ジョン・ル・カレ著、上岡伸雄・上杉隼人訳
カリブ海のリゾートでバカンスを過ごすペリーとゲイルは、ロシア人富豪ディマにテニスに誘われる。どこか奇妙なロシア人一家に戸惑いながらも誘いに応じた2人だったが、思いもよらない事態に巻き込まれていく。イギリス人カップル視点と、彼らを「仲間」にひきこむイギリス諜報部の視点が交互に配置される構成。時制もばらばらなので最初は何が起きているのかよくわからない、ただペリーとゲイルがやっかいなことになっているらしいということだけは感じ取れる。が、徐々にことの次第と、それが予想以上にやっかい(笑)だということが明らかになっていく。素人巻き込むなよ!と突っ込みたくはなるが、ペリーはそのスリルや使命感に惹かれ、ゲイルは子供達を見捨てられずに自ら身を投じていくことになる。諜報員たちもそれぞれ、己の信じる(あるいは他に選択のしようがない)道の為に危険と背中合わせのミッションに挑む。思想も利害もたいして一致しない人たちが、徐々に一つの目的の為に心を合わせていく様、そしてそれでもそれぞれ「都合」を抱えている様が丁寧に描かれる。著者の近年の作品は文章がどんどん散文的になっているが、その文体が様々な人たちの思惑が入り乱れる本作のような物語には合っているのではないかと思った。そしてラスト、池澤夏樹が帯で「ボーゼン!」と書いているが、正にボーゼンである。しかしこのラストだよなぁと納得してしまう。
われらが背きし者
ミッション・ソング (光文社文庫)
カリブ海のリゾートでバカンスを過ごすペリーとゲイルは、ロシア人富豪ディマにテニスに誘われる。どこか奇妙なロシア人一家に戸惑いながらも誘いに応じた2人だったが、思いもよらない事態に巻き込まれていく。イギリス人カップル視点と、彼らを「仲間」にひきこむイギリス諜報部の視点が交互に配置される構成。時制もばらばらなので最初は何が起きているのかよくわからない、ただペリーとゲイルがやっかいなことになっているらしいということだけは感じ取れる。が、徐々にことの次第と、それが予想以上にやっかい(笑)だということが明らかになっていく。素人巻き込むなよ!と突っ込みたくはなるが、ペリーはそのスリルや使命感に惹かれ、ゲイルは子供達を見捨てられずに自ら身を投じていくことになる。諜報員たちもそれぞれ、己の信じる(あるいは他に選択のしようがない)道の為に危険と背中合わせのミッションに挑む。思想も利害もたいして一致しない人たちが、徐々に一つの目的の為に心を合わせていく様、そしてそれでもそれぞれ「都合」を抱えている様が丁寧に描かれる。著者の近年の作品は文章がどんどん散文的になっているが、その文体が様々な人たちの思惑が入り乱れる本作のような物語には合っているのではないかと思った。そしてラスト、池澤夏樹が帯で「ボーゼン!」と書いているが、正にボーゼンである。しかしこのラストだよなぁと納得してしまう。
われらが背きし者
ミッション・ソング (光文社文庫)