3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

本題名あ行

『赤毛のアン』

ルーシー・モード・モンゴメリ著、村岡花子訳
 プリンス・エドワード島のグリン・ゲイブルスに暮らす兄妹・マシュウとマリラは、農作業を手伝わせるために孤児の男の子を引き取ろうと決める。知人に頼んで子供を連れてきてもらったものの、やってきたのは女の子だった。アン・シャーリーというその少女は空想好きで風変わりだったが、徐々にマリラとマシュウにとってかけがえのない存在になっていく。
 実は今までちゃんと通読したことがなかったのだが、こんなに面白かったのか!そしてアンの11歳から16歳までの成長過程を結構なスピードで綴っていく。空想好きでおしゃべり、テンションの上がり下がりが激しく時に非常に頑固なアンの言動はとにかく目まぐるしい。そこがちょっとうるさくもあるのだが、率直でものおじしない態度や「お話」が大好きな内面の豊かさが良い。赤毛とそばかすへのコンプレックスの強さや「膨らんだ袖」、美しさへの執着は当時としてもルッキズム強すぎない?という気がするが、年齢を重ねるにつれ執着が弱まっていく。単純に大人になっていくからというのもあるだろうが、周囲から一個人としての愛情を受けることで、自分は自分として容姿も含め肯定できるようになっていくのだと思う。とは言え、人並みに可愛い服を着たいという気持ちは自然だし、それなりの服を着られるようになってほっとしましたが…。町の世話役的で「世間」代表みたいなリンド夫人もアンの服装はあんまりだと思っていたというのにはちょっと笑ってしまった。
 アンの成長物語ではあるが、少女時代のユニークで自由なアンが、空想する頻度も落ち、上の空なこともあまりなくなり、地に足のついた女性になってしまうのはちょっと寂しい。ただ。一方でもう若くはないマリラとマシュウ、特にマリラが変化していく物語でもあって、大人になってから読むとむしろこちらの方が心を打つ。彼女が表に出さなかったユーモア(ユーモアがあるということは最初に示唆されるのだが)や愛情深さがにじみだしていくのだ。


赤毛のアン Blu-ray メモリアルボックス
槐柳二
バンダイビジュアル
2014-03-26


『おれの眼を撃った男は死んだ』

シャネル・ベンツ著、高山真由美訳
 迎えに来た兄によって叔父夫婦の元から助け出されたラヴィーニアだが、更に過酷な運命が待ち受ける(「よくある西部の物語」)。ヒッチハイクで実父の元に向かう「わたし」にはある目的と過去があった(「思いがけない出来事」)。西部劇の舞台のような南北戦争後の町、16世紀イギリス、現代のアメリカ、未来とも異世界ともつかないとある遺跡等、舞台がバラエティに富んでいる短編集。
 収録された作品の舞台は場所も時代も様々。西部劇そのもののような作品から、時代劇やSFまで、さまざまなジャンルにわたっているとも言える。語り口調、小説としての構造の仕掛けもまちまちだ。しかし不思議と統一感がある。全ての作品の根底にはこの世で生きる苦しみ、暴力と欲望とが流れていてハッピーエンドには程遠い。どの作品も常に傷口が開いて血を流しているような、読んでいる側を切りつけてくるような容赦のなさ。ただ、同時に非常に美しい瞬間がある。O.ヘンリー賞を受賞したという「よくある西部の物語」(コーマック・マッカーシーぽいと思う)のラストのは残酷で救いがないのだが、彼女の人生全てがこの一瞬で立ち上がってくるような密度を感じた。
 社会の底辺、隅っこで生きる人たちの生が描かれるが、特に女性として生きる苦しさ、選択肢のなさが抉ってくる。女性はだれかの妻、姉妹、娘、母、恋人であり独立した存在として扱われない。「死を悼む人々」はまさにそういう話で、主人公に認められている価値は、誰に所属する女か、ということだ。また寓話的な「アデラ」は独立した存在である女性が、世間の価値観によって引きずりおろされる話とも読める。
 収録作はすべて必読だが、「オリンダ・トマスの人生における非凡な出来事の奇妙な記録」は、アメリカの現状を踏まえると正に今読むタイミングなのではと思う。1838年に黒人女性が書いた手記という体の作品なのだが、当時のアメリカ南部の「進歩的な」白人の欺瞞や差別の無自覚さが時にユーモラスに醜悪に描かれている。そして黒人であり女性であることの自由のなさも。

