3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

映画あ

『アントマン&ワスプ』

 元泥棒でバツイチのスコット・ラング(ポール・ラッド)は、2年前にアントマンとしてアベンジャーズの闘いに参加したことがソコヴィア条約に抵触し、FBIの監視下で自宅軟禁の生活を送っていた。軟禁解除まであと3日となり、娘や元妻と喜んでいたところ、アントマンのスーツの発明者であるハンク・ピム博士(マイケル・ダグラス)と博士の娘ホープ・ヴァン・ダイン(エバンジェリン・リリー)が現れる。量子世界に行ったままの博士の妻、ジャネット・ヴァン・ダイン博士(ミシェル・ファイファー)を取り戻す為スコットの協力が必要だと言うのだ。実験に挑む彼らの前に、物体をすり抜ける謎の存在ゴーストが現れる。監督はペイドン・リード。
 『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』にアントマンが出ていなかったけどその間どうしていたの?という疑問にちゃんと答えてくれるし、今後のアベンジャーズ関連作にもアントマン絡んできそうだな!ということも察せられる。前作はマーヴェル映画の中では独立度が高くて単品でも楽しめたけど、本作はもうちょっと一連の流れにくみこまれている部分が大きい印象。そのせいか、タイトにまとまっていた前作と比べるとちょっと間延びしてテンポも悪い気がした(クライマックス近くでちょっと寝てしまった・・・)。この展開に必然性はあるのかな?この件必要なのかな?と気になりどうも座りがわるい。マーベルユニバースの弊害をちょっと感じる。自在に動き回るアントマンとワスプのアクションや、ビルを「運搬」する方法やミニカーでの移動など、一つ一つのシークエンスは楽しいのだが、全体の印象が散漫としている。
 本シリーズの最大の魅力、持ち味は、主人公であるスコット・ラング=アントマンの人としての「普通」なまともさ、優しさにあるだろう。冒頭、娘とラングが自作のアトラクションで遊ぶ姿には多幸感あふれている。こんな父親だったら楽しいだろうな(夫としてはちょっと頼りない所はあるし、子供が育ってきたらまた違うんだろうけど・・・)。元妻とそのパートナーとの関係もまずまず円満な様子もいい。スコットも元妻も、別れても娘にとってパパはパパだしママはママだという姿勢が一貫しているところが、いい両親なんだなと思える。マーベル映画に登場する父親、ないしは父親になろうとしている人の中ではもっとも成功している人なのでは。人が良くてほだされやすい故にトラブルに巻き込まれたりドジが多かったりもするが、愛すべき大人という感じ。
 対して、ピム博士の人徳のなさよ。前作でも今作でも元同僚とこじれまくり!もうちょっと対人態度考えていれば、前作と本作で起きる問題の半分くらいは生じていないのでは・・・。他人への共感とか思いやりがあんまりない人なのだということが、スコットの振る舞いと比べると際立つ。彼と相思相愛でいられ続けるジャネットの人間力の高さに脱帽しそう(ジャネットが更に強烈な性格という可能性もあるが)。
 今回もアリたちが活躍するが、リアルだけどグロテスクではなくキュートに見える、ギリギリのラインの演技で、芸が細かい!なお、例によってエンドロールは最後までどうぞ。


