三角康介(志尊淳)は幼いころから霊が見えることに苦しんできた。ある日、冷川理人(岡田将生)に「助手にならないか」と声を掛けられる。冷川は除霊師で、三角と一緒にいるとよりはっきりと「見える」のだという。一緒に働き始めた2人は、冷川と懇意にしている刑事の半澤(滝藤賢一)から、1年前に起きた連続殺人事件の調査を依頼される。遺体の一部がまだ見つかっていないというのだ。原作はヤマシタトモコの同名漫画、監督は森ガキ侑大。
意外と手堅くまとめており、改変部分はあるが原作のイメージも損なっていないと思う。原作漫画に非常に愛着がある人にとっては微妙な所もあるのかもしれないが、映画単体としては悪くない。省略していいところはさっくり省略したメリハリのある脚本の方向性と、映像の組み立て方とが上手くかみ合って、コンパクトにまとめられていると思う(102分という尺は非常に好感度高かった)。モブ含め出演者の衣装を黒ベースで統一するという視覚的な演出への拘りも見られたが、これはそれほど効果を発揮していなかったように思う。ちょっとファンタジー寄り・フィクショナルな雰囲気を強めたかったのかもしれないが、拘る所そこ?という釈然としない気分になってしまった。一方、霊の見せ方等のVFXはやりすぎない感じに見える所が良い。単にそこにいる、という本作の霊のありかたに合っているように思った。
冷川は情緒に乏しく心情の機微がわからない人間だが、岡田の「心のない人」演技が上手い。表面上にこにこしており過剰に明晰だが、内面は何を考えているのかわからない、そもそも感情があるのかわからない、という奇妙さが出ていたと思う。前半での冷川の得体の知れなさと、後半で内面の揺らぎが生じる様との微妙な変化を感じさせる演技だったと思う。
原作では呪いの鍵を握る非浦英莉可(平手友梨奈)がストーリー上閉める割合がもっと高いが、本作では三角のトラウマと冷川の「呪い」を解くという点にストーリーを絞っている。冒頭と終盤でのあるシーンが対比になった構成には、製作側のドヤ顔とやってやった感がにじむが、1本の映画としては正解だろう。この冒頭と終盤の呼応によって、本作はバディームービーとして成立しているのだ。
ラスト、続編への色気がちらつくし実際そういう予定だったのかもしれないが、現状ではなかなか難しいのではという気がする。公開時期でかなり損しているのが勿体ない。なお、非浦英莉可役の平手友梨奈の芝居している姿を初めて見たのだが、常に教室の隅っこにいそうな個性がユニークで、好演だったと思う。