3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

諸々

『2016年ベスト本』

相変わらず今年も新刊はあまり読めなかった。SF小説に少し慣れてきたので、もうちょっと読もうと思っている。

1.カーソン・マッカラーズ著、村上春樹訳『結婚式のメンバー』
新潮文庫の「村上・柴田翻訳堂」はいいシリーズだが、その中でも最も心抉られた作品だった。10代の頃に読まなくてよかった(笑)

2.ジェイムズ・エルロイ著、佐々田雅子訳『背信の都』
真珠湾攻撃前後のアメリカが舞台なのだが、むしろ現代のアメリカの姿が立ちあがってくることに震える。

3.『クィア短編小説集 名付けえぬ欲望の物語』
サブタイトルの通り、様々な形の名付けえぬ欲望が垣間見え、裾野が広いアンソロジー。カテゴライズしにくいものを集めた面白さがある。

4.ロバート・エイクマン著、今本渉訳『奥の部屋』
エイクマンの作品は初めて読んだのだが、じわじわ怖い。ホラー苦手な私でも大丈夫なタイプの怖さ。ちょっと黒沢清の映画っぽいかも。

5.アンディ・ウィアー著、小野田和子訳『火星の人』
深刻なのにユーモラス!オプティミズムに裏打ちされた、知恵と勇気の物語。そして科学の知識大切。

6.アン・ウォームズリー著、向井和美訳『プリズン・ブック・クラブ』
刑務所での読書会運営に携わった著者によるルポ。読書は1人でやることだと思っていたが、グループで読むからわかることもある。

7.堀江敏幸著『その姿の消し方』
自分とは時代も場所も違う、全く無関係なはずの人たちとの縁ができていくようでもあった。

8.アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ著、ヘレンハルメ美穂 羽根由訳『熊と踊れ(上下)』
血のしがらみ、暴力の記憶と継承。面白いが恐ろしく悲しい。

9.ピエール・ルメートル著、橘明美訳『傷だらけのカミーユ』
本年度一気読み大賞。カミーユ三部作完結編だが、ほんとに傷だらけ!辛い!

10.長嶋有『三の隣は五号室』
40年に渡る人々の生活の記録という側面もあるのだが、読んでいる間はあまりそれを意識しない。しかしはっと、生きている人たち1人1人の生活の積み重ねが40年を作っていると気づく。

2016年ベスト映画

今年も色々映画を見たが、以前よりも本数はこなせなくなってきているなと実感する。それでもやはり映画は面白いし幅広く見たいなとは思っている。

1.『ダゲレオタイプの女』
今年は『クリーピー』もあり黒沢清イヤーであった。生者と死者の交わり合いと断絶を描く理想の幽霊譚。どの国で、どのキャストで映画撮っても黒沢清は黒沢清に他ならない。

2.『ヴィオレット ある作家の肖像』
本作が日本公開された2015年のベストに入れるべきだったんだろうが、年明けてようやく見られた。1人の女性が自分自身として生きるようとすること、表現することの切実さが迫ってくる。

3.『キャロル』
これもまた女性たちが自分自身を生きようとする物語。たとえそれが世間から望まれないものだとしても。色調、質感が素晴らしく美しい。8.

4.『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
こなさなければならない材料がてんこ盛りだが見事に調理するルッソ兄弟の手腕に唸る、アメコミ映画の極北。アベンジャーズの続編的でありつつ、最終的にはスティーブ・ロジャースという人の物語に着地していく。しかしスタークは気の毒でしたね・・・。