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『ALONE アローン』

 砂漠地帯でのテロリスト暗殺に失敗したアメリカ兵マイク(アーミー・ハマー)は、相棒のトミー(トム・カレン)と共に多数の地雷が埋まるエリアに足を踏み入れてしまう。トミーはマイクの目の前で死亡、マイクも地雷を踏んで一歩も動けなくなってしまう。援軍が到着するまでの52時間、彼は何とか持ちこたえようとする。監督はファビオ・レジナー&ファビオ・ガリオーネ。
 ワンシチュエーションサスペンスという括りになるのだろうが、1ネタ勝負作と思って見たら意外な味わいがあった。地雷を踏んで動けないという状況そのものよりも、その状況から沸き起こるマイクの内省、マイクの過去とトラウマの方が前面に出てくる。「踏んで一歩も動けない」という状況自体が、彼のこれまでと、今の内面を象徴しているのだ。優秀な狙撃手らしいマイクが、なぜ最初にあんなに狙撃をためらったのかというのも、ジェニーに連絡しろと言われると歯切れが悪くなるのも、彼がやってしまったこの延長線上にあるのだ。過去の断片はちらちらと提示され、徐々に全体像が見えてくる。彼にとっての「踏む」「ひざまづく」という姿勢の意味合いがクライマックスに向け重なっていくのだ。
 マイクの内省という側面が強く、ファンタジーや寓話の方向に物語の見せ方がひっぱられがちではある。作中のリアリティラインの設定があやふやになりがちで、そこで賛否が割れそうな気がした。ただ、マイク個人の物語として見ると、悪くなかったなと個人的に思う。自分ひとりでどうにかせざるを得ない問題だとマイクは思い込んでおり、確かにそうなのだが、彼を待っている人が確かにいるのだ。ハマーのほぼ一人芝居といってもいい作品だが、ちゃんと間が持つ。ルックスのパーフェクトさにばかり注目されがちだけど、スキルがあるんだよな。

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『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』

 トーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)は幼い頃からスケートの才能を見せ、フィギュアスケーターとして全米トップ選手に上り詰めていく。1992年アルベールビルオリンピックに続き、94年のリレハンメルオリンピックへの出場も狙うが、1992年、元夫のジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)が、トーニャのライバル選手ナンシー・ケリガンを襲撃したという疑惑が浮上する。監督はクレイグ・ギレスピー。
 アメリカ人女子フィギュアスケート選手として初めてトリプルアクセルに成功したトーニャ・ハーディングの人生を映画化。しかし、本作はいわゆる「実話に基づいた」物語としては、見せ方がかなり捻っている。インタビュー形式の場面が随所に挿入されており、基本的に「彼女/彼が言うには」というスタンスが貫かれている上、ドラマ内のトーニャがふいにスクリーンのこちら側を見て「これが本当のことよ!」等と語りかけてくる。登場人物全員が自分に都合のいい話を語る、信用できない語り手たちのよるストーリーテリングなのだ。更に、ここはさすがにフィクションとしてキャラを盛っているんだろうなと思っていた部分が、エンドロール前のご本人映像を見ると正に作中そのままの発言をしていて本当にとんでもなかったりする。虚実のバランスがかなり不思議なことになっており、そもそも全部虚かもしれないという「実話に基づいた」話なのだ。
 トーニャの周囲は基本的にろくでなしばかりで、よくまあこれだけ集まってくるよなといっそ感心するのだが、トーニャの母ラヴォナ(アリソン・シャネイ)が特に強烈。娘を厳しく育てるがいわゆるステージママ的な接し方ではなく、DVすれすれの暴言とプレッシャーによりコントロールする。ラヴォナは「トーニャは怒っている方がいい演技をする」からあえてけなして怒らせているのだとうそぶくが、目的が何であれ(言葉の)暴力は暴力だ。褒められることなく自己肯定感が薄いまま育ってしまったことで、トーニャは自分を殴るジェフとの縁を切れず、観客の声援を過剰に求めるようになってしまったのだろう。トーニャ本人も相当強烈でしぶといキャラクターなので、そんな彼女が「殴られるのは自分が悪いんだと思った」というのにはえっと思ってしまうのだ。彼女がどんなに頑張っても、その育ちや家族が足を引っ張る。
 また、フィギュアスケートという競技のいびつさを垣間見た感もある。トーニャは非常に身体能力が高くスケートの才能は明らかにあるのだが、なかなか評価に結び付かない。思い余った彼女が審査員を問い詰めると、彼は「観客は理想の家族を見たいんだ」と答える。貧しく無教養な家庭で育ち洗練されていないトーニャは、アメリカの理想の女性ではないと言うのだ。競技上の評価基準としては大分おかしいだろう。そういうものを吹っ飛ばすのがスポーツの面白さではないのかよと。更に、その言葉を受けてのトーニャの行動には、何だか胸が詰まった。それでも家族を求めるのか・・・。

