日向夏著
花街の薬師の娘・猫猫(マオマオ)は、薬草採取をしている時に人さらいにかどわかされ後宮で下働きをすることになる。目立つことなく奉公期間をやりすごそうとしていたが、薬の知識が豊富なことが徒となり、帝の気に入りである玉葉妃の侍女に抜擢されてしまった。猫猫は宮中の奇妙な出来事、不穏な出来事を持ち前の知識で解決していく。
中世の中国が舞台と思しき世界描写なのだが、具体的にどこの国のどの時代という記述はなく、リアル寄りの中国ファンタジーという立て付けなのだろう。猫猫が色々よく知りすぎ、かつ後宮の人たち等がそれは知っていそうなんだけど…という感がしなくもないが、ファンタジーだからというエクスキューズができるからか。各種メディアミックスが成功している本作だが、原作小説だけ読むと、話は面白いが小説として面白いわけではないという印象。主人公がやったこと、起こったことだけがどんどん説明される感じで、背景や余白の面白さ、文章を読むこと自体の面白さではないんだなと。アニメーションや漫画はその背景・余白の演出ができ、そこで原作補完がされるという構造なので相性いいんだろうな。
私はラノベをほとんど読まないのだが、キャラクターの魅力で読ませるジャンルという思い込みがあった。しかし本作、それほどキャラクターを魅力的に描こうという意欲を感じなかった。魅力的にしようとしているがちょっとから回っていると言った方がいいかもしれない。特に壬氏については上滑り気味というか、著者自身も「美形…とは…」みたいな感じで書いている気がする。