3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

『槐(エンジュ)』

月村了衛著
水楢中学校野外活動部は、恒例のキャンプ合宿に出かけた。しかし合宿1日目、キャンプ場は武装した半グレ集団・関帝連合に占拠されキャンプ場の客は皆殺しにされた。彼らの狙いは40億円。振り込め詐欺で集めた金を裏切り者が持ち逃げし、キャンプ場のどこかに隠したというのだ。関帝連合に捕えられた野外活動部員たちだが、何者かが関帝連合に反逆を始める。冒頭、これは何か怖いことが起きるぞ・・・という前フリたっぷりの後、ノンストップで一気に駆け抜けるエンターテイメントど直球の小説。著者の小説よりはむしろ、アニメ脚本のお仕事の雰囲気でベテラン仕事の安定感を感じた。中学生たち個々のキャラクターにしろ教師にしろ「何者か」にしろ、ある種の定番ではあるが、その枠の中でキャラがくっきりと立ち上がってくる。特にある人とある人に関しては、「待ってましたー!」と喝采したくなるような見得の切り方だ。中学生たちが知恵と勇気を振り絞り、必死でサバイブしようとする様にもぐっときた。その年齢として等身大、かつ最大限の知恵と勇気なところがいい。ところで、立派に見えた先生って最初から立派に先生というわけじゃなくて、先生をやろうとしながら先生になってくれてたんだなぁと、当たり前と言えば当たり前のことにしみじみした。

『映画系女子がゆく!』

真魚八重子著
青弓社の公式サイトでの連載に大幅な加筆修正をした、映画の中の女性達を撮り上げるエッセイ集。連載時からとても楽しみにしていたので、書籍として発行されて本当にうれしい!映画を取り上げたエッセイで、映画評論としての側面はもちろんあるのだが、映画に登場する女性の姿から、女性の生き方、生きていく上での葛藤や苦しさ、面白さをすくい上げていく。そのすくい上げ方の丁寧さというか、いわゆる「王道」に乗り切れない人のありかたに対するフェアさ、誠実さに読んでいて目がしら熱くなった。(多分女性だけでなく男性もだと思うけど)そうだよねー、そういうことあるよねー、と共感するところ、また共感するほどではないけどそうだろうなと理解するところ多々。特に、自分の身体も心も自分のものであり、他人に好きに扱わせてはいけないという一貫した姿勢(当然のことなんだけど意外と言及されないだけに)にほっとする。
 

『SFマガジン700【国内篇】』

大森望編
国内随一のSF小説専門誌であるSFマガジンの創刊700号を記念したアンソロジーの、国内篇。筒井康隆の文庫未収録作品や、貴志裕介のデビュー作、そして手塚治虫、松本零士、吾妻ひでおという漫画勢まで、13作家の作品を収録。作風や年代に偏りがないように配慮されていると思う。漫画作品をちゃんと押さえているところも嬉しい。手塚治虫はやっぱりSFマインド満ち満ちだよな!とあらためて納得した。収録作の傾向はかなり多方向なので、えっこれもSF?と思うような作品(桜坂洋『さいたまチェーンソー少女』はSFがおまけみたいだよ・・・)もあったが、いろいろ味わえてお得感はある。個人的なお勧めは、80年代を思い出させる女の子の言葉づかいが懐かしいが、不思議と今読んでも古びていない鈴木いづみ『カラッポがいっぱいの世界』、『新世界より』への志向がうかがえる貴志裕介『夜の記憶』。あと大森望による作者紹介が所々余計なことをぶっ込んでいて吹き出しそうに(野尻抱介の近状とか・・・まあいいたくなるのはわかるが・・・)。
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