おれの眼を撃った男は死んだ
シャネル・ベンツ
東京創元社
2020-05-20


血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)
コーマック・マッカーシー
扶桑社
2007-08-28





『オスロ警察殺人捜査課特別班 フクロウの囁き』

サムエル・ビョルク著、中谷友紀子訳
 敷き詰められた羽の上に奇妙な恰好で横たわる少女の死体が発見された。口には白いユリの花が押し込まれ、周囲にはろうそくが五芒星の形に並べられていた。加えて死ぬ前に虐待を受けていたことがわかった。捜査を始めた殺人捜査課特別班のムンクとミアは、ある養護院に着目するが。
 シリーズ2作目。相変わらず癖のない文章が読みやすく(これは翻訳の良さもあるのだろうが)、事件の展開の引きも強いのでするすると読めた。不気味な殺人現場という設定は前作同様だが、今回はミアもムンクも調子が悪そう。ミアは姉を失った喪失感・罪悪感から逃れられず酒と薬が手放せなくなっていく。前作で少し持ち直したと思っていたら、また逆戻りだ。刑事としての聡明さを知っているだけに、彼女が酒と薬でぼんやりとしている様は読者としてももどかしい。一方ムンクは妻への未練を断ち切れず、彼女とパートナーの姿を見て落ち込む。離婚して十数年たつのに未練を断ち切れないってなかなかのものですね…。彼らの不調をあざ笑うように、猟奇殺人の捜査は決め手を欠く。読者に対してはある程度情報が開示されているのでめぼしはつくのだが、ある妄執に基づいた価値観、そしてそれが提供するものに食いつく欲望がおぞましい。「普通の人」が安全圏から発している分、後者の方が恐ろしく思える。
 なお、ミアの身辺に異変の予兆があるので、自作が気になる。無事翻訳されるといいのだが…。

オスロ警察殺人捜査課特別班 フクロウの囁き (ディスカヴァー文庫)
サムエル・ビョルク
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2019-03-28



オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン (ディスカヴァー文庫)
サムエル・ビョルク
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2019-03-28




『うたうおばけ』

くどうれいん著
 「おばけ」になって歌う岬、失恋の「葬式」のために喪服姿でやってきたミオ、暗号好きなスズキ、振られる為に東京に来た著者を迎えてくれたタムさんとのどか。さまざまな「ともだち」がぞろぞろ登場するエッセイ集。
 「工藤さんって友達多そうっすよね」と言われて、げ、と思ってしまうという著者。友達という言葉が苦手、友達の多さが人間の価値だなんて安易なものさしだ!というわけで大変共感できるのだが、しかし本著を読んでいると著者はばっちりと友達が多いし、その友達を非常に大切にしており誠実であるように思える。友達ではなく「ともだち」。世間でよかろう美しかろうとされている関係とはちょっと違う、しかし得難い関係性。情が深いというよりも、相手の個性、あり方に対する尊重がお互いにあるのだと思う。それは友人でも恋人でも家族でも同じだ。「仲良く」と「尊重」は必ずしも一致しない。「みんな仲良く」である必要はないんだよな。
 それにしても、著者が結構な頻度で振られており、その振られ方に対するエネルギーがなんだかすごい。えっこんな強烈に悲しむようなことだったっけ?これが若さか…。