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『ある殺し屋』

 大映男優祭にて鑑賞。森一生監督、1967年作品。表の顔は小料理屋の主人、裏の顔は腕利きの殺し屋である塩沢(市川雷蔵)は、木村組の依頼で対抗組織である大和田組のボスをしとめる。彼の腕前を見た木村組の前田(成田三樹矢)は、塩沢においしい話があると持ちかける。大和田組が扱う麻薬を横取りしようというのだ。原作は藤原審爾の『前夜』。
 市川雷蔵といえば時代劇での超絶美形っぷりのイメージが強いので、素顔だとこんなに地味なのか!とまずびっくりする。これはすれ違ってもわからないだろうなぁ・・・。しかしその地味さ、はっきりとした特徴のなさが、本作の殺し屋という役柄には合っていた。どこにでもいるようでいて、立っているだけで妙な圧を出してくる。得体のしれなさが漂っている。あえてそういう雰囲気を出す演技をしているという風でもないのだが、不思議な俳優だよなー。
 冒頭から、この人(達)は何をしようとしているのか、どういう関係なのかをストレートには説明しない。新しい登場人物が登場するとちょっと時間を戻して、この人とはどういう関係なのか見せ、また現在進行している事態に戻って、というような時間をいったりきたりする構成だ。この構成、ぎこちなくもあるのだが、一体何が起きているのかという見ている側の興味を引っ張っていく。ちょっとフィルムノワールの小品ぽいざらついた雰囲気があって悪くない。主な舞台が湾岸(多分羽田近辺)なのだが、当時の埋め立て地帯ってこんなに何もなかったのかという、時代を垣間見る面白さもあった。

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『アンロック 陰謀のコード』

 CIAの尋問官だったアリス・ラシーン(ノオミ・ラパス)は、尋問相手から情報を引き出せずテロ犠牲者を出してしまったことに責任を感じ、ロンドン支局へ移動。ケースワーカーとして移民の就労支援をしつつ、ロンドン支局担当者に提供する情報を探っていた。ある日CIAに呼び戻され、ある尋問を依頼されるが、それはCIAを装った偽物だった。監督はマイケル・アプテッド。
 ラシーンの元上司ラッシュ役がマイケル・ダグラス、CIAヨーロッパ部門部長ハンター役がジョン・マルコビッチ、ロンドン支局長ノウルズ役がトニ・コレットと、脇役が妙に豪華かつ渋い。そしてラシーンと行動を共にするようになる男オルコット役がオーランド・ブルーム。ハリウッド映画でよく見る俳優をちりばめているが作品の雰囲気はあまりハリウッドぽくなく、小粒で地味な印象。事件の真相が二転三転していくが、脚本が精緻というよりは、スピード感でなんとか乗り切っているという感じ。スピード重視で余計な説明を省いていくあたりは良かったが、複雑なように見えて、結構雑というか脇のあまりストーリー展開だ。CIAの対応が意外とずさんなあたり、妙なリアリティがあると言えばあるのかもしれないが・・・。
 ラシーンは過去のテロ事件の際、尋問が上手くいかなかったことに強い自責の念を持っている。その為、今回は絶対に失敗できない、犠牲者は絶対に出さないという気負いがある。対して彼女の上司、元上司たちにはそういった気負いはあまり感じられない。もちろん彼らもテロ防止にやっきになってはいるが、彼らにとって被害の規模は数字上のものだ。ラシーンにとっては具体的な個人であり、ケースワーカーとして接したうちの誰かがテロリスト予備軍であり被害者予備軍であるかもしれない。ラシーンの表向きの職業をケースワーカーとしたのは、ストーリーの動線上の都合で深い意図はないのかもしれないが、現場感の差異みたいなものを出す効果はあったんじゃないかと思う。

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『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』

