3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

映画題名あ行

『女と男の観覧車』

 1950年代のコニーアイランド。遊園地内のレストランで働くジニー(ケイト・ウィンスレット)は回転木馬操縦係の夫ハンプティ(ジュム・ベルーシ)に隠れ、海水浴場の監視員ミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と浮気をしていた。そんな折、マフィアと駆け落ちし音信不通だった、ハンプティと前妻の間の娘キャロライナ(ジュノー・テンプル)が現れる。キャロライナは組織の情報を警察に漏らした為、マフィアに命を狙われていた。監督はウディ・アレン。
 観覧車に乗るシーンはないが、ジニーとハンプティの住家からは観覧車が良く見える。この住家、元々は遊園地内の施設だった部屋をハンプティが改装したもので、遊園地が良く見渡せるし、夕方はネオンサインが差し込み、室内の雰囲気がその都度変わっていく。この部屋の美術と室内での撮影が非常に良く、おり、室内に差し込む光の変化が登場人物の変化とリンクしていく。外の光が変わることで、一気に場がしらける、魔法が解けてしまう瞬間が残酷だった。
 こてこてのメロドラマかつ男と女のすったもんだで滑稽ではあるのだが、同時に残酷。夢を諦められずに人生の軌道修正が出来ない人ばかり出てくる。ジニーは元女優で芽が出なかったものの、未だに芝居の道を諦められない。ミッキーと一緒にどこか別の場所に行くことを熱望しているが、ミッキーにはそんな気はない。彼もまた劇作家を目指しているがどうやら言葉ばかりでフラフラと行き先定まらない。ハンプティはジニーとの夫婦関係も、キャロライナとの親子関係も上手くいくと夢見ている。キャロライナを夜学に通わせ彼女が教師になれば万事丸く収まると思い込んでいる。彼らの夢は遊園地の安い華やかさと同じで、どうにもはかなくうすっぺらい。一番ふわふわしているように見えたキャロライナが、何だかんだで地に足がついているように見えてくる。そんな大人たちの横でまともにケアされない、ジニーの連れ子の処遇がいたたまれなかった。

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KADOKAWA / 角川書店
2017-11-10


『オンリー・ザ・ブレイブ』

 アリゾナ州プレスコット市の森林消防団で隊長エリック・マーシュ(ジョシュ・ブローリン)は、長年の経験を活かし火災対策に奔走しているが、アメリカ農務省の“ホットショット(精鋭部隊)”には「市レベルの消防隊員」と小馬鹿にされてしまう。自分たちのチームを“ホットショット”として市に認めさせることがマーシュの悲願だ。一方、麻薬に溺れる青年ブレンダン・マクドナウ(マイルズ・テラー)は別れた恋人が自分の子を妊娠していることを知る。動揺して彼女に会いに行くものの、子供は自分と家族で育てると拒絶される。マクドナウは子供の為生活を立て直そうと、森林消防団への入隊を希望する。監督はジョセフ・コジンスキー。
 実在の森林消防隊、グラニット・マウンテン・ホットショットの活躍を映画化した作品。森林消防団がどういう仕事をしているのかという面で新鮮だった。マーシュたちのチームは元々、地方自治体の一団という位置づけだったので、農林省森林局の特殊チームであるホットショットには格下に見られてしまうというわけだ。このあたりの事情を事前に知っておくと、マーシュと消防署長や市長とのやりとりがどういう意味合いのものか、よりわかると思う(予習してから見るべきだった)。グラニット・マウンテン・ホットショットは2008年、アメリカで初めての地方自治体によるホットショットとして認可された。本作は彼らがホットショットとして認められるまでと、その後の活躍を描いている。
 本作のもう一つの主役は山火事、炎そのものだろう。もちろんCGを使っているが、実写部分も相当あるそうだ。撮影が大変美しく、禍々しいと同時に引き込まれる。マーシュは消防団として奔走しているが、炎に魅入られているという面も相当あるのではと思えてくる。また、壮大な森林風景も美しいのだが、美しいと同時にこれ全てが炎の燃料となるということでもある。美しさと禍々しさが表裏一体な世界だ。予告編のノリからは脳筋体育会系ノリのスペクタクル作品かと思っていたし、確かにそういう面も強いのだが、意外と詩情と陰影がある。いい意味で期待を裏切られた。
 一見大味なようで陰影が深いという要素は、登場人物の造形にも見られる。マーシュと妻アマンダ(ジェニファー・コネリー)は見るからに円満でお互いの仕事やライフスタイルに対する理解もあるように見える。しかし、ちょっとした言動から、実はそうでもなく段々ずれが生じているらしいこと、そしてそれぞれ過去にはかなり大変な時期もあったらしいことがわかってくる。このあたりのニュアンスのこれみよがしではない所は節度を感じた。大味な作品かと思っていたら、様々な部分で抑制が効いており好感を持った。実話が元なので、変に感情・感動を煽るような演出は避けたのかもしれない。やっぱり映画は実際に見てみないとわからないものね。

