ブロードウェーの「元」スター・ディーディー(メリル・ストリープ)とバリー(ジェームズ・コーデン)は新作が大コケし窮地に立たされていた。原因は2人のイメージがナルシスト、エゴイストで好感度が最悪だからだという。そんな折、インディアナ州の田舎町に住む高校生エマ(ジョー・エレン・ペルマン)がガールフレンドとプロムに出たいと願っているが、PTAに猛反対されたというニュースを知る。ディーディーたちはエマを助けてイメージアップを図ろうと田舎町に向かう。監督はライアン・マーフィー。
エマの暮らす田舎町では、学校やモールにいる人たちはそこそこ他民族なのだが、ことセクシャリティに関してはものすごく保守的。カミングアウトしたエマは両親に家から追い出され、校内の味方は校長(キーガン=マイケル・キー)のみ。ガールフレンドのアリッサ(アリアナ・デボース)も生徒会長という立場上、2人の関係を秘密にしており表立ってかばうことができない。今時「同性同士のカップルはプロム禁止」なんて言ったら大炎上しそうなのに大丈夫?!と逆に心配になるPTAの硬直ぶりだ。そんな超保守的な土地にゲイのアイコン的なディーディーや「100%ゲイ」だというバリーが乗り込んでくるので、文化間のギャップが激しい。そのギャップを埋めていく、というより田舎の偏見を打開していく話だ。自身も自分のセクシャリティー故に田舎を飛び出してきたバリーのエマに対する思いやりや、彼のプロムへの思いが昇華される過程にはぐっときた。またちょっとマヌケなキャラだったトレント(アンドリュー・ラネルズ)が地元の価値観(やはりキリスト教強し…)を逆手にとって高校生たちの視野を開いていく様も意外性がある、かつやはり若い方が頭柔らかいよね、と思わせるいいナンバーだった。
ただ、ゲイのカップルがプロムへ向かうという現代的なストーリー。だが、その現代性とプロムというイベントがアンマッチな気がした。プロムに行かなくては、という部分は旧来の価値観に乗っかっているのだ。そんな排他的なイベントなんて粉砕するぜ!という方向にはいかない。元々あるものを色々な人が享受できるように随時ブラッシュアップしていく、という姿勢は社会の構成員としては正しいのだろうが、個人的にはつまらないと思う。そこから脱出しちゃうという選択肢はないのかなと。『ブックスマート』見た時も同じことを思った。ベースの価値観はあんまり変わらないんだなと。プロムは異性にしろ同性にしろカップル文化の産物なので、その点は非常に保守的だと思うんだけど…。一人でいるという選択肢はないんだよなと。