3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

映画題名数字アルファベット他

『ALONE アローン』

 砂漠地帯でのテロリスト暗殺に失敗したアメリカ兵マイク(アーミー・ハマー)は、相棒のトミー(トム・カレン)と共に多数の地雷が埋まるエリアに足を踏み入れてしまう。トミーはマイクの目の前で死亡、マイクも地雷を踏んで一歩も動けなくなってしまう。援軍が到着するまでの52時間、彼は何とか持ちこたえようとする。監督はファビオ・レジナー&ファビオ・ガリオーネ。
 ワンシチュエーションサスペンスという括りになるのだろうが、1ネタ勝負作と思って見たら意外な味わいがあった。地雷を踏んで動けないという状況そのものよりも、その状況から沸き起こるマイクの内省、マイクの過去とトラウマの方が前面に出てくる。「踏んで一歩も動けない」という状況自体が、彼のこれまでと、今の内面を象徴しているのだ。優秀な狙撃手らしいマイクが、なぜ最初にあんなに狙撃をためらったのかというのも、ジェニーに連絡しろと言われると歯切れが悪くなるのも、彼がやってしまったこの延長線上にあるのだ。過去の断片はちらちらと提示され、徐々に全体像が見えてくる。彼にとっての「踏む」「ひざまづく」という姿勢の意味合いがクライマックスに向け重なっていくのだ。
 マイクの内省という側面が強く、ファンタジーや寓話の方向に物語の見せ方がひっぱられがちではある。作中のリアリティラインの設定があやふやになりがちで、そこで賛否が割れそうな気がした。ただ、マイク個人の物語として見ると、悪くなかったなと個人的に思う。自分ひとりでどうにかせざるを得ない問題だとマイクは思い込んでおり、確かにそうなのだが、彼を待っている人が確かにいるのだ。ハマーのほぼ一人芝居といってもいい作品だが、ちゃんと間が持つ。ルックスのパーフェクトさにばかり注目されがちだけど、スキルがあるんだよな。

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2018-06-20


『30年目の同窓会』

 バーを営むサル(ブライアン・クランストン)の元を、30年ぶりに軍で同僚だった旧友ドク(スティーブ・カレル)が訪ねてきた。同じく悪友だったが今は牧師になっているミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)と合流する。戦死して母国に送り返されてきたドクの息子の遺体を、故郷ポーツマスへ連れ帰ろうというのだ。監督はリチャード・リンクレイター。
 2003年が舞台なのだが、ドクら3人はベトナム戦争で従軍した同期。ドクの息子は中東に派遣されて死んだ。時代設定の妙があるが、2010年代になったから距離感を持って見ることが出来る話でもある。2000年代一桁だったら生々しくてちょっと辛かったかもしれない。
 ドク、サル、ミューラーは海軍で共に戦い生き残った仲間だ。しかしそれだけではなく、ある秘密への後ろめたさが彼らを繋いでいることが徐々にわかってくる。この秘密の関する情報の出し方がさりげなくて上手い。そしてその秘密の性質と、ドクの息子の死とが重なっていく。広い意味での戦争映画とも言える。戦争により戦地に赴いた当事者が、その家族がどのように傷つくのかという話でもあるのだ。
 ドクは息子の死に方にも、軍や政府の対応にも納得できず、彼らへの反感から戦死者墓地への埋葬を拒否して遺体を地元に連れ帰ろうとする。また彼らは、ベトナムでの体験は最低だったと言う。にもかかわらず、軍への帰属意識や仲間とのバカ騒ぎの記憶は、おそらくかけがえのないものとして彼らの中にある。その矛盾が面白い。言うこととやることの裏腹さという点では、サルとミューラーの「嘘」を巡る言い合いとその顛末も同様だ。矛盾を否定せず、どちらも成立するものとして本作は描いているのだ(構成が良くできている)。正しいことと思いやりとは必ずしも一致しない。このあたりは、中年の主人公だからこそ出た味わいではないかと思う。
 脱線しまくりのロードムービー的だが、ラストは意外とすぱっと終わる。最近の映画だとこの後ひとくだり作って肩の力抜いた感を出しそうなところ、あっさり終わるところが逆に新鮮だった。




