3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

映画題名ら行

『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』

 19世紀ロシア。貴族の娘サーシャ(上原あかり)は北極点を目指し行方不明になった冒険家の祖父を探すため、一人北へ向かう。監督はレミ・シャイエ。
 単純化されたフォルムによる画面構成が美しい。ちょっと切り絵のような味わいがある。近年の日本のアニメーションは、背景美術を精緻に、リアルにという方向性が強いが、それとは真逆の省略による洗練、デザイン性の高さが魅力。面と色のバランスが、特に北極圏に入ってからの氷原の描写が素晴らしかった。木版画の洗練にちょっと近いものがあるように思った。とても美しいと同時に、氷、寒さの恐ろしさも伝わってくる。
 サーシャは祖父の影響で、地図や航路の座標を読みこなし、各地の天候の知識もある。しかし「貴族の子女」である彼女に両親が求めるのは、良縁をつかんで一族の基盤を盤石にすることだ。彼女個人の能力や人格はさほど問題にされないし、そこは評価されるところではない。父親が「期待していたのに」というときの「期待」とは、そういうことなのだ。
 物語はサーシャの社交界デビューから始まる。これで大人の仲間入りということだが、一人前として扱われるというよりも、結婚相手の物色が始まる、「家」の道具として扱われるようになるということでもある。彼女の人生の方向性は決められてしまうのだ。サーシャの旅は、祖父を探し彼の名誉を回復するためであると同時に、サーシャ自身の人生をつかむ為のものであもる。旅の中で個としての力をつけ彼女は成長していく。酒場の女将(自立した女性としてサーシャを導くいいポジションだった)や船乗りたちに鍛えられてどんどんたくましくなっていく姿は頼もしくりりしいが、元の生活に戻った時、その力はどうなるのだろうとも思った。彼女の力を生かせる場はあるのだろうかと。元々所属していた世界に、もはや彼女の居場所はなくなってしまうのではないか。サーシャのような人は、あの時代どうすれば力を活かせたのだろうか。彼女の人生のその先が気になった。

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『ロケットマン』

イギリス郊外の町に生まれた少年レジナルド・ドワイトは、音楽の才能に恵まれ音楽院でピアノを学び始める。やがてロックに傾倒するようになりミュージシャンを目指すことを決意、「エルトン・ジョン」(タロン・エジャトン)という芸名で音楽活動を始める。そして生涯の友となる作詞家のバーニー・トーピン(ジェイミー・ベル)と出会い、成功への道をひた走っていく。監督はデクスター・フレッチャー。
世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの生涯を映画化した作品で、本人も製作総指揮に参加している。とはいえ、史実や実際の時系列に忠実であることよりも、ミュージカルとしての楽しさやビジュアルのインパクト、収まりの良さを重視しているのかなという印象。エルトンのことを良く知らなくても(私も良く知らないし)面白かった。本作、エルトンがリハビリ施設で語りだすシーンから始まる。あくまで一人称の、彼にとっての、彼が見せたいストーリーなんだよというアピールだと思う。
子供時代のエルトンは、父親に褒められたくて色々と関心をひこうとする。しかし父親は彼に冷淡で家にもいつかない。母親は父親ほどではないし気まぐれに彼を可愛がるが、やはりあまり関心はなさそう。彼に保護者としての愛情を注ぐのは祖母のみだ。やがて青年になったエルトンはバーニーと運命的な出会いを果たす。2人は意気投合し強い絆で結ばれる。名曲『Your Song』が生まれるエピソードは、本作のクライマックスの一つだ。とても美しいのだが、2人の関係のピークがもうきてしまったかという切なさもある。エルトンとバーニーの間には愛がある。が、ゲイであるエルトンの愛と、ヘテロであるバーニーの愛は意味合いが違う。更にエルトンはマネージャーのジョン・リード(リチャード・マッデン)と恋におちるが、リードはビジネス第一だった。
 エルトンを愛する人たちはいるが、彼と同じような意味合いの愛、同じような熱量の愛は手に入らない。バーニーはエルトンの音楽の最大の理解者であり、彼都の友愛があったからこそ名曲の数々が生まれたわけだが、彼はエルトンの元に留まってはくれない。要所要所で立ち去るシーンが挿入される。エルトンは悲しんだり怒ったりするが、最終的にはそれを受け入れる。本作、音楽はとても楽しいのだが、この孤独の解消されなさ、愛を得られない様はなかなか辛い。孤独である自分を受け入れ、それでも生き延び音楽を続けるという話なのだ。題名にもなった『ロケットマン』の歌詞がこれまた辛い。実際のエルトンがパートナーを得て元気に生きている(エンドロール前に紹介される)からなんとなく安心するけど、そうでなかったらかなり救いのない話なのでは。
 エルトンと父親の関係に問題があるのは非常にわかりやすい(再婚相手との子供に対する態度の違いがこれまた辛い)。とはいえ、母親も大分問題がある。エルトンが自分はゲイだと告白した後の言葉には、そりゃあ心が折れるよなと。それを言っちゃあお終いよという言葉が世の中にはあるが、さらっと言ってしまうのだ。
 一方、バーニーは一貫してエルトンへの友愛を持ち続けるいい人として描かれているが、折々のしんどい局面で流れる、しかもそのシチュエーションにものすごくハマる曲の歌詞、これ全部バーニーがエルトンが歌うこと前提で書いた(当然エルトンの自分に対する思いもわかったうえで)わけだ。エルトンもそれを要求したわけで、お互いそこまで要求できるというのはなかなか怖い関係性だと思う。ずっと喧嘩はしなかったというけど、本当かな・・・。

