M・W・クレイヴン著、東野さやか訳
ストーンサークルが点在する英国カンブリア州。そのストーンサークルで焼死体が次々と発見された。死体は燃やされる前にひどく損壊されていたが、3体目の死体には国家犯罪対策庁の警官ワシントン・ポーの名前と「5」と思しき数字が刻まれていた。停職中だったポーは捜査に参加することになるが、なぜ自分の名前が刻まれていたのかという心当たりはないままだった。そして新たな死体が発見される。
ゴールド・ダガー賞受賞作だそうだが、納得。ほどよく華があるが派手過ぎずリーダビリティも高い、感情を使わなくていいタイプの面白さ(褒めてます)なので、疲れた頭でも大丈夫なミステリ。ストーンサークルを出してくるのでちょっとオカルトっぽいのか?歴史ものか?と食わず嫌いでいたけどスタンダードに捜査するミステリだった。ポーは警察官だがある事件によって停職になり、その性格や捜査の態度も警察組織の中でははぐれ者。同じくはぐれ者だがデータ収集解析では非常に優秀なブラッドショー(明言はされていないがブラッドショーの行動原理は発達障害的だと思った)を片腕に捜査にあたるが、2人の捜査官としての資質が段々噛み合っていくのが楽しい。この2人だけだとキャラクター造形がちょっと地に足ついていない感じになるが、ポーの元同僚で現上司であるフリンの等身大の優秀さ、管理職としてのまともさと苦労が本作の雰囲気を地上に引き留めていると思う。
本作、「友達」の存在が一つの大きな要素になっている。ある人たちがポーに対して友達だと言う、またポーがある人たちに対して友達だと思うシチュエーションが対称的・重層的になっており、ちょっと胸を突かれた。