うたうおばけ
くどうれいん
書肆侃侃房
2020-04-29





『エラリイ・クイーン 推理の芸術』

フランシス・M・ネヴィンズ著、飯城勇三訳
 フレデリック・ダネイとマンフレッド・リーという従弟同士の作家ユニット、エラリイ・クイーン。1929年に『ローマ帽子の謎』を出版して以来、題名に国名を冠した探偵小説シリーズをヒットさせ、更にラジオ、映画、TVへ進出。またミステリ専門誌「EQMM」の創刊、アンソロジー編纂と活躍の場を広げた。クイーンのデビューから晩年までの変遷を追う評伝。
 ロジックに重きを置くダネイと、人物造形や光景のリアリティに重きを置くリー。決して常に仲がいいわけではない、むしろ激しい衝突が絶えなかった2人だが、ぶつかり合う部分があったからこそ成立した名作の数々。その過程が垣間見られる。国名シリーズばかりが有名だが、実は非常に多作、かつ凡作駄作も意外と多いことも再確認できた。短編を中編へ転用、みたいなリサイクル活動が目立つのも多作すぎたからか。クイーン名義で後に活躍する(あるいは一発屋)作家たちが執筆している(シオドア・スタージョンが『盤面の敵』を書いたのは知っていたが、こういうゴーストライター的な仕事も特に伏せられていない時代だったのかな。その辺の感覚も面白い)のをはじめ、アンソロジーの執筆陣にあの人やこの人がおりミステリファンには嬉しい。
 といっても、本作において2人の声を直接的に拾っている部分は案外少ない。本著のすごさはクイーンの仕事をほぼ全部、小説だけでなくアンソロジーや雑誌、特にラジオとテレビの仕事を網羅しているところだろう。音源や脚本が残っていないものも広範囲にカバーしており、かつ当時のキャスト情報や当時の視聴者の反応まで言及がある。エラリー役の俳優はなぜか私生活までエラリーなりきり傾向が出てしまうエピソードなどちょっとおかしい。映像化作品の評価は正直あまり高くないそうだが、見て見たかったな…。なお巻末には人名・事項索引と作品名索引、クイーン書誌も完備されており資料としての価値は高い。一応時系列順の構成なのだが話題があっちに行ったりこっちに行ったりして、少々散漫な印象はあった。でも密度は高くボリューム満点で正に圧巻。

エラリー・クイーン 推理の芸術
ネヴィンズ,フランシス・M.
国書刊行会
2016-11-28


九尾の猫〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
エラリイ・クイーン
早川書房
2015-08-21


『嘘と魔法(上、下)』

エルサ・モランテ著、北代美和子訳
 両親を早くに亡くし、養母に育てられたエリーザ。養母も亡くなり一人きりになった今、彼女は一族の秘密、祖父母、そして両親の秘められたロマンスを語り始める。
 大人になったエリーザが語る一族のストーリーは、熱烈な恋、実らぬ愛、不実と嫉妬等、強烈な感情の嵐が吹き荒れている。登場人物の誰しも方向性は違うが利己的・自分本位だ。彼らの声の大きさが強烈。熱烈な恋が描かれたラブロマンス大河ドラマではあるものの、その思いは往々にして一方通行だ。彼らが見ている相手の姿は思い込みにより脚色されており、自分の頭の中にいる相手に対してずっと呼びかけ続けているようなものだ。相手がどういう人物で何を考えどう行動しているのかということは、あまり想像していないように思える。だから思いの交歓、ハーモニーがあるのではなく、それぞれの声が大音量でばらばらに響いているという感じなのだ。成就する恋愛がない恋愛小説と言える。熱烈に恋愛をしているように見えるアンナとエドアルドであっても、その思いと立場は対等ではなく、お互いへの思いやりがあるとは言い難い。またアンナとフランチェスコのように、何かしら成就したような気配があっても時既に遅し。
 本作、エリーザの語りという構造になっており、語られるのはあくまで「エリーザによる一族の歴史」で、いわゆる信用できない語り手と言える。そしてエリーザが語る歴史の元になっているものが更に、ある作為をもって書かれたものなのだ。語りに二重のフィクション性があり、それが更に小説というフィクションの形をとっているという入れ子構造。登場人物たちの恋と同じく、エリーザが語るのは彼女の頭の中にだけある作りものなのかもしれないのだ。だからこそ読者にとっては面白く次は、次はどうなるのとページをめくり続ける。まさに嘘と魔法。

