12年間、精神病院に隔離されている少女モナ・リザ(チョン・ジョンソ)。赤い満月の夜、他人の肉体を操るという特殊能力を発揮し、自由を求めて施設から逃げ出す。彼女がたどり着いたのはニューオーリンズの街。そこでストリッパーのボニー・ベル(ケイト・ハドソン)を助けたことで、彼女の家に居候することになる。監督はアナ・リリー・アミールポアー。
モナ・リザとボニーが共闘するシスターフッド展開になるのかと思いきや、どうもそうはならない。一見2人は助け合っているがボニーの目的は金であり、対等な支え合い・連帯が成立しているわけではないのだ。しかし一方で、冒頭で靴をくれた女性や終盤でシートベルトの付け方を教えてくれる男性、何よりボニーの幼い息子のように、さして含みもなく彼女に親切にする人たちも登場する。人は欲深い一方で、特に理由もなく他人に親切にもする存在だ。前半でこれは絶対下心ありきの援助だろうと思われたDJが、予想外に本気で彼女と関わるのにはちょっと笑ってしまったのだが、こういう形の善意が世界には少しはあるのだ(と思いたい)という、作り手の優しさを感じた。雰囲気はダークな作品なのだが人間の在り方に対しては結構ポジティブなのだ。
モナ・リザはレオナルド・ダ・ヴィンチの名画からついたニックネームで、彼女には本名がある。しかしそれは結構後まで明かされないし一貫してモナ・リザと呼ばれる。ただ、彼女はモナ・リザのようには微笑まない。彼女はいわゆる美少女でも可愛い女でもなく、概ね無表情ないしはむすっとしている。周囲に愛想を見せたりおもねるようなところがない。いわゆる空気が読めない人なのだが、そこに魅力がある。彼女の特殊能力が彼女の為だけのものであるのと同様に、彼女の笑顔は彼女だけのものだ。だからラストの表情にぐっとくるのだ。