特集上映「A24の知られざる映画たち」にて鑑賞。映画監督のジュリー(ティルダ・スウィントン)は年老いた母ロザリンド(ティルダ・スウィントン)を連れて、人里離れたホテルにやってくる。このホテルは子供の頃にロザリンドが暮らしていた建物を改築したものだった。ジュリーはこの場所で、母についての映画の構想を練ろうとする。しかし執筆は難航する。監督はジョアンナ・ホッグ。
スウィントンが1人2役をこなしている。一見その必要ある?と思うかもしれないが、ちゃんと意味がある構造だ。本作、序盤でこれはあのパターンだなと気付く観客も多いだろう。それほど独創的な設定でもない、比較的ストレートなゴシック風ドラマの作りだと思うのだが、俳優の力と、舞台となる古い屋敷の場の力とで雰囲気が出ている。このネタだったらもうちょっと短くてもいいのではと思わなくもなかったが。
ジュリーはロザリンドに対してあれこれ世話を焼くが、彼女がよかれと思ってやることは本当に母の意に沿っているのかわからない。母も娘もお互いに「あなたがいいと思うことがいい」というスタンスで、相手を尊重しているようでいて実際のところは堂々巡りなのだ。ジュリーがロザリンドに対して甲斐甲斐しすぎるように見えるが、ジュリーは母の期待に沿えなかったのではという不安を抱えており、それ故の行動だと徐々にわかってくる。いくつになってもそういう葛藤は終わらないものなのか。彼女の母親に対する思いの深さ、諦められなさが刺さってくる。
ロザリンドが手紙類を整理するといってビニール袋に入れて持ち歩く所や、ホテルでクリスマスカードを量産する所など、妙なリアリティがあってちょっと怖かった。なぜわざわざバカンス先で?みたいなものを持っていくというの、私の祖母も母もやるんだよな…。