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2010-11-10


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『ALONE アローン』

 砂漠地帯でのテロリスト暗殺に失敗したアメリカ兵マイク(アーミー・ハマー)は、相棒のトミー(トム・カレン)と共に多数の地雷が埋まるエリアに足を踏み入れてしまう。トミーはマイクの目の前で死亡、マイクも地雷を踏んで一歩も動けなくなってしまう。援軍が到着するまでの52時間、彼は何とか持ちこたえようとする。監督はファビオ・レジナー&ファビオ・ガリオーネ。
 ワンシチュエーションサスペンスという括りになるのだろうが、1ネタ勝負作と思って見たら意外な味わいがあった。地雷を踏んで動けないという状況そのものよりも、その状況から沸き起こるマイクの内省、マイクの過去とトラウマの方が前面に出てくる。「踏んで一歩も動けない」という状況自体が、彼のこれまでと、今の内面を象徴しているのだ。優秀な狙撃手らしいマイクが、なぜ最初にあんなに狙撃をためらったのかというのも、ジェニーに連絡しろと言われると歯切れが悪くなるのも、彼がやってしまったこの延長線上にあるのだ。過去の断片はちらちらと提示され、徐々に全体像が見えてくる。彼にとっての「踏む」「ひざまづく」という姿勢の意味合いがクライマックスに向け重なっていくのだ。
 マイクの内省という側面が強く、ファンタジーや寓話の方向に物語の見せ方がひっぱられがちではある。作中のリアリティラインの設定があやふやになりがちで、そこで賛否が割れそうな気がした。ただ、マイク個人の物語として見ると、悪くなかったなと個人的に思う。自分ひとりでどうにかせざるを得ない問題だとマイクは思い込んでおり、確かにそうなのだが、彼を待っている人が確かにいるのだ。ハマーのほぼ一人芝居といってもいい作品だが、ちゃんと間が持つ。ルックスのパーフェクトさにばかり注目されがちだけど、スキルがあるんだよな。