嘘と魔法 上 (須賀敦子の本棚)
モランテ,エルサ
河出書房新社
2018-12-18


嘘と魔法 下 (須賀敦子の本棚)
モランテ,エルサ
河出書房新社
2018-12-18



 

『赤い館の秘密』

A・A・ミルン著、山田順子訳
 とある田舎の屋敷で殺人事件が起きた。被害者は15年ぶりに館の主マークを訪ねてきた兄ロバート。第一発見者はマークの従弟で彼の仕事の手伝いをしているマシュー・ケイリーと、館に滞在中のウィリアム・ベヴァリーを訪ねてきたアントニー・ギリンガム。現場の状況からマークに容疑がかかるが、彼は姿をくらましたままだ。ギリンガムはベヴァリーを助手に事件を調べ始める。
 江戸川乱歩が探偵小説黄金時代のベスト10に入れている本作だが、読んでみて納得。正直舐めていましたすいません。予想以上にしっかり本格ミステリだった。その行動はそういうことか!というつじつまの合わせ方がちゃんとしている。難点は屋敷の間取りや建物の位置関係など、物理的な距離の表現がわかりにくいという所だろうか。どう頑張っても文章に即した間取りが書けなさそうなのだが…。
 田舎の屋敷での殺人、行方不明の容疑者、そしてスマートな名探偵と人のいいワトソン役。古典ミステリの王道みたいな布陣だ。ミルンは探偵と助手の造形はシャーロック・ホームズシリーズを意識したそうだが、ギリンガムとベヴァリーの方がわかりやすく仲が良い。お互いのいい所をちゃんとほめあうというツンのないデレのみの関係。ベヴァリーはギリンガムのことをちょっと持ち上げすぎな気もするけど、ギリンガムがベヴァリーのことを気にかけており彼の人間性をかっているということがはっきりしているのだ。2人のやりとりがほほえましい。そして関係性が気になる2人は実はもう一組いるのでその道の方は要注目だ。
 なお、巻末に著者による「『赤い館の秘密』によせて」という文章が収録されているが、最後の一文が胸を打つ。

赤い館の秘密【新訳版】 (創元推理文庫)
A・A・ミルン
東京創元社
2019-03-20


クマのプーさん全集―おはなしと詩
A.A.ミルン
岩波書店
1997-11-17


『オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン』

サムエル・ビョルク著、中谷友紀子訳
 オスロの森の中で、空中に吊られた6歳の少女の遺体が発見された。少女の首には「ひとり旅をしています」というタグがつけられていた。殺人捜査課特別班のリーダーに抜擢された刑事ホールゲン・ムルクは、有能だがある事件をきっかけに休職していたミア・クリューゲルを呼び戻し、捜査を開始する。
 猟奇的な連続児童殺人、過去の赤ん坊誘拐事件、不気味な新興宗教団体など、怪しい要素が次々と投入されていく。かなり盛りがいいのだが、特別捜査班の面々はチームワークと個々の力で乗り切っていき、展開はスピーディー。ムルクもミアも、プライベートでは色々と問題を抱えており、有能だが完璧なわけではない。しかし、頭の切れる者同士でフォローしあい、仲間を尊重している。警察官としての働き方がまともだ。何より、年齢や性別とは関係なく、ムンクとミアの間に仕事の仲間としての尊敬・尊重があるところにほっとした。同じ北欧ミステリでも先日読んだ『見習い警官殺し』(レイフ・GW. ペーション著)とは大違い(笑)!本作の方が事件がキャッチーでハリウッド映画的なケレンがあるのだが、そこをやりすぎない所がいい。翻訳も良いのか、リーダビリティは非常に高い。

オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン (ディスカヴァー文庫)
サムエル・ビョルク
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2019-03-28


オスロ警察殺人捜査課特別班 フクロウの囁き (ディスカヴァー文庫)
サムエル・ビョルク
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2019-03-28


