3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

『君の名前で僕を呼んで』

 1980年代、北イタリアの避暑地。両親と別荘にやってきた17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、大学教授である父親が招いた24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)と知り合う。一緒に過ごすうち、エリオはオリヴァーに強く惹かれていく。原作はアンドレ・アシマンの小説。監督はルカ・クァダニーノ。脚本はジェームズ・アイボリー。
 隅から隅まで美しくてびっくりする。特に夏の日差しを感じさせる光のコントロールが徹底しているように思う。また、かなりこれみよがしな音楽の使い方なのだが、それが鼻につかずぴったりとはまる、ぎりぎりの線を狙っている。あとちょっと分量が増えると鼻について我慢できなかっただろう。
 オリヴァーの動きの優雅「ではない」所が強く印象に残り惹きつけられた。ドアの開け閉めの雑さや、妙にもたつくダンスなど。その一方でエリオの父親とのやりとりは聡明で機知に富むもので、そこには速さ、軽やかさを感じる。またエリオを翻弄するような思わせぶりな言動やきまぐれさも、フィジカルの重さとはちぐはぐ。そのちぐはぐさが彼の魅力、というか何となく意識にひっかかる部分であったと思う。自由であると同時に不自由そうだ。オリヴァーの言動は一見自由奔放で軽やかだが、実際の所は(主に社会的に)様々なしがらみがあることが垣間見られる。自分では不自由なつもりかもしれないが実際は相当自由なエリオと対称的だ。エリオは、オリヴァーがユダヤ人であるということを自身のアイデンティティーにはっきりと組み込んでいることに憧れた様子だが、オリヴァーにとっては自分を構成するものであると同時に縛り付けるものでもある。エリオにはその相反する要素がよくわかっていないのかもしれないが。ハマーはどちらかというともったりとした「重い」俳優だと思うのだが、本作ではその重さがうまくはまっていた。
 恋愛の「今、ここ」しかない感が強く刻み込まれていて、きらきら感満載、陶酔感があふれ出ている。自分と相手との間に深く通じるもの、一体感が瞬間的にであれ成立するという、得難い時間を描く。しかしオリヴァーの「重さ」、彼の背後に見え隠れするものが、「今、ここ」の終わりを予感させ切ない。終わりの予感を含めて美しい恋愛映画であり、夏休み映画だと思う。舞台が夏でなかったら、こんなに浮き立った感じにはならないだろう。
 シャラメが17歳にしてもどちらかというと華奢な体格で、ハマーが24歳には見えない(実年齢考えたらしょうがないんだけど・・・)ので、シチュエーション的にかなりきわどく見える所もある。倫理的にどうなのともやもやしたことは否めない。が、予想していたほどのもやもやではなかった。エリオとオリヴァー、更にエリオの父親が、1人の人の別の時代を表しているように見えたからだ。壮年であるエリオの父親はエリオとオリヴァーの関係をかけがえのないもの、しかし自分は得られなかったものだと言う。青年であるオリヴァーはエリオの中に自分にもあったかもしれない可能性を見る。大人時代から過去に遡りこうであったら、という人生をやり直したいという願いにも思えた。「君の名前で僕を呼んで」とはそういう意味でもあったのではないか。
 エリオの両親の、理知的で子供を個人として尊重している態度が素晴らしい。また、エリオのガールフレンドの振る舞いが清々しい。このあたりが、本作を「今」の映画にしているなと思った。エリオは、父親やオリヴァーが選べなかった道を選ぶことができるのだ。