『GODZILLA 決戦機動増殖都市』

 ゴジラから地球を取り戻すべく、決死の戦いに挑んだハルオ(宮野真守)ら人類だったが、地中から現れた真のゴジラに敗退する。仲間とはぐれ負傷したハルオは、フツアと呼ばれる原住民の少女ミアナ(小澤亜李)に助けられる。フツアはゴジラから逃れ、地下で生活することで進化し生き延びてきたのだ。彼らが持つナノメタルは、21世紀に対ゴジラ兵器として開発されたメカゴジラに使用されていたものと判明。メカゴジラの開発プラントがまだ残っていると知ったハルオたちは再びゴジラに挑む。監督は静野孔文&瀬下寛之。ストーリー原案・脚本は虚淵玄。
 『GODZILLA』3部作の2作目。前回から直接ストーリーは続いており、作中での前回振り返り等はないので、3作続けて見ることが前提になっている。今シリーズのゴジラはかなり巨大化、かつでたらめにエネルギーに満ちているので、勝てる気が全然しない。むしろハルオはよく勝とうと思ったな!広げた風呂敷を畳めるのか心配になってくるくらいなので、ちょっと強さをインフレ化させすぎなのではないかという気もする。それに今回明かされる地表の生物の状況からすると、地球を再び人類が暮らせる 環境に戻すのってまあ無理なんじゃないかと思えてくる。
前作にしろ今作にしろ、ハルオが演説により仲間を扇動してゴジラと対決するが、という展開が見られるのだが、ハルオにそれほどカリスマがあるようには見えないのが痛い。そんなに頭良さそうにも見えないし、リーダーシップに優れているという感じでもない。ゴジラへの怨念で大分クレイジーになっているなというくらいだ。演説にしても、この程度の言葉で扇動される?だとしたらゴジラ甘く見すぎでない?という気も。ハルオが他人のもくろみに上手いこと乗せられてるんじゃないかなというふうに見えてしまう。実際どうなのかは次作で明らかになるんだろうが。
 なお、本作中では他のスター怪獣の存在も示唆されるし(実際に登場するかどうかはわからないが、双子の巫女がいるってことはアレだよな)、次作で登場する怪獣ははっきり提示される。エンドロールは最後までどうぞ。


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2017-03-22


『BPM ビート・パー・ミニット』

 1990年代初頭のパリ。エイズ活動家団体ACT UP Parisのメンバーは、エイズ患者やHIV感染者への無知・差別に対して様々な抗議活動を行っていた。メンバーのショーン(ナウエル・ペレーズ・ビスカ)は新メンバーのナタン(アーノード・バロワ)と恋に落ちる。しかしHIV陽性のショーンの症状は次第に進行していく。監督はロバン・カンピヨ。2017年第70回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。
 まだHIVに対して多くの人たちが無知で偏見が強かった時代が背景にある。当時エイズに対する有効な治療方法はなく、発症すれば遅かれ早かれ死に至る。しかしHIVウイルスがどのようなもので、どのような経緯で感染して、対処法としてはどういったものがあるのかはろくに周知されていない。同性愛者の病気だから自分たち異性愛者には関係ないだろう、くらいの認識だ。フランスでの感染者の増加が激しいと作中で触れられるのだが、これは病気についての広報を怠った政府の責任でもあったんじゃないかなと(感染症を防ぐ為の情報通知って民間レベルでは限界があって、自治体や国レベルじゃないと広く通知させるのは難しいと思う)思わせるし、実際作中でもそういう言及がある。
 ACT UPの活動は特に過激だが、これは今生きている感染者の残り時間が刻一刻と迫ってくるからという切迫感に加え、問題自体が世の中に認識されていない、ないものにされているからという面もあるだろう。元々世間の視野に入っていない存在で、共通言語がなく、何かを訴えても他人事として耳を傾けられないのなら、暴れるくらいしか自分たちがここにいる、こういう問題があると知らせる方法がないということでもある。暴れるのにはそれなりの理由があるのだ。彼らの活動はエイズ患者に対する支援や患者に対する差別撤廃を訴えるものだが、同時にエイズによって、またセクシャリティその他の属性によって自分たちを分断するなという訴えでもある。
 とは言え、ACTUP内でも分断は生じる。病気の進行度合いやどういう経路で感染したのか(薬害エイズ患者と薬物依存症で注射針によって感染した患者とではやはり見られ方が違う)によって、日常の生活の逼迫感や残り時間への焦り、世間からどう見られるかという部分は少しずつ異なり、そこに意識の差が生じてくる。ショーンが徐々にACTUPへの苛立ちを強めるのは、彼の持ち時間の終わりが見えてきてしまったからだ。
 困難な側面を描く作品だが、人と人の関わり方、「今、この時」を全力で生きようとする人たちのきらめきは眩しく、ちょっと涙が出てきそうになる。相手のことを好きでも嫌いでも、恋人でも友人でも親子でも、相手と関わっていきそれを途絶えさせないという意思がある。本作、セックスシーンがそこそこあるが、双方の意思の疎通が感じられるとても丁寧な描き方で、最近見た映画内セックスシーンの中ではベストかもしれない。

