ジャナ・デリオン著、島村浩子訳
独立記念日を向けて賑わうシンフルの町。しかし新町長にアイダ・ベルやガーティの宿敵・シーリアが就任し、町には波乱の気配が漂う。そんな折、湿地で爆発が起きる。密造酒の醸造所の事故と思われたが、現場の状況からメタンフェミンが使われていた、つまり覚醒剤が作られていたことがわかった。薬物が町に蔓延する前に食い止めようとフォーチュンたちは調査を開始する。
「ワニの町へ来たスパイ」シリーズ6作目。無事翻訳が進んでおり何よりだ。しかし作中時間2か月ほどでこんなに事件が起きていいのか?!シンフル、敏腕エージェントとしてフォーチュンが活躍していた世界よりもよっぽど危険なのではないだろうか。今回もどたばた感と高齢女性たちのタフさは相変わらずなのだが、ガーティの魅力(と面倒臭さ)がいつになく全開になっていたように思う。彼女の自由奔放さ、今のライフスタイルは自分の資質や望みと彼女が若い当時の社会規範との相容れない部分さを飲み込んだうえでの腹の括り方なのだということが垣間見えるのだ。アイダ・ベルは彼女のそういう所を愛しているのだろう。女性たちの友情と相互理解が眩しく、フォーチュンとカーターとのロマンスは正直余分に見えてしまった。
楽しいシリーズではあるのだが、フォーチュンたちと犬猿の仲であるシーリアの扱いが段々「悪役」テンプレ化し薄っぺらくなっている点は気になる。特に本作でのシーリアの振る舞いはいくらなんでも無茶というか、もうちょっと頭のいいキャラクターだったのでは(人望を得るための根回しとかすごくやりそうなのに)?と思った。こういう「いじっていい」キャラを配置してにぎやかすというのは正直あまり好きになれない。