3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

『眠る狼』

グレン・エリック・ハミルトン著、山中朝晶訳
  祖父と確執により10年前に故郷を離れた陸軍兵・バンの元に、その祖父からの手紙が届く。プロの泥棒として腕の立った冷静な祖父の言葉とは思えない、「もどってきてくれ」とのメッセージに違和感を感じたバンは、休暇を取って実家を訪ねる。そこで彼が目にしたのは、銃撃を受け意識を失くした祖父の姿だった。
 アンソニー賞、マカヴィティ賞、ストランド・マガジン批評家賞最優秀新人賞受賞作だそうだが、確かに新人の作品でこの面白さはすごい。帰省したらいきなり祖父が撃たれているという導入部で一気に引き込まれ、時間制限のある(バンは10日間の休暇が終わると軍に戻らなければならない)犯人探しが行われる現在、祖父が何をやっていたのか、なぜ2人は決別したのかという過去とが並列して描かれ、犯人との対峙で結びつく。途中少々もどかしいが、いい構成だと思う。ある人物のバンに対する態度にずっと微妙な違和感を感じていたのだが、それがこういう形でつながるのか!というすっきり感も。バンと祖父はいわゆる「仲がいい」家族ではないしお互いに反目する部分は多々ある。しかし、2人の間には好き嫌いを越えた、根っこの所での信頼と理解があるのだ。ある人物との関係は一見円満で愛と信頼があるように見える。しかし、根底では理解しあっていない。お互いに相手を見間違っているのだ。

眠る狼 (ハヤカワ文庫NV)
グレン・エリック・ハミルトン
早川書房
2017-04-06

ネバー・ゴー・バック(上) (講談社文庫)
リー・チャイルド
講談社
2016-11-15

『ネルーダ事件』

ロベルト・アンブエロ著、宮崎真紀訳
チリで探偵をしているカジェタノは、この仕事を始めるきっかけとなった出来事を思い出す。1973年、アジェンデ大統領が樹立した社会主義政権は、大きく揺らいでいた。そんな中、国民的詩人のネルーダと知り合い、彼にある人物を探してほしいと頼まれる。カジェタノはチリ国内にみならず、メキシコやキューバ、更に東ドイツにまで足を延ばす羽目になるが、依頼にはネルーダの別の目的が隠されていた。日本で翻訳される機会は少ないであろう南米ミステリだが、これは面白い。本作がシリーズ6作目だそうなのだが、主人公が探偵になったきっかけの物語なので、最初に読むにはよかったのかな。カジェタノが人生のある季節を終え次に進む物語であると同時に、その背景としてチリのある時代の終わりが描かれており、悲哀が漂う。ネルーダを始め実在の人物が登場することに加え、時代背景を多少知っていないとわかりにくい(ので、訳者解説を先に読んでもいいと思う)かもしれない。ネルーダのカリスマ性とともに、自分の才能を最優先する傲慢さ、そこから生じる弱さもどこか物悲しかった。
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