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『Infini-T Force ガッチャマン さらば友よ』

 界堂を倒して自分たちの世界を取り戻し、それぞれの世界へと戻ったガッチャマン=健(関智一)、テッカマンン=城二(櫻井孝宏)、ポリマー=武士(鈴村健一)、キャシャーン=鉄也(斉藤壮馬)。しかしある異変により、笑(茅野愛衣)と共に再び時空を超えて一つの世界を訪れる。そこは人類の敵ギャラクターと、それに対抗する科学忍者隊が戦い続け、その末にこの世界の健をはじめとする科学忍者隊は死亡。彼らを創造した南部博士(舩越英一郎)は現れたヒーロー4人に対して、君たちは敵だと告げる。更に健の仲間だった科学忍者隊の一員“コンドルのジョー”(鈴木一真)が現れる。監督は松本淳。
 TVシリーズのダイジェストが序盤20分くらいを占めるのだが、編集の出来があまりよくない。これだったら、映像にナレーションをかぶせて言葉主体で説明してくれた方があらすじとしてわかりやすかったんでは・・・。TVシリーズ自体、ストーリーや設定がわかったようなわからないような話だったからな・・・。今回はガッチャマンがいる世界線が複数存在すると認識しておけばまあまあ大丈夫かと思うが。
 制作側が意識したのかどうかわからないが、TVシリーズに続き本作も、トチ狂った父親(的な存在)と闘う話だ。とは言え、父親の庇護から笑が独立していく物語だったTVシリーズに対し、科学忍者隊を作った南部博士は健やジョーにとって父親的な存在であると同時に共に戦う同志的存在。仲間割れといったほうが近いのか。健は教科書通りの「正しさ」を主張する人でしかもそんなにクレバーではないので、チームメイトとして一緒に戦うのは色々疲れそうではあるなぁ・・・。
 相変わらずゲームのムービー画面的な質感のアニメーションで、正直なところ大画面で見る醍醐味はさほどない(配信でもいいんじゃないかなというくらい)。ただ、モーションキャプチャーを使っているからか、組み合い等のアクションには意外と重さがあって、肉体感が感じられ悪くない。体に厚みがあるキャラクターデザインなので、肉弾戦が映える。
 なお、ゲスト出演の舩越英一郎が上手い!本業声優に交じっても違和感が全くなかった。演技における「キャラ」感をわかっている人なんだろうなー。鈴木一真はちょっとつたないんだけど、ジョーのキャラクターにはあっていると思う。

Infini-T Force Blu-ray1
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ポニーキャニオン
2017-12-20


