3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

映画題名は行

『ポリーナ 私を踊る』

 ロシア人少女ポリーナ(アナスティア・シェフツォワ)は厳格な恩師ボジンスキー(アレクセイ・グシュコフ)の元でバレエを学び、ボリショイバレエ団への入団を果たす。しかしコンテンポラリーダンスと出会い、ボリショイでのキャリアを捨てフランスのダンスカンパニーへ入団するが、自分の踊りに行き詰まりを感じ始める。原作はバスティアン・ビベスのグラフィックノベル。監督はバレリー・ミュラー&アンジェラン・プレルジョカージュ。
 ポリーナは何かと行動が速い(悩む部分を省略した演出でもあるわけだが)。踊りの方向性を変えるのも、パリやアントワープへ拠点を移すのも、特に貯金があるわけでもなさそうだし、誰かに相談したわけでもなさそう。それでも自分にとってきっとこれが必要だからやる、という感じで、決して人嫌いではなさそうだが、自分の中で完結する思考方法の人に見える。特にダンスの場合、(素人考えだが)自分自身と向き合わざるを得ない内容だろうから、他人に相談してどうこうなるものでもないのかなと思った。パリへ向かう際、娘がボリショイでプリマになることを夢見ていた母は泣く。また、アントワープで彼女と会った父親は、バーでバイトをする為に来たのかと彼女をなじる。ポリーナは反論はするが、強くぶつかり合うことはない。自分がやろうと思ってやったことだから、今更ぶつかり合う必要もないのだろう。両親と仲が悪いわけではない(むしろ良さそうだ)が、両親とは言え自分の領域に立ち入るべきではないという態度がはっきりしていた。これはその時々の恋人に対しても同様で、休みだしもうちょっとベットにいようと引き留められてもレッスンしたいからとさっさと出かける姿が印象に残った。こういう時に揺れない人なんだなと。
 彼女は基本的に自分本位で行動するが、そうであっても自分のダンスがどのようなものなのか、何が向いているのかは掴みきれずにいる。古典を踊っても何かが足りず、かといって古典からはみ出すほど個性が強いという感じでもない。一方、コンテンポラリーの師であるリリア(ジュリエット・ビノシュ)から見ると「古典向き」。そもそも、ポリーナがダンサーとしてどの程度傑出しているのか、才能があるのか、いまひとつはっきりとしない描き方なのだ。いわゆる天才の話ではない。天才ではないから、もがくしかない。自分のスタイルが掴みきれないからこそ、次のスタイル、次のスタイルへと模索していくのだ。じっと考えるのではなく、移動しつつ動きつつ考えている感じが、ダンサーっぽいなと思った。まず身体ありきなのだ。
 ポリーナは最後にあるスタイルを掴むが、その元となるイメージが子供の頃見た幻影のようなものである所が面白い。そこから更に、最初の師であるボジンスキーと向き合う。彼女にとってのボジンスキーはそういう存在なんだなと腑に落ちた。原風景に立ち返ることが、自分の核を掴むことに繋がるのだ。