5.『ブルックリン』
原作も良かったのだが、映画の方がより現代に通ずるものがある。1人の女性が自分の居場所を選びとっていく様が瑞々しい。

6.『スポットライト 世紀のスクープ』
報道とは、職業倫理とは、ひいては人を信じることとはと問いかけてくる、今だからこそ見たい作品。

7.『団地』
終わっていく場所としての団地、そしてそこから通じる異空間!阪本順治の快作であり怪作。

8.『この世界の片隅に』
メインストリームではないが時代を越えて残る作品だと思うし、そこにこそこの作品が作られた意味があると思う。

9.『コップ・カー』
スタンドバイミー的な世界からホラーへ、そして一気にハードボイルドな世界に突入するラストに痺れた。

10.『母の残像』
私は家族を扱った映画が好きなのだが、今年見た家族映画の中では、不在の母が中心にある本作が一番良かった。


2015年ベスト本

相変わらず新刊はなかなか手に取れないが、より翻訳小説への志向が自分の中で強まってきたように思う。

1.『20世紀イギリス短篇選(上、下)』
有名どころから日本ではそれほど知名度が高くない作家まで、活躍時期も幅広く収録されており、名品揃いのお得な短編アンソロジー。翻訳小説好きの方には強くお勧めする。

2.ホレス・マッコイ著『彼らは廃馬を撃つ
ひと山いくらみたいな扱いをされる人間が、取り繕えないほど精神がすりきれてしまう様が痛々しい。1930年代の話なのに今日的。

3.ウィリアム・トレヴァー著『恋と夏』
夏のきらめきとはかなさが瑞々しく描かれる。題名がど直球!トレヴァーの作品の中では割と軽やか(陰はあるが)だと思う。

4.トム・マクナブ著『遥かなるセントラルパーク(上、下)
スポーツ小説の名作であると同時に、どの分野にもプロがおり、プロの本気はかっこいいぞ!と思わせてくれる。

5.エドワード・P・ジョーンズ著『地図になかった世界』
奴隷制がしかれるアメリカ南部を中心に、時代も場所もいったりきたりしつつ世界が描かれていく。ある境界と、そこを越えようとする人たち、越えられた人たちの物語。

6.ラッセル・ブラッドン著『ウィンブルドン』
これまたスポーツ小説の傑作。そのスポーツのことを知らなくても面白い小説は面白い。なおキングとツァラプキンのいちゃいちゃ感、もとい友情の深さにぐっとくる。

7.尾崎真理子著『ひみつの王国 評伝 石井桃子』
『くまのプーさん』の翻訳家として有名な石井桃子の評伝。本人があまり自分のことを語りたがらない人だったそうだが、周辺の人たちへの取材を積み重ね、パズルのピースを埋めていく労作。石井の生真面目、潔癖な一面が印象に残った。

8.稲泉連著『復興の書店』
東日本大震災で被災した各地の書店が、なぜ営業再開へ踏切り、どのように軌道に乗せていったのか、苦闘を追ったルポ。人はどういう状況でも、生活にプラスアルファのものが必要なのだ。

9.エリザベス・ボウエン著『パリの家』
子供たちへと繋がる大人たちのいざこざとすれ違いは、静かなトーンで描かれるものの苛立ちに満ちている。人生の不自由さがしみる。右往左往すらできない不自由さがあるのだ。

10.ピエール・ルメートル著『その女アレックス』
今年出版された同著者の『悲しみのイレーヌ』にすればいいじゃないかと突っ込まれそうだが、こっちの方がやっぱりインパクトあるんだよな(笑)。




2015年ベスト映画

あけましておめでとうございます。2015年内に2015年のベストupできなかった・・・。2015年は特集上映や映画祭にはあまり行かなかったが、結構充実した鑑賞ができた気がする。

1.『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
まさかこんな傑作だとは。ビジュアル、構成、アクションの完成度も素晴らしいが、蹂躙されることへの怒りを込めて走り戦い続ける人たちの姿に涙した。フュリオサはこの年見た映画の中で最もかっこよく美しい女性だった。

2.『パレードへようこそ』
これもまた、戦い続ける人たちの姿。全く立ち位置の違う人たちが共闘する。人としての敬意が、彼らを繋げていく様には胸が熱くなる。

3.『サンドラの週末』
上位3本は全て、自分の、そして他人の尊厳の為に戦う人たちの姿を描く。サンドラの決断は重くも清々しい。それを選ばない、という選択が人には出来るのだ。