 (極力ネタバレしないように書いたが絶対にネタバレ嫌な人は読まない方がいいかもしれない)
 6つ集めれば世界を滅ぼすほどの力を手にすると言われる、インフィニティ・ストーン。宇宙中に散らばっていたインフィニティ・ストーンを集め、全宇宙の生命の数を半分に減らそうと企むサノス(ジョシュ・ブローリン)が、とうとう地球に向かってきた。アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)らアベンジャーズに加え、異変に気付いたドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバーッチ)やワガンダ王国のティ・チャラ王(チャドウィック・ボーズマン)らも一体となって脅威に立ち向かうが。監督はアンソニー&ジョー・ルッソ。
 時系列的には『マイティ・ソー バトルロイヤル』の直後に当たるのだが、本作の方がむしろラグナロク(『ソー バトルロイヤル』の原題)ぽい。アバンの段階でいきなり大変なことになり(おそらくここで心を折られる人が多数いると思われます)、最後はもっと大変なことになる。見終わって、これ続きどうするの・・・と途方にくれた。そして監督と脚本家(クリストファー・マルクス&スティーブン・マクフィーリー)の度胸に唸り、かつ彼らの胃に穴が開いていないか心配になった。観客が次作までついてきてくれるであろう、1年待ってくれるであろうという確信がないと、なかなか出来ないストーリーの締め方(というかまだ締められていないわけだが・・・)だ。
 今回、主要キャラクターの数はシリーズ最多、本作で処理しなければならない出来事がやたらとあるにもかかわらず、アベンジャーズシリーズの中では最もストーリー構成、画面構成共に整理されており見やすい。複数のエピソードが様々な場所で同時進行しているのだが、意外ともたつきや混乱がなくすんなりと見ることが出来た。また、1作目、2作目ではアクションの山場が続きすぎて逆に平坦に見えてしまう、見た目がごちゃごちゃしてしまうという問題があったのだが、かなり改善されていた。アクションシーン自体が1,2作目よりも減っているのかもしれないが、画面構成やアクション動線の管理が上手いのだと思う。『キャプテン・アメリカ ウィンターソルジャー』『キャプテン・アメリカ シビル・ウォー』でも同じことを思ったので、ルッソ兄弟って画面上の整理整頓が上手いんだろうな。
 本作、アベンジャーズシリーズの総決算というよりも、再構築に入る準備段階のようだった。ラストから察するに、今後はマーベルユニバース自体に対するメタ的な視線が入ってくるのではないかと思うが、それってマーベルユニバースが肥大化しすぎた反動とも言えるのではないだろうか。ともあれ続きが気になる。

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『あなたの旅立ち、綴ります』

 広告業界で成功し、独立した女性として何不自由ない老後を送るハリエット・ローラー(シャーリー・マクレーン)は、自身の訃報記事を生前に用意することを思いつく。地元の新聞社の訃報欄担当ライター、アン・シャーマン(アマンダ・セイフライド)に執筆を依頼するが、希望通りの記事が上がってこない。腹を立てるハリエットに対し、アンは「問題なのは記事じゃなくてあなた」と言い放つ。どの取材相手もハリエットのことをよく言わなかったのだ。ハリエットは最高の訃報記事を作るべく、尊敬される人物像を目指すが。監督はマーク・ペリントン。
 ハリエットの「旅立ち」を綴る、つまり訃報を意味する邦題なのかと思っていたら、それだけではなかった。ちょっとダサい邦題だなーと思っていたけど、二重の意味になっていると言う点では納得。最初はハリエットが自分を変えようとする話なのかと思っていたら、むしろ大きく変化し人生の「旅立ち」を果たすのはアンなのだ。
 ハリエットは長年一人でやってきた、実際自分で何でもよくできて他人を必要としていない(ように見える)人だということが冒頭でざーっとわかってくる。何でもよくできて過不足ないが故に、彼女は人生に飽き飽きしており生きる意欲も無くしているのだ。しかし、最高の訃報を目指して奮闘するうちに、ハリエットの様子が変わってくる。ただ、これは彼女が変化したということではなく、彼女が元々持っていた愉快な部分、チャーミングな部分が再び表出してきたということなのだ。変化というより思いだしに近い。安易に人間はいくつになっても変われる!というのではなく、コメディタッチにではあるが、過去は変えられないし、人の本質はそうそう変わらないというほろ苦さも描いていると思う。
 一方でアンは文筆家としての夢を持ちつつも、現状に甘んじ宙ぶらりんな状態に見える。過去の出来事から変化や失敗を恐れる彼女の背中を、ハリエットの大胆さや自由さが押していくのだ。ハリエットはとにかく有能な人ではあるが、失敗しても嫌われても大丈夫!前進できる!というお手本でもある。ハリエットとアンは全く似た所がないのだが、ぶつくさいいつつも両輪として事態を打開していく、バディムービーのようなロードムービーのような(結構移動するのだ)味わいがいい。
 ハリエットは訃報に使うエピソード作りの為、施設で暮らす少女の面倒を見ることになるのだが、この少女の口の悪さとユーモアが作品のアクセントになっていた。彼女は自分に父親がいないことについて「パパが(施設に迎えに)来ないのは最悪だけど私は最高!」と断言する。そしてかつて母親が家を出て行ったことに傷ついているアンに対して「ママがいないのは最悪だよね、でもあんたは最高だよ!」と断言する。人生、最悪なことはまま起きるが、そのことによってあなたが最悪な存在になるわけではない、そこに責任を感じる必要はないのだ。

