1992年、北朝鮮の核開発により南北の緊張は高まっていた。軍人のパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は核開発の実態を探るため、黒金星(ブラック・ヴィーナス)というコードネームの工作員として、商人を装い北朝鮮に潜入する。北朝鮮の対外交渉担当・リ所長(イ・ソンミン)の信頼を得ることに成功し、金正日との面会にまでこぎつける。しかし1997年の韓国大統領選挙の動向により、思わぬ横やりが入る。監督はユン・ジョンビン。
実話を元にしており、ソギュンの活動に大きな影響を与える大統領選が1997年。ごく最近の話だということにまず驚いた。素材となった事件が起きてから映画化までの期間が案外短いことにも驚く。
ソギョンは祖国・韓国の未来の為に命を危険にさらし、諜報活動を続ける。韓国の商人で販路拡大を狙っているという設定で立ちまわるものの、北朝鮮の軍人には信用されず、監視の目は厳しい。かなりひやっとする瞬間も多々あり、スパイ映画としてスリリング。しかしその一方で、リ所長との間にはある種の絆が育っていく。ソギョンは韓国、リ所長は北朝鮮を祖国としており立場は違うし利害関係が必ずしも一致するわけではない。しかし、自分の祖国を愛し、その未来を案じているという共通点がある。この国を、この世の中を少しでも良くしたいという意味での愛国心が2人を結びつけるのだ。リ所長の「(ソギョンを)信じるしか方法がない」と言う言葉、ソギョンの「冒険しませんか」という誘い、どちらも相手がソギョン/リ所長でないと出てこない言葉だろう。立場上それをおおっぴらにはできないものの、お互いに共感と信頼がある。それが導く終盤での2人のやりとりには胸が熱くなった。立場が違う2人が同じ方向を見て、同じ夢を見るのだ。その夢を2人が諦めていないことがわかるあるシーンにこれまたぐっとくるのだ。
ソギョンの任務を阻む最大の敵が、彼に任務を命じた政府であるというところが皮肉であり怖いところでもある。政府が守ろうとしているのは現政権であって、国家・国民の未来ではないのだ。国と政権とは別物で、政権を守ることが愛国心というわけではない。ソギョンもリ所長も、当時の政権から見たら反逆者なのかもしれないが、彼らは間違いなく愛国者なのだ。
実話を元にしており、ソギュンの活動に大きな影響を与える大統領選が1997年。ごく最近の話だということにまず驚いた。素材となった事件が起きてから映画化までの期間が案外短いことにも驚く。
ソギョンは祖国・韓国の未来の為に命を危険にさらし、諜報活動を続ける。韓国の商人で販路拡大を狙っているという設定で立ちまわるものの、北朝鮮の軍人には信用されず、監視の目は厳しい。かなりひやっとする瞬間も多々あり、スパイ映画としてスリリング。しかしその一方で、リ所長との間にはある種の絆が育っていく。ソギョンは韓国、リ所長は北朝鮮を祖国としており立場は違うし利害関係が必ずしも一致するわけではない。しかし、自分の祖国を愛し、その未来を案じているという共通点がある。この国を、この世の中を少しでも良くしたいという意味での愛国心が2人を結びつけるのだ。リ所長の「(ソギョンを)信じるしか方法がない」と言う言葉、ソギョンの「冒険しませんか」という誘い、どちらも相手がソギョン/リ所長でないと出てこない言葉だろう。立場上それをおおっぴらにはできないものの、お互いに共感と信頼がある。それが導く終盤での2人のやりとりには胸が熱くなった。立場が違う2人が同じ方向を見て、同じ夢を見るのだ。その夢を2人が諦めていないことがわかるあるシーンにこれまたぐっとくるのだ。
ソギョンの任務を阻む最大の敵が、彼に任務を命じた政府であるというところが皮肉であり怖いところでもある。政府が守ろうとしているのは現政権であって、国家・国民の未来ではないのだ。国と政権とは別物で、政権を守ることが愛国心というわけではない。ソギョンもリ所長も、当時の政権から見たら反逆者なのかもしれないが、彼らは間違いなく愛国者なのだ。