3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』

 夏休みに部活の研修旅行でヨーロッパに行くことになったピーター・パーカー(トム・ホランド)は、旅行中に片思いしているMJ(ゼンデイヤ)に告白しようと計画していた。しかしベネチアで水の怪物が出現。謎のヒーロー、ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)が危機を救うが、ピーターの前には元S.H.I.E.L.D長官のニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が現れる。ミステリオことベックは別の世界からやってきて、彼の世界を破壊した存在エレメンタルズがピーターたちの世界に出現したのだと言う。監督はジョン・ワッツ。
 夏休み前哨戦にぴったりな作品。ピーターはバカンスをフューリーたちに邪魔されてがっくりするわけだけど、見ている側としてバカンス気分、かつ青春映画の良い部分を味わえる、そして当然ヒーロー映画としての爽快感もある。
 ピーターは「親愛なる隣人」としての自分の立ち位置を前作で確かめた(だから今回、地元のチャリティーイベントにも出るわけだ)。ところが今回は『アベンジャーズ エンドゲーム』後の世界であり、スパイダーマンを含むヒーローたちが人類を救ったことが世界中に知られている。当然人々はスパイダーマンにもアベンジャーズに代わる世界のヒーローとしての活躍を期待するし、フューリーもまた、ヒーローとしての覚悟をピーターに要求する。意欲の空回りをいさめられた前作とは逆の展開だ。しかし今回、ピーターは正に夏休み気分だし好きな女の子は気になるしで、ごくごく普通のティーンエイジャーとしての側面が強く出ている。ヒーローとして困っている人を助けたいという気持ちと引っ張り合いになるのだ。
 ただ本作、ピーターに対して大人になれ!立派なヒーローになれ!と強いるのではなく、しかるべき大人たちが彼をサポートし、成長を見守っている。メイおばさんはもちろん、今回はハッピーが頼もしい。彼があるシーンでとてもうれしそうな顔をする。スタークとピーターが重なって見えたんだろうなとぐっときた。スタークはピーターのことを案じていたが、実はそんなに的確に保護者、指導者になれたわけではない。むしろ今回、彼が遺したものがピーターを導いていく。そしてスタークから遺産を受け取ったのはピーターだけではないのだ。ピーターの存在が、ハッピーにとってはスタークから受け継がれたものと言えるだろう。
 ただ、前作の敵にしろ今作の敵にしろ、スタークの負の遺産ともいえる。良くも悪くもスタークが残したものとどう向き合っていくかというのが、本シリーズの裏テーマ見たいになってしまっている気がした。そういう点で、スパイダーマンシリーズの敵ってちょっと他のマーベル作品とは質が違うように思う。人により意図せず生み出されたもの、人の営みの一部としての悪という側面が強い。今回の敵には、なるほどそうきたか!と唸った。非常に現代的だし、明らかにアベンジャーシリーズの敵とは意味合いが違う。次作は更に、戦うことの意味合いが変わってきそうだ。

