3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

2019年11月

『スパイたちの遺産』

ジョン・ル・カレ著、加賀山卓朗訳
 かつては「サーカス」の一員として諜報活動に奔走したピーター・ギラムは、今ではブルターニュの農場で隠居生活を送っている。しかし英国情報部からの呼び出しがかかる。冷戦期に起きた射殺事件の遺族が、諜報部とギラム、そしてギラムの上司であったスマイリーを相手取って訴訟を起こすというのだ。情報部の追求を受け、ギラムは語り始める。
 『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラ、ソルジャー、スパイ』で起こった事件の真相に言及しているので、この2作を読んでいることが前提(といっても、知らなくてもまあ大丈夫だとは思う)の作品。スパイたちの後始末、「その後」を生きてしまった元スパイがつけの取り立てを迫られる話と言える。フットワークの軽い色男というイメージだったギラムが、実はあの事件の背後でこのようなことをしていた、こういう思いを秘めていたのかという感慨深さがある。国や組織ではなく、ギラム個人の物語という側面がかなり強く、そういう意味ではスパイ小説という感じではない。スパイといっても個人の感情から逃れられない、だから苦しいのだ。スパイという職業の矛盾がむきだしになっていく(ル・カレの作品はいつもそうだと思うが)。しかしなんにせよ、ギラムはもちろんあの人とかあの人が元気でよかったよ…。そして、あの人のここぞというところでのブレのなさ、責任を引き受ける様には、著者の「こうであれ」という気持ちが強く込められていると思う。

スパイたちの遺産 (ハヤカワ文庫NV)
ジョン・ル・カレ
早川書房
2019-11-06




『アイリッシュマン』

 トラックドライバーだったフランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)は一帯を仕切るマフィア、ラッセル・バッファリーノ(ジョー・ペシ)と知り合ったことがきっかけで、殺し屋として頭角を現していく。全米トラック運転組合委員長ジミー・ホッファ(アル・パチーノ)の付き人となり信頼を得るが、やがてホッファは暴走を始める。監督はマーティン・スコセッシ。
 Netflix配信作品が期間限定で劇場公開されていたので見に行ったのだが、さすがに209分は長い…。長さの面では自由に中断できる配信向きといえる。とは言え、劇場で見る醍醐味はありすぎるくらいある。映像は明らかにスクリーン向きなので配信だともったいなくなっちゃう。さすがスコセッシというところか。
 老年のフランクが過去を語り始め、過去と現在が入り乱れる、途中の時間経過も不規則かつ大幅に飛んだりする。また、実話が元なので実際の第二次世界大戦後のアメリカ史と強く結びついている。全米トラック運転組合とマフィア、政界との繋がりや、ホッファが何者なのか、またキューバ危機あたりは押さえておかないとちょっとついていくのが厳しいかも…。キューバ危機はともかくホッファのことを今のアメリカの若者たちは知っているのだろうか。背景説明はほとんどないので、結構見る側の理解力を要求してくる。
 フランクはわりと軽い気持ちでマフィアの世界に足を踏み入れていくように見える。ラッセルとジミーとも「友人」という関係が前面に出ている。が、マフィアはしょせんマフィアというか、いざ利害の不一致が生じると友情もくそもなくなっていく。ある一線を踏まえたうえでの仁義なのだ。この一線を超えてしまったのがジミーの破滅の始まりだったのでは。フランクとラッセルはずっと上下関係というかパートナーシップ的なものを維持していく(ワインとぶどうパンを、中年当時と同じようにおじいちゃんになっても一緒に食べる様にはきゅんとする)。が、フランクにとってはラッセルをとるかジミーを取るかどんどん迫られていく過程でもある。後半、フランクは頻繁に困ったような涙目顔になっているのだが、強烈な「ボス」2人からの板挟み状態は確かに泣きたくもなりそう。
 フランクらの妻や娘は登場するが、物事にかかわってくるのは男のみ。フランクの娘の1人は彼の真の仕事に勘付き、距離を取る。が、あくまで見ているだけで自らは何もすることはない(絶縁はするのだが)。女不在の世界の成れの果てを見せていくとも言える。

ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOX
マーロン・ブランド
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
2008-10-03


ウルフ・オブ・ウォールストリート [Blu-ray]
レオナルド・ディカプリオ
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
2014-11-26


 
 

