からホラーへ、そして一気にハードボイルドな世界に突入するラストに痺れた。

10.『母の残像』
私は家族を扱った映画が好きなのだが、今年見た家族映画の中では、不在の母が中心にある本作が一番良かった。


2015年ベスト本

相変わらず新刊はなかなか手に取れないが、より翻訳小説への志向が自分の中で強まってきたように思う。

1.『20世紀イギリス短篇選(上、下)』
有名どころから日本ではそれほど知名度が高くない作家まで、活躍時期も幅広く収録されており、名品揃いのお得な短編アンソロジー。翻訳小説好きの方には強くお勧めする。

2.ホレス・マッコイ著『彼らは廃馬を撃つ
ひと山いくらみたいな扱いをされる人間が、取り繕えないほど精神がすりきれてしまう様が痛々しい。1930年代の話なのに今日的。

3.ウィリアム・トレヴァー著『恋と夏』
夏のきらめきとはかなさが瑞々しく描かれる。題名がど直球!トレヴァーの作品の中では割と軽やか(陰はあるが)だと思う。

4.トム・マクナブ著『遥かなるセントラルパーク(上、下)
スポーツ小説の名作であると同時に、どの分野にもプロがおり、プロの本気はかっこいいぞ!と思わせてくれる。

5.エドワード・P・ジョーンズ著『地図になかった世界』
奴隷制がしかれるアメリカ南部を中心に、時代も場所もいったりきたりしつつ世界が描かれていく。ある境界と、そこを越えようとする人たち、越えられた人たちの物語。

6.ラッセル・ブラッドン著『ウィンブルドン』
これまたスポーツ小説の傑作。そのスポーツのことを知らなくても面白い小説は面白い。なおキングとツァラプキンのいちゃいちゃ感、もとい友情の深さにぐっとくる。

7.尾崎真理子著『ひみつの王国 評伝 石井桃子』
『くまのプーさん』の翻訳家として有名な石井桃子の評伝。本人があまり自分のことを語りたがらない人だったそうだが、周辺の人たちへの取材を積み重ね、パズルのピースを埋めていく労作。石井の生真面目、潔癖な一面が印象に残った。

8.稲泉連著『復興の書店』
東日本大震災で被災した各地の書店が、なぜ営業再開へ踏切り、どのように軌道に乗せていったのか、苦闘を追ったルポ。人はどういう状況でも、生活にプラスアルファのものが必要なのだ。

9.エリザベス・ボウエン著『パリの家』
子供たちへと繋がる大人たちのいざこざとすれ違いは、静かなトーンで描かれるものの苛立ちに満ちている。人生の不自由さがしみる。右往左往すらできない不自由さがあるのだ。

10.ピエール・ルメートル著『その女アレックス』
今年出版された同著者の『悲しみのイレーヌ』にすればいいじゃないかと突っ込まれそうだが、こっちの方がやっぱりインパクトあるんだよな(笑)。




2015年ベスト映画

あけましておめでとうございます。2015年内に2015年のベストupできなかった・・・。2015年は特集上映や映画祭にはあまり行かなかったが、結構充実した鑑賞ができた気がする。

1.『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
まさかこんな傑作だとは。ビジュアル、構成、アクションの完成度も素晴らしいが、蹂躙されることへの怒りを込めて走り戦い続ける人たちの姿に涙した。フュリオサはこの年見た映画の中で最もかっこよく美しい女性だった。

2.『パレードへようこそ』
これもまた、戦い続ける人たちの姿。全く立ち位置の違う人たちが共闘する。人としての敬意が、彼らを繋げていく様には胸が熱くなる。

3.『サンドラの週末』
上位3本は全て、自分の、そして他人の尊厳の為に戦う人たちの姿を描く。サンドラの決断は重くも清々しい。それを選ばない、という選択が人には出来るのだ。

4.『君が生きた証』
音楽映画として素晴らしいのだが、亡くなった人との関係、残された者の葛藤がひしひしと迫ってくる。見せ方の上手さで途中あっと言わされた。

5.『岸辺の旅』
残された者が死者に縛られているだけではなく、死者を自ら呼び寄せてしまうこともある。あちら側とこちら側のあわいの薄暗さが印象に残った。死者はそこかしこに潜んでいる。

6.『恋人たち』
生きていくのは苦しい。なぜ自分ばかり不幸なのかと吠えたくなることもある。明日が今日より良いとは限らない。でも死ぬことを選ばない、ということができる。

7.『パプーシャの黒い瞳』
モノクロの画面がとても美しいが、見た後はずーんと重い気持ちになる。自己表現せずにいられないが、それが許されない環境に生まれた人の悲劇。

8.『ターナー 光に愛を求めて』
きめ細かく作られた時代劇で美術が素晴らしい。ターナーの世界に対する観察眼、あくなき好奇心には自然科学的なメンタリティを感じる。

9.『インヒアレント・ヴァイス』
夢の底の方へどんどん落ちていくような、不思議な感覚。音楽の使い方もばっちり。

10.『THE COCKPIT』
非常にシンプルなのにこんなに面白く新鮮!こう撮るんだ、という確信みたいなものを感じる。音が積み重なり音楽が生まれる瞬間が美しい。