ポリーナ (ShoPro Books)
バスティアン・ヴィヴェス
小学館集英社プロダクション
2014-02-05




『ブレードランナー2049』

 2022年、アメリカ西海岸で大規模な停電が起きたのをきっかけに、世界中で食物・エネルギー供給が混乱し、多くのデータが失われ危機的状況になった。2025年、実業家ウォレス(ジャレッド・レト)が遺伝子組み換え食品を開発し、食料供給は安定していく。更に2049年、タイレル社を買収したウォレスはより従順な最新型レプリカントを量産し、レプリカントの寿命の制限もなくなっていた。ロス市警の「ブレードランナー」K(ライアン・ゴスリング)は初期モデルのレプリカントを捕獲していたが、捜査の中でレプリカントの変化に気付く。監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。
 前作の30年後を舞台とした正式な続編で、リドリー・スコットが製作総指揮をしている。私は『ブレードランナー』自体にはさほど思い入れはないが、それでも本作は面白かった。2時間43分という長尺だが、あまり長さを感じない。特にビジュアル面は素晴らしいと思う。ビジュアルのコンセプトは引き継ぎつつも、人類確実に衰退しているな・・・という斜陽感がそこかしこに感じられる空疎さがいい。都市部も、一見華やかだが前作にあったような猥雑な活気は感じられないし、街の様相もそこに住む人たちものっぺりとした印象だ(前作の方が様々な人がいる感はあった)。都市を囲む巨大なゴミ捨てエリアなど、ゴミを処理して環境保全をしようという意欲、環境保全出来るという見込み自体が最早ないんだなと察せられるもの。そもそも富裕層は既に地球を離脱している世界なのた。
 そんな世界の中で、Kは、30年前に失踪したデッカード(ファリソン・フォード)を探す。それはKにとって、任務として以上の重要な意味合いを持ったものになっていくのだ。Kが探し求めるのは自分が何者なのかという答えだ。レプリカントである彼は「製品」として作られ、「何者」かとしては扱われない。しかし彼の中には、大量生産品ではない個でありたいという願望が芽生えていく。Kとホログラフィーのジョイ(アナ・デ・アルマス)との恋愛めいたやりとりがどこか痛ましいのは、それが恋愛のまねごとにすぎないからだろう。恋愛は、少なくとも当事者間では特別な存在になれる、手っ取り早い方法だ。とは言え、レプリカントであるKは愛は持たない存在として作られているし、ジョイはユーザーが喜ぶように振舞うことをプログラムされたAIだ。ジョイがKを特別だと言うのは、そう振舞うようにプログラムされているからにすぎない。しかし彼らのやりとりは模倣だとしても真に迫ったもので、それは最早本物と見分けがつかない、限りなく近いものではないか。
 Kは自分を唯一無二の存在(特別な能力があるとか傑出しているとかでなく、取り換えのきかない個人であるということ)とするもの、個としての存在を裏付けする物を求めてやまない。ある望みを絶たれてもKが前進し続けるのは、誰のものでもない自分だけの記憶を上書きしていく為だろう。誰かに保証されたものでなくても、彼はそこでようやく「特別」なものとなるのだ。

ブレードランナー ファイナル・カット [Blu-ray]
ハリソン・フォード
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2017-09-20


青白い炎 (岩波文庫)
ナボコフ
岩波書店
2014-06-18


『ブルーム・オブ・イエスタデイ』

 ナチス戦犯の祖父を持ち、その事実と向き合う為にホロコースト研究に打ち込んできた研究者のトト(ラース・アイディンガー)の元に、インターンのザジ(アデル・エネル)がやってくる。ザジの祖母はホロコーストの犠牲になったユダヤ人で、その無念を晴らすために研究に打ち込んでいた。全く逆の方向からながらも同じ目的を持つ2人は、アウシュビッツ会議実現の為に奔走する。監督はクリス・クラウス。
 トトもザジも少々エキセントリックで、感情のふり幅が大きい。2人のテンションは見ていてちょっとしんどかった。感情の内圧が強いのではなく、全部外に出ていくタイプの人が自分は苦手なんだな・・・。映画としては面白いけど、体力のある時に見ればよかったかも。特にトトの(おそらく祖父がしたことへの罪悪感からくる)融通のきかない潔癖さや激高しやすさには、研究も大事だけどカウンセリング受けて!アンガーマネジメント大事よ!と言いたくなる。ザジもザジで、処方された薬はちゃんと飲んで!と言いたくなるんだけど。
 トトとザジはかつての加害者と被害者の子孫だが、2人のぶつかり合いはそこに根差すものではなく、例えばトトの頑固さや短気さであったり、ザジのとっぴょうしもない行動やトトからしたらポジティブすぎる発想からであったりする。歴史的な背景は、2人とも自分なりに飲み込んでいるように見えるのだ。しかし、彼らが研究にのめり込みすぎて実生活が時に破綻しそうに見えるのは、やはり歴史が彼らに課したものが重すぎるからでもあるだろう。
 また、祖父母の代の話だからそこそこ平静に振舞えるのであって、自分とより直結するような、距離感の近い話になっても平静に振舞えるだろうか。歴史と個人の背景の書き割りではなく直結しているんだということを突き付けられるようでもあった。いきなり他人事ではなくなる衝撃のようなものがある。
 トトとザジは強く惹かれあうようになるのだが、トトの舞い上がりっぷりはちょっとどうかなと思った。そもそも、祖父母の事情以前に、研究者が自分が担当しているインターンに手を出すというのはまずいのでは・・・。また、セックスの成功と相互理解をトトはいっしょくたにしているきらいがあり、そこも気になった。そういう所だけ楽天的なのかと。