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『15時17分、パリ行き』

 2015年8月21日、アムステルダムからパリへ向かう高速列車タリスで、銃で武装したイスラム過激派の男が無差別殺人を試みた。たまたま列車に乗り合わせていた米空軍兵のスペンサー・ストーン(本人)とオレゴン州兵のアレク・スカラトス(本人)、アンソニー・サドラー(本人)は男を取り押さえ、大参事を防ぐ。彼らは幼馴染同士で、休暇を利用してヨーロッパ旅行をしていたのだ。監督はクリント・イーストウッド。
 実際の事件を題材に、事件の当事者が本人役を演じているということで話題の本作だが、イーストウッド監督作品の中でも相当奇妙な味わいの作品だと思う。本人が本人役を演じる、というか当時を再現する「再現ドラマ」とも言えるのだが、いわゆる再現ドラマとは映像が明らかに違い、映画としか言いようがない。更に終盤、当時の実際の報道映像も使用されているのだが、割と最近の出来事だしそこに至るまで本人が本人役なわけだから、当時の本人と映画として演じている本人の見分けがつかない。「実際」の映像と「映画」の映像が限りなくシームレスになっているのだ。近年のイーストウッドは実話題材を好んで扱っているが、俳優は当事者本人でもいけるとなると、イーストウッド映画ではプロ俳優は必ずしも必要ないということになってしまう。どこまでが映画か?どこまで映画として撮れるのか?という壮大な実験が開始されてしまったような・・・イーストウッド存命中に実験終わるのかな・・・。
 事件は冒頭から断片的にちらちらと提示されるが、本格的に始まるのは終盤。それまではスペンサー、アレク、アンソニーの少年時代を経て、彼らがヨーロッパを旅する様子が延々と続く。スペンサーとアレクは幼馴染で、アンソニーが転校生としてやってくる。教師からADDと断定され(最初の学校の担任教師といい転校先の校長といい、えっ教員がそういうこと言うの?!ってちょっとびっくりした)学校から浮いているスペンサーとアレク、口が達者でいたずら好きのアンソニーは意気投合する。とは言えその後ずっと一緒にいたわけではなく、アンソニーはまた転校する。スペンサーとアレクも違う道を進んでいく。
 ドラマはスペンサーに主に焦点をあてているのだが、彼は空軍のパラシュート部隊に憧れ、空軍に入ったものの身体能力で落第、他の部門でも遅刻をし、最終的にサバイバル技能や応急処置を学ぶことになる。彼の人生にはちょこちょこと躓きがあり、自分でもどこに向かえばいいのかわからないまま紆余曲折しているようにも見える。ただ、兵士として人の役に立ちたいという意欲はずっと持ち続けており、失望しても腐ったりしない。この意欲を持ち続けていたことが、彼がテロリストに対してとっさに動けた原動力であるように見える。もちろん、彼がパラシュート兵になれずにサバイバル技能を学び、その中で出血時の応急処置を学んだのも、柔術を学んだのも、他の観光客が勧めなかったパリ(パリってそんなに嫌われているんだろうか・・・)に向かったのも、Wifi利用の為に一等車に移動したのも偶然だ。しかし映画として再現されると、全てテロを防ぐという一点の為に経てきた体験のように見えてくる。それが映画と単なる再現映像との最大の違いなのかもしれない。


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『blank13』

 コージ(高橋一生)は兄ヨシユキ(斎藤工)から、13年前に失踪した父親・雅人(リリー・フランキー)が末期がんで入院しており、余命3か月だと知らされる。コージは面会に行くが父とのやりとりはぎこちなく、その後父はあっという間にこの世を去ってしまった。葬儀の参列者たちの話から、家族が知らなかった父親の姿が立ち現れる。監督は齊藤工。
 70分という長さがちょうどいい。前半と後半でがらっと雰囲気が変わる(題名が出るのは作品中盤)所や、冒頭の導入の仕方、回想シーンへの入り方など、ちょっと映画学科の学生の自主制作作品のような演出だなと思った。が、全編見ると意外とオーソドックスな撮り方をしている。特に美術がとてもしっかりとしており、衣装のヨレ方や室内の作りこみ等説得力があった。コージ一家は雅人の借金のせいで困窮しているのだが、本当にお金ない感じがにじみ出ている(家の構造はちょっと謎だったけど・・・)。ここに説得力を持たせないと、コージとヨシユキの父親に対する憎しみ、母のわだかまりがぼやけてしまうだろう。
 スタッフと出演者に恵まれた作品だと思う。高橋一生はやっぱり上手いんだなと改めて思った。父親を見舞いに行った時に顔のこわばり方や動きのぎこちなさから、父親に対して強い葛藤があること、父親を許容できないことが伝わってくる。また母・洋子役の神野三鈴がとてもいい。生活が逼迫しすぎてちょっとおかしくなっている感じにぞわっとした。
 コージもヨシユキも父親を許せないし、雅人がろくでもない父・夫だったのは確かだろう。彼らはそんな父親を切り捨てて生きてきたわけだが、わずかな良い思い出が、コージを子供時代に引き戻す。こういうのって、すっぱり切り捨てられた方が楽なんだろうけど、なかなかそう出来ないよなぁ・・・。母親の苦労をより鮮明に覚えているであろうヨシユキとは、父親への距離感が少し違う所は、目配りがきめ細かい。葬儀での洋子、コージ、ヨシユキそれぞれの振る舞いが、彼らと雅人との関係を示しているように見えた。