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『きみへの距離、1万キロ』

 アメリカ、デトロイトに住むゴードン(ジョー・コール)の仕事は、1万キロ離れた北アフリカの砂漠地帯にある石油パイプラインを、小型ロボットで監視すること。ある日ゴードンは、パイプラインの近くの村の娘アユーシャ(リナ・エル・アラビ)を見かける。彼女は強制結婚から逃げる為、恋人と海外へ逃亡しようとしていた。監督はキム・グエン。
 ゴードンはアユーシャを助けるつもりではあるのだが、彼の行動は気になる女の子を監視カメラで逐一チェックし彼女の人生に勝手に介入していくというものなので、冷静に考えるとかなり危うい。しかし、ちょっとおとぎ話的な雰囲気で中和されている。何より6本脚のロボットの可愛らしさで乗り切っている気がする。そういえば本作もある意味、「二輪車二人乗り」映画だ(私は「二輪車二人乗りシーンがある映画は打率が高い」という持論を持っている)。
 正に当事者として問題の真っ只中にいるアユーシャに対して、ゴードンはその職業が象徴するように「見ている」だけの人だ。彼はアユーシャと彼女の恋人カリムのことを、『ロミオとジュリエット』のように「見て」いる。恋人に振られたばかりの彼にとって、アユーシャとカリムの真摯な関係はロマンティックであり、理想的なものに見えたのだろう。ゴードンは自分が欲する真摯な関係やロマンティックさは、モニターの向こう側にしかないように思っていたのではないか。しかし、モニターの向こうのアユーシャにとっては現実そのものなのだ。
 ある出来事から、ゴードンは当事者としてアユーシャの逃亡に手を貸すことを決意する。物語を眺めているだけだった人が、自分で物語を生き始めるのだ。彼の行為はアユーシャの物語を一方的に消費し「ただ乗り」している行為にも見えかねない。しかし自分で物語を動かそうとする、つまり彼女を助けようとするゴードンの意思と、逃げたいが助けが必要なアユーシャの意思がはっきりしているのでそれほど嫌悪感は沸かない。ラスト、それこそ物語の主人公になったようなゴードンの行動はなんだか微笑ましくもある。

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『君の見つめる先に』

 サンパウロに暮らす高校生のレオナルド(ジュレルメ・ロボ)は目が見えない。幼馴染の同級生ジョヴァンナ(テス・アモリン)が学校生活をサポートしていた。ある日、彼とジョヴァンナのクラスにガブリエル(ファビオ・アウディ)が転校してくる。すぐに仲良くなる3人だが、レオナルドとガブリエルが2人で行動する機会が増え、3人の関係は変化していく。監督・脚本はダニエル・ヒベイロ。
 二輪車二人乗りシーンがある映画は打率が高いという自論を持っているのだが、本作には正に!という2人乗りシーンが2回ある。1回目と2回目の違いが重要な所であり、2人の関係性の変化を示しているのだ。「僕」は見つめることができなくても、同じ方向を向いていれば「君」が見てくれている。とても清々しくあまずっぱい青春映画だ。
 レオナルドは目が見えないということは、いちいち言及されたりはしない。彼がどういう生活をしているのか、ジョヴァンナや両親はどのように接しているのかによって、彼の境遇が見えてくる。また、レオナルドにとっての世界がどのようなものかもわかってくるのだ。ガブリエルはレオナルドに「この動画見たことある?」とか「映画を見にいこう」とか、少々無神経なことをうっかり言ってしまい、その度にしまった!となる。逆に、シャワールームでレオナルドを前にしてガブリエルが感じる気まずさや、パーティーでジョヴァンナが怒った理由はレオナルドにはわからない。しかし彼らの付き合い方に限らず、それでもいいんじゃないかなと思った。やらかしながら相手のやり方、生活の仕方にお互いが慣れていく・知っていくのだろう。その過程がきらきらとして眩しく、時にほろ苦い。
 人を好きになる時に何をもって好きになるのか、セクシャリティの自認がどのように芽生えるのかという部分の面白さがある。レオナルドは目が見えないから、見た目での男女の差がどのようなものかはわからない。一番身近な異性であるジョヴァンナにキス(したことないから)させてよと言ったりするが、あっさり断られる。2人の絆は深いのだが、そこに性愛めいたものはあまり感じられない。一方ガブリエルに対しては、彼が教室に入ってきた瞬間から何か惹かれる、印象付けられるものがあったように見える(そのように撮られているということだけど)。パーティーの顛末と言い、唐突に何かの瞬間が訪れる、といった感じだ。
 片思いや嫉妬が友人同士にもあるという所が、とても10代ぽいなと思った。ジョヴァンナはレオナルドのこともガブリエルのことも好きなのだろうが、2人の距離が近づきすぎると自分がないがしろにされているみたいに感じてしまうのだろう。レオナルドの1番はずっとジョヴァンナだったわけだから。

