ホリー・ジャクソン著、服部京子訳
大学入学を控えたピップは、彼女がポッドキャストで糾弾した青年に訴えられていた。弁護士は調停に応じた方がいいと言うがピップは納得できない。更に無言電話や匿名のメール、更に自宅前に首を切った鳩の死体が置かれる等、ストーキングにあっていた。ストーキングの内容が6年前の連続殺人事件の被害者に起きたことと似ていると気付いたピップは、さっそく調査に乗り出す。
本の帯でも事前の広告でも「衝撃」が強調されていたが、これは確かに衝撃。中盤で小説のジャンルが変わるレベルのとんでもないことが起きる。序盤からピップのメンタルの状態があまりよくなく薬が手放せない等はらはらさせられる要素がかなり多いのだが、それを越える衝撃だ。本作は3部作の完結編だが、1作目からこの展開が考えられていたのか気になるところだ。1作目、2作目のエピソードが伏線として機能しているので、ある程度は考えられていたのかなとは思うが…。何にせよ思い切りが良すぎる。
ピップの人生は大変な方向に進んでしまうが、彼女が1作目からやってきたことの方向性が極まるとこうなってしまう、というのが非常に皮肉でもありやりきれない所だ。若さゆえのとか過剰な責任感という面もあるのだが、それ以上に現在の社会構造や司法のシステムが彼女にそのように思わせてしまうという面の方が大きい。これは大人の側の問題じゃないですか…。振り返ると、ピップやラヴィの両親のようにしっかりとした愛情あふれる大人もおり、子供との信頼関係はあるものの、社会システムとしての大人に対する信頼感があまりないシリーズだったかもしれない。