4分間のピアニスト [DVD]
ハンナー・ヘルツシュプルング
ギャガ
2015-03-03




『バリー・シール アメリカをはめた男』

 凄腕のパイロットとして民間航空会社に勤務しているバリー・シール(トム・クルーズ)は、ある日CIAのエージェント・ジェイファー(ドーナル・グリーソン)からスカウトされる。偵察機のパイロットとして南米・共産主義圏の航空写真を撮影しろと言うのだ。半信半疑でスカウトに応じたバリーだが、CIAの指示は徐々に危険度の高いものになり、とうとう麻薬王パブロ・エスコバルらと対面する羽目に。パブロらはバリーに麻薬の密輸を強引に依頼し、バリーはホワイトハウスやCIAの指令と麻薬密輸ビジネスで巨大な富を築いていく。監督はダグ・リーマン。
 邦題サブタイトルに「アメリカをはめた」とあるが、むしろ「はめられた」方が正しいのでは・・・。あまり深く考えずに提案に飛びついてしまうバリーもちょっとどうかと思うが、CIAのごり押しと見切った時の切り捨ての迅速さがえげつない。CIAが確固たるプランを持って立ち回っているようには見えない所も、笑ってしまうと同時にそら恐ろしくなる(実際のCIAがどうだったのかは知りませんが・・・)。
 バリーは悪人ではないが少々あさはかで、状況に流され受け入れてしまう弱さ(強さとも言えるが)がある。彼の流されやすさが、事態をとんでもないスケールにしてしまったとも言える。また、彼はとにかく飛行機、飛行機を操縦することが大好きで天才的な技術もある。そこには忠実である、というか逆らい難いものがあるんだろうなという部分が、おかしくもありもの悲しくもなる。その才能、他に使い道なかったの?!と。
 悪人ではないが調子が良く、どこか空疎なバリーを、トム・クルーズが好演している。近年の主演作の中では間違いなくベストのトム。常ににこにこニヤニヤしているのだが、実際は笑っていられるようなシチュエーションではなく、笑顔の裏に結構な悲哀と諦念が漂っていそう。トム・クルーズのセルフパロディ的な側面も感じた。多分、トム・クルーズじゃなくても出来る役ではあるんだけど、トム・クルーズが演じることで面白さ、味わいの重層さが倍増していると思う。結構陰惨な状況の話なのに、なんだか笑えてしまうのだ。逆に因果の深さを感じるわ・・・。
 なお、冒頭の制作各社のロゴのアレンジやエンドロールなど、「あの頃」感満載で芸が細かい。音楽の使い方も楽しかった。

フェア・ゲーム [Blu-ray]
ナオミ・ワッツ
ポニーキャニオン
2012-03-02


トップガン スペシャル・エディション [DVD]
トム・クルーズ
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
2011-04-28