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2012-06-22


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2018-06-20


『いつだってやめられる 怒れる10人の教授たち』

 大学での職を失い、各分野の研究者である仲間たちと合法ドラッグ製造で一儲け企んだものの、逮捕されてしまった神経生物学者ピエトロ・ズィンニ(エドアルド・レオ)。パオラ・コレッティ警部(グレタ・スカラーノ)は彼に、犯罪歴の抹消と引き換えに捜査に協力しないかと持ちかける。新たなメンバーも加わり、世間に出回る新型合法ドラッグの製造元特定に挑むが。監督はシドニー・シビリア。
 序盤がやたらと展開早く情報を詰め過ぎているように見えるが、本作はシリーズ2作目。1作目での出来事を踏まえた上で、若干振り返りつつ2作目のストーリーも展開していくので、かなりごちゃごちゃした感じになっている。わざわざ現在から遡る見せ方にしなくてもよかった気がするんだけど・・・。
 ピエトロ一味の個性豊かな面々が次々と登場するのは楽しいのだが、シリーズ2作目だからか1人1人の紹介の仕方は意外と大味。また、それぞれの研究者としての専門分野とスキルが一致しているのかしていないのかよくわからない・・・。このあたりの設定、わりと雑なのではないだろうか。ピエトロは神経生物学者だけど(少なくとも本作中では)そこまで神経生物学の分野の話って出てこなかった気がする。ドラッグを製造する前作での方が、それぞれの専門の話が出てきたのか。
 楽しいことは楽しいが、キャラクター設定にしろストーリー展開にしろ、良く言えばおおらか、悪く言えば雑。ドラッグ製造組織を次々特定し乗り込んでいくくだりなどは、そんなに手順を丁寧に見せる気ないんだなというのがすごくよくわかって逆におかしい。また、コレッティのキャラクターが、いわゆる「花を添える」という女性キャラでは全然なくて、野心満々でピエトロたちを平気で使い捨てようとするし、全然思いやりがないところが面白い。ピエトロらとロマンスの生まれようがない感じがよかったし、男性キャラでも置き換え可能な所は現代の映画だなと思った。

 
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『終わった人』

 東大卒で大手銀行に就職したものの、いつしか出世コースから外れ、関係会社に出向したまま定年退職を迎えた田代壮介(舘ひろし)。美容師として働いている妻・千草(黒木瞳)が多忙にしているのを横目で見つつ、自分は「終わった人」になったと落ち込み、毎日暇を持て余していた。しかし青年実業家・鈴木(今井翼)やカルチャーセンターの職員・浜田(広末涼子)らとの出会いで、壮介の人生は再び動き出すように思えたが。原作は内館牧子の小説。監督は中田秀夫。
 すごく額面通りの演出とでも言えばいいのか、多分原作小説の文字に書かれたことをそのまま、かつ記号的に映像に置き換えているんじゃないかなという気がした。特に壮介の浜田に対する恋心とやる気(笑)の演出は、今時それはないよな!コメディ演出としてもスベっており、真面目すぎるのか、野暮ったいのか・・・。分かりやすいと言えば分かりやすいのだが、見ていて気恥ずかしいのは何とかしてほしい。ちゃんと真面目に映画を作っているということではあるし、手堅い作品ではあるのだが。
 前半は、「定年後やったらダメなこと事例」のようで、ある意味大変教育的。数年後に定年退職を控えてている方は、教材として見てみるのもいいかもしれない。定年退職したら夫婦で旅行に行きたいなーなんて話は実際によくあるが、既に妻には妻の生活と人付き合いがあって、夫と一緒に旅行する暇もないし気分も乗らない。壮介に旅行に誘われたり車で迎えに来られたりしてうっすら迷惑そうな千草、対して「仲の良い熟年夫婦」のつもりでご満悦な壮介のすれ違いはイタい。壮介、早く気付いて!と言いたくなる。定年後に夫婦で円満に生活するには、それまでの積み重ねが必要なのだ。積み重ねが必要ということがわからないのではなく、自分が積み重ねていないことに気付かないままの人が多いんだろうけど。
 千草との関係が既にすれ違っていることだけでなく、壮介は色々なことに気付かない。浜田との関係にしろ、自分の仕事能力の度合いにしろ。彼がちょっとずつ「今」の自分とその周囲のことについて気付いていく話でもある。とは言え、定年退職イコール「終わった人」って、世界が狭すぎる気がする。そんなに仕事が好きですか。他に社会との接点はないのか。そもそも社会との接点がそんなにないとダメなのか。このへんの感覚はやっぱりわからないなー。

