母国の中国から韓国へ渡ってきた、ジン・シャ(ファン・ビンビン)は、韓国人の夫がいるものの抑圧され息苦しさを感じている。ある日、職場である空港の安検査場で緑色の髪の女(イ・ジュヨン)と知り合った彼女は、ふとしたことから非合法的な取引の世界に足を踏み入れることになる。監督はハン・シュアイ。
女性2人が共に逃避行を始めるまでのアバンはスリリングで勢いがありなかなか良いのだが、その後の中盤以降がぱっとしない。2人の逃避行は、なぜか元いた所に戻ってしまうような展開を見せる。危機に陥ったジン・シャは夫を頼るが、夫は敬虔なクリスチャンとして振舞う一方で、妻に対しては非常に支配的だ。ジン・シャが夫から性的な暴力を受けるシーンは結構きつい。本編前に「性的な暴力描写があります」という通知がされていたが、これは確かにトラウマよみがえる人もいそうなので通知した方がいい(というかチケット買う前の段階でしてくれた方がいいのでは…)かもしれない。
一方で緑の髪の女も、恋人の指示の元で薬物の密輸を続けており、なかなか彼との繋がりを切ることができない。2人は自由を手に入れる為に賭けに出るのだが、何だかんだで男たちとの繋がりを断つことができないのだ。これがどうにももどかしかった。ラストも、女性が自由になるのにこのやり方というのは、少々感覚が古いように思う。今だったらもっと別のやり方も見せられるように思う。一見すると女性同士の連帯、ガールズフッドの物語のようだが、実際はそうでもなかった。
感覚の古さという点では、ジン・シャたちが財布とホテルのキーをくすねた男性が実はドラッグクイーンないしはトランス女性だったらしいという所も、後味が良くない。社会の隅っこに追いやられがちな者同士で食い合わなくてもなぁと。「女になりたいなんて考えられない」というのも、そういう問題じゃないと思うんだけど…。