『アナと雪の女王2』

 雪と氷を操る力を持つエルサ(イディナ・メンゼル)と明朗快活なアナ(クリステン・ベル)姉妹は、アレンデール王国の女王と王女として、仲間に囲まれ平和に暮らしていた。ある日エルサは不思議な歌声に呼ばれていると感じる。声に導かれ、エルサとアナはエルサの力の正体、そして王国の秘められた真実を知ることになる。監督はクリス・バック&ジェニファー・リー。
 幼いエルサとアナに父親が語るアレンデール王国と不思議な森の関係は、あっこれはいわゆるアレですか…と予感させるものなので、その後の展開にそう意外性はない。ストーリーの運び方は結構雑というか乱暴なところがあり(これは1作目でも感じたのだが)精緻に伏線を敷くというよりは、登場人物のキャラクター性、情動にぐっと寄せて話を転がしていくタイプの作品なのだと思う。冒険要素を盛り込む、かつ視覚的な派手さ・盛り上がりの為にアトラクション的、ジェットコースター的な演出に頼りすぎな気はした。
 とは言え、個人的には前作よりも好きだ。私は前作の結末、エルサの処遇にあまり納得いかなかったのだが、今回はその部分が(私にとっては)是正されて、中盤の展開がどんなに雑でもあのラストシーンがあるから許そうという気になった。前作でエルサは「ありのまま」の自分(「ありのままの」がエルサの中で黒歴史扱いらしいという演出がちょっと面白かった)を受け入れ、周囲からも受容されたわけだが、本当にそうなのか?別の氷の城に入っただけではないのか?というのが今回のスタート地点だろう。エルサの自分探しはむしろ本作が本番だ。一方、アナはエルサを愛しずっと一緒にいようと決意しているが、それはお互いに縛り付けることになっていないか?という面も出てくる。前作での体験をふまえてなのだろうが、アナがやたらと姉妹が一緒にいなければと強調するので、これはこれでエルサは辛いのでは…と思ってしまう。愛では救えない、自由になれないものもあるのでは?とも。
 今回のエルサはレオタード風衣装といい、人生の選択といい、歴代のディズニープリンセスの中ではかなり異色、新しいと言えるだろう。その一方でアナが旧来のプリンセス的価値観を引き継ぎ、異性のパートナーを得ることに幸せを見出しているというコントラストが面白い。どちらがいいというわけではなく、両方OKとするのが今のディズニーの感覚なのか。
 なお今回、エルサの衣装・髪型といい、クリストフとのソロステージといい、80年代MV風味が妙に強い。特にクリストフのパートはコンテといいライティングといい曲調・音質(ここだけ明らかに曲の作りが安い!)といいパロディとして笑わそうとしているんだと思うが、誰に向けて発信しているんだ…。子供にはわからないし大人も結構いい歳の大人でないとわからないと思うんだけど…(『ボヘミアン・ラプソディ』がヒットしたからとりあえずあのネタだけはわかるだろ!みたいな読みがあったんだろうか)。

アナと雪の女王/家族の思い出 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
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ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2019-08-05



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2019-07-24



『ブライトバーン 恐怖の拡散者』

 子供ができずに悩んでいるトーリ(エリザベス・バンクス)とカイル(デビッド・デンマン)夫婦の元に、赤ん坊がやってきた。その男の子ブランドン(ジャクソン・A・ダン)は聡明で成績優秀に育った。しかし12歳になったブランドンは異常な力を発揮し始め、人が変わったようになる・監督はデビッド・ヤロベスキー。
 自分たちの子供が何を考えているのか、どういう人物なのかわからないという子供の他者性を極端に拡大したような話であり、スーパーマンが悪い子だったらという話である。良い子か悪い子かは親の人柄や努力によって決まるとは限らないからな…。とは言え、子供の他者性についても、異能のダークサイドについても掘り下げ方はさほど深くなく、意外とあっさりしている。自分の子供が邪悪な存在だとは信じたくない、しかし邪悪である証拠が次々と出てくるというシチュエーションは、親としては相当辛く葛藤するところだと思うのだが、父親も母親も結構決断が早いな(笑)。重苦しくなりそうなところ、あまり重苦しくないのはあえてなのかそういう作風(全般的にあまり心理の彫り込みがうまいとは思えない)なのか。良くも悪くも軽め。さらっと見られて(時間的にもコンパクトで)いいといえばいいのだが、心理的な緊張感、サスペンス要素がもっと強いのかと思っていたので拍子抜けした。
 登場人物の心情や行動の演出、ブランドンの邪悪さの演出はわりとあっさり目なのだが、所々でスプラッタ、グロテスク要素をチラ見させていくところに監督の性癖を感じた。ストーリー展開上そんなに必要ないし、一連の流れの中で見せるというよりもわざわざそのシーンをねじこんできている印象だった。