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『去年の冬、きみと別れ』

 結婚を間近に控えたライターの耶雲恭介(岩田剛典)は出版社に、有名写真家・木原坂雄大(斎藤工)の密着取材企画を持ち込む。彼のモデルをしていた盲目の女性の焼死事件は木原坂が故意に起こしたものではないかというのだ。編集者の小林(北村一輝)は推測だけで裏が取れない記事は掲載しないと告げる。原作は中村文則の同名小説。監督は瀧本智行。
 原作は未読。結末は予想できない!絶対騙される!という触れ込みだったが、本格ミステリ慣れしている人だったら7割くらいは予想可能なのでは。「第二章」という字幕の出るタイミングで本作の仕掛けはなんとなくわかるだろうし、作る側もこれを前フリにして構成になにか色々ありますよ!と観客の興味を終盤までひっぱっているのだろう。ただ残り3割は予想が難しく、あっそういう方向か!とびっくり、というか唖然というか。何が予想しにくいかというと、ある人物のある側面がいきなり露呈されるのだ。えっあなたそういう人だったの?!確かにちょっと不穏な空気は出しているけれどそれほどかよ!これじゃあもう1人の人とどっちもどっちだわ・・・。
 題名の『去年の冬、きみと別れ』はこのある人が一つの決意をした瞬間を指しているのだが、ある側面が露呈した時点で、既に「きみと別れ」ていたのではないかと思う。「きみ」の思いが消えたわけではないだろうけど、別の側面を見てしまった以上、それまでと同じようにある人を思うことは出来なかったのではないか。
 予想していたのとは全然違う方向でびっくりさせられた。ちょっと昔のB級サスペンスっぽい舞台装置や映像の色調なのだが、作品には合っていたと思う。前半、ストーリー上の粗に見えた部分も、後半でなるほどそういうことねと凡そ納得させられた。精緻なミステリというわけではないのだが、この世界観であれば伏線回収したと理解できる。