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『スノー・ロワイヤル』

 スキーリゾート地キーホーに住む除雪作業員のネルズ・コックスマン(リーアム・ニーソン)は、模範市民賞を受賞するほど真面目な男。しかし一人息子が麻薬王バイキング(トム・ベイトマン)に殺され、復讐に乗り出す。監督はハンス・ペテル・モランド。
 モランド監督による『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』のセルフリメイク作品(元作品にかなり忠実だとのこと)だそうだが、なぜこれをわざわざリメイクした・・・。面白いが、珍妙な味わいがある。率直に言って変!基本的にふざけてはいないのだが、真顔でギャグを繰り出すようなところがある。
 息子を殺されて怒りに燃える男が主人公だし、近年は「悪い奴絶対殺すマン」として定着しているニーソンが主演なので、今回もリーアム無双なのかなと思っていたら、今回はそこまで無敵ではない。人を殴れば自分の拳はすりむけ、相手に引きずりまわされたりもする程度の生身感があるし、体力にも限界がある。そもそも戦闘のプロではないから色々危なっかしい。死体の処理もかなり大雑把で、手法も「クライムノベルで知った」というくらいの素人だ(大雑把な処理でも大丈夫なくらいの極寒地帯が舞台なので、そこも面白い)。不器用でどたばたした復讐劇として、当事者は大まじめなのに時々笑ってしまう。陰惨なのにどこか長閑でユーモアがある。登場人物が死ぬたびにちゃんと「死亡」字幕が表示され、更にその人の宗教的な背景がわかるマークも付けてくれる、拘るのそこ?という新設設計も味わい深い。
 ネルズにしろバイキングにしろ下っ端のギャングたちにしろ、登場人物が全員キャラ立ちしていて、悪党でも憎々しいと同時にどこか可愛らしさがある。親に似ず理性的でかしこいバイキングの息子や、バイキングの右腕的な部下の常識人ぶりがアクセントになっている。この部下については、後半であっそうか!という設定が明らかになり、それを知っちゃうとその後の行動もまあまあしょうがないよね・・・と納得。
 本作、何より除雪車その他の「働く自動車」映画としてとても楽しいので、クライマックスを楽しみにしてほしい。除雪車、運転したくなります。

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『スパイダーマン スパイダーバース』

 ブルックリンの名門私立高に編入したマイルス・モラレス(シャメイク・ムーア)はエリートばかりの校風に馴染めずにいた。本当はグラフィックアートの道に進みたいが、警官の父親は認めてくれない。ある日クモにかまれたことがきっかけで超人的な力を身に着けるが、コントロールすることができずにいた。そんな中、キングスピン(リーブ・シュレイバー)によって時空が歪められ、阻止しようとしたスパイダーマンが殺されてしまい、マイルスは現場を目撃する。更に時空のゆがみから異なる次元で活躍する様々なスパイダーマンたちがマイルスの世界にやってきた。マイルスはその中の一人、スパイダーマンことピーター・B・パーカー(ジェイク・ジョンソン)の助けを借りようとするが。監督はボブ・ペルシケッティ&ピーター・ラムジー&ロドニー・ロスマン。
 3DIMAX、字幕版で鑑賞。これは3DIMAXを推奨したい!とにかく映像が素晴らしく、3Dとの相性も非常にいい。今年を代表するアニメーション作品になると思う。画面の奥行、広がりを最大限活かした視界の広さと、その隅々まで構築されたビジュアルに圧倒された。色合いもビビッドで楽しい。本作、「漫画である」ことを強く意識した作りになっている。擬音のフォントが大文字で入るし、「スパイダーセンス」はちゃんとうねうね線(わかる人だけわかって・・・)で表現される。周囲の声が箱型の吹き出しで表現されたりもする。更に、全体的に印刷物風ないしはスクリーントーン的な細かいドットが入っていること、人物の影の部分は斜線が入っていることがクロースショットになるとわかるのだ。すごく手の込んだことをさらっと見せている。
 アニメーション表現の最先端でありながらアナログな表現法を踏まえているというハイブリッド感がとても面白い。登場人物の台詞にあるように「カトゥーンで何が悪い!」というわけだ。カトゥーンだからこそ、多次元世界から複数のスパイダーマンがやってくるという設定が生きている。別の次元だからキャラクタービジュアルの表現のされ方も違う。ピーターBとグウェンはマイルスの世界とほぼ同じだが、スパイダー・ノワールは紙のざらつきまで伝わってきそうな白黒漫画の人だし、ペニー・パーカーはより二次元的だし、スパイダー・ハムはまさに古典的カトゥーン。それらが同じ画面内で違和感なく共存しているというビジュアルのバランス感覚が素晴らしい。
 ストーリーは王道の少年の成長物語。彼に関わる大人、特に父親的存在がピーターBを始め、複数名おり、大人の多面的な姿が描かれているのもいい。ピーターBはだらしないが腐ってもスパイダーマンでやる時はやる。父親はマイルスをとても愛しているが、息子の成長と彼の愛情のあり方とがまだ摺りあわされておらず、関係がぎこちない。双方、気持ちはわかるけどそれはちょっと・・・的なやりとりに等身大の親子感があった。そして自由人に見えるクールな叔父はマイルスの憧れの存在だが、自由とクールは代償を伴う。
 学校で馴染めない、親ともちょっとぎこちないし自分がやりたいことを打ち明けられないマイルスの孤独感は、スパイダーマン(たち)の孤独に通じる。マイルスは一人で成長するのではなく、彼ら、そして他の世界のスパイダーマンたちの後押しがあって一歩進むことができる。
 一人で進むのではないという意味では、ピーターBも同様だろう。ヒーローをドロップアウトしやさぐれていた彼は、教え導かなくてはならないマイルスという存在に引っ張られ、スパイダーマンとして再び歩みだす。少年が成長するだけでなく、大人もまた少年に感化されて成長するのだ。