2014年ベスト本

2014年に読んだ本(旧作含む)の中、特に良かったもの10点。今年は諸々の事情で読書が進まなかった・・・。来年もあんまり読めなさそうなのが辛いが、自分にマッチする作品を見落とさずにいたい。

1.ジェラルド・ダレル『虫とけものと家族たち』
 イギリスでは長年ベストセラーとして愛されている作品だそうだ。自然への観察眼と生き生きとした描写が素晴らしい。
2.アン・ビーティ『この世界の女たち アン・ビーティ短編傑作選』
 ”普通”のことのしんどさに、心えぐられる短編集だった。
3&4.山岸真編『SFマガジン700【海外篇】』&大森望編『SFマガジン700【国内篇】』
 SFマガジン創刊700号記念のアンソロジー。国内・海外ともにバランスよく初心者にもお勧めできる。
5&6.杉江松恋編『ミステリマガジン700【海外篇】』&日下三蔵編『ミステリマガジン700【国内篇】』
 SFマガジンが来たら当然ミステリマガジンも入れたい(笑)。
7.アントニオ・タブッキ『いつも手遅れ』
 ほんのり甘い中にも苦さが広がる。
8.トム・フランクリン&ベス・アン・フェンリィ『たとえ傾いた世界でも』
 やっぱりこういうのがすきなんだよなー。
9&10.ベン・Hウィンタース『地上最後の刑事』&『カウントダウン・シティ』
 シリーズなので一緒に。これもまた「傾いた世界」であるが、傾かず生きようとする主人公に好感。


2014年ベスト映画

今年見た新作映画(特集上映・映画祭含む)の中で、特によかったもの10本を選びました。今年はなかなか豊作だったのではないかと思う。

1.『ファーナス 決別の朝』
やっぱり自分はこういうのが好きなんだよなぁと痛感。ハッピーエンドにならないのはわかっているがこういう風にせずはいられない人というのが。
2.『ジャージー・ボーイズ』
音楽劇としても、あるグループが上りつめ没落していく、そして更にその先を描いた大河ドラマとしても最高。エンドロールには泣いた。
3.『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』
ポリティカルサスペンスブロマンスとして今年最もときめきましたね。今まで見たアメコミ原作映画の中でもベスト。
4.『ショート・ターム』
ふがいなくても歩み続ける人たちの姿が清々しい。
5.『ダラス・バイヤーズ・クラブ』
自分の戦いが、やがて誰かと繋がることにも。
6.『グランド・ブタペスト・ホテル』
好みは分かれるだろうが映画美術の一つの極北だと思う。箱庭的だと思っていたらすこんと歴史的な視野が入ってくるところも「映画」。
7.『ラッシュ プライドと友情』
そのジャンルに疎い人にも見やすい・わかりやすい見せ方をしている職人技。王道少年漫画的展開に燃えた。
8.『プールサイド・デイズ』
他人の価値観での評価だけが絶対じゃないんだよと少年少女を励ましてくれる作品では。
9.『LEGO(R)MOVIE』
狂気のアニメーション。そしてレゴがレゴである所以を見事に映画化している。
10.『オーバー・ザ・ブルースカイ』
悲しみの速度が違うという悲劇。音楽が良かった。

『2013ベスト本』

続きましては今年1年読んだ本の中で良かったもの10冊。今年はいい海外文学を読めたと思う。

1.双眼鏡からの眺め(イーディス・パールマン)
ある瞬間への切り込み方の深さ、鋭さに唸る。人生の不自由さ、不可思議さ、そして美しさを切り取る傑作中・短編集。

2.フランス組曲(イレーヌ・ネミロフスキー)
大河ドラマの序章となるはずだった作品。途絶えてしまったのがつくづく惜しい。

3.青い野を歩く(クレア・キーガン)
静謐さの下にちりちりと燃える炎があるような。

4.終わりの感覚(ジュリアン・バーンズ)
若気のいたりって、忘れるって恐ろしい。

5.刑事たちの3日間(アレックス・グレシアン)
いい時代小説でありお仕事小説でありミステリでありキャラクター小説。

6.コリーニ事件(フェルディナント・フォン・シーラッハ)
短めながら読み応えあり。過去はなくならない。

7.機龍警察機龍警察 自爆条項機龍警察 暗黒市場(月村了衛)
シリーズ3作セットではだめですか・・・。だって面白いんだもん!もうすぐ新刊出るそうなのでうれしい!

8.失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選(フリードリヒ・デュレンマット)
この世のすべては喜劇である、とでもいうようなブラックユーモア溢れる作品集。怖かった。

9.やがて、警官は微睡る(日明恩)
まっとうな人たちが責務をまっとうしようとするまっとうな小説。そのまっとうさに頭が下がる。

10.悪魔と警視庁(E.C.R.ロラック)
古典本格ミステリとして端正で品が良く、ほっとする。警部の紳士さも素敵。

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