3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

『恋は雨上がりのように』

 怪我によって陸上部選手として活躍できずにいた高校生・橘あきら(小松菜奈)は、雨宿りに入ったファミレスで店長の近藤正己(大泉洋)と出会ったことがきっかけで、そのファミレスでアルバイトを始めた。あきらは近藤への恋心を募らせるが、45歳離婚歴あり子供ありの近藤はその想いに戸惑う。原作は眉月じゅんの同名漫画、監督は永井聡。
 漫画原作だからなのか監督のテイストなのか、漫画的なコミカル、誇張された表現が度々見られるのだが、本作の場合はそれがミスマッチだったように思う。全体の構成や台詞も、もっと映画という媒体に寄せた方がよかったんじゃないかなと、少々勿体ない気がする。映画には映画としての表現方法があるので、漫画やアニメ、あるいはTVドラマの見せ方にそんなに近づけなくてもいいんだけどな。
 あきらの店長に対する想いは恋だが、近藤は(心揺れることはあっても)あきらに恋をしているわけではないだろう。あきらのことを好ましく、まぶしく思うことはあっても、それは本人が言及するように、自分が若い頃に抱いていた(そして本当は今も抱いている)情熱を思い出させる、媒介のようなものだ。恋愛物語としてはあきら側に大分寄せており、より青春映画のテイストが強まっているように思った。
 青春映画として悪くないなと思えた要因の一つは、あきらの同級生や後輩役の俳優たちが好演していたということもある。あきらの幼馴染で陸上部の同期でもあるはるかを演じる清野菜名は、前半はちょっと演技がぎこちないのだが、夏祭りのあたりからぐっと良くなる。近藤と話しているあきらの姿を見た時の表情や、その後の思いの吐露等、すごく巧みな演技というわけではないが心情がこもっている感じ。他校の陸上選手であきらと競いたいと願うみずき役の山本舞華も、素直さとふてぶてしさが同居しているような表情が良かった。
 キャスティングの妙としては、やはり大泉の安定感が大きいだろう。高校生がギリで好きになりそう、かつ未成年に手を出さなそうという信頼感。近藤の大学の同期で人気作家の九条ちひろ役に戸次重幸を起用しているあたりは確実に双方の古参ファンを狙っているのだろうが、色々な意味でもにゃもにゃしますね・・・。


『GODZILLA 決戦機動増殖都市』

 ゴジラから地球を取り戻すべく、決死の戦いに挑んだハルオ(宮野真守)ら人類だったが、地中から現れた真のゴジラに敗退する。仲間とはぐれ負傷したハルオは、フツアと呼ばれる原住民の少女ミアナ(小澤亜李)に助けられる。フツアはゴジラから逃れ、地下で生活することで進化し生き延びてきたのだ。彼らが持つナノメタルは、21世紀に対ゴジラ兵器として開発されたメカゴジラに使用されていたものと判明。メカゴジラの開発プラントがまだ残っていると知ったハルオたちは再びゴジラに挑む。監督は静野孔文&瀬下寛之。ストーリー原案・脚本は虚淵玄。
 『GODZILLA』3部作の2作目。前回から直接ストーリーは続いており、作中での前回振り返り等はないので、3作続けて見ることが前提になっている。今シリーズのゴジラはかなり巨大化、かつでたらめにエネルギーに満ちているので、勝てる気が全然しない。むしろハルオはよく勝とうと思ったな!広げた風呂敷を畳めるのか心配になってくるくらいなので、ちょっと強さをインフレ化させすぎなのではないかという気もする。それに今回明かされる地表の生物の状況からすると、地球を再び人類が暮らせる 環境に戻すのってまあ無理なんじゃないかと思えてくる。
前作にしろ今作にしろ、ハルオが演説により仲間を扇動してゴジラと対決するが、という展開が見られるのだが、ハルオにそれほどカリスマがあるようには見えないのが痛い。そんなに頭良さそうにも見えないし、リーダーシップに優れているという感じでもない。ゴジラへの怨念で大分クレイジーになっているなというくらいだ。演説にしても、この程度の言葉で扇動される?だとしたらゴジラ甘く見すぎでない?という気も。ハルオが他人のもくろみに上手いこと乗せられてるんじゃないかなというふうに見えてしまう。実際どうなのかは次作で明らかになるんだろうが。
 なお、本作中では他のスター怪獣の存在も示唆されるし(実際に登場するかどうかはわからないが、双子の巫女がいるってことはアレだよな)、次作で登場する怪獣ははっきり提示される。エンドロールは最後までどうぞ。