4.『君が生きた証』
音楽映画として素晴らしいのだが、亡くなった人との関係、残された者の葛藤がひしひしと迫ってくる。見せ方の上手さで途中あっと言わされた。

5.『岸辺の旅』
残された者が死者に縛られているだけではなく、死者を自ら呼び寄せてしまうこともある。あちら側とこちら側のあわいの薄暗さが印象に残った。死者はそこかしこに潜んでいる。

6.『恋人たち』
生きていくのは苦しい。なぜ自分ばかり不幸なのかと吠えたくなることもある。明日が今日より良いとは限らない。でも死ぬことを選ばない、ということができる。

7.『パプーシャの黒い瞳』
モノクロの画面がとても美しいが、見た後はずーんと重い気持ちになる。自己表現せずにいられないが、それが許されない環境に生まれた人の悲劇。

8.『ターナー 光に愛を求めて』
きめ細かく作られた時代劇で美術が素晴らしい。ターナーの世界に対する観察眼、あくなき好奇心には自然科学的なメンタリティを感じる。

9.『インヒアレント・ヴァイス』
夢の底の方へどんどん落ちていくような、不思議な感覚。音楽の使い方もばっちり。

10.『THE COCKPIT』
非常にシンプルなのにこんなに面白く新鮮!こう撮るんだ、という確信みたいなものを感じる。音が積み重なり音楽が生まれる瞬間が美しい。

2014年ベスト本

2014年に読んだ本(旧作含む)の中、特に良かったもの10点。今年は諸々の事情で読書が進まなかった・・・。来年もあんまり読めなさそうなのが辛いが、自分にマッチする作品を見落とさずにいたい。

1.ジェラルド・ダレル『虫とけものと家族たち』
 イギリスでは長年ベストセラーとして愛されている作品だそうだ。自然への観察眼と生き生きとした描写が素晴らしい。
2.アン・ビーティ『この世界の女たち アン・ビーティ短編傑作選』
 ”普通”のことのしんどさに、心えぐられる短編集だった。
3&4.山岸真編『SFマガジン700【海外篇】』&大森望編『SFマガジン700【国内篇】』
 SFマガジン創刊700号記念のアンソロジー。国内・海外ともにバランスよく初心者にもお勧めできる。
5&6.杉江松恋編『ミステリマガジン700【海外篇】』&日下三蔵編『ミステリマガジン700【国内篇】』
 SFマガジンが来たら当然ミステリマガジンも入れたい(笑)。
7.アントニオ・タブッキ『いつも手遅れ』
 ほんのり甘い中にも苦さが広がる。
8.トム・フランクリン&ベス・アン・フェンリィ『たとえ傾いた世界でも』
 やっぱりこういうのがすきなんだよなー。
9&10.ベン・Hウィンタース『地上最後の刑事』&『カウントダウン・シティ』
 シリーズなので一緒に。これもまた「傾いた世界」であるが、傾かず生きようとする主人公に好感。


2014年ベスト映画

今年見た新作映画(特集上映・映画祭含む)の中で、特によかったもの10本を選びました。今年はなかなか豊作だったのではないかと思う。

1.『ファーナス 決別の朝』
やっぱり自分はこういうのが好きなんだよなぁと痛感。ハッピーエンドにならないのはわかっているがこういう風にせずはいられない人というのが。
2.『ジャージー・ボーイズ』
音楽劇としても、あるグループが上りつめ没落していく、そして更にその先を描いた大河ドラマとしても最高。エンドロールには泣いた。
3.『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』
ポリティカルサスペンスブロマンスとして今年最もときめきましたね。今まで見たアメコミ原作映画の中でもベスト。
4.『ショート・ターム』
ふがいなくても歩み続ける人たちの姿が清々しい。
5.『ダラス・バイヤーズ・クラブ』
自分の戦いが、やがて誰かと繋がることにも。
6.『グランド・ブタペスト・ホテル』
好みは分かれるだろうが映画美術の一つの極北だと思う。箱庭的だと思っていたらすこんと歴史的な視野が入ってくるところも「映画」。
7.『ラッシュ プライドと友情』
そのジャンルに疎い人にも見やすい・わかりやすい見せ方をしている職人技。王道少年漫画的展開に燃えた。
8.『プールサイド・デイズ』
他人の価値観での評価だけが絶対じゃないんだよと少年少女を励ましてくれる作品では。
9.『LEGO(R)MOVIE』
狂気のアニメーション。そしてレゴがレゴである所以を見事に映画化している。
10.『オーバー・ザ・ブルースカイ』
悲しみの速度が違うという悲劇。音楽が良かった。