『嵐電』

 鎌倉から京都・嵐山にやってきたノンフィクション作家の平岡衛星(井浦新)は、京福電鉄嵐山線、通称嵐電にまつわる不思議な話を収集している。修学旅行生の南天(窪瀬環)は、嵐電を撮影していた少年・子午線(石田健太)に一目ぼれする。地元の食堂で働く小倉嘉子(大西礼芳)は、東京から来た俳優・吉岡譜雨(金井浩人)の方言指導を頼まれる。監督は鈴木卓爾。
 路面電車である嵐電はやはり絵になる。日常の交通手段としても、異界へ繋がるものとしても、大切な人を連れ去ってしまうものとしての嵐電の存在感が作品の核にある。舞台装置の選び方でほぼ勝っているのでは。そのくらい雰囲気がいい。
 3組の男女が登場するが、どの関係もどこかおぼつかない。妻を見失っている平岡、一方通行の思いをぶつける南天と戸惑う子午線、そしてほのかな思いを寄せあうが先が見えない小倉と吉岡。狐と狸が乗った嵐電に乗った2人は二度と会えないという都市伝説が作中出てくるが、狐と狸に出会わなくても彼らはもう会うことはないのではというあやふやさがある。強い思いはあったとしても、自分は相手の何を見ていたのか、相手は自分の何を見ていたのかがわからなくなっていく。
 この世とあの世、異界を繋ぐやり方、ファンタジーの取り入れ方(というかこの世と同じ地平で推移している感じ)が鈴木監督は上手い。音楽にも味わいがあった。歌が異界への入り口のようで、一気にファンタジックになる。あがた森男の主題歌も乾いているが哀愁漂う。

