マイケル・マン、メグ・ガーディナー著、熊谷千寿訳
1988年シカゴ。ニール・マコーリー率いる強盗団はメキシコの麻薬カルテルの現金貯蔵庫を狙っていた。一方、シカゴ市警殺人課の刑事ヴィンセント・ハナはは高級住宅地を狙った連続強盗殺人事件を追っていた。そして7年後、LAでの銀行強盗事件で両者は交錯。ニールの仲間だったクリス・シハーリスは新しい名前と身分を手に入れメキシコへと逃れる。
マイケル・マン監督による1995年の映画『ヒート』の前日譚かつ続編として書かれた本作。冒頭で『ヒート』の内容をざっくり説明してくれるので映画を見ていなくても大丈夫だと思う。私は一応『ヒート』を見直してから本作を読んだのだが、さすがに映画の方は古さを感じてしまった。また、映画と比べるとクリスが大分スマートというか頭がいいので、えっこういう人だったの!?と意表を突かれた。映画だとギャンブル依存で妻との関係も崩壊していたので、本作で2人のなれそめを知ると、あのカップルには情熱的な過去があったのにこんなことになってしまうのかとやるせない。映画『ヒート』を挟む過去未来の時間軸が1冊に収録されているのだが、この構造だと何があって、何を経て、どこへ至るのか、という流れが時間を越えて徐々に見えてくる。同時に人の変わっていく部分、変われない部分が成功と悲劇の両方を引き起こしていくという哀感も漂う。ニールは同じようなことを繰り返していたのかと。長いスパンで描かれる物語の醍醐味はこういう所にあるのだろう。
一方で描かれる犯罪の種類の変化も時代の動きを感じさせ興味深かった。クリスは犯罪最先端へと移動していくのだが、これは本作の続きがあるんだろうな。とするとハナは旧世界の住民として取り残されていくのだろうかという予感も。