ガストン・ルルー著、平岡敦訳
科学者スタンガルソン教授とその娘マティルドが住む城で、マティルドが何者かに襲撃され重傷を負うという事件が起きた。事件が起きたのは研究室のある離れの一室で、完全な密室だった。一体犯人はどうやって侵入し、どうやって逃げたのか?18歳の新聞記者ルルタビーユとパリ警視庁警部ラルサン、2人の名探偵が謎に挑む。
密室ミステリの古典にして名作といわれる作品だが、なるほど納得。ジャン・コクトーが熱烈な序文を寄せたのもわかる。論理的遊戯としてのミステリ以外のことをやろうという色気がない、ロジックに徹したミステリ小説なのだ。当時これは新鮮だったろうなと思う。密室のトリックも真犯人の設定(いきなり出してくるな?!と思った。何か前振りあった?)も、正直苦しいと言えば苦しい。ただその部分局地的な精度というよりも、それ以外の可能性を排除していく道筋の絞り込みの論理だてに技があるのだと思う。門番夫婦が何をしていたのかという解の導き出し方とか、地味だけどいいんだよな。これが本格ミステリの基礎!という感じ。
探偵役であるルルタビーユは才気あふれるが、往々にして小生意気で気まぐれに見える。彼の手紙という設定のパートだとより際立つ。自意識過剰気味な気負い方がいかにも若い。