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長谷川博己
東宝
2017-03-22


『孤狼の血』

 昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島、呉原。地元の暴力団・尾谷組と、広島から進出してきた五十子会系の加古村組の抗争がくすぶり始めていた。そんな折、加古村組のフロント企業である金融会社の会計係が失踪する。所轄署の若手刑事・日岡秀一(松坂桃李)はベテランの大上章吾(役所広司)と組まされる。暴力団との癒着が噂される大上の強引かつ型破りな捜査に日岡は翻弄される。しかし失踪事件をきっかけに、尾谷組と加古村組の抗争は激化する一方だった。原作は柚月裕子の同名小説。監督は白石和彌。
 原作は警察小説×『仁義なき戦い』と評されたそうで、映画化された本作を見るとなるほどと頷ける。ただ『仁義~』と決定的に色合いが違うのが、本作にはたぎるような熱さや爽快感はなく、泥沼が広がるばかりだという所ではないだろうか。昭和感を全面に出し(美術はすごく頑張っている)つつも、ヤクザ映画を爽快なものとしては描けない所が、今の映画なんだろうなと思う。
 ヤクザ映画でもあり、警察映画でもある。と同時に、どちらでもないように見える、それこそ大上が言うような「綱渡り」であるところが面白い。綱渡りをしている人の生き様を斜めから映すような視点があると思う。綱渡りを永遠に続けることは出来ず、いつか落下することは決まっている。なので、どうにも不吉でハッピーエンドの可能性が微塵も感じられない。生々しい暴力(暴力行為そのものというよりその結果を見せるところは上手いなと思った)描写や欲にまみれたしのぎ合いよりも、その不吉さ、出口の見えなさの方が精神的には堪える。
 松坂桃李が実にちゃんと俳優然としているので、何だかびっくりした。人間、成長するものなんだな・・・!また若手以外でも、一之瀬役の江口洋介や、野崎役の竹野内豊には、こういう感じに仕上がったかー!という新鮮さがある。それぞれある時代を代表するイケメン俳優だった(いや今も全然かっこいいけど)のが、こういう役柄も演じるようになったんだなと。特に江口の色気は大変よかった。その一方で、日本映画におけるピエール瀧の使い方がほぼ固定されてきたのにもびっくり。それこそ、まさかこういう存在になるとは思っていなかったもんね・・・。
 なお本作、最も昭和感を感じたのは女性たちの配置と見せ方。当時のこの世界ではこういう形でしか女性が存在出来なかったということなのかもしれないが、そこまで踏襲しなくてもなぁとはちょっと思う。

孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子
KADOKAWA
2017-08-25


『心と体と』

 ブタペスト郊外の食肉処理所で管理職として働くエンドレ(ゲーザ・モルチャーニ)。ある日、代理職員として若い女性マーリア(アレクサンドラ・ボルベーイ)が赴任してきた。対人関係が苦手で周囲から浮いている彼女を、エンドレは何かと気に掛ける。ふとしたことから、2人は自分が鹿になり森を散策しているという同じ夢を見ていたことが分かり、急接近していく。監督はエニェディ・イルディコー。2017年、第67回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作。
 本作がベルリンで金熊賞を獲ったというのは少々意外だった。あまり賞レースに絡んでこなさそうな雰囲気なのだ。こじんまりとしており、プライベートな雰囲気。夢を巡るストーリーだが、2人が起きているシーンもどこか夢のようでもある。映像がとても美しかった。食肉処理所が舞台なのでそのものずばり屠畜としての血肉の映像が出てくるのだが、あまり生々しくない。
 エンドレもマーリアも、自身の心と体の間に距離感があり、思いのままには振舞えない。マーリアのコミュニケーション下手さ、振る舞いのぎこちなさは見た通りで、他者に対する警戒心からも、周囲からなかなか理解されなずに生きてきたのだろうことが見て取れる。一方、エンドレは一見人当たりが良くそつなく見えるが、片手が不自由で動かない。マーリアとはまた違った形で、彼も心に体が沿っていない部分があるのだ。不自由さ・ぎこちなさを補完するために2人の夢があるように思えた。
 マーリアとエンドレは同じ夢をきっかけに、目が覚めている状態でも交流するようになる。しかし、夢の中では心と体は一致しているが、現実では思うようにはいかず、2人とも相手への関わり方を掴みあぐねる。それでも、自分が他人と何かを共有できると知ったマーリアの高揚感にははっとさせられた。彼女の率直すぎるアプローチは奇異の目で見られるのだが、そういう行動に出てしまう気持ちもわかるのだ。
 マーリアが心と体をコントロールしようとする様、双方を沿わせようと試行錯誤する様はユーモラスにも見え、実際、上映中にも客席から笑い声が生じていた。でも個人的には彼女の真摯さ、生真面目さが突き刺さり笑うどころではなかった。マーリアにしてみたら、笑われたらすごく傷つくだろうなと思ってしまう。エンドレは彼女を笑わないしバカにしない。本作を見る前、若い女性とかなり年上の男性という組み合わせに(悪い意味での)ひっかかりを感じるかと少々心配だったのだが、平気だった。エンドレがマーリアと対等に接していることに加え、年齢が2人の関係におけるアドバンテージになっていないからだろう。

夢違 (角川文庫)
恩田 陸
KADOKAWA/角川書店
2014-02-25


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モーニカ・バルシャイ
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2016-06-02



『コンフィデンシャル 共助』

 北朝鮮の偽札工場から印刷用の原版が盗まれた。警官のイム・チョルリョン(ヒョンビン)は、事件の首謀者だった上司により仲間と妻を殺され、復讐に燃える。原版を秘密裡に取り戻すべくソウルに派遣されたチョルリョンは、殺人事件の共同捜査だと信じる刑事カン・ジンテ(ユ・ヘジン)と組まされる。ジンテも上司から、チョルリョンの動向を探れと命じられていた。監督はキム・ソンフン。
 オーソドックスなバディものの体で、背景も性格も正反対の2人が反目しつつも徐々に心を開いていくという展開もお約束通り。しかし王道を勢いよくやっており、活気がある。クールでスマートなチョルリョンと、おしゃべりでずんぐりとしたジンテの凸凹コンビはテンプレ的造形ではあるのだが(あとジンテの妻や娘など女性キャラクターが概ね書き割り的なのだが)、お約束はお約束として楽しく、生き生きとしている。
 撮影方法にしろ、ストーリー展開にしろ、下手に捻らずしっかりとしたストレートをちゃんと投げてくる感じ。アクションは銃撃戦、肉弾戦、カーアクションと幅広いが、やはりオーソドックスなことをちゃんとやっているという印象だった。現実の南北を巡る状況には解決の糸口も見えないわけだが、本作の雰囲気は至って明るく、ラストに至るまで軽快。深刻な現実もフィクションの素材として使っていく韓国映画の強さを見た感がある。
 アバン直後、チンピラをジンテが追っているシーンの映像といい音楽といい、昭和の(韓国映画に対して昭和っていうのも変だけど、ふた昔前くらいの感じ)刑事ドラマのようなのだが、これは狙っているんだろうなぁ。特に音楽がこのシーンだけ汗臭いのには笑ってしまった。ジンテのキャラクターを端的に表すシーンでもある。ちょっと野暮ったくコミカルなのだ。北朝鮮の警官であるチョルリョンの方がルックスといい立ち居振る舞いといいスマートで、かっこいいアクションはほぼ彼が担う。いくらなんでも無双すぎ!というシーンもあるのだが、それを含めて見応えがあった。

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『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』