『僕のワンダフル・ライフ』

 ゴールデン・レトリバーの子犬ベイリーは、自分を助けてくれた少年イーサンと固い絆で結ばれていた。やがてイーサンは成長し、ベイリーとはなかなか会えなくなる。ベイリーは寿命を終えるが、イーサンに会いたい一心で生まれ変わりを繰り返すようになる。原作はW・ブルース・キャメロンの小説。監督はラッセ・ハルストレム。
 犬の輪廻転生ってスピリチュアル系にしても大分うさんくさいなー大丈夫かなーと思っていたが、手堅くまとめており老若男女、子供連れでも大丈夫そう。さして犬好きでない私も面白く見た。犬視点のモノローグで話が進むのは一歩間違うとあざとすぎ、人間化しすぎで下品になりそうだが、ぎりぎりのラインで踏みとどまっている。また、冒頭でいきなり「犬生」が一回終了し、あっ野良犬に生まれるってそういうことなんだ・・・とシビアさをさらっと見せてくる。このあたりのさじ加減が上手い。ハルストレムは大概手堅い作品を撮るが、職人気質なのかな。1960年代~現代という時代の動きがそれとなく感じられるあたりも、目配りがきいており手堅い印象だった。
 シビアという面では、人間たちの人生も実はそこそこシビアである。ベイリーはイーサンが大好きなので、ベイリーの目を通して見たイーサンはいつも輝いているように見える。が、ベイリーには理解できなくても、人間である観客の目から見ると不穏な気配が見え隠れする。ベイリーの父親は仕事に不満があり、徐々に酒が手放せなくなってくるのだ。ベイリーや母親への接し方も、特にひやりとするものがある。その顛末は予想通りだが、さらにやりきれない出来事も起きる。結構容赦ないのだ。
 また、転生したベイリーの飼い主になる警官(これは警察犬としてのつきあいなのでペットとは違うが)や黒人女性のエピソードも、犬と人間の関係にぐっとくるもの。それぞれが1本の映画になりそうなのだ。私は動物を飼ったことはないが、犬を飼っている(いた)人ならよりぐっとくるし人間側に共感するんではないかなと思う。
ただ、イーサンとの存在がベイリーにとって特別すぎて、他の飼い主がちょっとかわいそうでもある。どうしても二番手ないしはそれ以下の存在に見えちゃう。まあ愛は平等ではないものなんでしょうが・・・。特に警官とのエピソードなどなかなか渋くて良かったので、勿体ない。

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『ポルト』

 ポルトガル第2の都市ポルト。26歳のアメリカ人ジェイク(アントン・イェルチェン)とフランスから留学にきた32歳のマティ(ルシー・ルカース)は、考古学調査の現場でお互いを見かける。たまたま再開した2人は一夜の関係を結ぶ。監督はゲイブ・クリンガー。
 時系列はバラバラ、というよりもやや逆回転に近い構成で、2人の出会いへとさかのぼる。冒頭、マティにつきまとうジェイクの必死さと不穏さに、この2人の間に一体何が?とハラハラする。随所で挿入されるレストランのシーン、また後日そのレストランを個別に眺めるシーンからは、2人それぞれにとってそれなりにこの出会いは特別だったと察せられるのになぜ?と。
 見ているうちに、そもそも関係が破綻するほどの「何か」などなかったのではないかなと思えてきた。確かに2人の間に特別な出来事はあったが、それはあくまで劇的な瞬間があったにすぎず、後々まで継続するようなものではなかったのではないか。おそらくマティはそれに気付くが、ジェイクは気付かない。出会いのインパクトにずっと引きずられているのだ。そこを掘っても多分もう何も出ないよ、と言いたくなるが、特別な瞬間を味わってしまうとそうは思えないし思いたくないんだろうなぁ。
 人恋しさ、孤独さは人間の判断力を鈍らせるなと、見ていて辛くなる。ジェイクの寂しさはおそらく、マティのものよりもよりせっぱつまっているのだ。とは言え、あんな付きまとい方されたら、多少好意があっても怖くてもう会いたくなくなるよな・・・。ちょっと洒落にならない感じがした。
 全体としては良くできた学生の自主映画みたいな手作り感あふれる雰囲気で、初々しい。2人の関係をこのように描けた(臆面もなく一晩のアバンチュールって、最近なかなか見ないなと)のも、若さ故という気もする。