『キングスマン ゴールデン・サークル』

 イギリスの諜報機関キングスマンの拠点が、謎の組織の攻撃を受けて壊滅し、メンバーも次々消されていった。残されたのは一人前のエージェントとして活躍するようになったエグジー(タロン・エガートン)と技術担当のマーリン(マーク・ストロング)のみ。2人は同盟関係にあるアメリカの諜報機関ステイツマンに協力を求める。キングスマンを攻撃した組織は、、ポピー(ジュリアン・ムーア)率いる麻薬組織・ゴールデン・サークルだった。監督はマシュー・ヴォーン。
 小道具やキャラクターは相変わらず楽しいし、これはとっても萌えそう!というシチュエーションも多々あるのに、実際に見てみると今一つ気持ちは盛り上がらない、まあ退屈ではないけど・・・というのは前作と同じ(私にとって)。ある意味安定のマシュー・ヴォーン監督作だ。相変わらず悪趣味をおしゃれ感漂う見せ方にしているが、逆にイキってる感出てしまって鼻につく。ただ、音楽の使い方は相変わらず洒落がきいていて上手い。そこがまた鼻につくんだけど(笑)。最近「カントリー・ロード」が作中で流れる映画(『ローガン・ラッキー』とか)をよく見るけど、アメリカ映画界に郷愁の波が来ているのだろうか。
 前作の登場人物が本作でも連投しているが、その大半をとんでもない事態が襲う。ヴォーン監督は、キャラクターを立てた映画を撮っているようでいて、そうでもないなぁとしみじみ思った。キャラクターをあまり大事にしておらず(温存する、死なせないという意味ではなく、バックボーンや「こういう人」という部分はさほど重視していないという意味)、扱いが雑なように思う。魅力的なキャラクターが多いので正直勿体ない。また、ストーリー展開や伏線の処理も結構大雑把。あるシーン、あるシチュエーションへのこだわりはすごく感じるのだが。映画としては、あまり上手くないんじゃないかと思う。皮肉やブラックユーモアの面白さはあるものの、あくまで単品の「皮肉」「ブラックユーモア」としての面白さであって、映画全体の面白さというわけではない。
 前作はアメリカと闘う話だったが、今回はアメリカと協力、しかも前作で皆殺しにしたような層との共闘になるのが皮肉。キングスマンとステイツマンの組織としての顛末も、これが資本主義・・・って感じで皮肉だ。大英帝国賛歌みたいなシリーズだけど、それは幻だったってことか。
 なお、当然007を意識した作品ではあるが、エグジーは恋人(まさか本当に付き合っていたとは・・・)に誠実でハニートラップは仕掛けないというあたり、今の作品だなという印象。

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『希望のかなた』

 シリア難民の青年カーリド(シェルワン・ハジ)はフィンランドのヘルシンキへ流れ着く。生き別れた妹を探しこの国で暮らしたいと願うが、難民申請は却下されてしまう。自警団に暴行を受けた彼を助けたのは、レストランオーナーのヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)だった。監督はアキ・カウリスマキ。
 カウリスマキの映画は余計なことをしないのでテンポがいい(段取がいいと言った方がいいか)、しかし見ている側の体感としてはのんびりしているという不思議な面白さがある。本作もさくさく物事が進むが決して「速い」という感じではない。このへんの間の取り方が唯一無二の所以だろう。映画にとって最小限に必要なものの選別がすごく的確なのだ。カウリスマキの映画を観ていると、映画って記号の組み合わせなんだなと実感する。動作・所作のひとつひとつが文字通りのものであり、男は男、女は女、犬は犬、金は金だ。その記号ひとつひとつをどう見せるか、どう組み立てるか、どのパーツを使うのかによって、単なる記号からはみ出していくものがあり、そこに映画としての強さが生まれるのかなと思う。ヴィクストロムが資金調達する方法など、他の監督だったらこれはちょっとご都合主義すぎでは・・・と避けてしまいそうだけど、カウリスマキは堂々とやるし、ご都合主義に見えない。
 カーリドは紆余曲折の上、たまたまヘルシンキに流れ着く。母国に送還されそうになった為逃げだすが、そんな彼を助けるのがヴィクストロムとレストランの従業員たちだ。助けるとはいっても、積極的に親切にしようとか善意に燃えているとかいう風ではなく、助けるのが普通のことだからやる、というように見える。善意が平熱なのだ。彼らのように親切な人がいる一方で、暴力を働く極右団体はいるし、難民申請の結果はシリアの現状を踏まえたとは思えないものだ。しかし、カーリドもヴィクストロムも不寛容さや困難さには屈さず、控えめに抗い続ける。ヴィクストロムのやり方は、抗い方というよりすり抜け方ではあるのだが、目的が正しければ小さいことは気にしなくてよし!と言わんばかり。人間の善意と知恵に対する信頼、あるいはそうであれという祈りのようなものを感じた。カウリスマキ作品はほろ苦さ、ペーソスが持ち味と思っていたが、本作はストレートな希望へ向けた物語。黄昏ている場合ではないということか。
 私にとってカウリスマキ作品と言えばまずそうな食べ物、謎の日本要素だが、本作にもちゃんと登場する。今回はまずそうな食べ物と日本要素が一体化しているが、まずそうな感じ、失敗感が生々しい。一方でカウリスマキ監督作にしてほぼ初めてと思われる、ちゃんとおいしそうな料理が登場する。作っているのは各国からの難民なので、フィンランドのおいしい料理じゃないんだけど・・・。