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『レプリカズ』

 人間の意識をコンピューターで作られた疑似脳に移し替える技術を研究している、神経科学者のウィリアム・フォスター(キアヌ・リーブス)は、交通事故で妻と3人の子供を亡くしてしまう。家族を諦められないウィリアムは、禁忌を破って家族のクローンを作り、そこに保存した意識のデータを移植しようとする。移植は成功したが、研究所は彼らに目をつけていた。監督はジェフリー・ナックマノフ。
 キアヌ・リーブスのいいところは、一応大スターなのにすっとこどっこいな映画にもいまだに平気で主演するところだと思う。本作のすっとこどっこい加減もなかなかのものだ。人格・記憶のコピーやクローンの生成などSFネタとしては手あかが付きまくっているから、見せ方には大分工夫がいると思うのだが、本作のそれはむしろ一昔前のものに見える。新作なのにやたらと懐かしい。これはもしや90年代なのでは?というくらい。記憶移植用のアンドロイドや人工脳のデザインのダサさ、今なぜこれを選んだ・・・と突っ込みたくなった。今、「機械の身体」を考えるのなら、もうちょっと違う方向性になるんじゃないかと思うんだけど・・・。
 序盤の展開がやたらとバタバタしているし、ストーリーは大雑把で、細部に目配りがされているとは言い難い。脳コピーのマッピングもクローンの生成も、そんなに手順でそんな短時間の作業で大丈夫なのかというくらいのざっくり感。ただ、全然面白くないのかというと、そうでもない。家族を亡くしたウィリアムは、先のことはろくに考えずに遺体の脳をコピーしクローン作りに踏み切ってしまう。計画らしい計画たてずにそんなことやります?!と突っ込みたくなるし、妻子が「不在」の間のアリバイ作りにあたふたする、ついでにSNS上で娘のボーイフレンドを娘になりすましてブロックする姿など、妙なおかしみがある。いざクローン作りに踏み切ってから我に返って協力者に責任を押し付けようとするあたりは結構ひどいのだが、そのひどさや考えの浅さに逆に説得力を感じてしまった。切羽詰まった人間の行動ってこういうものかもしれないなと。それにしても露呈するのが早すぎるしこらえ性がなさすぎるけど。粘れ!

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『レゴ(R)ムービー2』

 ブロックシティに謎の宇宙人が現れ攻撃を始めた。町は破壊され人々の心はすっかり荒んでしまう。ただしエメット(クリス・プラット/森川智之)だけは相変わらず明るく楽観的で変わらないまま。だがルーシー(エリザベス・バンクス/沢城みゆき)やバットマン(ウィル・アーネット/山寺宏一)が宇宙人にさらわれてしまう。エメットは仲間を取り戻すために宇宙を目指す。監督はマイク・ミッチェル。
 前作のラストの展開をそのまま引き継いでおり、宇宙人の襲来からの街の破壊!理不尽!というところは正に「あるある」ではないだろうか。本当にこういう感じなんだよなーと弟が幼かった頃を思い出してしまったよ・・・。絶対的な未知との遭遇かつコミュニケーション不全だ。そこがダイレクトに作品のテーマのひとつになっている。
前作のラストで明かされる構造は、ラストに明かしたからなるほどね!という鮮やかさがあったが、今回は最初からその構造が維持されているので、これ2時間持たせられるのかな?大丈夫なのかな?と少々ハラハラした。実際、2つの世界が並行して展開されることでちょっとストーリーは散漫な印象になっている。しかし意外と持ちこたえており、前述のコミュニケーションの問題もよりくっきりと浮かび上がったように思う。
 前作では全てが最高!それぞれが最高!とブチ上げられた。しかし今回は、全てが最高といつまでも言えるわけではないというモードにいきなり突入する。更に、エメットは大人になれ、現実を見ろと強いられていく。いきなり前作から方向転換してくるのだ。しかし、今最高でなくても最高を目指し続けることはできる、そしてクールでタフなリアリストになることと、大人になることとは必ずしもイコールではないのだ。どんな最高を目指すかも、どんな大人になるかも自分で決めていい。本作、そこそこ年齢いった大人でないとわからないであろう小ネタ映画ネタ満載なのだが、このテーマに関しては子供が見るべき映画なんだろうな。
 なお、前作に引き続き吹替え版で見たが、ミュージカルシーン含め結構よかった。声優陣の安定感は抜群だった。字幕では拾いきれなさそうなギャグがある(モブの会話がギャグになっていたりするので)。私は基本字幕派だが、コメディに関しては字幕だと温度差が出ちゃって笑いきれなかったりするので、吹替えを上手にやってくれるのがベスト。

