太陽のエージェント・クラエと、月のエージェント・ブルーオ。敵対している2人だが、この地を支配している巨人から森を守っているという謎の存在“ペルリンプス”を探すという共通の目的を持つ。2人は協力しあいペルリンプスを求めて森の奥へ進んでいく。脚本・編集・監督はアレ・アブレウ。
監督の前作『父を探して』は、カラフルで自由奔放なビジュアルとノスタルジーをはらむが現代社会に対する批評的な視線を含んだストーリーが印象深い作品だった。本作も映像表現の方向性はまた違うものの、色彩や質感の美しさ楽しさ、そして終盤で明らかになる世界の姿が胸に刺さってくる様は方向性が通じるものがある。場所によって色のトーンが変わっていき、全体的にやわらかいフォルムとポップな色彩でまとめられた美術がとても美しい。また、音楽がポップで楽しい、かつどことなくノスタルジックなもので耳に残る。
クラエとブルーオは動物のような子供のような可愛らしい外見で、声も可愛らしい。2人はそれぞれの世界のエージェントだが、自称有能なわりにたどたどしく、エージェントの仕事も能力のあり方も、お互いのライバル意識や意地の張り合いも、どこか子供のごっこ遊びのように思えた。子供向け作品だとするとそれもまあ順当…と思っていたら終盤でなるほど!と。彼らが何者でこの世界がどういう形になっているのか腑に落ちると同時に、彼らに課されているものの残酷さが刺さってくる。急に現実に迫ってくるのだ。しかし、彼らの存在は希望でもある。クラエとブルーノは共に「潜入」したのだから、もしかすると未来を変えられるのかもしれないのだ。