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2018-03-15


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『犬ヶ島』

 ドッグ病が大流行するメガ崎市では、人間への感染を防ぐ為という名目で、全ての犬を犬ヶ島に追放することを小林市長(野村訓市)が決定。愛犬スポッツ(リーブ・シュレイバー)を奪われた市長の養子アタリ(コーユー・ランキン)は、単身犬ヶ島へ渡り、スポッツを連れ戻そうとする。島で出会った5匹の犬たちとスポッツを探すが、大人たちの陰謀が彼らを巻き込んでいく。監督はウェス・アンダーソン。
 アンダーソン監督の作品は、まずスタイルありきというか、強固なスタイルが中身を規定してしまっているような部分があって、そこが好みの別れるところではないかと思う。ドラマの組み立てがふわふわしていても、外枠があまりに強くて作品が成立しちゃう感じ。本作はストップモーションアニメの極北(犬の毛が風にたなびく様を表現しようとするのって、よっぽどだよな・・・)とでも言いたくなる緻密さとユニークさ。アニメーションの動きの部分だけではなく、動かない部分、動きと動きの間の部分の活かし方に注力しているように思う。動きがぎくしゃくする、制限されていることによる面白みを作り手がよく理解しているんだろうな。なめらかなだけだと、すごい!で終わってしまいそう。ミニチュアール的な面白み、魅力を引き出すには、ちょっとぎくしゃくしているくらいの方がいいのかもしれない。
 「少年と犬」というジャンルがあるなら、本作もその一つだろう。犬は犬の言葉、人間は人間の言葉で話し、お互いに言っていることが理解できているわけではない。でもなんとなく気持ちは通じ合っておりコミュニケーションが成立しているというニュアンスの出し方、また人の声に対する犬の反応やしぐさ等、犬と暮らしている人ならもっとぐっとくるところがあるのかなと思いながら見た(私は動物飼ったことがないので)。犬を追放する側は例によって猫を飼っているのだが、犬猫対立させなくてもいいのになぁ。犬も猫も両方そこそこ好き、という人の方が絶対にどちらかの派閥だという人よりも多いのではないだろうか。メガ崎市、猫が増えたら猫ヶ島作って猫を追放しそうだし・・・。
 市長の陰謀やデマによる世論のコントロールなど、昔からありがちな戯画的なもので特にとんがっているわけでも世相に切りこむ意図を持ったものでもないと思う(時代に関わらず普遍的なものだろう)のだが、期せずして今の日本にフィットするような雰囲気になってしまったような気がした。作中では、若者たちが真相究明しようとするけど・・・。市長が自ら自宅の犬(アタリの愛犬なわけだけど)を追放するあたりは、太平洋戦争の家畜徴用みたいでぞわっとする。

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『イカリエ-XB1』

 太陽系外での生命探査の為、アルファ・ケンタウリ系を目指して旅立った宇宙船・イカリエ-XB1。目的地へ近づく中、漂流中の朽ちた宇宙船を発見する。それは20世紀に地球から旅立ったものと見受けられたが、乗組員たちは全員死亡していた。監督はインドゥジヒ・ポラーク、1963年の作品。原案はスタニスワフ・レムの小説『マゼラン星雲』。
 デジタル・リマスター版を鑑賞したが、今見てもスタイリッシュで、白黒のバランスが非常に美しい。映像美的な部分だけでなく、当時のSF表現としては(デザイン的にもSF考証としても)最先端だったのだろう。上記にあらすじを書いてはみたが、大きな事件が起こっているはずなのに妙に淡々としていて、悲劇も喜劇も長い旅路の中の1幕でしかないというクールさが感じられる。限られた人数で長期間生活していると、このように変化していくという様を観察しているようでもあった。食事の微妙さとか、栄養素を強制的に摂取させられるところとか、妙な生活感が踏まえられているところも面白い。ちょっとしたストレスや違和感がじわじわ増殖していく感じが不安をあおるのだが、このあたりの描写は現代では最早定番なのでは。
 全般的に、なぜだか死の匂いが漂っている。具体的な死、死体の描写があるからというよりも、その死体が置かれている状況の無常感により醸し出されるものではないかと思った。この死体(と死体のある環境)、20世紀の遺物のような扱いなので、20世紀は死の時代であった、その時代の匂いがまだイカリエを追いかけてきているということなのかもしれない。逆に、本作が作られた当時(1960年代)は、その先の時代(本作は23世紀あたりが舞台)への希望があったってことなんだろうなぁ・・・。本作、死の匂いはあるものの、基本的には未来、また未知の存在への希望、ないしはそれに対峙していく勇気みたいなものを含んでいると思う。それは原作のテイストなのかもしれないが。