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『HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY』

 拮抗する5つのチームの名前の頭文字をとってSWORD地区と呼ばれているエリア。SWORDの面々は湾岸連合軍との戦いに勝利し、再開発の波もひとまず収まる。しかし林蘭丸(中村蒼)率いる悪名高いスカウト集団「DOUBT」がSWORDのスカウトチーム「White Rascals」をつぶそうとしてくる。更にジェシー(NAOTO)を筆頭とした武闘派集団「プリズンギャング」も蘭丸に加勢し始める。一方、カジノ計画に絡んだ癒着事件を明らかにしようとする琥珀(AKIRA)雨宮兄弟らには、証拠隠滅を図る九龍グループの刺客が迫っていた。監督は久保茂昭・中茎強。
 ドラマと映画が連動する「HiGH&LOW」プロジェクトの劇場作品3作目。1作目『HiGH&LOW THE MOVIE』、2作目『HiGH&LOW THE RED RAIN』からストーリーは直接つながっているのだが、正直ストーリーに重点を置いた作品ではないので、多少あらすじやキャラクターをかじって本作をいきなり見るという形でも大丈夫ではないかと思う。1作目、2作目でも決してストーリーが面白い、良くできているという類の作品ではなく、見せたいシーンとキャラクターのつなぎの為にストーリーらしきものがあるという感じだった。しかし、本作ではエピソード間のつなぎ方がもうちょっとましになったかなという気はする。九龍の幹部らが全員(多分)登場して新たな動きが見える等、ストーリーの広がりを見せてくるところはいい。とは言え相変わらず「何やってるんすか琥珀さぁぁん!」と叫びたくはなりますが・・・。
 アクション面は前作よりも更に強化されており、演出の創意工夫が素晴らしい。冒頭、パルクールを取り入れた下方向へのアクションで一気に引き込まれる。このシーンに限らず、アクションの飛距離、スピード感が爽快。ストーリーがどんなにザルでも人体の動きを見ているだけで楽しくなってくる。体の良く動く出演者といいアクション監督(アクション監督は大内貴仁)を使うとこうも違うのかと唸った。上下左右各方向への動きがちゃんと設定されており、1作目でもそうだったが、群衆での乱闘シーンでも画面の奥のモブキャラまでちゃんと演技指導されていることがわかる。行き届いているのだ。
 また、カー&バイクアクションもこれまでの日本映画ではなかなか見られなかった領域に突入している。USBの奪い合いが車とバイクでのカーチェイス中に行われるのだが、ちょっと最近の韓国映画っぽいシーンだった。日本でもとうとう「人VS車」をやるやつが出てきたか!また九龍会からの刺客である源治(小林直己)の日本刀も使ったアクションも素晴らしかった。演じる小林の身体能力の高さあってのことだろうが。しかし、これだけキレッキレのアクションシーンにもかかわらず、その原因となっているUSBメモリに関してはなぜコピーしておかない!琥珀さん海外にUSBメモリ持ち出して何やってたんすか!何もやってなかったんすか!という突っ込みが止まらないのだった。
 なお、これをカーアクションというのか微妙だが、クライマックスの廃駅での達磨一家の登場の仕方は最高だった。いやーあれやってみたいな(笑)!