ゴールデンボーイ [DVD]
ブラッド・レンフロ
パイオニアLDC
1999-12-22







『あたらしい無職』

丹野未雪著
 今日から無職。ハローワークに行き雇用保険の説明を受ける。友人の誘いで花見に行きまくる。就職活動をし自炊をする。非正規雇用の編集者として働いてきた著者の、無職と正社員、そしてまた無職としての生活。
 日記の形式で書かれているので時間の経過がわかりやすい。時間の経過がわかりやすいということは、無職期間が具体的にイメージできるので収入がない心細さもじわじわしみてくるということなのだ…。予算が限られている中でお花見に行ったりピクニックに行ったりと愉快そうではあるが、生活は逃がしてくれない。お金の算段をするくだりではちょっとおなかが痛くなりそうだった。友人からお金を借りる時の、借りる側だけでなく貸す側の覚悟が垣間見える、それに気づいた著者がそれに気づき涙する件は心に刺さる。正社員としての仕事の中でも、仕事の面白さがある一方で、人間関係の理不尽さや取引先の無茶苦茶さに翻弄される辛さが身に染みてくる。出来の悪い若手への指導の中で高圧的だったかつての「出来る」上司のことを思い出す等、なんかもう色々とぐさぐさきます。
 働くこと、無職であること両方の辛さ面白さ(というと語弊があるが)がシンプルな文体で率直に、抑制のきいたトーンで綴られていく。それにしても著者の周囲が非正規雇用とフリーランスばかりなのが辛かった…。時代背景によって仕事のあり方はもちろん「無職」のあり方もだいぶ変わってくると思う。下り坂の時代の無職ってきつい…。それでもちゃんと自分の生活、仕事をとらえていく著者の文章にぐっときた。


『女の子は本当にピンクが好きなのか』

堀越英美著
 女の子が好きな色、女の子らしい色といえばピンクが定番と思われてきたが、そもそもなぜ女の子=ピンクというイメージが定着したのか?いわゆる「ダサピンク」現象(ピンク=ダサいではなく、女性はピンクが好きな物、可愛いものがすきなものだという認識で商品が作られ残念な結果になる現象)も起きた昨今、ピンクが女らしさ・男らしさにもたらした功罪を国内外の事例を取り上げ掘り下げていく。
 女の子=ピンクというのはフランスが発祥だそうで、それほど歴史が長いわけではない(男の子=ピンクの国もあったし、そもそも昔は持ちのいい染料は高価だったので洗う頻度の高い子供服は白一択だったそうだ)。それが今やというかいまだにというか、女の子といえばピンク、女児玩具売り場はピンク水色ラベンダー色。親がキラキラファンシーを好まなくてもいつの間にか好むようになることが往々にしてあるというから不思議だ。幼い子供はピンクを好みやすいという統計もあるそうだが、社会的に「そういうもの」とされていることの根深さ、ピンクを好む女性が世の中では好まれるとされている影響がやはり強いのだろう。ピンクという色は単に色でしかないのだが、そこに加味される意味合いが女性に複雑な気持ちを抱かせ、男性をピンクから遠ざける。本来単なる色なんだから、男女とももっとフラットにピンクと付き合える世の中になるといいのに…。
 その一方で女児向け玩具の変化(バービーの職業や体形が多様化したり、理系実験キットが人気だったり)が著しかったり、男の子もピンクを着ていいじゃないかというムーブメントが海外では起きていたいるする。特に玩具業界における変化についての記述が面白かった。男らしさ女らしさという枠組みは昔よりはゆるやかになり、少しずつだが世界は変わっていくのだ。とは言え、日本は他国に比べて数周遅れているのが辛いが…。