『2013ベスト本』

続きましては今年1年読んだ本の中で良かったもの10冊。今年はいい海外文学を読めたと思う。

1.双眼鏡からの眺め(イーディス・パールマン)
ある瞬間への切り込み方の深さ、鋭さに唸る。人生の不自由さ、不可思議さ、そして美しさを切り取る傑作中・短編集。

2.フランス組曲(イレーヌ・ネミロフスキー)
大河ドラマの序章となるはずだった作品。途絶えてしまったのがつくづく惜しい。

3.青い野を歩く(クレア・キーガン)
静謐さの下にちりちりと燃える炎があるような。

4.終わりの感覚(ジュリアン・バーンズ)
若気のいたりって、忘れるって恐ろしい。

5.刑事たちの3日間(アレックス・グレシアン)
いい時代小説でありお仕事小説でありミステリでありキャラクター小説。

6.コリーニ事件(フェルディナント・フォン・シーラッハ)
短めながら読み応えあり。過去はなくならない。

7.機龍警察機龍警察 自爆条項機龍警察 暗黒市場(月村了衛)
シリーズ3作セットではだめですか・・・。だって面白いんだもん!もうすぐ新刊出るそうなのでうれしい!

8.失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選(フリードリヒ・デュレンマット)
この世のすべては喜劇である、とでもいうようなブラックユーモア溢れる作品集。怖かった。

9.やがて、警官は微睡る(日明恩)
まっとうな人たちが責務をまっとうしようとするまっとうな小説。そのまっとうさに頭が下がる。

10.悪魔と警視庁(E.C.R.ロラック)
古典本格ミステリとして端正で品が良く、ほっとする。警部の紳士さも素敵。

『2013年ベスト映画』

今日で2013年も終わるので、例年通り2013年ベスト映画を選びました。今年は鑑賞ペースをちょっと抑え目にしてみたつもり(実際、映画祭や特集上映にはあまり行かなかった)ですが、見たいものはそこそこ見られたと思います。

≪洋画≫
1.フライト
今まで相性が悪かったロバート・ゼメキス作品だが今回初めてびっくりするくらい面白かった。出てくる人たちは不真面目なようでいてすごく真面目。(自覚の度合いはともあれ)信仰を持っているということについて考えさせられる。

2.ザ・マスター
「フライト」と同じく、信仰について考えさせられる。その対象を普通の人間に仮託してしまうことの危うさも。映画的としか言いようのないショットが随所にあって、魅了された。