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2017-01-18

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2017-04-05



『パターソン』

 ニュージャージー州の街パターソンで暮らす、バス運転手のパターソン(アダム・ドライバー)。毎日定時に出勤してバスを運転し、帰宅後は愛犬マービンの散歩に出て、バーに立ち寄りビールを1杯だけ飲む。詩人である彼は毎日ノートに少しずつ詩を綴る。監督はジム・ジャームッシュ。
 パターソンの1週間を追うドラマだが、冒頭、ベッドから出た彼がキッチンでシリアルを食べているシーンで、ガラスの器が素敵なことや、部屋は狭いけどインテリアのコーディネートはユニークで住みやすいようにコーディネートされていることに気付く。ここで何だかほっとした。パターソンと妻のローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)は、自分たちの生活を心地よくしようとする意欲があるし、生活を楽しんでいるんだとわかるのだ。
 パターソンが住む町はどうということもない、むしろさびれた地方の小さな町だ。しかし、彼の出勤風景は妙に美しい。煉瓦造りの古い工場跡のような建物や、同じく古びたバス会社の操車場が、なんだかかけがえのないものに見えてくる。これは、パターソンが自分が住む世界を愛しており、その彼の目を通して見た風景だからだろう。随所で挿入されるパターソンの詩(少しずつ修正しながら書く為、これもまた反復の一種にも見える)は、彼にとっての世界に対する驚き、美しさの記録でもある。
 パターソンの生活は反復を重ねているように見える。仕事である路線バスの運転も、同じルートをぐるぐると回る行為だ。しかし、乗客の会話はその日によって違うように、日々は似ているようでいて一日一日が全然違う。彼の日々はささやかかもしれないが驚きに満ちている。映画を観ている側も、なんだか彼と一緒にびっくりしているような気分になってきた。
 パターソンとローラは、性格のタイプとしては大分違うように見える。パターソンは内向的で詩の発表をする気もあまりない。対してローラは彼に作品を発表するよう勧めるし、彼女自身の表現活動も外へ外へと向かっていくものだ。行動力にあふれ、ぱっと思いつきで実行できる人なのだ。それでも、お互いに相手が何を大切にしているかを理解しており、そこは尊重している。2人の愛情、信頼関係も本作を見ていて安心できた要因の一つだ。パターソンが何らかのトラブル(終盤でトラブルどころではない大事件が起きるのでびっくりした)が起きてもローラやマービンに八つ当たりしない所も、とてもよかった。彼は人間がすごくできている人だと思う。
 翻訳された詩はレインコートを着てシャワーを浴びるようなもの、という台詞が出てくるのだが、本当にそうなんだろうなぁと思う。思いつつも、でもレインコートがないと私は他国の詩を読めないのに!ともどかしくなった。翻訳業の人たちは、より良いレインコートを作る為に尽力してくれているわけだな。

ブロークンフラワーズ [DVD]
ビル・マーレイ
レントラックジャパン
2006-11-24


パタソン―W・C・ウィリアムズ詩集
ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ
沖積舎
1988

『ブレンダンとケルズの秘密』

 9世紀のアイルランド。バイキングの襲来を恐れる修道院長は、修道院の周囲に高い壁を築いていた。そこに、優れた写本士として高名な僧エイダン(ミック・ライリー)が逃げ込んでくる。院長の甥である少年僧ブレンダン(エバン・マクガイア)は、エイダンが持つ「ケルズの書」に興味津々で、彼を手伝おうとする。インクの材料の木の実を取に、危険だからと禁じられていた森に入るが、そこで精霊アシュリン(クリステン・ムーニー)に出会う。監督はトム・ムーア。
 『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のムーア監督の長編デビュー作。『ソング~』と比べるとストーリーの運び方が少々荒っぽく、話の焦点が絞り切れていない。キャラクターデザインも、『ソング~』の方がより洗練されているように思う。本作は、キャラクターの動きがちょっとカートゥーン寄りで、他の部分と少々ミスマッチを起こしているように思った。
 しかし、美術面はとてもユニークで美しい。「ケルズの書」の文様をそのまま動かせないかという試みをしているのだが、よくまあこれを動かそうと思ったな!と唸った。他の部分でもケルト文様が多用されており、あらゆるところがうごめいているような印象を受ける。ブレンダンには絵の才能があり、様々な文様を幻視するのだが、世界は図像で満ちており、それを見る目を持った人が「ケルズの書」のような作品を残したのではないかと思えてくる。ブレンダンが闇のものと闘う際に白墨で線を引き、図像を描く。良く見ること、それを記すことが闇を払うことになるのだ。
 ケルズの書は福音書で、ブレンダンたちは修道士だ。にもかかわらず、意外なほど神の名が出てこないし、宗教色も薄いように思った(宗教色については、クリスチャンが見るとまた違うのかもしれない)。ブレンダンを助けるのは、彼の信仰対象の神ではなく、おそらくキリスト教にとっては異教であろう土着の存在たちだ。この2つが両立しているように見えるところが、とても面白かった。ブレンダンにとっての祈りは描く行為そのものなのかもしれない。