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『悪女/AKUJO』

 犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒ(キム・オクビン)は、やがて育ての親ジュンサン(ヒン・ハギュン)を愛するようになり結婚する。しかしジュンサンは対立組織に殺害あれ、復讐に走ったスクヒは国家組織に拘束される。再教育を受け、10年仕えれば自由になれるという条件で国家直属の殺し屋として新たな生活を始めたスクヒ。彼女に思いを寄せる男性も現れ、新たな結婚生活に踏み出せると思われた。監督はチョン・ビョンギル。
 アバンが結構な長さなのだが、その長さがほぼ主観ショットの長回しによるアクションシーン。主観ショットのアクションというとゲームのイメージが強いので、本当にアクションゲームみたいだなーと思って見ていたら、ある瞬間に客観のショットに切り替わる。その切り替わり方で、あっこれ映画だな、と初めて実感した。こう繋いだのか!ということに何だか感動する。
 全編、アクションをどう撮るか、今までやったことがない撮り方をできないかという部分に注力した作品と言ってもいいくらい、見ていて撮り方の方に意識が持っていかれ、ストーリーもアクションそのものもあまり頭に残らない。過去と現在がフラッシュバックしていく構成がかなりごちゃごちゃしていてあまり構成が上手くないというのもあるのだが、撮り方のユニークさが最もインパクトがある。予告編で使われていたバイクアクション(アクションそのものも、カメラの設置の仕方も)が凄まじいのだが、本編はこれよりもすごいことやってるんだもんな・・・。武器の種類も豊富で、短銃、ライフル、短刀、日本刀、韓国映画といえばコレ!な手斧まで幅広い。もちろん素手も駆使される。
 現在進行しているスクヒの行動は過去の反復であり、彼女はそういう使われ方をする女性であり、そこから抜け出せないという悲しさがある。教育施設内の迷路のような謎の構造(部屋同士の繋がりが不自然すぎる)にしろ、何度かに渡る「捕えられ方」にしろ、ここより他に行くところなし、といった感じの徒労感が漂う。ただ、後半では彼女を使うのは女性であり、その女性もまた行くところなどなさそうに見えるのだが。

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『アバウト・レイ 16歳の決断』

 16歳のレイ(エル・ファニング)は女性の体で生まれたが心は男性。心身の性別を一致させ男性として生きる為、ホルモン治療を始めた。転校を前にして手術も希望していたが、両親の同意書がいる。シングルマザーのマギー(ナオミ・ワッツ)はレイの意思を尊重しつつも動揺を隠せない。カミングアウトした同性愛者でパートナーと暮らす祖母のドリー(スーザン・サランドン)はトランスジェンダー自体わかっておらず、「レズビアンじゃだめなの?」と言う始末だった。監督はゲイビー・デラル。
 原題は「3Generations」。レイを中心とした話というよりも、彼を含めマギー、ドリーの3世代間でのギャップと軋轢が描かれる。マギーはレイの幸せを願い、彼と話し合って医者やカウンセラーにも相談し、自身でも勉強している。それでも「娘」として接してきた存在が「息子」になると接し方がわからなず混乱する。ドリーは前述の通りトランスジェンダーと同性愛との違いをよく理解していない。ドリーにとってレイは(生まれた時に付けた名前の)ラモーナであり、「彼女」だ。
 実はマギーはとある事情を抱えており、そのせいもあってなかなか同意書を用意できずにいるのだが、新しい生活を始められる!と喜んでいるレイにそれを言い出せない。同時に、マギーの事情はレイの苦しみを解決しない言い訳にはならない。レイはマギーの事情を理解するかもしれないが、それとこれとは別問題なのだ。マギーの過去を巡るひと悶着を耳にして叫びだしてしまうレイの姿は子供っぽいかもしれないが、まあ叫びたくもなるわな・・・。親の問題は親の間で解決しておいてくれよ!ということだろう。
 家族なんだから分かり合える、という言い回しがあるが、鵜呑みにするのは危険だ。むしろ、家族であっても他人であり、分かり合えない部分は当然あると考えた方がいいだろう。マギーもドリーもレイを愛しており、レイも2人を愛しているが、お互いに全て理解できるわけではない。愛と理解(と受容)は別物なのだ。ドリーの家を出なければならないことをマギーがレイに告げた時の彼の反応と、それを見たマギーの表情が、ああ親子でも常に意思疎通しているわけじゃないもんなぁと痛感させられるものだった。