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『ROMA』

 1971年のメキシコ。医者のアントニオ氏一家の屋敷で家政婦として働くクレオ(ヤリッツァ・アパリシオ)。ある日アントニオ氏は出張と称して家を出、妻ソフィア(マリーナ・デ・タビラ)と4人の子供を残したまま戻らないままだった。一方クレオは恋人に妊娠を告げるが、彼もまた姿を消す。監督はアルフォンス・キュアロン。 モノクロ映像が美しく、結構長回しが多い。相変わらず流暢な映像だが、映像よりも音の方が印象に残った。雨風の音や、鳥や動物の鳴き声や町の雑踏のざわめき、海の波の音等、環境音の入り方、広がり方にすごく気を使っているという印象だ。人の声の距離感も生々しい。  使用人としてつつましく生活しているクレオも、裕福な雇い主であるソフィアも、男性に捨てられる。クレオはソフィアや子供たちに忠実に仕えるし、子供たちはクレオにとても懐いている。ソフィアは妊娠したクレオを親身になってケアする。彼女らは家族のように見えるし、ソフィアはクレオを家族扱いしているつもりだろう。しかし、2人の女性の間には身分の差が依然としてある。クレオが病院に運び込まれた時、ソフィアの母は彼女のフルネームも生年月日も知らないことがわかる。彼女らにとって、クレオはそういう情報は必要のない存在であり、対等なものではないのだ。2つの世界が同じ空間で別個に展開されているような構造だ。子供たちはその2つの世界を自由に行き来しているようには見えるのだが。そしてクレオとソフィアそれぞれの世界の背景に、当時のメキシコの社会の変動が横たわる。絵巻物のようでいて、重層的な景色が展開されていく。  不吉な予感を感じさせるシーンが非常にわかりやすく、クレオの出産がどのような顛末になるのか、容易に想像できる。これ見よがしと言えばこれ見よがしなのだが、そのわかりやすさが神話のような味わいになっている。帰宅するたびに車をこすっちゃうという最早反復ギャグみたいなくだりも、分不相応なものを使っている(ので買い替えたらこすらない)という比喩みたいでわかりやすい。しかし駐車シーンのたびに他人事とは思えず、フェンダミラー!フェンダミラー気をつけて!とハラハラしてしまった。

『レディ・バード』

 カリフォルニア州サクラメントに暮らすクリスティン・マクファーソン、自称レディ・バード(シアーシャ・ローナン)は、カソリック系高校に通う17歳。母マリオン(ローリー・メトカーフ)は地元の公立大学に進学しろと言うが、都会に出たくてたまらず、内緒でニューヨークの大学の奨学生に応募している。高校生活最後の1年、友人やボーイフレンドとひと悶着あったり、家族とぶつかったり、将来について悩んでいく。監督はグレタ・ガーウィグ。
 女優として活躍しているガーウィグの初の単独長編監督作だそうだが、監督としてもいい!自意識過剰で「イタい」高校生の姿には自身の体験も投影されているというが、そのイタさを卑下するような所、自虐感がないところがよかった。レディ・バートに対しても、彼女の友人や家族、ボーイフレンドらに対しても、ほどよく距離感があり誰かを悪者にしようとはしない。
 レディ・バードと親友のやりとりがどれも心に残る。プロムが出てくるアメリカの映画はいくつも見たけど、本作のプロムが一番じーんときた。こういう友人て得難いよなとしみじみ思う。もしかしたら、彼女らはこの後疎遠になるのかもしれないけれど、そうだとしてもいいのだ。この時、この人がいてくれたということがすごく大事なのだ。一方、レディ・バードがイケてる自分を演出したいが為に接近するクラスのイケている女子についても、彼女がいじわるだとか浅はかだという描き方はしていない。ただ、今の現実生活が経済的にも精神的にも充実していていて自己評価の高い人は、地元を出たいとはあんまり思わないんだろうなぁという妙な説得力があった。彼女にとってレディ・バードは「その他」であり個人としては認識されてなかったという所もリアル。
 レディ・バードの高校最後の1年をハイスピードで描く青春物語であると同時に、彼女と家族の物語としても際立っている。特に母娘の関係が、こういう描き方はありそうでいてあまりなかった(あり方がユニークというより、こういう部分をわざわざクローズアップしようという人がいなかったと言う意味で)気がする。仲が悪いとかお互いに全く理解不能というわけではない。マリオンはすごく強い人で、レディ・バードに対しては少々過干渉なようにも見える。レディ・バードの方も大分我が強いのでいちいちカチンとくるのだ。マリオンは正しい人だが、正論でこられると(特に家の台所事情が絡むと)子供としては辛いものがある。レディ・バードくらい我の強い子じゃないと、マリオンのような母親と個人として張り合えないだろうから、悪い組み合わせではないのだろうが。レディ・バードが落ち込んでいる時にマリオンが慰めるやり方等、器用ではないが娘のことを本当に愛しているというのはわかるのだ。
 レディ・バードはミッションスクールの校風や決まり事(プロムのダンスホールをシスターたちが見張っているのにはちょっと驚いた)は決して好きではない様子だし、敬虔なクリスチャンというわけではもちろんないだろう。しかしこの学校の先生たちは実はすごくちゃんとしている。演劇の先生にしろ、校長であるシスターにしろ、生徒のことを良く見ていて、いい部分を引き出そうとしていることがわかる。シスターがレディ・バードの文章に対して「それは(地元を)愛しているってことじゃないかしら」と指摘するが、確かに自覚はなくても、愛憎混じったものであっても、そうなんだろうなと思える。都会に出て早々に大失敗した彼女は、ある場所に立ち寄る。うざったく感じていても、もう自分の一部なのだ。

