戸籍を持たず、一度も学校に通ったことがない少年タロウ(YOSHI)。いつもつるんでいる高校生のエージ(菅田将暉)とスギオ(伊賀太賀)と、半グレの吉岡(奥野瑛太)を襲い、一丁の拳銃を手に入れた。はしゃぐ3人だが、吉岡らが報復にやってくる。脚本・監督は大森立嗣。
タロウは明らかにネグレクトされた子供だし、エージは学校から見放され(体育教師の対応がひどい。えらいパワハラである)ている。スギオは2人に比べるとまだ「普通」の家庭らしく、父親も登場するが、彼を守るほど強くはない。スギオはタロウとエージの無軌道さにおびえるものの、最終的にはふらふらと吸い寄せられてしまう。
3人の少年たちの行動には、今よりも先のことを考えている様子が見受けられない。そこが見ていて落ち着かない、不安にさせられる一因でもあるだろう。彼らには「今」しかないのだ。彼らの言動の考えのなさ、即物性にはちょっとインパクトがあった。吉岡を襲うのはともかく、その先何をしたいのかがわからないし隠蔽する度胸も知恵もなく、結局自分たちの首を絞めるようなことになってしまう。暴力的だが、暴力がどのようなものなのか、何が暴力なのかという想像力がない(殴る、殺す、レイプみたいな発想だ)。銃一丁で無敵みたいな気分になって盛り上がるのもあからさまに子供っぽい。衝動ばかりが空回りするのだ。経済的な貧しさも苦しいが、想像力の貧しさ・知の貧しさもなかなか見ていてしんどいものだなと思った。
タロウがピザ配達のバイクにエンジンをかけるシーンが妙に心にひっかかった。エンジンをかけてはいるが、自分がバイクに乗って走るという段階になかなかならない。ようやくバイクに乗ってエンジンをかけると、今度はかからない。結局走り出す契機を逃してしまうのだ。