3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。

『いずれすべては海の中に』

サラ・スピンカー著、市田泉訳
 ある日突然自分の赤ん坊の夢を見る。その子供はカリフォルニアの海から姿を現し私を待っている(『そしてわれらは暗闇の中』)。長年連れ添った夫はある時から建築家としての夢を失くした。彼が設計していたのは何だったのか(『深淵をあとに歓喜して』)。世代間宇宙船の中で失われかけた文化の記憶と歴史を伝え続ける人々(『風はさまよう』)。あらゆる世界線のサラ・スピンカーが集合するコンベンションで起きた殺人事件(『そして(Nマイナス1)人しかいなくなった』)。フィリップ・K・ディック賞を受賞した短篇集。
 著者の作品は長篇の『新しい時代への歌』を先に読んでいたのだが、本著の方が個人的にはずっと良いと思う。短編の方が上手い作家なのでは。文明の衰退した世界が往々にして舞台となっているが、ディストピアSF的でありつつ、どこかノスタルジーを感じさせる。表題作では何らかの問題で地上は荒廃し、方舟のような巨大客船に乗って生き延びようとした人たちもその閉塞感に耐えられなくなっている。『風はさまよう』はその閉塞感の中で世代を重ねていく様が描かれる。『オープン・ロードの聖母様』は長篇『新しい時代への歌』のスピンオフ的作品で、肉体を伴うライブが激減したパンデミック後の世界のバンドマンたちのロードノベル。どの作品でも世界は黄昏ており、すぐに滅ぶことはなくてもゆっくりと衰退していくように思われる。しかしその中でも衰退する=死滅ではなく、今この瞬間に生きている人間がいること、そこにはささやかでも美しさや喜びがありその生は無意味ではないことが描かれている。個人的に好きな作品は『一筋に伸びる二車線のハイウェイ』。自分が失ってしまったものへの諦念、しかし失ったものを何かにゆだねることができる、自分が全く別の場所・ものと関連付けられることの奇妙さとある種の爽快感みたいなものがユーモアを交えて語られる。

いずれすべては海の中に (竹書房文庫)
サラ・ピンスカー
竹書房
2022-05-31


新しい時代への歌 (竹書房文庫 ぴ 2-1)
サラ・ピンスカー
竹書房
2021-09-15


『血塗られた一月』

アラン・パークス著、吉野弘人訳
 グラスゴー市警の部長刑事マッコイは、1973年1月1日、囚人のネアンから明日ある少女が殺されるから阻止しろと警告される。翌日、ネアンの言葉通り、マッコイの目の前で少年が少女を撃ち殺しその直後に自殺するという事件が起きる。少女はなぜ殺されたのか、新人警官ワッティーと組んで捜査を始めたマッコイは、自分と因縁のあるダンロップ卿が事件に関係していると気付く。
 スコットランドを舞台としているので「タータン・ノワール」と言うらしい。ロッド・スチュワートの話題が頻出あたりもスコットランドという土地柄か。とは言えそれほどローカル感は感じない、スタンダートな警察ノワール小説という印象だった。マッコイは刑事としてはそこそこ有能だが清廉潔白というわけではなく、酒とドラッグに耽溺し、娼婦と懇意になり、幼馴染である大物ギャングとは長年融通をつけ合う仲だ。正義感はあるが清濁(むしろ濁の方が多そうだが)併せのむことを厭わない。正確には厭わないと断言できるほど強くはなく、グレーなことに手を染めるのには常に迷いと恐れがある。わかりやすいマチズモではなく弱さが常に並走している。作中、マッコイがフェミニスト女性に彼の家父長制的言動についてやり込められるくだりがある。少々取って付けたようなパートなのだが、時代背景を示唆すると共に、マッコイを苦しめているものの一端はこういったものにあるという示唆と思えた。
 幼馴染のギャングであるクーパーとの関係は陰影が深い。クーパーは非情な犯罪者だが、マッコイにとってはかつて命を救ってくれた恩人でもある。マッコイとクーパーの少年時代の体験は、未だにマッコイにとってはトラウマになっている。そのトラウマを共有した、かつ忘れさせてくれない相手と延々と付き合わなければならい、かといって自主的に縁を切ることもできないというこじれ方。この関係性はシリーズ作品向きだなと思っていたら、原著では既に数作シリーズが続いており、日本でも無事2作目が翻訳出版されるそうだ。