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『gifted ギフテッド』

 母親を亡くした7歳のメアリー(マッケンナ・グレイス)は叔父のフランク(クリス・エヴァンス)と暮らしている。気が進まないながらも小学校に通うことになったメアリーだが、彼女に突出した数学の才能があることに気付いた担任教師ボニー(ジェニー・スレイト)は、才能を伸ばす教育を受けた方がいいのではとフランクに告げる。フランクは姉の遺言に従い、メアリーには普通の子供として生活をさせたいと考えていた。しかし2人の居所を知ったフランクの母イブリン(リンゼイ・ダンカン)が孫に英才教育を施すため、親権を奪おうとする。監督はマーク・ウェブ。
 メアリーは数学の天才だが、天才にしろ凡才にしろ、子供を育てる、子供と生活するのはかくも大変なものか。フランクはメアリーのことを愛し真摯に育てようとしているし、実際、結構立派に保護者をやっている。メアリーもフランクによく懐き、親子のようでもあり相棒同士のようでもある。とは言え彼は独身男性で、自分の為だけの時間もほしい。「(金曜の夜から)土曜の昼までは家に入らない約束」というのはそういうことなのだ。彼は約束を破ったメアリーについ怒鳴ってしまう。子供の保護者としての生活と一個人の成人男性としての生活は両立しない部分もある。かといって全てを子供に捧げるのが正しいのかというと、そういうわけでもないだろう。そもそも、何をやれば子供にとってベストなのか。
 子育ての難しさは、子供にとって何がベストなのかということが、後追いでしかわからないという所にあるのではないかと思う。フランクの姉が辿った人生は、正にそういうことだろう。フランクの教育方針とイブリンの教育方針は衝突するが、2人ともメアリーにとってよかれと思ってやっていることには違いない。しかしどちらが最適なのか、あるいはどちらも最適ではなかったのかは、メアリーが成長してからでないとわからない。日々ギャンブルみたいなものではないか。その時その時を手探りでやっていくしかないことのしんどさをちょっと感じてしまった。責任重大すぎる。正解がわからないまま延々と続くのって、なかなかきついだろうしな・・・。
 また、親は子供に自分が歩めなかった(歩まなかった)人生を歩んでもらいたいと、つい思ってしまうところに、如何ともし難い業を感じた。イブリンの情熱は、彼女やその娘が送れなかった人生に対する執着とも見える。彼女が提示する人生がメアリーにとって幸せかどうかはわからないんだけど。