3.わたしはロランス
今年一番の「わたしはこう生きたい、こういうふうにしか生きられない」という叫びを感じた作品。

4.シャドー・ダンサー
これもまた「わたしはこう生きたい」という物語とも言えるが、選択肢の極端な少なさが胸をえぐる。ストイックな作りがよかった。

5.デッドマン・ダウン
娯楽映画ってこういうのでいいんだよ!シナリオの無駄のなさ、情感の控えめさが素晴らしい。

6.孤独な天使たち
ベルトルッチの本質は意外とこういう作品にあるのかもと思った。そしてデビッド・ボウイ楽曲の使い方が最高だった。

7.愛さえあれば
大人のロマンス映画、というと陳腐な言い方になるが、まさに「大人」だった。意外性のないネタも演出の仕方でこうも芳醇になる。

8.東ベルリンから来た女
私の中では「シャドー・ダンサー」と同じ枠の作品。最後、彼女は勝利したのだと思う。

9.リンカーン
オーソドックスな「大作映画」感があった。そしてトミー・リー・ジョーンズのキュートさよ。

10.クロワッサンで朝食を
見ていて、とても丁度いい感じがする作品だった。やりすぎないって重要だと思う。


≪邦画≫
1.さよなら渓谷
人は許されることがあるのか、許せるのかと。息もつけない。

2.フラッシュバック・メモリーズ3D
途中から涙止まらなかったですね・・・。記憶のとどめ方、再生の仕方にこんなやりかたがあるのかと。

3.そして父になる
監督、大当たりを狙いに来たなという感じが(笑)。細かい部分の作り込みに感心した。見た後で色々話し合いたくなる作品だった。

4.ぼっちゃん
見ていていたたまれないが、いたたまれなさすぎて忘れられない。

5.横道世之介
結構長いのに長さを感じなかった!こういう形で人の記憶に残ることがある、ということにぐっとくる。

6.かぐや姫の物語
私の中では「わたしはロランス」と同じ枠に入る作品。しかし本作の方が苦さが深い。高畑監督、恐るべし。

7.はじまりのみち
俳優が皆よく、品のいい作品だった。その道を踏み出す瞬間の美しさよ。

8.舟を編む
これもまた、品のいい映画だった。松田龍平の新たな魅力が全開だった。

9.リアル 完全なる首長竜の日
黒沢清は何を撮っても黒沢清なのだった。

10.チチを撮りに
明らかに低予算の地味な作品だが、オーソドックスさを恐れない良さ。

番外.劇場版銀魂 完結編 万屋よ永遠なれ
ジャンプありがとう・・・サンライズありがとう・・・ともあれ作品の趣旨をよくふまえたいい完結編だったと思う。


*若干訂正しました(12.31 22:35)

2012年ベスト映画

2012年もそこそこ映画を見た。そして今年は1~3月に名作が集中し上半期で1年のベストが決まってしまうのでは?というまさかの展開に。今年は、自分にとって後頭部を殴打されるような、がつんとくる作品が多かったように思う。自分が映画に求めるものが何なのか、という部分もなんとなくわかってきた気がする。

では、まずは洋画(アジア含む)編。

1:『ニーチェの馬』
 世界の終わりがじわじわ迫ってくる。普通だったらそんなに好きな映画ではないと思うのに、強烈な絵の力にねじ伏せられ目を離せない。世界の終わり系映画にありがちなナルシズムがないところが素晴らしい。

2:『果てなき路』
 一見ミステリ仕立てだが、映画を愛するもののなれの果て、映画との道行映画である。その潔さとエンドロール曲で泣いた。

3:『灼熱の魂』
 こんなに厳しく激しい人生を生きられるものか。「許す」行為について深く考えさせられた。

4:『別離』
 特殊条件下ルールを適用した本格ミステリにも似た組み立て方で、家族の心の機微が浮かび上がってくる。海外の映画を見ることは、異国の歴史文化を知ることにも繋がるんだなと改めて思った。

5:『ドライヴ』
 シンプルなストーリーに滑らかかつどこか懐かしい映像美。主人公の仁義のようなものにぐっとくる。他人のささやかな好意や善意が、自分にとっては人生を左右されるようなものということもある。

6:『J・エドガー』
 まさか本気でメロドラマだとは!他人の情報には敏感だが自分のことには疎かった男と、その愛。イーストウッドがこういう作品撮るとはなぁ・・・

7:『裏切りのサーカス』
 実に流暢。原作者絶賛も頷ける脚本と編集の素晴らしさ。ハードな世界なのになぜか「あの頃僕らは」的甘酸っぱ、せつなさも。音楽の使い方も冴えてた。

8:『思秋期』
 やりばのない悲しみや怒りが身に染みてくる。だが、希望がないわけではないのだ。人を救うのはやっぱり人だと思う。

9:『オレンジと太陽』
 世界を良くしていくのは、普通の人の善意や努力やプロ意識だと信じたい。原作と合わせて深く感銘を受けた。

10:『これは映画ではない』
 逆説的に映画は何かと考えさせられる、闘争心溢れる作品。

次点で『チキンとプラム』。映画の魔法を感じた。共感とかしなくても、映画の力が強い作品だとがつんとくる。




続いて邦画編。1位以外はわりと小粒だが、そこそこ良かったという印象。

1:『演劇1』『演劇2』
 2作に分かれているが実質1作なので合わせて1位に。平田オリザの怪物性が際立つが、それに肉薄していく相田監督も同じく怪物的であった。圧巻のドキュメンタリー。

