特殊部隊に参加し危機に陥った男(ジョン・デビッド・ワシントン)は第三次世界大戦を阻止するために未来からやってきた敵と戦うという任務を課せられる。未来では「時間の逆行」と呼ばれる装置が開発され、人や物を過去に移動させることができるのだ。そして何者かがこの装置を現代に送り込んだ。相棒のニール(ロバート・パティンソン)とミッションに挑むうち、ロシアの武器商人セイター(ケネス・ブラナー)がキーマンだとわかってくる。監督はクリストファー・ノーラン。
ストーリー構成が串団子状とでもいうか、次々とエピソードが繋がっていくが一つ一つの間の繋がりの説明があまりないので、ストーリーの筋道を追うのがかなり大変だった。主人公の男が、誰が何の為に発した指令なのかわからないのに任務に従い続けるというのも不思議だし、正直、よくわからなかった部分も多々ある。説明がミニマムというよりも、繋ぎ・説明のポイントがずれている気がした。監督のやりたいことに構成力が追いついていないのではないかという『インターステラー』と同パターンであったように思う。『ダンケルク』で改善された長尺も復活してしまっているし、これだけ説明割愛してもこの長さになっちゃうのか…という徒労感がある。
本作のポイントはもちろん「時間の逆行」にある。時間上のある地点からある地点に飛ぶ=タイムスリップではなく、自分の時間を巻き戻してある地点に到達するというシステムだ。ビジュアルとしては確かにこの方が面白い。面白いのだが、これわざわざ逆向き演技をやらせる必要あるのかな?という根本的な疑問を感じてしまった。ノーラン監督と言えば、CGは極力使わず可能な限り実物を用いた大規模撮影を行うことで有名だ。本作でも本物の飛行機を倉庫に突っ込ませ爆発させるという荒業を筆頭に、派手なシーンがいくつもある。しかし、個人的にはこれらのシーンはあまり印象に残らなかった。むしろ、船と波が逆行していたり、鳥が後ろ向きに飛んだりというフィルムを逆回転させたであろうシーンの方が印象に残った。音も逆回転するという面白さが印象に残ったという面もあったのだが、印象度とコストが私の中では反比例してしまった。
何より、中盤まではともかく、終盤の大オチって「逆行」を用いる必要があまりないのでは、普通のいわゆるタイムトラベルネタになってしまうのではという気がした。諸々見落として理解しきれていないだけかもしれないが、「逆行」というネタとストーリーとが必ずしも合致していないように思う。また、「逆行」システムだとこの見え方はおかしいのでは?という部分があった気が…いつになく展開の速さ(なのに長い!)で押し切ったなという印象を受けた。