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『スカイスクレイパー』

 FBIの人質救出部隊のリーダーだったウィル・ソーヤー(ドウェイン・ジョンソン)は、ある事件で大怪我をし左足を失った。10年後、危機管理コンサルタントとして働くウィルは、香港に建設された高さ3500フィートの超高層ビル「ザ・パール」の本格稼働に向け、オーナーのジャオから安全管理チェックを依頼される。家族と共にザ・パールに滞在していたが、ある犯罪組織がビルに侵入していた。監督・脚本はローソン・マーシャル・サーバー。
 冒頭の立てこもり現場への突入シーンが、最近の大作映画にしては珍しいくらいに作りものっぽくてすごく気になってしまった・・・。ザ・パールの内部構造も、これ本当に自立できるの?とかなぜそこにコントロールパネル付けるの?とか突っ込みがいがありすぎる。まあ一貫して「細かいことは気にするな!」ってノリの映画だからそんなに気にはならないのだが。
 240階建てのビルが舞台で高所でのアクションが満載。高所恐怖症の人は楽しめるのだろうか。ウィルはそんなに高い所が得意という雰囲気でもない(嫌々やっている感がある)のだが、家族を救う為に止む無くビルに挑む。対して、ビルのオーナーであるジャオ(チン・ハン)のザ・パールに対する思い入れはちょっとどうかしている気がした。自分がオーナーだから当然と言えば当然なのかもしれないが、高層であることにそんなに拘る必要はないのでは・・・。ビルの維持だけで大赤字になりそうな気がするんだけど(実際コスト高くて、みたいなセリフはある)。彼がなぜ超高層ビルを建てようと思ったのかが気になってしまった。何か、すごく屈折したものがあるんじゃないかとわくわくしてしまった。
 ジョンソンは全く死にそうな雰囲気がないので、何をやっても安心感があるのだが、今回も同様。義足が大してハンデになっていない、むしろここぞというところで役に立っている!格闘戦においても寝技・絞め技の強さが強調されるだけで全然不自由な感じがしないんだよね・・・。本作の面白い所は、ウィルだけでなく妻も強いと言う所だろう。助けられるだけの存在ではなくそこそこ戦うし勝つ!強い!結構戦闘的なのだ。子供たちにしても、家族の関係がしっかりしていることが序盤できちんと表現され、信頼関係が揺らがないので安心感がある。家族映画としてもいいのだ。
 なお本作一番の功労者はダクトテープではないかと思う。『オデッセイ』(リドリー・スコット監督)なみのダクトテープ映画。ダクトテープ無双である。初めて見るパターンの使われ方に加え、いやいや冗談でしょー!ってパターンもあった。トム・クルーズでもやらなかったやつよそれは。

