ミシェル・ビュッシ著、平岡敦訳
仏領ポリネシアのヒバオア島に、5人の作家志望の女性たちが集まった。人気ベストセラー作家のピエール=イヴ・フランソワが主宰するワークショップ<創作アトリエ>が開かれるのだ。しかし作家が突然姿を消し、女性たちも何者かに殺害されていく。
作品のあらすじの時点で連続殺人ものかつクリスティの有名作をなぞったものであることが明かされているのだが、そこはネタバレにならない、本作の醍醐味はそこにはないという自信ゆえか。なお個人的にはクリスティに対するオマージュという側面にはあまり重きを置いていないじゃないかなと思う。本作はワークショップの参加者が記した原稿、参加者のうちの1人の娘の日記、参加者のうちの1人の夫の視点という3種の視点で構成されている。となればこれは叙述トリック(ということまであらすじ紹介に掲載されているので…)だが、読んでいるうちにその奇妙さ、ちぐはぐさが気になってくる。これはもしや、と思っていたらなるほどやはり、と。この仕掛けであれば連続殺人であることがわかっていてもミステリ要素にはあまり影響ないか。ただそれ以外の部分で結構作りが雑な所があり、全体としては面白いことは面白いけど大味といった感じ。フランスと仏領との関係が垣間見えるあたりはご当地ミステリ的味わいも。観光客が天国天国と持ち上げても、現地の人はそりゃあ醒めているよね…。