刑務所内の「大統領」ジェホ(ソル・ギョング)は若い受刑者ヒョンス(イム・シワン)と出会う。他人を信用しないジェホだったが、奇襲から救われたことでヒョンスに目をかけるようになり、出所後は共に犯罪組織を乗っ取ろうと計画を立てる。しかし、彼らにはそれぞれに秘密があった。監督はビョン・ションヒョン。
野望、欲望、愛と嫉妬に裏切りと感情がてんこもりの韓国ノワール。湿度と粘度が高い。これは欧米のノワールではあまり感じない質感だと思う。ジェホもヒョンスもタフで強さと力を目指す、実際にそれを持っているはずの人間なのに、お互い出会ってしまったことで弱さが生まれていく。それまでになかった感情が動かされるようになってしまうのだ。
オム・ファタールものとでも言えばいいのだろうか。上司と部下のようであり、兄弟のようでもあるジェホとヒョンスのの関係は「秘密」を介してどんどん濃密になっていくが、それは同時に、2人がそれまで所属していたものに背いていくということでもある。
2人は元々、それぞれ合いいれない世界の住人であり、それぞれの世界の中での出世なりなんなりを野望にしていたわけだが、お互いの存在により、元々所属していた世界から乖離していく。所属していた世界を裏切るか、お互いを裏切るか、あるいは全て裏切って1人生き延びるか。どちらにしろ、この先には泥沼しかない。お互いの「秘密」が明かされストーリーが二転三転するほどに、この先の選択肢は減り、出口が見えなくなっていく。どんどん息苦しくなっていき、緊張感が途切れない。
基本ジェホとヒョンスを含み超有能なクズみたいな人ばかり出てくるのだが、2人が突き進んでいくうち、当初モンスター的に見えた犯罪組織のメンバーにしろ、手段を選ばない警察にしろ、むしろ普通に見えてくる。姑息に見えた会長の甥が、むしろ一番まともで(多分警察よりもまともなんじゃ・・・)普通の人としての情緒を持っているように見えてくるのが面白い。