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『キングス・オブ・サマー』

 15歳の高校生ジョー(ニック・ロビンソン)と親友のパトリック(ガブリエル・バッソ)は親にうんざりして家出を計画。風変りな少年ビアジオ(モイセス・アリアス)と一緒に森の中に秘密の家を建て、3人で生活を始める。自分たちのお城できままな日々を送りご満悦の3人だったが、ジョーが片思いしている同級生の少女ケリー(エリン・モリアーティ)がやってきたことで、3人の関係がかき乱される。監督はジョーダン・ヴォート=ロバーツ。
 監督は本作でデビューした後にいきなり『キングコング 髑髏島の巨神』に大抜擢されている。すごいハイジャンプだな!しかし、手堅い作り方をする人なのか本作もデビュー作ながら危なげがない。また、『キングコング』でも思ったが既存の音楽の映像へのはめ込み方が上手い(これは音楽監督の人の手腕なのかもしれないけど)。新鮮味のある内容というわけではないが、切り取り方が瑞々しく、夏休み、特に夏休みの終わりにはぴったりの作品だった。
 ジョーたちの家出は、人生の中で一度きりの「ある季節」を象徴するようなものであり、きらめきに満ちているが、どこか儚い。大人の目で見るからそう見えるだけかもしれないが、終わりが来ることが分かっているものではある。ジョーはこの家出が自分たちにとってのイニシエーションだと張り切る。しかし、イニシエーションは彼が思っていたような形では訪れない。後になって思い起こしてみると、あれがイニシエーションだったとわかるようなものだ。自分が予想していたような形ではなく、予想外の方向で成長するという所が、本作の面白い所だと思うし、成長って大概そういうものかもしれない。
ジョーは父親と2人暮らしなのだが、ワンマンな父親にうんざりしている。しかしとある場面で、彼は自分が心底嫌がっていた父親そっくりの行動をしてしまう。一方、パトリックは両親の過干渉や母親の清潔・ヘルシー志向に辟易気味。しかし食べ残しの後始末(放置しておくと動物が寄って来るし)や何だかんだ言ってきちんと手洗いをしてしまう。多かれ少なかれ、親の影響は出てしまうのだ。2人とも親がうっとおしくて仕方ないのに、皮肉ではある。
 ジョーはケリーに想いを寄せており、彼女とのデートを夢想するのだが、その想像の中のケリーの振る舞いはかなりレトロなもので、昔のロマンス映画のそれのようだ。彼の女性観はまだその程度のもので、現実に即していない。そもそも彼女と付き合っていないし告白すらしていないんだから、現実の彼女の行動に腹を立てるのは筋違いだろう。ジョーが作中で最も成長した部分は、セックスの可能性がない(とは言わないまでもきわめて低い)相手にも人は優しくするし親身になる、自分も優しくすることが出来ると理解するところではないか。好意の位相は様々なのだ。

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『銀魂』

 宇宙から襲来した“天人”によって開国を迫られた日本。天人の台頭と廃刀令により、侍は衰退していった。侍の心を捨てずにいる坂田銀時(小栗旬)は、剣術道場の長男・志村新八(菅田将暉)、銭湯種族・夜兎族の神楽(橋本環奈)と万屋を営んでいた。原作はアニメ化もされた空知英秋の同名漫画。監督は福田雄一。
 原作はもちろん週刊少年ジャンプ連載の大ヒット漫画で、TVアニメ化も劇場用アニメ化もされた。映画としてどうやるか、というよりも『銀魂』としてどうやるか、という方向に割り切って面白さを追求していると思う。なので、原作を知らないで見に来た人にはあまり通じないだろう。映画としてはエピソード配分のバランスも悪いし、キャラクター数が多いので事前知識がないと正直厳しい。しかし、原作漫画ないしはアニメを知っている人にとっては、あーちゃんと銀魂だ!これだよこれ!と安心できるし楽しめると思う。ギャグのバカバカしさとメタ構造の緩い取り入れ方は、原作風味でもあり、福田監督の手癖でもあり、相性は良かったと思う。ムロツヨシ演じる平賀源外のパートはそれが如実だった。源外役にムロツヨシって若すぎない?と思ったけど、いてくれると安心なんだろうな(笑)
 特にアニメのフォーマットやテンポやキャラクターのセリフ回しはかなり意識しているのではないかと思う。まさか実写映画でもアバン芸が見られるとは思わなかった。雑なフェイク主題歌もいい。人気漫画の実写映画化がここの所相次いでいるが、その中では(スベっても許されると言う特殊なポジションとは言え)かなり成功しているのではないだろうか。キャラクターの再現度も意外と高い。菅田がキラキラオーラを封印して地味眼鏡になりきっているのには驚いたし、新撰組の3人のクオリティも高い。特に沖田(吉沢亮)の沖田感がすごかった。
 また、俳優の力で原作とはキャラクターの作中比重が変わって見えることもあるんだなと実感した。本作はギャグ一辺倒のカブト狩り編(というほど大した話じゃないよな・・・)とシリアス度の高い紅桜編という2つのエピソードを組み合わせている。紅桜編に登場する刀鍛冶の村田鉄矢(安田顕)は、原作でもアニメでも私にとってはそんなに印象に残らなかったのだが、今回は存在感があった。新井浩文演じる岡田似蔵も同様。2人とも熱演で、方向性は違うが上手くやれなかった人、一番になれなかった人の悲哀みたいなものがより濃くなったのではないか。あっこういうキャラクター、こういう話だったんだと再発見した気分。
 なお、福田監督は胸か尻か脚かで言ったら脚派なんじゃないかなー。脚と言えばこの人ということで来島また子役の菜々緒が美脚を披露しているし、菜々緒の足と橋本環菜の絡みというわけわからないアクションシーンもある。しかし、高杉晋助役の堂本剛が結構な脚の露出加減(高杉の衣装は着流しなので、アクションをやるとかなりはだけるんですね)だし、あっそういう角度で撮るんだ・・・的なよくわからない力の入れ方だったように思う。