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『アトミック・ブロンド』

 冷戦末期、西側に極秘情報を渡そうとしていたMI6の諜報員が殺され、最高機密の行方がわからなくなった。MI6の諜報員ロレーン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)は機密リストを奪還し、裏切り者の二重スパイを特定するという任務を命じられた。西ベルリンに赴いたロレーンは、現地エージェントのデヴィッド・パーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)に接触する。監督はデヴィッド・リーチ。
 最近のいわゆる「アクションがすごい」(例えば本作監督のリーチが製作・共同監督を務めた『ジョン・ウィック』のような)は、アクション自体はすさまじいスピード、破壊力に見えても、そんなに痛そうには見えない場合が多いと思う。いちいち痣や切り傷、擦り傷まで見せたりしないし、そもそもなかなか死なない。しかし本作は、「アクションがすごい」ことに加えて、アクションにより受けるダメージが生々しく、かなり痛そうだ。いちいち痣は出来るし怪我をして血がにじむし、殴られたり高所から落ちたりしたら、すぐには動けない。怪我をしたらなかなか治らない、というのは普通のことなのだが、本作のような映画でそれをきちんと見せられると最早新鮮に見える。このくらいの打撃を加えられたらこくらいのダメージを受ける、という具体性があるのだ。
 また、ロレーンが女性である=同業の男性に比べると筋力が少ないという設定をふまえたアクション設計で、自分よりウェイトがある・腕力のある相手をどう倒すかという所も面白かった。フライパンやら椅子やらで戦い、双方ズタボロになっていく様は見ようによってはコミカルだが、ズタボロさ、ヨレヨレ加減(足元のふらつき方)に妙に生々しさがある。ロレーンは、非常に強いが無敵というわけではないのだ。原作がグラフィックノベルだというから、もっとマンガ的な無敵っぷりなのかと思っていたが、そこまでではない。しかし、そこが魅力になっている。傷と痣が残っていても、露出の高いドレスを堂々と着こなすあたりも素敵だった。彼女はそういう職業であり、そういう人なんだなとよくわかるシーンだったと思う。
 アクション以外の部分が意外と地味なスパイ映画になっているのも意外だった。青を基調に赤をアクセントにしたビジュアルはスタイリッシュ(ちょっと懐かしめの感じだけど)だが、話が案外泥臭い。泥臭いというよりも、あまり建て付けがうまくなく実際以上に込み入って見えてしまうと言った方がいいか。どの登場人物もずば抜けて聡明・計算高いというわけではなく、自分がやっていることが大きい図式の中でどのあたりのパーツになるのか読み切れていない感じ。その読み切れなさが、冷戦当時のスパイものっぽく哀愁漂う。ロレーンについても同様・・・なのだがこのラストだとなぁ・・・。一つ上の階層からの視線が入ってしまう気がする。
 なお、音楽のセレクトは素晴らしい。あの時代っぽさと今っぽさのさじ加減が抜群だと思う。終盤、ある曲が流れると、ああ時代が変わった!って気分になるところも説得力あった。

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寒い国から帰ってきたスパイ
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