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『スターリンの葬送狂騒曲』

 1953年、粛清により国を支配していたソ連の独裁者スターリンが急死。次期最高権力者の座を狙い、側近だった政治委員フルシチョフ(スティーブ・ブシェミ)や副首相ベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)らは熾烈な争いを繰り広げる。監督はアーマンド・イヌアッチ。
 ソ連が舞台なのだが、全編英語作品。まさかブシェーミがフルシチョフを演じるとは・・・。本作、製作はイギリス。スターリンが英語で話し始めた時点でカクっと力が抜ける。映画ではよくあることだから別にいいのだが、妙にコントっぽい。しかしこのコントっぽさが本作の持ち味だろう。スターリンにしろその側近たちにしろばんばん粛清して国民を殺しまくっていたわけだし、本作中でも相当数の人が死ぬという大変深刻な状況なのだが、悲壮感がない。惨劇もいきすぎるとギャグに見えてくるという薄黒い笑いがある。
 独裁者がマイルールで国をがんじがらめにする、基本的なルールがめちゃくちゃになっているという現実がそもそもコントみたいな状況だから、それを更にコント化している感じだ。序盤のスターリンと側近たちのやりとりのノリは、ボス的先輩のいる体育会系部活の悪ノリっぽい感じもして実にバカバカしい。その腹の(物理的な)ぶつけ合いは何なんだよ!また、会議で忖度に忖度を重ねるので、最早会議ではない。空気の読みあいである。どこかの国でもよく見る光景、でもこういうやり方で国の行く末決められちゃたまらんよな!
 権力争いは激化し誰が誰をけり落としていくのか?という展開(と言っても映画見ている側は歴史として知っているわけだが)で、彼ら、少なくともフルシチョフとベリヤはスターリンが死んでラッキーと思っている。そんな中でも、スターリンの遺志や彼の思想は正しいという主張がちょくちょく出てくるあたりが面白い。一応同志は同志なのか。

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『スリー・ビルボード』

 アメリカ、ミズーリ州の田舎町で、少女がレイプされ殺される事件が起きた。母親のミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は犯人を特定できない警察に業を煮やし、抗議の為に町はずれに巨大な広告看板を設置。警察署長のウィロビー(ウッディ・ハレルソン)や巡査のディクソン(サム・ロックウェル)は反発を隠さず、町の住民とミルドレッドの間には深い溝が生まれていく。監督はマーティン・マクドナー。第74回ベネチア国際映画祭脚本賞受賞作。
 すごく面白い!のだが何がどう面白いのか説明するのがすごく難しい・・・。映画や小説のあらすじで、よく「思いもよらぬことに」という文の締め方を見るけど、本当にそういう感じだった。色々な伏線が絡まり合って見事な絵図を描くというのではなく、様々な線が並走していて勝手に色々な方向に走っていく感じだ。そして個々の出来事の関連だけではなく、個々の登場人物の心の中でも様々な線が並走し、時にこんがらかるのだ。
 ミルドレッドの悔しさや正義感は一見真っ当だが、それを表明する行動はかなり極端だ。しかし彼女の行為が極端になる背景には何があったのか、単に「娘が殺されて悔しい」以上の悔恨、自責の理由が見えてくる。一方、ミルドレッドと対立しているかに見えたウィロビーは基本的にまとも、いやまともすぎる(本作の中ではそのまともさがむしろ嘘くさく見えてきちゃうくらい)ような人で、彼は彼なりに尽力はしており、病気を抱えている不安もある。ただ、尽力も病気も犯人逮捕できないことの言い訳にはならない。それは当人もわかってはいるのだろうが。
 クレイジーというよりも始末に悪いのは巡査ディクソン(サム・ロックウェル)。ミルドレッドは「警察は黒人いじめばかりしていて事件を捜査しない」と言うが、その黒人いじめをしている筆頭が彼だ。バカが暇を持て余しかつ多少力を持つとろくなことがないということを体現しているような男で、思慮がないし差別的だしすぐかっとなる。単純にマッチョというよりも、母親離れ出来ず、コミックを手放せない子供のような人物だ。ウィロビーへの過剰な傾倒は子供が父親を求めているようでもあり、自覚のないセクシャリティの発露のようでもある。そしてある出来事によって、彼は予想外の一念発起をする。
 どの登場人物も造形が一様ではなく、多面的で矛盾をはらんでいる。ミルドレッドがジェームズ(ピーター・ディンクレイジ)に意図せず暴言を吐いてしまうシーンにははっとした。フラットなつもりでいても、何かの拍子にこういう視線が出てしまう。反対に、入院中のウェルビー(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)がある人物に対して行う行為には、理性によるぎりぎりの思いやりを見た。怒りが消えたわけでも許したわけでもないが、意思の力で抑えることはできる。このシーン、ジョーンズの演技もとてもよかった。ほんとうにぎりぎり、ウェルビーが自分にとっての人としての一線を保つ為に懸命だということが伝わるのだ。作中で吹き荒れる怒りや理不尽さに対して、ささやかながら一つのカウンターになっていたと思う。