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2005-04-08


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『The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ』

 南北戦争中のアメリカ南部。女子寄宿学校で暮らす7人の女性たちの元に、怪我をした北軍の兵士・マクバニー伍長(コリン・ファレル)が転がりこむ。女性たちは彼を敵軍の兵士だと警戒すると同時に、徐々に興味を覚えていく。原作はトーマス・カリナンの小説『The Beguiled』。監督はソフィア・コッポラ。なお原作小説は1971年に『白い肌の異常な夜』(ドン・シーゲル監督)として映画化されている。
 ソフィア・コッポラ監督の映画は、女性を(男性も)美しく撮るが、そこにセクシャルな臭いをあまり感じない。本作も、シチュエーション的にこれはエロいだろう!というシーンは結構あるのだが、どれもエロティックな形があるだけで、中身を伴わない。かなりあからさまにセックスしているよというシーンですら、さほど色っぽくはない。セクシーとされるものの形をなぞっているだけという印象だ。そこが見ていて気楽な所でもある。脅かされている感じがしないのだ。
 音楽といい映像といい、冒頭から不穏な雰囲気をかきたててくるのに不安にならないのも、そのせいだろう。物語上はマクバニーが屋敷に入り込み、エドウィナ(キルステン・ダンスト)を、ミス・マクバニー(ニコール・キッドマン)を、またアリシア(エル・ファニング)を性的な対象として見るわけだが、絵としてはあんまりそういう風に見えない。私がコリン・ファレルにあまりセクシーさを感じないというのもあるのかもしれないけど。
 本作で描かれる女性たちの共同体は、男性という異分子に揺さぶられるが、意外とほどけない。彼女が、あるいは彼女が同性たちを裏切るかのように見えるが、また引き戻される。彼女たちだけで完結した世界なのだ。時代背景は設定されているのに物語上は反映されない所も、箱庭的な雰囲気を強める。この時代のアメリカ南部だったら黒人の使用人がいる方が自然だと思うが、そういったものは現れない。他の兵士もちらりと姿を見せるだけで、遠くで大砲の音が響くにとどまる。世界から取り残されていくようにも見えた。この外側のなさがソフィア・コッポラの作家性なのかなと思う。