血塗られた一月 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
アラン パークス
早川書房
2023-06-17


『イリノイ遠景近景』

藤本和子著
 アメリカ、イリノイ州のトウモロコシ畑に囲まれた家に住み、翻訳や現地の人への聞き書きをしていた著者。日々の暮らしや地元の人たちとのやりとり、市民プールでの世間話やドーナツ屋でのおじさんたちの話の盗み聞きを書き記すエッセイ集。
 傑作エッセイと名高いそうだが、確かに傑作。著者の文体がとにかく良い。著者の聞き書きの文体は話者の文体を再現した側面が強いのかと思っていたが、本著を読むと著者固有の文体という側面もかなり強そう。翻訳としての文体と著者の個性としての文体が、段々一体化していったのかもしれない。さっぱりとしていてユーモラス、どこか突き放しているようでいて話者の人間味が滲み出ているという絶妙な文章だと思う。翻訳であれエッセイであれ、自分の文体、声を持っている人はそれだけで強い。ただ著者の強さは独自の文体があるというだけではなく、人をよく観察しその人の話をよく聞き咀嚼するという、観察者、対話者としての強さにあると思う。特に「ギヴ・ミー・シェルター」で描かれる困窮した人の為の宿泊所でのスタッフや宿泊者の話し方や著者とのやりとりが、まさにそこに生きている人がいるという感じだった。かなり切羽詰まった状況の人や、客観的には相当悲惨な状況なのではと思える人の話もあるのだが、ウェットにはならない。他人の苦しさに乗っかっては書いてはいけないという、一線が踏まえられているように思った。本著を読んでいるうちになぜかルシア・ベルリンの作品を連想したのだが、ルシア・ベルリンの翻訳者の岸本佐知子が本著の解説を書いている。

イリノイ遠景近景 (ちくま文庫 ふ-54-2)
藤本 和子
筑摩書房
2022-09-12





ブルースだってただの唄 (ちくま文庫)
藤本 和子
筑摩書房
2020-11-12




『生きるか死ぬかの町長選挙』

ジャナ・デリオン著、島村浩子訳
 長年シンフルの町を影で牛耳ってきたアイダ・ベルがとうとう町長選挙に出馬することになる。対抗馬は最近この町に越してきたシオドア・ウィリアムズ。しかし公開討論会の後、ウィリアムズが殺されてしまう。アイダ・ベルにかけられた容疑を晴らすために、潜伏中のCIA工作員フォーチュンは友人らと共に奔走する。
 「ワニの町に来たスパイ」シリーズ四作目。作中時間は三作目からさほど経過しておらず、田舎町なのに殺人事件起こりすぎである。フォーチュンは身を隠す為に身分を偽ってこの町に来たのに、毎回毎回殺人事件の解決に奔走しており、全然潜伏になっていない!今回はとうとうCIA上層部にすったもんだがバレてしまい、各方面でピンチになる。いずれはフォーチュンを狙う輩との因縁も描かれていくのだろうが、その前に町のごたごたで身柄を拘束されそうだ。フォーチュンは工作員としてとても有能なのに巻き込まれ体質で、それは工作員として本当に有能なのか?とおかしくなってしまう。フォーチュンの有能さを、シンフルの巻き込み土地力みたいなものが上回っているのだろうか。
 フォーチュンを積極的に巻き込んでいくのがアイダ・ベルやガーティら、町の老女たち。今回も大変元気で、アイダ・ベルは口が悪いしガーティの運転は相変わらず不安だらけだ。今回は敵対団体のシーリアらも協力する。中高年女性たちの描き方が(仲良くなれそうかどうかは別として)生き生きとしていて楽しい。フォーチュンにとって、彼女らは初めて出来た親友でもあるのだ。彼女の情の厚さがシリーズ進むごとに表面に出てきている気がする。

