アンソニー・ホロヴィッツ著、山田蘭訳
探偵ホーソーンの相棒として彼の活躍を本にしてきた”わたし”こと作家のホロヴィッツは、自身の作品に使う時間が削られることに耐え兼ね、ホーソーンに契約打ち切りを告げる。しかしその翌週、”わたし”は殺人容疑をかけられてしまう。自作の戯曲を酷評した劇評家が刺殺され、凶器は記念品として”わたし”に贈られ、かつ”わたし”の指紋がついている短剣だった。絶体絶命の”わたし”はホーソーンに助けを求める。
シリーズ4作目だが今回は(作中人物の)ホロヴィッツが大ピンチ。ただこのピンチはホロヴィッツ本人のそこつさ、わきの甘さで増大されている気もする。私はこのシリーズに対し、出来がいいと思いつついまひとつ愛着がわかないのだが、それはワトソン役を過剰にまぬけに描く傾向があるからかもしれない。作家本人がモデルのキャラクターだから存分にやって大丈夫ということなのかもしれないが、そんなに墓穴を掘るようなことばかりさせなくても…と思ってしまった。とは言えミステリとしてはやはり手堅い。今回は「だれが」「なぜ」という本筋よりも、その周辺の細かい伏線の仕掛け方が相変わらずきちんとしていて謎解きミステリとしてはフェアなのでは。作品としてはやや小粒の印象ではあるが充分面白い。
なお、ある人物のある行動の理由について、理由付けが今時それはちょっと古い(昔はこういう動機設定はあったが今はそれは動機=特異な条件としては扱わない傾向にあるのでは)のではと思った。実生活として古いというより、フィクションの在り方として最早そういう風潮にはないのでは。
ケネス・ブラナー
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2021-01-08