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『スターウォーズ 最期のジェダイ』

 伝説のジェダイであるルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)の元に辿りついたレイ(デイジー・リドリー)。ファーストオーダー、そしてフォースを使えるカイロ・レン(アダム・ドライバー)に対抗するべく、彼にレジスタンスへの協力を求めるが、ルークは拒む。一方レイア(キャリー・フィッシャー)率いるレジスタンスは、ファーストオーダーの猛攻にさらされていた。ポー(オスカー・アイザック)とフィン(ジョン・ボイエガ)は新たなミッションに挑む。監督はライアン・ジョンソン。
 吹替え版で見たが、悪くない。むしろ、私にとってのスターウォーズは吹替え版のイメージが強い(よくよく考えるとエピソード4,5,6は字幕で見たことがない・・・日本語で喋るルークしか知らないわ)ので、違和感なく馴染んだ。あざとくかわいいキャラでくすぐり入れやがって・・・と若干イラっとしていたポーグたちも、チューイとの攻防含め悪くない。可愛いんだけど、瞳の中に虚無があるというか、そこはかとない邪悪さを感じるのは私だけだろうか。
 2時間越えの長尺で、スターウォーズにさほど思い入れがない身としては間が持つのかちょっと心配だったのだが、意外と飽きずにテンポがいい。今回はレイのパートとフィンたちレジスタンス、そしてファーストオーダー側のおおよそ3パートが平行して進行する。作品1本通して大きなストーリーがあるというよりも、中規模のエピソードを団子状に回収していくような構成なので、正直構成の妙があるとは言いづらいし、展開上、色々つっこみたくなるところはある(場面移動の動線がちょっと無駄じゃないかなというか・・・そこに舞台集中させる必要あります?って箇所がある)。レジスタンスの戦略の上手くいかなさが、状況の困難さというよりも戦略の杜撰さに見えてしまうのも痛い。しかし、1エピソードごとに盛り上げて回収、ということを小刻みにやっていくので、長尺でのダイナミズムや全体としての話の整合性には乏しいかもしれないが、飽きずに見られた。
 スターウォーズはエピソード6まで父殺しの物語を繰り返してきたが、前作今作と、そこは、もうぼちぼちいいんじゃないかな?巨悪とか、それいります?というモードになってきたのでは(ルーカスの手を離れたのが大きいのかもしれないけど・・・)。ないしは父殺しのウェイトがそれほど高くなく、ちゃっちゃとやっちゃって次の段階に移りたいということだろうか。えっそこもう処理しちゃうの?!とびっくりした。
 今回、「次の段階に移りたい」という点では、これまでとは大分大きな変化がある。ここが旧来のファンにとっては受け入れがたい所なのだろうが、個人的にはすごくいいなと思った。いわゆる選ばれし人たちの物語ではないという方向に舵を切っているのだ。最初からヒーローな人はいないし、血筋によって英雄・傑物になるわけではない。そもそも、英雄という存在すら怪しいのでは。英雄的な行為の種子は様々な名もなき人の中にあって、きっかけがあればそこかしこで芽吹くかもしれない。終盤の「少年」はそういうことじゃないかなと。フィンもレイも、たまたま主人公なんだと思う。特にフィンの「何者でもなさ」は新鮮ですらある。
  今回、レイもフィンも厳しい環境で育ってきたにしては他人の話を信じすぎというか、単純すぎる気がしたが、2人とも人間関係が乏しくて人の心の機微があんまりわからないということなのかなー。特にレイは同じ感覚を共有できる人って今まで全くいなかったろうから、通じ合うものがあるとわかると信用しちゃうんだろうな。





