スイスとフランスに跨るレマン湖畔かた、アルプス山脈経由でニースに至る「大アルプス・ルート」。約720キロにわたる自転車観光ルートとして人気のこの道を横断するために、毎年6月末に60人近い自転車愛好家たちがやってくる。仕事をリタイアした後にこのコースに挑む自転車愛好家たちを追う、短編ドキュメンタリー。監督はギョーム・ブラック。
決して若くはない自転車愛好家たちにスポットを当てたドキュメンタリー。大アルプスルートは聞いただけでも過酷そうだし、実際に映像を見ると更に過酷そう。そんなルートをなぜ彼らは選ぶのかと不思議に思うが、好きだというのはそういうことだろうなぁ。ある「沼」にいる人たちのことは沼の外からはよくわからないけれども、その熱中、情熱に突き動かされる人たちを見ているのは面白いし、時に心を揺さぶられる。愛好者同士で一つのコミュニティになっている雰囲気もよかった。こういう、好きなものを媒介にゆるく繋がっている人間関係があると、心のバランスを保ちやすい。精神的にしんどい時の逃げ場になると思う。
自転車沼にいる人たちに対する監督の視線はやさしい。自転車にはまっていない人でも、自転車に乗っている時に感じる風邪や匂いの感じ、世界がどのように見えるのか、カメラが彼らに並走してとらえようとしているように思った。被写体が皆リラックスして、自然体で映し出されている。