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『ランペイジ 巨獣大乱闘』

 違法な遺伝子操作実験の失敗により、自然保護区内でゴリラ、オオカミ、ワニの3頭が巨大化、狂暴化した。様々な動物の強みを取り入れた遺伝子により力を得た動物たちには軍もなすすべながなかったが、遺伝子操作実験の首謀者である大企業は、動物たちからDNAサンプルを採取しようと、シカゴへとおびき寄せようとする。元特殊部隊員で動物学者のデイビス・オコイエ(ドウェイン・ジョンソン)は、動物たちを止めようと3頭の後を追う。監督はブラッド・ペイトン。
 巨大動物大暴れという1ネタのみで100分強を乗り切る、潔い娯楽作。遺伝子操作だろうが何だろうが、とにかく「動物が巨大化して強い」という幼稚園児のような発想だし、そもそも生物としての強さはその方向で合っているのか?大企業もDNA採取するのにその方法でいいのか?返り討ち間違いないぞ!という突っ込みも入れたくはなるが、大きい物が暴れまくるのは愉快だ。荒唐無稽というよりも大分頭の悪い世界観をそれなりに成立・納得させてしまう、ドウェイン・ジョンソンのスター性に唸る。彼の存在によって「映画」として成立しているように思う。ゴリラとの「会話」も、まあジョンソンさんならゴリラとお話くらいできて当然、という気分になってくるし、何しろ死にそうにないので安心だ。
 このシーンとこのシーンの間に何かもう一展開くらいないと流れがおかしいな?という所が何か所かあるのだが、話の整合性よりもテンポの良さ、スピーディーで飽きさせないことを優先していると思う。無駄に尺を長くしないところはとてもよかった。さくっと気軽に見られて見た後はスッキリ、余韻は何も残さないという娯楽作に徹している。こういう映画も絶対必要なんだよなー。自分の立ち位置をよく理解している作品だ。