生きるか死ぬかの町長選挙 (創元推理文庫)
ジャナ・デリオン
東京創元社
2019-11-29


ミスコン女王が殺された (創元推理文庫)
ジャナ・デリオン
東京創元社
2018-09-20



『今も未来も変わらない』

長嶋有著
 小説家を生業とする星子は40代。数年前に夫と離婚し同居している娘は受験を迎えようとしている。親友の志保とカラオケやドライブで盛り上がり、娘の学校の教師と友達になり、一方で一回り年下の男性と恋の予感がしていた。
 星子は女性であり中年であり作家であり母であり元妻であり恋人であり、という複数の属性を持っている。しかし本作を読んでいると、星子が「~の星子さん」であるという印象はない。星子はあくまで星子。他の登場人物も同様で、「~の」というくくりや属性を極力感じさせない書き方になっていると思う。もちろんそれぞれの年齢や性別、職業や家族間での続柄はあるだろう。しかしそれはその人全体を表すものにはならない。読者の前に立ち上がってくるのは星子であり志保であり、あくまで固有名詞としての人だ。そこがすごくよかった。星子は世間的には「おばさん」と呼ばれる年代なのだろうが、「おばさん」という感じもしない。星子という人が年齢を重ねて今40代、という感じのニュートラルさだ。
 相変わらず固有名詞の使い方が上手い。特定の題名や名称を出すことでその時はこういう気分だな!とはっきりわかるというのは面白いものだな。共通の体験、知識が必要とされることだから、どの固有名詞を使うかかなり匙加減のテクニックが要求されるはず。同時に、わかっている人にはわかるような描写で固有名詞までは出さない、という演出もあり、この使い分けが面白かった。GAPにエルメス合わせて怒られる映画ってあれだな!なお吉祥寺小説でもあるので、調子に乗って吉祥寺のカフェで完読した。

今も未来も変わらない (単行本)
長嶋 有
中央公論新社
2020-09-18


三の隣は五号室 (中公文庫 (な74-1))
長嶋 有
中央公論新社
2019-12-19


『イギリス人の患者』

マイケル・オンダーチェ著、土屋政雄訳
 第二次大戦末期、トスカーナの山腹の屋敷で看護師のハナはひどい火傷を負ったイギリス人患者をかくまっていた。ハナの父親の親友で泥棒のカラヴァッジョと、インド人で爆弾処理専門の工兵キップも屋敷にさまよいこむ。
 登場人物それぞれの視点、それぞれの語りが重層的に配置された構成だが、そのことによって描かれる事象、シチュエーションは逆に曖昧になっていく。視点が複数、かつその語りが今起きていることなのか回想なのか、それとも妄想なのか、はっきりとしない部分があるのだ。特にイギリス人患者に関しては、彼が見ている世界は彼が「見たい」世界であって、実際に起きたこととはちょっと違うのではないかという気配があちこちに散見される。それが積み重なり、彼が実は何者だったのか、実は何があったのかというミステリに繋がってくる。そのミステリの真相は、彼の主観の認識とは異なるものなのかもしれないが。
 更に固有名詞を使わず「男」と「女」のみで語られるパートが何度もあるため、いま語られている「男」と「女」はどの男女のことなのか、時に混乱させられる。あえてシームレスな表現にしてあることで、あの男女にもこの男女にも、このような瞬間があったのではと思わせ、普遍的な(ありきたりとも言う、それが悪いというのではなく)恋愛の姿が立ち現れる。

