宮城県の烏野高校は春高バレー宮城県予選を勝ち上がり、兵庫県代表・稲荷崎高校を破って3回戦に進出。対戦相手の音駒高校はかつて烏野とライバル関係にあり、一時は交流が減ったものの再び合宿や練習試合で交流する好敵手になっていた。現メンバーでの公式戦初対決は白熱の試合となる。原作は古舘春一の大ヒット漫画。監督・脚本はテレビアニメ第1~3期の監督を務めた満仲勧。
TVシリーズと同様Production I.Gの製作作品だが、すっかりスポーツアニメは十八番になった印象(Production I.G製作のスポーツアニメとしては『風が強く吹いている』が原作からのアダプテーションという側面からも大傑作だから皆見てくれ…)だが、本作も例外ではなくTVシリーズから引き続き面白い。基本的に原作漫画に忠実で、競技内の動きをどう見せるかという方向でアニメーションならではの醍醐味を発揮している。カメラの動きはかなり挑戦的で(すごく作画が面倒くさそうで)唸った。また、いわゆる漫画的比喩、鳥かごとか鴉とネコの対比とかはアニメーションでやるとちょとダサいなと個人的には思うのだが、「漫画である」という部分を尊重した作品作りなのだと思う。堂々と漫画だよ!と言っていく方向というか。ただあくまでTVシリーズの続きという立ち位置の作品なので、本作単品で映画として見るには厳しい(映像面というよりもストーリーの流れ上)だろう。まあ本作見に来る人はまずTVシリーズないし原作漫画に触れてから来るだろうからそれでいいのだが。
原作を読んだ時にはそれほど心に響かなかったのだが、このエピソードは音駒高校の孤爪研磨(梶裕貴)と黒尾鉄朗(中村悠一)のエピソードという側面が強かったんだなと改めて感じた。本作を構成する上で改めてスポットが当たるように調整しているのだと思うが、こういう子たちだったんだなとようやく腑に落ちた感がある。研磨が自分にとってバレーボールとは何なのかようやくつかむ話だったのかなと。ひいては、研磨をバレーボールに誘った黒尾への呼応でもあったかと。それにしても黒尾、人間力あるな!ウザがらみしてくる先輩というだけではなかったのか。研磨に対しても月島に対してもコミュニケーションを諦めない粘り強さに頭が下がる。人を育てられる人としての造形がはっきりわかり、彼が報われる話でもあった。よかったね。