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『KING OF PRISM PRIDE the HERO』

プリズムスタァ養成校エーデルローズで練習を重ねる新入生の一条シン(寺島惇太)。4年に1度の大会プリズムカップに向けて先輩たちと特訓に励むが、ライバル事務所シュワルツローズの差し金で、エーデルローズは解散の危機に追い込まれてしまう。監督は菱田正和。
 アニメの中で「貸しはがし」というフレーズ、初めて聞いたわ・・・。まさかキンプリでそんな言葉聞くと思わなかったよ!応援上映、まさかの超ロングラン昨年のアニメ界・映画界を沸かせたキンプリこと『KING OF PRISM by Pretty Rythm』の続編。前置きや説明なくいきなり始まる、かつ前作と本作の間に結構なエピソードがあったんじゃ?と思わせるシークエンスが結構あるのだが、そのあたりもさくっと割愛して始まる。お客を信頼していると言えば信頼しているということか・・・。とは言え、前作を見ていなくても、極端な話プリティリズムが何なのか知らなくても、ある程度日本のアニメに対するリテラシーを持っていれば、わけがわからないなりに楽しくなってくるあたりがすごいと思う。逆に、全くアニメに耐性がない人が見たらどんな感じなのか教えてほしい。
 前作で応援上映が大変盛り上がったことを考慮してか、本作では最初から応援上映対応なのかな?という見せ場が頻出する。劇場での上映回数も場所によっては応援上映の方が多いくらい。確かに、あーここで合いの手いれたい!コールしたい!サイリウムふりたい!って気分になってくる。よくできてるなぁ。私は通常上映で見たが、周囲が盛り上がっている方が確実に楽しめる類の作品で、鑑賞するというよりもイベントに参加する感じ。一緒にプリズムショーのスタジアムを破壊したり再生したいよねぇ!(言葉のあやではなく文字通りの意味です) 
 また、シンの成長が中心にあった前作と比較すると、本作でもその路線は引き継いでおり、基本は努力と友情、仲間との絆があるのだが、更に、ストーリー上の要素が更に増し増し、盛りに盛っている。70分強の作品とは思えない。余裕で1クールできるボリュームだ。過去からの確執と愛憎あり、企業乗っ取りやお家騒動あり、スポ根あり、ロマンスあり、更に前世からの因縁らしきもの(これ、次作も作る気満々てこと?大丈夫?)まで持ち出してくる。ストーリー上もビジュアル上も引き算という概念がない、足し算のみで作られたようなある意味凄まじい作品。アニメというジャンル内の更に細分化された数々のジャンルの要素が詰め込まれているので、アニメファンにとってはアニメのリテラシーが試されるよな・・・。個人的にはコロコロコミック的というかテレビ東京夕方枠ないしは早朝枠的な、男児玩具アニメ的要素にぐっとくる。そりゃあ龍も空に昇ろうというもの。

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