3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

『ツバメ号とアマゾン号 (上、下)』

アーサー・ランサム著、神宮輝夫訳
ウォーカー家の4兄弟は、小さな帆船「ツバメ号」を操り、湖の無人島に赴く。夏休みの間、この無人島で子供だけで過ごそうというのだ。しかし無人島にはかつて誰かが生活していた痕跡が。そして彼らの前に「アマゾン号」を操る“海賊”姉妹、ナンシイとペギーが現れる。「ランサム・サーガ」と呼ばれる12巻から成るシリーズの1作目。長年愛されている児童文学の名作だというが、実は子供の頃に手にとったものの、すぐに飽きて1冊読み切れなかった。しかし、いい大人になった今読み直すと、とても面白い!むしろ大人になってからの方が私にとっては面白い。多分、子供の頃には船のパーツの名称とかどういう操縦をするのかとか、島に何を持っていくのかとかに興味が湧かなかったんだろうなぁ。大きな物語というよりも、細部の描写に魅力を感じた。いちいちちゃんとご飯食べようとするところとか、いいんだよなー。子供の「ごっこ」遊びの世界と普段の生活(「ごっこ」中は普段の生活こそが非日常になる)との行き来の描き方が鮮やか。子供たちが、遊びと普段の生活とのバランスをちゃんと取っている様子に健やかさを感じた。また、この遊びに乗ってくる母親や、ナンシイ&ペギーの叔父である“フリント船長”がとてもチャーミング。母親は“原住民”だし“フリント船長”はその名の通り海賊だが、子供たちを心配すると母親と叔父に戻ってしまう。子供にとっては”原住民”や”フリント船長”でいてほしいから、母や叔父ではちょっとうっとおしいのだが、心細くなると母や叔父との接し方にもどってしまったりする。その行き来の感じがすごく出ているし、母も叔父も子供の頃のことをよく覚えている大人なんだなという感じがする。おそらく、ランサム自身がそういう大人だったのだろう。

『月の部屋で会いましょう』

レイ・ヴクサヴィッチ著、岸本佐知子・市田泉訳
皮膚が宇宙服化していく病が蔓延する世界、自転車を「狩る」子供たち、手編みのセーターの中で迷子、寄生生物に乗っ取られた母親等、奇妙な設定が次々と現れる、ユーモラスでどこか悲哀漂う短編集。33編を収録しており、どれもごくごく短く読みやすい。が、描かれている世界は奇妙奇天烈だ。2001年度のフィリップ・K・ディック賞候補になったそうだが、SFというには不条理ギャグ的すぎる気もする。ただ、へんてこな話ばかりだが、どれもどこかしら哀愁が漂っている。表出の仕方は変なのだが、愛する人、親しい人、あるいは自分が属する世界そのものとコミュニケーションが取れなくなってしまう、他者との間に厚い壁が落っこちてくるようなシチュエーションが多発しているのだ。笑えるけど笑えない。人と人との関係への諦念が滲む。そんな中に、表題作のような話があると(つかの間の夢だとしても)妙にホロリとする。全体のバランスのいい短篇集だと思う。
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