『スイス・アーミー・マン』

 無人島に漂着したハンク(ポール・ダノ)は絶望して命を絶とうとしていた。その時、波打ち際に男が打ち上げられているのに気づく。男は既に息絶えていたが、死体からガスが出ており動力源になるとに気付いたハンクは、死体をメニー(ダニエル・ラドクリフ)と呼び、共に「故郷」に帰ろうとサバイバルを開始する。監督はダニエル・シャイナート&ダニエル。クワン。
 この題名どういうことなの?邦題かと思ったら原題そのままなの?と思っていたらなるほどそういうことか・・・。文字通り「万能死体」なのだ。突飛なアイディアを思いつくのはもちろんだが、それをちゃんと映像として成立させる、俳優にちゃんと演じさせるという所に呆れたというか感心したというか・・・。予告編の段階でかなりどうかしているのだが、本編がそれを余裕で越えてくる所にすさまじさを感じる。普通、あの予告編だったら一番いい部分使っちゃったんだなって思うじゃん!序の口だった!ラドクリフの死体演技がとにかく素晴らしく、この人間違いなく上手い!(にしてもなぜこんな役を!)と納得させられる。アイディア一発勝負と思いきや、人生といかに向き合うかという話にまで推し進めている。力技ではあるがイマジネーションがさく裂している作品だ。
 ハンクは遭難して孤独の為に狂いそうになる。しかし、無人島で一人きりになる前から、彼は孤独だった。メニーという友人(ハンクの妄想に過ぎないようにも見えるが)を得て初めて、ハンクは自分の孤独さ、誰かと親密な関係を持ちたい、世間一般で言うような「人生を謳歌」するような体験をしたいという欲求に気付いていく。彼はメニーに人生ってこういうものだと話す内容は、実の所自分がそのような人生を送れていなかった、本当はそういう人生に挑戦してみたいんだという願望を持っていたということに他ならない。ハンクは故郷を目指すことで、あったかもしれない、これからありうる人生を掴もうとしているのだ。
 しかしそれに冷や水がかけられる。ハンクとメニーの友情も憧れも、傍から見たら狂気の沙汰であり、ある人にとっては恐怖に他ならない。この展開によりリアリティラインの設定が大分曖昧・混乱気味になっているので、映画全体の構成としてはどうなのかなとは思ったが、こういう展開にしたい、しないとならないという監督の意図もよくわかる。わかるだけに、非常に痛切だった。「やってみたかった人生」をたまたま出来なかった(機会があればできる)人もいるけど、そもそもできない人、そういう人生に縁のない人がいる。そして、そういう人生に縁がなくても、周囲から変人扱いされても、幸せな暮らしというものもやはりあるのだろう。ラストは、世間では理解されないだろうけど、でも幸せだったんだよ!というハンクとメニーの叫びのように見えるのだ。

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『スクランブル』

 高級クラシックカー専門の強盗、アンドリュー・フォスター(スコット・イーストウッド)とギャレット・フォスター(フレディ・ソープ)のフォスター兄弟。オークションで落札された37年型ブガッティを盗み出すが、落札者であるマフィアのボス・モリエールにつかまってしまう。モリエールは、敵対するマフィア・クレンプが所有する62年型フェラーリ250GTOを1週間で盗めば兄弟を見逃すと条件を出してきた。監督はアントニオ・ネグレ。
 ストーリーの密度はそんなに高くはなく、かつ脚本がスムースでない印象。伏線の回収に失敗しているのか、単に行き当たりばったりなのか判断に困る所が多々あった。前フリがなさすぎて後出しじゃんけんみたいに見えたり、そもそも時系列的につじつま合わなかったりするんだよな・・・。アクション部分以外のシーンのつなぎ方がなんとなくぎこちなく、流れが悪いのも気になった。なぜこの部分でこんなドヤ顔ショット?みたいな気分になるのだ。
 とは言え、気を抜いてのんびり見るにはちょうどいい塩梅。当たりの時の「午後のロードショー」感とでも言うか、気負わない楽しさがあった。別に、常に傑作名作映画を観たいわけじゃないもんね。
 何より、本作では実際に走り、カーチェイスをするクラシックカー(ブガッティはレプリカ、フェラーリ250GTOはリクリエーションモデルだそうだが、その他は本物を借りてきているそうだ)を見ることができる。車に詳しくなくてもフォルムの美しさは目に楽しいし、車に詳しい人ならなおさら面白いだろう。車が宙を舞ったり大回転したり次々にクラッシュするような派手さはないが、本作のような「走り」を見せるのが本来のカーアクションだよなぁ。舞台のマルセイユが風光明媚で、そこを華やかなクラシックカーが走っていくので実に絵になる。車を大切にしているカーアクション映画と言えると思う。登場人物のキャラクターはそんなにインパクトないのだが、それでいいのだ。