ビガイルド 欲望のめざめ
トーマス・カリナン
作品社
2017-12-26


白い肌の異常な夜 [DVD]
クリント・イーストウッド
キングレコード
2017-08-02



『RAW 少女のめざめ』

 厳格なベジタリアン家庭で育ったジュスティーヌ(ガランス・マリリエール)は、両親の母校でもある獣医学校に進学。先輩として既に寮生活をしている姉アレックス(エラ・ルンプフ)を頼るが、彼女は様変わりしていた。新入生の通貨儀式として生肉を食べることを強要されたジュスティーヌは、自身の体の変化に気付く。監督はジュリア・デュクルノー。
 上映中に失神者が出るほどの衝撃作との触れ込みで、一部でかなりの高評価だったらしいが、どのへんが衝撃だったのかな・・・?至って普通に少女の成長物語だった。確かに食肉シーンが衝撃なのかもしれないが、作劇的に特に目新しいことをしているわけではないので拍子抜けした。更に言うなら、わざわざ食肉設定を出してくる必要もあんまりない気がするんだけど・・・。
 ジュスティーヌは学校に附属した寮に入るのだが、新入早々「歓迎」の儀式に引っ張り出されたり、セクシーな服を着ることを強要されたり、出来がいいからと教員に因縁つけられたりで、混乱することだらけだ。先輩が絶対的なヒエラルキーのある世界で、優等生だった彼女は異物なのだ。彼女は学校の雰囲気に自分を合わせようとするが、肉食に目覚めたことがきっかけで、更に合わせることが困難になっていく。
 少女が自分を発見し解放されていくというよりも、自分を取り囲む世界との違和感、そして自分の身体との違和感と相対してもがいていく様に思える。学校内の雰囲気がとっても嫌な感じ(先輩に対して「聖なる存在!」みたいにコールさせるのとか、お祭り騒ぎに参加しないと許されない感じとか)ジュスティーヌが本来の自分であろうとすると、必然的に周囲の人々、最も近しい人々を傷つけることになってしまう。これは彼女の身体的なリアクションであると同時に、内面のリアクションでもある。彼女がセクシーな恰好をするのが自分1人だけの時というのも象徴的だった。
 しかしそれをこういう形で表現する必要ってあるのかなという気がしてならなかった。わかりきったことをもっともらしくやられてもなぁ・・・普通ですよとしか言いようがないよ・・・。特に、言うまでもない様なオチの付け方など、もはやコメディ。

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2016-02-02


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2017-10-03




『THE PROMISE 君への誓い』

 オスマン帝国の小さな村に住むアルメニア人青年ミカエル(オスカー・アイザック)は、医学学ぶためにイスタンブールの大学に入学した。親戚の家に身を寄せ都会での生活を送る中で、アメリカ人記者のクリス・マイヤーズ(クリスチャン・ベール)とそのパートナーでアルメニア人のアナ(シャルロット・ルボン)と知り合い親しくなる。第一次大戦開戦と共にトルコ人によるアルメニア人への弾圧は強まり、ミカエルたちもイスタンブールにいられなくなる。監督・脚本はテリー・ジョージ。
 最近ツイストのきいた作品ばかり見ていたからか、本作のようなストレートな作品は却って新鮮だった。王道の大河ドラマ的な味わいがある。歴史のある側面というだけではなく、現在に繋がる話なのだ。アルメニア人虐殺についてはファティ・アキン監督『消えた声が、その名を呼ぶ』にも描かれていたが、本作はほぼミカエル視点なので、なぜ迫害されるのか、虐殺に発展するのかという説明が殆どなく、心当たりがないのに一気に状況が悪化したという感じの怖さを感じた。記者のクリスの方がむしろ状況を懸念し、アナに国外への脱出を勧めたりする。元々の居住地から追い立て、列車で強制移動させる等、ユダヤ人に対するホロコーストとやっていることがほぼ同じなのもぞっとする。
 題名の「PROMISE」には、いくつもの意味が込められている。お互いパートナーがいるにもかかわらず惹かれあうミカエルとアナの、再会の約束であり、ミカエルと故郷に残した婚約者の必ず戻るという約束でもあり、何より、アルメニア人として必ず生き延びる、民族をとだえさせないという自分たちの過去と未来に対しての約束である。
 また、トルコでは「よそ者」であるアメリカ人クリスの決意にも心を打たれた。トルコ人によるアルメニア人虐殺の記事を書き続けるクリスは、軍に捕えられる。自分の記事が間違いだったと署名すれば命は助けると言われるが、彼は署名を拒む。「署名したら記者としての未来がなくなる」と言う彼に、殺されたらそもそも未来がないと友人は呆れるが、もし記事が間違いだと発表してしまったら、彼が記事に書いたアルメニア人たちはいなかったことにされてしまう。生き延びたとしても彼が今後書いた記事は信用されないし、ひいては志を同じくするジャーナリストたちがどのように見られるかというこのにも関わってくる。職責に対しての約束なのだ。

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