『ひとよ』

 小さなタクシー会社を営む稲村家で、こはる(田中裕子)が夫を殺した。夫の暴力から子供たちを守る為と信じての犯行だった。15年後に必ず会いに来ると子供たちに告げ、こはるは逮捕される。そして15年後、長男・大樹(鈴木亮平)、次男・雄二(佐藤健)、長女・園子(松岡茉優)は事件によって人生を狂わされ、ひっそりと人生を送っていた。そんな彼らの前にこはるが帰ってくる。原作は桑原裕子。監督は白石和彌。 
 白石監督、どんどん座りがいいというか、きちんと折り目正しい映画を撮るようになってきているな。長くなりがちだった映画の尺自体もだんだんコンパクトになっているように思う(が、本作ももうちょっと短くできると思う…)。職人的な腕の良さ、手堅さを感じる。本作は殺人を犯した母と子供たちというシリアスな要素が中心にあるし、語りのトーンもシリアス。しかし、つい笑ってしまうような部分、なんだかユーモラスな部分がちょこちょことある。こっちをもっと膨らませてもよかったのになという気もした。こはるの「万引き」など元々笑いの要素として入れられているシーンだろうがその割には笑いが盛り上がらない。また、千鳥の大悟の登場の仕方など出オチに近いパーフェクトさだった。そこ、素直に笑わせてよという気分がなくもない。笑いを投げ込みつつ深刻な話をしてもいいと思うのだが。
 こはるの行為は子供たちを守りたい一心からのものだろう。これで子供たちは自由になれる、好きなことをできると彼女は信じた。しかし、子供たちにとって父親の死は決して自由をもたらすものではなく、むしろ世間の誹謗中傷や嫌がらせにさらされ、不自由なばかりだ。親の心子知らず、子の心親知らずとでも言うのか、お互いのすれ違いが苦い。とは言え、それでもお互いに大切に思う心を捨てることはできず、だからこそよい一層切ない。そもそも、本当に嫌ならこの土地を捨てていけばよかったのだ。家族を捨て食い物にするつもりだった雄二も、結局戻ってきてしまう。切り捨てることができれば
いっそ楽なのにそうできないという家族の情の厄介さ。
 出演者が皆とてもよかった。佐藤は「ちょっと賢い」かつ荒んだ雰囲気がよく出ている。ドロップキックの決まり方も抜群だった。鈴木が醸し出す不器用な生真面目さと危うさ、松浦の可愛いのか可愛くないのかよくわからない微妙なふるまいなど、兄妹3人がはまっている。そして何より田中の怪物性とでもいいたくなる存在感。普通のことをやっているはずなのにあの違和感は何なんだろうか。くどくなる直前でトーンを抑えるところがうまい。脇役も、訳ありドライバーの佐々木蔵之介の豹変ぶりと父親としての無力さにはぐっとくる。また、タクシー会社社長の丸井役の音尾琢真が本作の良心的なたたずまいで素晴らしかった。「良い人」として出来すぎなんだけど、それでもこういう「良い人」はいるに違いないと思わせるものがある。


ひとよ (集英社文庫)
長尾 徳子
集英社
2019-09-20


麻雀放浪記2020 [Blu-ray]
斎藤 工
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2019-08-01




『エリザベス・ビショップ 悲しみと理性』

コルム・トビーン著、伊藤範子訳
 20世紀アメリカにおける最も優れた詩人の一人、エリザベス・ビショップ。喪失体験の悲しみや痛みをストイックかつ精緻な詩として昇華し、高い評価を受けた。アイルランドの作家である著者は、ビショップの作品と人生を紐解いていく。
 私はビショップという詩人のことは実は知らなかったし、本著に登場する彼女と交流のあった詩人、作家のこともほとんど知らない。トビーンの著作ということで手に取ってみた。ビショップの作品が多数引用されているというわけではないのだが、その作品を読んでみたくなる。トビーンはビショップの作品を彼女の人生と重ねて分析していくが、ビショップが自分の人生を作品に反映した部分よりも、むしろしなかった、取捨選択が厳しくされているという部分に着目していく。豊かな表現だが決して饒舌にはならない。作品はあくまで作品で、人生やその時々の感情とはいったん切り離されたものとして成立しなくてはならないという厳しさがある。感情を直接盛り込むのではなく、具体的な物、風景のディティールの積み重ねの上に強い情感のイメージが構成されていく。非常に注意深く組み立てられているのだ。
 その厳しさは自分自身に対してだけではなく、ビショップが仲間の詩人たちに向ける態度でもあり、コビーン当人の態度でもあるのだろう。ビショップと彼女の「親友」であった詩人ロバート・ロウエルとの書簡は時にユーモラスだが、時にお互い刺し違えそうな言葉の応酬がある。創作者として認め合っているからこそのやりとりだろう。ビショップとロウエルは直接顔を合わせることはほとんどなかったそうだ。