イギリス人の患者 (新潮文庫)
マイケル オンダーチェ
新潮社
1999-03


イングリッシュ・ペイシェント [DVD]
レイフ・ファインズ
東芝デジタルフロンティア
2002-09-27


『息吹』

テッド・チャン著、大森望訳
 空気から生命を得ていると言われており、空気を満たした肺を交換する種族。「わたし」は自分たちの体の仕組みを解明しようとし、あるショッキングな仮説にたどり着く。人間とは異なる世界の生命の姿を描く表題作のほか、アラビアン・ナイト的な世界でタイムトラベルSFが展開される『商人と錬金術師の門』、デジタルペットの育成の顛末を描く『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』等9篇を収録した作品集。
 『あなたの人生の物語』からなんと17年ぶりの作品集。表題作『息吹』がやはりとても良い。人類とは違う仕組みの生物、違う世界の描き方がこまやか、かつ彼らが行き着く先に悲しみが滲む。こういう仕組みの世界ならこうなるであろう、という発展のさせ方が面白い。また本作品集、最初に収録された『商人と~』をはじめ、運命の変えられなさとそれに相対する人間の姿を描いているように思った。小話的だがぞわりと怖い『予期される未来』、パラレルワールドによる幾種類もの人生が逆に自由の限界を感じさせる『不安は自由のめまい』。過去=運命は変えられないがその解釈を深めることはできるのではという諦念にも近い覚悟が、前作『あなたの人生の物語』に通じるものもあると思う。宗教が中心におかれた社会での科学的探究心の行く末を描く『オムファロス』が個人的なヒットだった。

息吹
テッド・チャン
早川書房
2019-12-04


あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)
テッド・チャン
早川書房
2003-09-30


『いま、息をしている言葉で。「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』

駒井稔著
 東西、ジャンルを問わず数々の古典文学を新訳版文庫としてリリースしてきた、「光文社古典新訳文庫」の創刊編集長だった著者による回想録。出版の世界にまだ「無頼」の空気があった入社当初から、古典の新訳の必要性を確信し、文庫創刊にこぎつけるまで。
 なんとなく、著者はずっと文芸畑の人だと思っていたので、結構下世話な記事も多い週刊宝石の編集者だったというのは意外。とは言え、この時代に学んだことは多々あるそうだ。先輩方が古典文学、哲学書をちゃんと読み通しているかというとそうでもないぞ(もちろん非常に文学哲学の素養のある人ばかりなんだけど)と気づいたことも、後の古典新訳企画に繋がっている。古典に対して読みにくいというイメージが強い(実際読みにくい)のは、中身の難解さもあるだろうが、そもそも翻訳文が日本語として読みにくい、咀嚼しきれていないのではないか。今の日本で古典の作者たちが書いたとしたらどのように書くのかをイメージする、というのがこの叢書の翻訳コンセプトになっていく。実際、古典新訳文庫はかなり読みやすい。これなら哲学書もいけるかも、という気にさせる(この「させる」という部分が大事なのだと思う)。そして、平易な文にすることと簡易化することは違うのだ。古典文学が現代に繋がっている、翻訳の歴史はイコール日本の近代史だという著者の確信が力強い。
 創刊、そして叢書を維持する為に編集者、翻訳者を始め出版社の営業や販売担当、そして書店や外部の編集者ら様々な人たちの尽力が見えて、翻訳書好きとしては胸が熱くなる。にもかかわらず、翻訳書だと「(元があるから)楽しやがって」みたいなことを言われるというのにはびっくりした。それとこれとは違うよね!
 古典新訳文庫は古典を読み切れなかった中高年を読者層に設定していたそうだが、実際には若い読者がたくさんついた。これは、文庫というフォーマット、豊富な解説文によるところが大きいのではないかと思う。書籍においてもフォーマット、価格帯は非常に大事だなと実感した。