2:『おおかみこどもの雨と雪』
 母親像に対する批判も多いと思う(私は違和感さほどなかったですが)が、アニメーション映画としての引力の強さに屈する。ファーストショットで涙が滲むなんて初めてですよ。

3:『桐島、部活やめるってよ』
 今年の日本映画ダークホース。監督も脚本家も、よくがんばった!いやもう、ほんと面白くてびっくりしました。

4:『かぞくのくに』
 地味だが見ると確実に心に爪痕を残される。あの国も、この国も、何なんだろうと。

5:『I'M FLASH!』
 豊田監督がやっと調子を取り戻してきて嬉しいです。主演の藤原にとっても新境地だったのでは。

6:『ポテチ』
 日本のエンターテイメント映画は本作を見習って時間短縮に励むように。こういうのでいいんだよ。

7:『アウトレイジ ビヨンド』
 悪い顔がいっぱいでとっても楽しかった。加瀬亮の小物演技が素晴らしい。

8:『夢売るふたり』
 どろっとした異物感を感じる作品だった。松たか子はいい女優だな~。

9:『北のカナリアたち』
 若手俳優たちの健闘に敬意を表して。あと、やっぱり風景がいい。

10:『アニメ師 杉井ギサブロー』
 いやーもうよくこんな(集客しなさそうな)作品公開してくれたなと・・・杉井の人柄の好ましさが伝わってくることはもちろん、アニメ史資料としても貴重。

次点で『ももへの手紙』『伏 鉄砲娘の捕物帖』。今年はアニメーション映画が好調で嬉しかった。


 

2012年ベスト本

 続いては2012年読書ベスト読書編。今年は翻訳小説の新刊(普段は発行から数年遅れで読むことが多いので)を比較的(例年に比べると)読んだなという印象。逆に国内の小説はあまり読まなかった。また、ミステリ、特に国内のミステリをめっきり読まなくなってきている。では1位から。ジャンルはまぜこぜです。まず海外から10冊。

1:『犯罪』&『罪悪
 兄弟的な関係の2冊なのでセットで。なんで出版されてすぐに読まなかったんだ!と後悔したくらい面白い。人の悪意も理不尽さも突き放すクールな語り口。

2:『フリント船長がまだいい人だったころ
 少年時代の何かが失われる瞬間を痛切に描いた秀作。「それでもなお」という姿が痛ましくもある。

3:『黄金の少年、エメラルドの少女
 今年、最も心えぐられた小説。実に上手い。

4:『無声映画のシーン
 降り積もる雪のように静かにしみ込んでくる、連作短編集。

5:『ドライブ
 映画もよかったが原作もクール。省略のセンスがいい。

6:『パリ南西東北
 機動力の高い文章という印象。装丁もすっきりしていて素敵。

7:『からのゆりかご 大英帝国の迷子たち
 国ぐるみでこんなことをしていたなんて!と衝撃を受けるノンフィクション。著者のひたむきさ、誠実さに心打たれた。

8:『農耕詩
 大変なボリュームなのだが読んでいると不思議な酩酊感が。

9:『都市と都市
 フィクションは現実の映し鏡であると思わせるSF。著者にとっては不本意かもしれないが。

10:『クートラスの思い出
 クートラスという人の人柄以上に、人と人との関係の不思議さが印象に残った。

 続いて国内から、あまり読まなかったので3冊。

1:『母の遺産 新聞小説
 メタメロドラマでありつつリアルな「女の老後」を描き、更に新聞小説史に思いをはせる。

2:『屍者の帝国
 今年の小説というなら、本作を外せないだろう。意外に読みやすかった。

3:『アニメと生命と放浪と ~「アトム」「タッチ」「銀河鉄道の夜」に流れる表現の系譜~
 今年は杉井ギサブローイヤーということでいいんじゃないでしょうか。アニメに携わる人でなくても、仕事に向き合う際に心に染みる言葉あり。





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