ユーン・ハ・リー著、赤尾秀子訳
星間大国「六連合」は、数学と暦に基づき、物理法則を超越する科学体形「歴法」を駆使し統治を広げていた。六連合の若き軍人チェリスは、不変氷と呼ばれる鉄壁のシールドを持つ巨大宇宙都市要塞の制圧を命じられる。ただ、この指令には史上最高の戦略家かつ反逆者として長らく幽閉されていたシュオス・ジュダオの意識をチェリスの体に宿すという条件があった。
歴法、六連合等作品オリジナル用語が多数使われているスペースオペラなのだが、用語の意味がいちいち説明されるわけではないので、SF不慣れな人には結構推理力がいる。また意味を理解したとしても、これは何を意味しているんだっけ?と何度も振り返り確認する羽目に。ページが進まない!ネタバレになりかけるとしても、最初に巻末の用語集を読んでおけばよかった。戦闘シーンも悲惨なことはわかるが何がどう起きているのかいまいちぴんとこない…。
物語の立て付け、設定としてはおそらくそれほど珍しいものではないのだろうが、食事のシーンで米と漬物、発酵食品系のものが頻繁に出てきたり(著者は韓国系アメリカ人)、僕扶と呼ばれる自律ドローンが様々な形(動物や小鳥の形のものもある)だったりと描写が楽しい。また、男性女性の性別は存在する世界だが、個人の特性の設定や描写が性別とあまり関係ない、性別入れ替えても成立するような作りになっているところは面白かった。六連合の世界がかなりかっちりした階級・組織分けされており、所属階層からの移動は難しそうなのとは対称的。なおチェリスの趣味は僕扶と一緒にTVドラマを見ること。ちょっとかわいい。