 株式仲買人から画家へ転身したゴーギャン(ヴァンサン・カッセル)だが、生活は困窮し妻子も離れていった。新天地を求めて僅かな金を手にタヒチに渡ったゴーギャンは、その地に魅了される。現地の娘テフラ(ツィー・アダムス)と暮らし始めるが、わずかな資金は底をつき、また生活に困窮していく。監督はエドゥアルド・デルック。
 タヒチ時代のゴーギャンの作品はもちろん名作なのだ、オリエンタリズム的な面が強すぎて、現代の視点で見るとちょっと評価が難しくなるよなぁと思うことがある。本作のサブタイトルにもあるように、ゴーギャンはタヒチに楽園を見出すのだが、人間が存在する以上、そこにあるのは楽園ではなく生活だ。楽園のように思えたタヒチでのゴーギャンの日々も、徐々に生活に飲み込まれ、金策に追われて絵画制作どころではなくなる。
 ゴーギャンのタヒチに対する思い入れは、彼のイメージの中にあるタヒチに対するもので、現実のタヒチに対するものではない。キリスト教教会や白い服に対するテフラの憧れは、ゴーギャンにとってはタヒチの自然・野生に反する嘆かわしいものだ。また、隣の家の息子が彫刻に興味を持つのでゴーギャンは喜ぶが、興味の動機は彼の思惑を外れていく。いくらゴーギャンが伝統的なタヒチの文化に感銘を受けても、そこに暮らす人たちは、もっとお金のある暮らしや便利で清潔な暮らしをしたいと思うかもしれない。その便利で清潔な暮らしやキリスト教教会を持ちこんだのはゴーギャンら白人たちではあるのだが。ゴーギャンがタヒチに感化された彫刻を作っても、現地の人たちから見たら「白人好み」のものでしかない(お土産として売られてしまうような)。そういったギャップを、あからさまではないがそこかしこで感じさせ、ゴーギャンの夢の終わりを予感させる。
 ゴーギャンの「夢」は家族からしたら大分独りよがりなものだ。妻はそれについていけずに決別するし、テフラの心も離れていく。「夢」の対象であるタヒチにとっても、ゴーギャンのそれは独りよがりなものであったかもしれない。

ノアノア (ちくま学芸文庫)
ポール ゴーギャン
筑摩書房
1999-10



ゴーギャンの手紙
ポール ゴーギャン
美術公論社
1988-07

『コンシューミング・スピリッツ』

特集上映「長編アニメーションの新しい景色」にて鑑賞。クリス・サリバン監督、2012年の作品。アメリカの田舎町マグソンに暮らす、42歳のヴィオレット、38歳のブルー、64歳のグレイ。ある夜、ヴィオレットが自動車事故を起こし、ブルーは飲酒運転で警察に睨まれる。この出来事をきっかけに、3人の記憶が次々と蘇る。
登場人物が中心となるクロースショットは丹念な書き込み(手の表情など現実拡張されすぎたみたいで怖い)による平面的な、紙人形的アニメーション、ロングショットはジオラマを使ったアニメーション、過去の記憶は鉛筆画によるアニメーションというふうに、技法を使い分けて視点、距離感のコントロールをしている所が面白い。人物の顔の圧というか、個人(「キャラクター」って感じではないのだ)の存在のエグみすら感じさせる造形が素晴らしい。136分とアニメーションとしてはかなりの長さなのだが、見ごたえある一作。
ちょっと変わったうだつの上がらない人たちが、変わり映えのしないどん詰まりの日々を鬱々と過ごす・・・のかと思いきや、中盤からパズルのピースが次々にはまり始めるような怒涛の展開で驚いた。そういう話だったのかよ!彼らに限ったことではないが、其々の中には過去の体験に基づく傷がある。彼らの場合、その傷がお互いにつながっているのだ。クレイジーにしか見えないグレイの行動も、彼なりに過去の落とし前をつけようとしているとも思える。
社会の中でうまく立ち回れず、かといって環境を新しくすることもできない人たちの姿は、正直見ていて辛い。ヴィオレットと母親のやりとりは特に切ない。少々正気を失っている母親の世話をしなくてすめば、彼女の生活はもっと自由だろう。あなたは美人じゃない、車に乗る時は(交通事故に遭った時恥ずかしくないように)かわいい下着を付けろというヴィオレットの母親の言葉、おかしいんだけど言われた側としてはすごく傷つくしうんざりするはずだ。それでも彼女は母親を愛していることがわかってしまう。歯車がずれたまま経年してしまった家族の物語でもあった。