ソング・オブ・ザ・シー 海のうた [Blu-ray]
デヴィッド・ロウル
TCエンタテインメント
2017-04-05


ケルズの書
バーナード ミーハン
創元社
2002-03-01

『ベイビー・ドライバー』

 天才的なドライビングテクニックを持ち、とある事情により犯罪組織のドク(ケビン・スペイシー)から仕事を請け負っているベイビー(アンセル・エルゴート)。ある日、ウェイトレスをしているデボラ(リリー・ジェームズ)に一目惚れしたベイビーは裏稼業から足を洗おうと決意するが、ドクに脅され、強盗犯の逃走を助けることになる。監督はエドガー・ライト。
  ベイビーは耳鳴りを防ぐため、常にiPodで音楽を聴いている。彼の動きも運転も音楽に合わせたものだ。冒頭のベイビーの一連の動きは音楽に合いすぎていて笑っちゃうくらいで、これをわざわざやったのか!と監督に大して少々呆れる気持ちもある。見ていて楽しいし体感として気持ちいい(とにかく、音と動きを徹底して合わせているので)のだが、ちょっとやりすぎだなぁという気もした。ともあれ、こういうやり方の音楽映画もアリだとは思う。意外とMV的ではないように思えたところも、面白い。音楽と並走しているが、主体はやはり人体であり車なんだなぁと。  カーアクションに魅力がある。荒唐無稽過ぎないラインがすごい、という感じ。非常に高いドライビングテクニックを駆使して車をちゃんと運転している感のあるカーアクションというか、トンデモ感が薄いのだ(ようするにワイルドスピード的なものではないということで)。カースタントってこういうことだよなー!とうれしくなる。しかしクライマックスではやっぱり車同士のガチンコを始めるので、これは近年のトレンドなんだろうか。
 ベイビーが常に音楽を聴いているのは、耳鳴りを防ぐ為の行為であると同時に、自分自身にサントラを付ける、自分を演出することでもある。冒頭の彼のはしゃぎっぷりは正に「主人公」だし、音楽はその感覚を更に強めている。ただこの音楽、周囲の人には聞こえない(イヤホンで聞いてるから)はずなので、ちょっとイタい人みたいに見えないかな・・・。ベイビーにとって音楽と車は、自分を外界から守る鎧みたいなものでもあるのだろう。それを脱いでいく話なのかなと思っていたら、そうでもないのでちょっと拍子抜け。まあ趣旨は音楽映画なんだろうからそれでいいのか。
ベイビーは裏社会に染まり切っているわけではない。暴力を見るとすくんでしまうし、人を傷つけたくない。そんな彼が、デボラを守りそこから抜け出す為、裏社会のルールに自ら乗っかっていくというところには違和感があった。違うやり方でもいける、という成長の仕方もあるんじゃないかなぁと。同じ土俵に乗らなくてもなぁというもやもやが残った。
 ところで、エドガー・ライトは男女のやりとりに興味がないのか描けないのか。ベイビーとデボラのやりとりにしろ、作中の男女関係にさっぱり魅力がないのには参った。バディ(ジョン・ハム)を援護しようとダーリン(エイザ・ゴンザレス)がバッツ(ジェイミー・フォックス)に言い返す内容、もうちょっと何とかならないのか。ダーリンがその程度のことしか言えない人である、という設定なのかもしれないがそれこそ退屈すぎる。





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