孤児だったところを義父母に引き取られた喬峯(ドニー・イェン)は成長するにつれ武術の才能を発揮し、武林最強の技「降龍十八掌」を会得。丐幇(かいほう)の幇主として尊敬されるようになる。しかしある日、副幇・馬大元殺しの濡れ衣を着せられてしまう。さらに漢民族ではなく契丹人であるという出自を記した文書が見つかり、丐幇を追放される。喬峯は自分を陥れた犯人、そして自身の出生の真実を探る為旅に出る。しかし彼を更に陥れようとする計画が動いていた。監督・主演はドニー・イェン。
香港を代表する武侠小説家・金庸の長編小説「天龍八部」が原作。原作の4人の主人公のうちの1人が喬峯(きょうほう)だそうだ。私は武侠小説については全く疎いのだが、映画化された本作を見る限り、中国では一般的な知識としてこの話が知られているのかな?という印象を受けた。日本で言ったら歌舞伎の演目みたいな感じで、正確な細部は知らなくてもキャラクターと大まかなお話、名場面は割と知られているというような。というのも、本作、映画を見る側が既にこの話を知っているという体で作られているような印象を受けたからだ。ストーリーの流れがいきなり飛躍したり、登場人物の設定・背景の説明がざっくり省略されていたりと、前知識がないとこれは戸惑うのでは?という作りなのだ。脚本が下手というよりも、「皆さんご承知の通り~」というような身振りに思えた。ここは原作の名場面なんだろうなというシーンはがっつり作りこんでいるので、決して雑に作っているから話の飛躍が多いというわけではないのでは。武侠小説の知識ゼロの人間が見るものでもなかったかな…。
アクションは華やかで見栄えがするし(さすがにドニー・イェンの若作りがすぎるのではという気はしたが)、何よりセットが豪華!予算が潤沢にあることが一目でわかるリッチな作り。ビジュアル的には美しいし楽しい。やはり予算があるって娯楽大作にとっては大事なんだな…。