『失われた女の子 ナポリの物語4』

エレナ・フェッランテ著、飯田亮介訳
 作家として成功し、夫ピエトロと別れ恋人ニーノとの生活を望むエレナは故郷ナポリに帰る。しかしニーノが妻と別れる気配はなく、エレナは不安に駆られていく。一方、距離を置いていた親友リラとの関係は、お互い妊娠したことでまた縮まっていく。そんな折、ある事件が起きる。
 2人の女性の大河ドラマ「ナポリの物語」完結編。終盤の方、かなりエピソードが詰め込まれているしシリーズスタート時の時代設定(ほぼ現代でエレナとリラは初老)に追いつかせる為に時間の飛躍が激しいように思った。エレナは作家として大成するが、それは本当に彼女自身が掴んだものだったのか、背後にリラがいたからこそで自分の中身はからっぽなのではと彼女が自身を疑い始める部分は少々そら恐ろしくもある。そんな疑問持ったら作家なんてやっていられないではないか。リラの存在はよかれあしかれ、エレナにとってはそれだけ大きいものだったのだ。少女時代のような片思いの友情ではなく、時に重荷のような存在としての親友。リラはなんでもできそうに見えたのに、何をしたいのか最後までわからないままだ。そのわからなさがエレナに呪いのように纏わりついており、また創作の源にもなっているように思えた。
 4巻目はエレナのニーノとの関係における葛藤、娘たちとの葛藤がインパクトあり読ませる。惚れた相手の難点や弱さに目をつぶり続けてしまうエレナの弱さというか、憧れの拗らせみたいなものが読者を苛立たせるだろうが、痛々しくもある。彼女は(のちに自覚するように)自分の小説の中では自立した女性、フェミニズム的な思想を描いているが、実生活では恋人の顔色を窺ってばかりで振り回されっぱなしだ。そこから自由になるには時間がかかるのだろう。エレナの場合は気付きのシチュエーションが最悪だけど…。本シリーズ、幸せな結婚生活というものが一切出てこず、その辺は結構シビアだ。別れた夫との関係が後年、子供たちが成長してくると好転する、ちゃんと「家族」になれるというあたりも面白い。ピエトロが親としてちゃんと成長しているっぽいのだ。

失われた女の子 (ナポリの物語 4)
フェッランテ,エレナ
早川書房
2019-12-19


逃れる者と留まる者 (ナポリの物語3)
エレナ フェッランテ
早川書房
2019-03-20


『アガサ・クリスティー完全攻略〔決定版〕』

霜月蒼著
 ミステリの女王といえばアガサ・クリスティー。ミステリ評論家でありながらクリスティーの作品を7作しか読んだことがなかった著者が、クリスティ作品100冊を読み込み評論するまさに「完全攻略」読本。
 私はクリスティ作品はそこそこ読んでいるつもりだったが、読んでいない作品がこんなにいっぱいあったのか!そして読んだはずの作品も全く内容を覚えていない!ということが本著を読んでわかりました。ネタバレにも配慮されているので、クリスティ初心者にも、そこそこ読んでいるよという人にも(皆さん私のように忘れっぽくはないだろうが)ブックガイドとしてお勧めできる。また、クリスティ作品の何が面白いのかということを、作品の数をこなすにつれて著者がだんだん掴んでくる過程が見え、そこも面白い。著者の読み手・評論家としての道筋が記されているのだ。本著内でも言及されているように、クリスティは決してトリックメイカーではなく、「ミステリとしてどう見せるか」という部分に長けてた作家なのだと思う。
 私はポアロよりもミス・マープルものの方が好きなのだが、著者のシリーズ内番付には納得。あれはやはり名作ですよ…。そしてミス・マープルはやっぱりかっこよかったんだなと改めて認識した。ポワロよりもクールなんだよね。また、私がクリスティの短編集の中で一番好きな『謎のクィン氏』が高評価でこれまたうれしい。あまりスポットがあたらない短編集ではあるが、お勧めです。


ポケットにライ麦を (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー
早川書房
2003-11-11


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