『ルイ14世の死』

 太陽王と呼ばれ、豪奢を突くしベルサイユ宮殿を作ったルイ14世(ジャン=ピエール・レオ)は死の床にあった。廷臣や医者たちは王の回復の為に尽力する一方で、死に備えつつあった。監督はアルベルト・セラ。
 カメラ数台をほぼ固定して撮影しているようだ。非常にかっちりと絵を作りこんでいるように見える。特にライティングはレンブラントの絵画を思わせるような光と影のコントラストを強調したもので、同時に輪郭ははっきりさせすぎない。影の中に対象が沈んでいくような印象も受ける、絵画的なもの。絵を作りこんでいるように見える一方で、カメラの前を平気で誰かが横切ったり、話している人が他の人の影に隠れて肝心の表情が見えなかったりする。それでOKにしてしまうんだなという、不思議な新鮮さがあった。自分の絵の設計に強烈な自信のある監督なように思う。また、室内はほぼ薄暗いままで見た目では昼も夜もわからない。屋外から聞こえる鳥のさえずりや虫の声で、時間が経過したことが何となくわかってくるという、音の使い方が良かった。
 ルイ14世はほぼ寝たきりで、回復は見込めないだろうという状況なのだが、死にそうでいてなかなか死なない。人間が死ぬのには時間がかかるんだなぁと妙に感心した。ある死が始まってから完了するまでを延々追っている映画とも言える。
 人の死という一般的に深刻な事態が進行している一方で、そこかしこに妙なユーモアがある。そこでそんな勇壮な音楽入れるの?!(作中、いわゆるサウンドトラック的音楽がかかるのは多分ここだけ)とか、王が帽子を取って挨拶したり、ビスケットを食べたりするだけで廷臣たちが拍手したり。こびへつらっていると言うわけだが、不思議と皮肉っぽさはない。帽子のくだりに関しては、王自身もこっけいなのをわかってやっているふしがあるように思う。ユーモラスなのだ。
 当時最先端であろう医術を施す医師たちがいる一方で、オカルトまがいの薬を処方するエセ医師もいる。周囲はどちらが適切とも決められずにおり、この時代の科学と迷信とがせめぎ合っている感じがした。医師たちの処置は現代から見ると的外れでもあるのだが、その行動には科学的な精神があるように思った。何でも確認し、トライ&エラーを重ねてデータを蓄積する。最後の医師の発言には笑ってしまうが、科学者の姿勢としては真っ当だろう。科学の前では王も平民も一症例にすぎないのだ。


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『陸軍中野学校』

 昭和13年10月、三好次郎(市川雷蔵)ら18名の陸軍少尉が、九段の靖国神社に集合した。彼らは草薙中佐(加東大介)が極秘裏に設立した日本初の秘密諜報機関員養成学校、陸軍中野学校の第一期生として集められたのだ。入学する者は外部との連絡を一切絶ち、戸籍もなくし、今後偽名で通さなければならない。三好には母と婚約者の雪子(小川真由美)がいたが、彼女らには行き先不明の任務と告げたきりだった。監督は増村保造。
 スパイもの、というよりスパイ学校ものなのだが、スパイに必要な技能を生真面目に学ぶ様が妙に面白い。刑務所から金庫破りのプロを召喚して錠前の開け方を学んだりするのだ。他にも各種機械の組み立て修理や毒薬の扱い、暗号解読、拷問等色々な授業があるのだが、教師はどこから連れてきたのかとか、教師に対する口止めはどのようにしていたのかとか、色々気になってしまった。
 草薙中佐の中野学校にかける思いは熱く、当時の「頭の固い」軍では育てられない人材を作り出そうという意欲に満ちている。しかし、学校が訓練機関として機能していくと共に、従来の軍隊の体質とさして変わっていない面が露呈していくのがなかなかきつい。その場の盛り上がり、空気の読みあいで物事が決定してしまう薄気味悪さがある。このあたり、当時はどういう風に見られていたのだろうか。草薙は「去りたい者は去っていい」「俺を恨むか」と問うが、仮に当人にその気はなくても、異論は封殺される空気が醸し出されちゃってるんだよなぁ・・・。草薙も、それを見越したうえで熱血パフォーマンスをしているようにも見えるのだ。切腹の件など、あー日本って!とげんなりする。この前近代感!
 三好と雪子との期せずしてのすれちがいの悲劇は、メロドラマ性が高くてスパイ要素とはまた違った面白さがある。淡泊な三好に対し雪子が意外と情熱的で情念をにじませており、悲劇が際立っていた。なお、昭和13年が舞台で、戦争の為に調味料などが不足しているという描写があるのだが、雪子やバーの女性達の服装は結構おしゃれ。映画的な演出なのかもしれないが、洋服のデザインに凝る余裕はまだあったということなのかな。

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2012-06-29



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