ソラリス (ハヤカワ文庫SF)
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2015-04-08


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ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2018-01-17


『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』

 トーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)は幼い頃からスケートの才能を見せ、フィギュアスケーターとして全米トップ選手に上り詰めていく。1992年アルベールビルオリンピックに続き、94年のリレハンメルオリンピックへの出場も狙うが、1992年、元夫のジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)が、トーニャのライバル選手ナンシー・ケリガンを襲撃したという疑惑が浮上する。監督はクレイグ・ギレスピー。
 アメリカ人女子フィギュアスケート選手として初めてトリプルアクセルに成功したトーニャ・ハーディングの人生を映画化。しかし、本作はいわゆる「実話に基づいた」物語としては、見せ方がかなり捻っている。インタビュー形式の場面が随所に挿入されており、基本的に「彼女/彼が言うには」というスタンスが貫かれている上、ドラマ内のトーニャがふいにスクリーンのこちら側を見て「これが本当のことよ!」等と語りかけてくる。登場人物全員が自分に都合のいい話を語る、信用できない語り手たちのよるストーリーテリングなのだ。更に、ここはさすがにフィクションとしてキャラを盛っているんだろうなと思っていた部分が、エンドロール前のご本人映像を見ると正に作中そのままの発言をしていて本当にとんでもなかったりする。虚実のバランスがかなり不思議なことになっており、そもそも全部虚かもしれないという「実話に基づいた」話なのだ。
 トーニャの周囲は基本的にろくでなしばかりで、よくまあこれだけ集まってくるよなといっそ感心するのだが、トーニャの母ラヴォナ(アリソン・シャネイ)が特に強烈。娘を厳しく育てるがいわゆるステージママ的な接し方ではなく、DVすれすれの暴言とプレッシャーによりコントロールする。ラヴォナは「トーニャは怒っている方がいい演技をする」からあえてけなして怒らせているのだとうそぶくが、目的が何であれ(言葉の)暴力は暴力だ。褒められることなく自己肯定感が薄いまま育ってしまったことで、トーニャは自分を殴るジェフとの縁を切れず、観客の声援を過剰に求めるようになってしまったのだろう。トーニャ本人も相当強烈でしぶといキャラクターなので、そんな彼女が「殴られるのは自分が悪いんだと思った」というのにはえっと思ってしまうのだ。彼女がどんなに頑張っても、その育ちや家族が足を引っ張る。
 また、フィギュアスケートという競技のいびつさを垣間見た感もある。トーニャは非常に身体能力が高くスケートの才能は明らかにあるのだが、なかなか評価に結び付かない。思い余った彼女が審査員を問い詰めると、彼は「観客は理想の家族を見たいんだ」と答える。貧しく無教養な家庭で育ち洗練されていないトーニャは、アメリカの理想の女性ではないと言うのだ。競技上の評価基準としては大分おかしいだろう。そういうものを吹っ飛ばすのがスポーツの面白さではないのかよと。更に、その言葉を受けてのトーニャの行動には、何だか胸が詰まった。それでも家族を求めるのか・・・。