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『スパイダーマン ホームカミング』

 15歳の高校生ピーター・パーカー(トム・ホランド)はクモのような特殊能力を持ち、スパイダーマンとしてご近所の平和を守っていた。アイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)から特性のスーツをもらい、ベルリンでアベンジャーズ同士の闘いに参加したピーターは、自分もアベンジャーズの一員になれると期待するが、トニーはピーターを子ども扱いして諌める。彼に認められたいピーターは、スターク社を敵視する謎の武器商人バルチャー(マイケル・キートン)を一人で追い始める。監督はジョン・ワッツ。
  私はサム・ライミ監督によるスパイダーマン三部作(ピーター役はトビー・マグワイヤ)が大好きなのだが、本作はそれとはまた違った、非常にティーンエイジャーらしいスパイダーマンで、これはこれですごく楽しかった。実際ピーターの設定年齢は下がっているのだが、言動が実に年相応。頭はいいのに思慮が足りなくて、やる気が空回りし失敗する(だがへこたれない)。注目されたいが自信がない、何者かになりたいが何者になれるのかわからない、誰かに認めてもらいたくてしょうがないというエネルギーが溢れている。ピーターは学校での自分はダサい奴で、スパイダーマンとしての力がなくなったら何もなくなると思っている。しかし実の所、彼の頭の良さは同級生も認める位には際立っており、これだけでも将来有望と言えるだろう。親友だっているし、両親はいないがメイおばさん(マリサ・トメイ)から深く愛されている。スパイダーマン部分なくてもアドバンテージ高いじゃん!と客観的には見える。これが必ずしも自己評価に繋がらない、自分を客観視できていないところがティーンっぽいし、学園ものっぽいなぁと思った。学校でのヒエラルキーって、勉強のでき具合と必ずしも比例しないもんね・・・。まずはルックスがそれなりでコミュニケーション能力高い人が有利だからなぁ・・・。
 スパイダーマンが活躍するのは「地元」であり、「隣人としてのヒーロー」というコンセプトであることが、最後まで一貫している。ピーターの最後の選択は、そういうことなのだ。これはアイアンマンに対するカウンターにもなっており、アベンジャーズシリーズと隣接しつつもちょっとスタンスが異なる作品なんだなとわかる。アイアンマン=スタークやソーは多分、弱い者・持たざる者に寄り添うことは出来ない(何しろ2人とも「持ってる」状態しか経験してないからな・・・)。本作の敵役であるバルチャーはスターク(が象徴・所属するもの)への強い反感・敵意を抱いているが、ピーターはむしろバルチャーと同じ側、市井の人間の側で生きてきた存在だ。だからこその闘いの結末ということだろう。スパイダーマンは彼の「隣人」でもあるのだ。
 今回、スパイダーマンのお目付け役、保護者役的なアイアンマン=スタークだが、裏側から見るとスタークが父親をやろうとする(が頓挫する)物語にも見える。スタークの大人として振舞い、勢いづくピーターを自重させようとする行動は概ね妥当ではあるのだが、どうも扱いあぐねている感が否めない。元々、スタークの対人スキルはあまり高くないということはアイアンマンシリーズで露呈しているが、年少者の振る舞い方のモデルが頭の中にない人なんだろうなと。逆に、相手が子供ではないと認識すればもっと適切な距離の取り方が出来るのかな。

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