エリザベス・ビショップ 悲しみと理性
コルム・トビーン
港の人
2019-09-10


エリザベス・ビショップ詩集 (世界現代詩文庫)
エリザベス ビショップ
土曜美術社出版販売
2001-02


『残された者 北の極地』

 飛行機事故で1人、北極地帯に取り残されたパイロットのオボァガード(マッツ・ミケルセン)は、壊れた飛行機をシェルターにし、生き延びていた。しかしようやくやってきたヘリコプターが墜落。女性乗務員(マリア・テルマ・サルマドッティ)が大けがをしてしまう。オボァガードは瀕死の彼女を、地図上に確認した北方の基地に連れていくことを決意する。監督はジョー・ペナ。
 冒頭、遭難中のオボァガードの日々の「任務」が淡々と描かれる。これが妙に面白かった。定位置で地形を観測し地図を作り、地面にSOSの文字を刻む。魚を取って冷凍(アイスボックスに入れると自動的に冷凍されちゃうわけだけど…)。し貯蔵する。これを腕時計に設定したタイマーにそって、几帳面に行っていく。この几帳面さが彼を生き延びさせてきたのだともわかってくる。自分がどこへ向かったのか、行動を書き残していくというのも、救助隊が来たときの為の対策だとわかる。記録って大事!
 彼の几帳面さ、きっちり守られるルーティン行動は、サバイブするための手段だ。しかし女性を助けたことで、そのルーティンから外れていかざるを得ない。自分が生存するための可能性を減らしても他人を助けるかどうか、倫理観を問われるシチュエーションが続いていく。寒さはもちろんなのだが、究極の二択で追い詰められていくのだ。まずはフィジカルを守らなくてはならないわけだが、かなり内省的でもある。マッツ・ミケルセンて色々と追い詰めたくなるタイプの顔をしているのだろうか。誰かを虐げているか自分が虐げられている役ばかり演じている気がする。監督のフェティッシュを掻き立てる何かがあるのだろうか。
 非常にシンプルなサバイバルムービーなのだが、自然環境の厳しさが強烈。寒さは人類の敵だと痛感できる。この寒さの中、この距離を歩いて(しかも自力では動けない成人女性を運搬しつつ)移動するのかと気が遠くなりそう。風景からして氷と岩しかない感じ(でも掘れば土が出てくるんだなというのはちょっと新鮮)で強烈だった。見ている分には引き込まれるけど、この環境で生活したくないよな…。

ウインド・リバー [Blu-ray]
ジェレミー・レナー
Happinet
2018-12-04




ザ・グレイ [Blu-ray]
リーアム・ニーソン
ジェネオン・ユニバーサル
2013-09-04



『生者と死者に告ぐ』

ネレ・ノイハウス著、酒寄進一訳
 犬の散歩中の女性が射殺された。翌日、森の脇の家で女性が窓の外から頭部を撃たれて家族の前で死亡。さらに数日後には若い男性が玄関先で心臓を撃ち抜かれた。どの狙撃も難易度が高く正確なことから、射撃のプロの犯行と思われた。そして警察署に「仕置き人」と名乗る死亡告知が届く。被害者たちはなぜ選ばれたのか。刑事オリヴァーとピアは年末の町を奔走する。
 オリヴァー&ピアシリーズ新作。性別関係なく同僚、上司と部下としての敬意と思いやりのあるコンビネーションは健在でやはり良い。ここのところ女性関係でフラフラしっぱなしで頼りなかったオリヴァーだが、本作ではだいぶ復調している。とは言えまた次の波がやってきそうなんだけど…。女性に対してはいまひとつ洞察力に欠ける。一方ピアはパートナーとのバカンス返上しての捜査。バカンスよりも捜査を選んでしまうところに彼女の人柄と仕事への誇りが窺えるし、それをパートナーが理解しており信頼関係が揺らがないというところが素晴らしい。オリヴァーもあやかれよ…。また有能すぎる(元々仕事できる人設定だからそりゃあ有能なのだが)被害者遺族も登場する。警察側の捜査よりもむしろ、彼女の奮闘がストーリーを前に進めていくのだ。
 今回は連続殺人事件で、被害者の共通点から犯人の動機をあぶりだすという所がポイントになる。終盤になってバタバタと新事実が判明するが、その原因が非常に基本的な確認の不十分にあるという所が笑えない。ご都合主義的とも言われるかもしれないけど、こういうことってチームでの仕事であろうとなかろうと本当にあるんだよなー!我が身を振り返りぞっとします。1人の手抜きで捜査が大幅に遅れるというのが怖すぎる。

生者と死者に告ぐ (創元推理文庫)
ネレ・ノイハウス
東京創元社
2019-10-30


悪しき狼 (創元推理文庫)
ネレ・ノイハウス
東京創元社
2018-10-31





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