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2016-07-06


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トランスフォーマー
2012-09-07


『ある殺し屋』

 大映男優祭にて鑑賞。森一生監督、1967年作品。表の顔は小料理屋の主人、裏の顔は腕利きの殺し屋である塩沢(市川雷蔵)は、木村組の依頼で対抗組織である大和田組のボスをしとめる。彼の腕前を見た木村組の前田(成田三樹矢)は、塩沢においしい話があると持ちかける。大和田組が扱う麻薬を横取りしようというのだ。原作は藤原審爾の『前夜』。
 市川雷蔵といえば時代劇での超絶美形っぷりのイメージが強いので、素顔だとこんなに地味なのか!とまずびっくりする。これはすれ違ってもわからないだろうなぁ・・・。しかしその地味さ、はっきりとした特徴のなさが、本作の殺し屋という役柄には合っていた。どこにでもいるようでいて、立っているだけで妙な圧を出してくる。得体のしれなさが漂っている。あえてそういう雰囲気を出す演技をしているという風でもないのだが、不思議な俳優だよなー。
 冒頭から、この人(達)は何をしようとしているのか、どういう関係なのかをストレートには説明しない。新しい登場人物が登場するとちょっと時間を戻して、この人とはどういう関係なのか見せ、また現在進行している事態に戻って、というような時間をいったりきたりする構成だ。この構成、ぎこちなくもあるのだが、一体何が起きているのかという見ている側の興味を引っ張っていく。ちょっとフィルムノワールの小品ぽいざらついた雰囲気があって悪くない。主な舞台が湾岸(多分羽田近辺)なのだが、当時の埋め立て地帯ってこんなに何もなかったのかという、時代を垣間見る面白さもあった。

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2012-11-16





『アンロック 陰謀のコード』

 CIAの尋問官だったアリス・ラシーン(ノオミ・ラパス)は、尋問相手から情報を引き出せずテロ犠牲者を出してしまったことに責任を感じ、ロンドン支局へ移動。ケースワーカーとして移民の就労支援をしつつ、ロンドン支局担当者に提供する情報を探っていた。ある日CIAに呼び戻され、ある尋問を依頼されるが、それはCIAを装った偽物だった。監督はマイケル・アプテッド。
 ラシーンの元上司ラッシュ役がマイケル・ダグラス、CIAヨーロッパ部門部長ハンター役がジョン・マルコビッチ、ロンドン支局長ノウルズ役がトニ・コレットと、脇役が妙に豪華かつ渋い。そしてラシーンと行動を共にするようになる男オルコット役がオーランド・ブルーム。ハリウッド映画でよく見る俳優をちりばめているが作品の雰囲気はあまりハリウッドぽくなく、小粒で地味な印象。事件の真相が二転三転していくが、脚本が精緻というよりは、スピード感でなんとか乗り切っているという感じ。スピード重視で余計な説明を省いていくあたりは良かったが、複雑なように見えて、結構雑というか脇のあまりストーリー展開だ。CIAの対応が意外とずさんなあたり、妙なリアリティがあると言えばあるのかもしれないが・・・。
 ラシーンは過去のテロ事件の際、尋問が上手くいかなかったことに強い自責の念を持っている。その為、今回は絶対に失敗できない、犠牲者は絶対に出さないという気負いがある。対して彼女の上司、元上司たちにはそういった気負いはあまり感じられない。もちろん彼らもテロ防止にやっきになってはいるが、彼らにとって被害の規模は数字上のものだ。ラシーンにとっては具体的な個人であり、ケースワーカーとして接したうちの誰かがテロリスト予備軍であり被害者予備軍であるかもしれない。ラシーンの表向きの職業をケースワーカーとしたのは、ストーリーの動線上の都合で深い意図はないのかもしれないが、現場感の差異みたいなものを出す効果はあったんじゃないかと思う。

セブン・シスターズ [Blu-ray]
ノオミ・ラパス
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2018-03-02


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2018-03-16

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