翻訳と日本の近代 (岩波新書)
丸山 眞男
岩波書店
1998-10-20


『移動都市』

フィリップ・リーヴ著、安野玲訳
 60分戦争と呼ばれる化学兵器の応酬により文明が荒廃した世界。生き延びた都市は移動機能を備えるようになり、都市と都市が狩り合い食い合う、都市間自然淘汰主義が蔓延する。一方、犯移動都市同盟はテロ行為でそれに反発していた。移動都市ロンドンに住むギルド見習いのトムは、史学ギルド長で高名な探検家・歴史家であるヴァレンタインが、正体不明の少女ヘスターに襲われる所に出くわす。なりゆきでヘスターを助け、行動を共にすることになるが。
 都市が移動するというイメージがとにかく魅力的。しかし、都市と都市が食い合う弱肉強食の世界に、都市に住む人は誰も疑問を持たない、自分の都市が他の都市を捕獲すると拍手喝采という穏やかならぬ世界でもある。登場人物たちの価値観や方向性がわりとはっきりしており、その間でトムが揺れ動く。自力では資源を供給しきれずに小さい都市を食らって生き延びていくロンドンは帝国主義時代のそれを思わせる。今となっては過去の栄光(罪深くもあるが・・・)もいい所という感じだが。移動都市のおこぼれにあずかろうという怪しげな集団や、都市間を軽やかに行き来する飛空艇乗りたちなど、脇役に至るまで登場人物に活気がある。
 ロンドンはギルドによって運営されており、特に工学ギルドが力を持っている。史学ギルドは都市文明の礎となっているが、都市の強大化に力がそそがれるようになってからは蔑ろにされている。このあたり、実学が重視され本来の学問のあり方がおろそかになっている近年の日本(だけじゃないのかな?)とも重なって見えた。史学を捨てたロンドンはある方向に暴走し始める。とは言え、著者はどうも理系学問に対するヘイトが強いんじゃないかなと言う気がしなくもない(根っからの文学畑の人らしいので、自分のフィールドに対してあてこすりでもされた嫌な思い出があるんだろうか)。そんなに悪者扱いしなくてもなぁ。両方あってこその分明よ。

移動都市 (創元SF文庫)
フィリップ・リーヴ
東京創元社
2006-09-30


掠奪都市の黄金 (創元SF文庫)
フィリップ リーヴ
東京創元社
2007-12-12


『インド倶楽部の謎』

有栖川有栖著
 クラブ“マハラジャ”の経営者を始めとするインド好き7人から成る定期的な会食の場に、インドからの客人が招かれた。前世から死ぬ日まで、その人の運命全てが記されているというインドに伝わる予言の文書「アガスティアの葉」の読み手を呼び、7人のうち3人の運命を教えてもらおうというのだ。しかしこのイベントに立ち会った者が相次いで殺される。アガスティアの葉の預言は本物だったのか?臨床犯罪学者・火村英生と推理小説作家・有栖川有栖は死の謎を追う。
 神戸を舞台にしたお久しぶりの国名シリーズ。いつになくトラベルミステリ的な側面も強いが、これは著者の趣味なんだろうなぁ(笑)。刑事が電車とバスを乗り継いで辺鄙な温泉を訪ねるエピソード、作中で言及されているバスのダイヤを見る限り、自家用車で行った方がいくらか便利なのでは・・・とつい気になってしまった(とは言え、兵庫県からではちょっと大変かな)。
 近年の著者の作品は、「本格ミステリビンゴ」のコマを順次埋めるような意図で書かれているような印象がある。プロ野球選手がバラエティ番組で投球によるパネル落とし(碁盤の目状のパネルに狙い通りボールを当てて落としていくあれです)にも似ている。今回はこの手段とこの手段の組み合わせでやるぞ!という課題設定、更には本格ミステリ作家としてやれることには何が残っているか、というコマ埋めのようにも思える。個々の作品のクオリティというよりも(クオリティが低いというこではないです!いつも一定水準以上は維持していると思う)本格ミステ作家であることを全うしようとし続ける姿勢に頭が下がる。今回はある意味特殊ルール下における事件、かつ探偵側にはそのルールが開示されていないというパターンではないだろうか。職人の仕事だよなー。


マレー鉄道の謎 (講談社文庫)
有栖川 有栖
講談社
2005-05-13


ギャラリー
最新コメント
アーカイブ
記事検索
  • ライブドアブログ