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「恋をしている女性が光って見える」という能力を持つ大学生・西条(神尾楓珠)。当人は恋愛には無縁で光が見えるのも邪魔に思っていた。しかしある日、才色兼備と評判ながら周囲から浮いている同級生・東雲(平祐奈)に強く惹かれる。東雲は恋の定義を知りたいと考えており、2人は交換日記を始める。西条の幼なじみの北代(西野七瀬)は、そんな2人に心をざわつかせる。一方、他人の物を欲しくなるクセがある宿木(馬場ふみ)は、西条を北代の彼氏だと思い込んで急接近してくる。原作は秋★枝の同名漫画。監督・脚本は小林啓一。
西条の周囲と交わらずともすると超然として見る西条は、その独特なしゃべり方を含め、オタク的文系男子のセルフイメージ(ラノベではないが森見登美彦っぽいなぁとも思った)という向きが強い。彼の幼馴染である北代は少年漫画における、主人公をありのまま受け止めてくれるザ・幼馴染的で、主人公視点=観客視点での都合のよさには若干辟易した。しかし西条、北代、東雲の感情の初々しさが可愛らしく、きゅんきゅんする。若者のかわいらしさが染みるようになったということは、自分が年をとったということか。
西条は他人の気持ちにも自分の気持ちにも鈍感。東雲も同様だ。そんな2人が交換日記を介して交流していくのだが、お互いに向ける好意は恋なのか何なのか。はたから見ている北代としては大変もどかしく気もそぞろという所なのだろうが、そのかみ合わなさがユーモラス。好意を恋にカテゴライズする必要は必ずしもない、「恋は光」でなくてもよかったんじゃないかな(と言う人も作中に出てくるし)とも思える。便宜上「恋」と呼んでいるという程度なのだろうが、「恋」と呼ぶものの幅の広さに言及しつつ、作中では男女カップルに集約されていくので少々物足りない。なお、西条が見える「光」が女性が放つもののみという設定には、西条の中のミソジニー(とまでいかなくとも女性に対する思い込み)を少々感じた。その気になれば男性の光も見えたのではないだろうか。