ドキュメンタリー監督のゾーイ(リリー・ジェーズ)は幼なじみの医師カズ(シャザト・ラティフ)が見合い結婚をすると知らされる。今時の英国でなぜ親が選んだ相手と結婚するのかと納得できないゾーイは、制作会社からドキュメンタリーの新ネタを要求された際、見合い結婚の軌跡を追うドキュメントを撮ると勢いで断言してしまう。渋るカズを説得して撮影を始めるが、自分のカズに対する気持ちに気付いてしまう。監督はシェカール・カプール。
ゾーイとカズは幼馴染で家族ぐるみの付き合い。シングルマザーであるゾーイの母親にとってはカズ一家が家族の代わりでもあった。じゃあゾーイの母親は異文化に対しての理解も深いのかと思ったら、差別的な発言がポロポロある所がなかなかリアルだしハラハラさせられる。パキスタンからの移民であるカズの家族と仲は良いが、彼らの文化や社会背景を理解しているというわけではないのだ。このあたりの、悪意はないが結果として差別的になっているという表現の匙加減が上手い。また親が子の結婚相手を選ぶことが普通である文化の姿、そのメリットも描かれ、基本ラブコメだが異文化ギャップコメディとしても目配りがきいている。どちらの文化がいいと断言するわけではないのだ。
ゾーイは世代的にも母親よりは異文化を受容・理解しているが、それでも親の為に結婚するという文化圏の考え方には同意できない。とは言え恋愛による「運命の人」を探す彼女が付き合う相手が押しなべてクズなので、これはもう親の采配を頼った方がいいんじゃないかとも思わせる。親の紹介で親しくなる獣医がすごくいい人っぽいし(そこが物足りないんだろうけど…)。彼女がなぜクズに惹かれてしまうのか自分を見つめなおす過程になっているのだ。結婚と家族と個人を巡るあまり浮つかないラブコメで、ラブコメがそんなに好きでない私にも楽しめた。
それだけに、ラブコメが基本にある以上やはりそのオチになるかという物足りなさもあった。もうちょっと攻めてもいいんじゃないかなー。