マグノリア [DVD]
ジェレミー・ブラックマン
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2014-12-17




『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』

 先天性疾患により視力の95%を失ってしまったサリヤ(コスティア・ウルマン)は、ホテルで働きたいという夢を諦めきれず、目が見えないことを隠して一流ホテルの研修生になる。姉や同僚のマックス(ヤコブ・マッチェンツ)らの助けを借りて研修課題をこなしていく中、ホテルに品物を下している野菜農家のラウラ(アンナ・マリア・ミューエ)に恋をする。監督はマルク・ローテムント。
 サリヤはホテルで働きたい一心で、障害を隠す為に全力で努力する。障害を克服した!すごい!という話とはちょっと違う(予告編ではそういう話に見えるけど)所が面白いし、誠実だと思う。彼にとって一番の「奇跡」であり「素敵な人生」であるのは、自分の障害をカバーするために尽力する家族や友人に恵まれたことではないか。
 序盤、ホテルの面接に合格するためにサリヤは姉と何度もリハーサルをする。この時の姉の指導の仕方が具体的で理にかなっているもので、とてもいい。サリヤは視力には不自由しているが、出来ることはたくさんある。姉は不自由な部分「だけ」を補助しようとするのだ。これはマックスも同様で、この2人のサポートの仕方、教え方は常に実践的だ。何か障害があってもやりたいこと、得意なことがあるのなら助けを借りればいい、周囲はサポートをするという姿勢が徹底している。サリヤは記憶力と聴覚に優れ、サービス業への適性は高い。一つの特徴によってその適性がないものにされてしまうのは、やはり勿体ない。これは、ホテルで皿洗いをしている難民男性にも言えることだ。彼は祖国では医者だったが、難民としての滞在ビザでは皿洗いしか仕事がない。これもまた勿体ない話だ。その解消の為に人の力を借りて何が悪いんだ?という話でもある。
 サリヤは障害がないかのように振舞うが、これは克服したというのとはちょっと違うだろう。視力によるハンデ、不得意は依然としてあるし、それによって一歩間違うと取り返しのつかない事態にまで追い込まれてしまう。「見える」ように振舞う必要がない社会が本当に豊かな社会と言えるのだろう。いい人ばかり出てくるけれど美談すぎるようには見えないのは、サリヤの限界も描いているからだ。彼は自分のことを理解して、最終的な選択をする。そして、サリヤの父親の姿を通して、家族・身近な人が必ずしも強いとは限らないということも描いている。これは運不運みたいなものなんだろうけど、家族・パートナーが強くいられるかどうかで当人の人生もだいぶ変わってしまうのかもしれない。

太陽は、ぼくの瞳 [DVD]
モフセン・ラマザーニ
アミューズ・ビデオ
2001-04-27


白バラの祈り -ゾフィー・ショル、最期の日々- [DVD]
ユリア・イェンチ
TCエンタテインメント
2006-09-22


『婚約者の友人』

 1919年、ドイツの田舎町に暮らすアンナ(パウラ・ベーア)は、フランスとの戦いで死んだ婚約者フランツ(アントン・フォン・ルケ)の墓に通っていた。アンナには両親がおらず、フランツの両親と共に暮らしていたが、医者であるフランツの父ハンス(エルンスト・ストッツナー)と母マグダ(マリエ・グルーバー)もまた、息子の死から立ち直れずにいた。ある日アンナはフランツの墓に花を手向ける男性を見かける。フランスから来た彼の名はアドリアン(ピエール・ニネ)。戦前のパリでフランツと知り合ったと言う。監督はフランソワ・オゾン。
 一見、死んだ婚約者の友人に徐々に惹かれていく主人公という、王道メロドラマのように見える。アンナを演じるベーアの素朴さが残る美しさ、アドリアンを演じるニネの繊細な美男ぶりも、いかにもメロドラマ風。しかし、予想していたのとは相当違う方向に反転していく。このハンドルの切り返しが見事だった。オゾン監督はたまに迷走するけど、本作ではばっちり狙った所に球が入ったな!という感じ。
 本作を見ていて、映画の作風としては全く違うが、先日見た『人生はシネマティック!』を思い出した。フィクション、物語が人の心を助ける話だからだ。しかし本作はその更に先、彼岸まで行ってしまったように思う。くそみたいな現実よりも、美しい嘘を生きて何が悪い、生きれば嘘も現実も同じではないか。だったら自分が生きていると実感できる方を生きてみたい。この世への諦念みたいなものに、どうにも身につまされる所があり、少々辛かった。
 戦争(後)映画としても、ドイツとフランス双方の意識が垣間見られて興味深かった。実際こういう感じだったんだろうなという説得力がある。ドイツは敗戦国、フランスが戦勝国ということになるのだが、勝った負けたというよりも、自国民を殺されたというお互いへの敵意がぴりぴりとまとわりつく。互いに自分が被害者、相手が加害者という意識が拭えない。おそらくアドリアンはドイツにいる間は居心地が悪かったろうし多少危うさを感じたろうが、アンナもまた、それを感じることになる。同じ立場に立ってみないとわからないのだ。この点も含めて反転具合が見事だった。



やさしい嘘 デラックス版 [DVD]
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2005-03-11


なぞの娘キャロライン (岩波少年文庫)
E.L. カニグズバーグ
岩波書店
1990-07-02




『GODZZIRA 怪獣惑星』

 20世紀末、巨大怪獣が出現し人類を脅かすようになった。その中でも特に強大なゴジラにより、住む場所を失った人類は宇宙船で地球を脱出する。しかし20年後、移住先惑星は見つからず船内の物資も乏しくなっていた。船内での生活に耐えきれず、ゴジラへの復讐に萌えるハルオ・サカキ(宮野真守)を中心とする地球帰還派の声が大きくなっていた。リスクを侵し長距離亜空間航行で地球に帰還した一同だが、地球上では2万年が経過し、ゴジラの影響下で生態系は激変していた。監督は静野孔文・瀬下寛之。脚本は虚淵玄。なお全3部作。
 サカキのテンションの高さ、ゴジラへの強烈な粘着片思いにややひきつつも、面白く見た。思い込み激しいクレイジー系主人公は、『進撃の巨人』に始まり近年のスタンダードになっているのだろうか。圧倒的に巨大なものに脅かされ絶望的な状況というもの『進撃~』ぽいが、こういうシチュエーションが一つの定番になっているということだろう。
 とは言え、本作のゴジラはちょっとゴジラのインフレ化がすぎるように思う。いくらなんでも強すぎ、大きすぎだろう。『シン・ゴジラ』どころではなく勝てる気がしない。これ、本当にちゃんとオチがつくのかな・・・。作中設定ではわずかながらも弱点が!ということになっているのだが、その説明が結構雑というか、説得力がない(あえて説得力がない演出にしている可能性が高いが)ので、人類が見切り発車で無謀な賭けに出たようにしか見えない。そもそも過去映像のみからそんな解析可能なの?!とかそんなに充実したアーカイブあるの?!とか色々と突っ込みたくなるのだが、どこまでが脚本上の演出でどこまでが単に大雑把なのか現状よくわからない。
 アニメーション制作を手掛けたポリゴンピクチュアズの仕事を見ると言う面でも、とても面白かった。ポリゴンピクチュアズと言えば3DCGアニメーション制作だが、一つの作品でトライしたことを必ず次の作品に活かしてくるという印象なので、作品を続けて見ているとどんどん進化していることがわかる。本作は予算も比較的潤沢なのか、結構豪華な絵の作りだと思う。

シン・ゴジラ DVD2枚組
長谷川博己
東宝
2017-03-22


『BLAME!』Blu-ray(初回限定版)
櫻井孝宏
キングレコード
2017-11-01


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