3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。

2019年09月

『あふれでたのはやさしさだった』

寮美千子著
 作家である著者は、奈良少年刑務所で「社会性涵養プログラム」を担当することになる。内容は詩と絵本の教室の講師。2007年から10年間、受刑者たちと向き合った記録。
 著者が奈良少年刑務所と関わるようになったきっかけは、明治時代の名建築である刑務所の建物に惹かれて、あの中に入ってみたいという一心のことだったというのが面白い。元々対受刑者への教育プログラム等に興味があったわけではなく、全くの門外漢だったというのだ。刑務官らと共に手探りで進められていく授業は、絵本を全員で朗読したり、文章に合わせて体を動かす芝居仕立てにしたりというもの。そして、徐々に自分で詩を作れる、つまり自分の気持ちを言葉で表せるようにしていく。社会性涵養プログラムを受ける受刑者たちは、自分がしたことへの反省や更生以前の状態にいるということにちょっとショックを受けた。感情の言語化、コミュニケーションがうまくできないことで犯罪への道を進んでしまったりもする。彼らの多くは他人からちゃんと向き合ってもらっていない、自分の言葉を聞いてもらっていない。ちゃんと向き合い、言葉が出てくるのを待つということが非常に重要で、そうしていると彼ら自身の言葉が出てくる瞬間がある。著者は、変わらなかった子はいないという。お互いに言葉を聞きあうという体験を重ねることで優しさが引き出されていくというのだ。著者のオプティミズムがすぎるようにも思うのだが、言葉(を発すること、それをじっと聞くこと)の力というのは確かにあるのだろうとも思える。

『サタンタンゴ』

 経済的に行き詰ってうらさびれた、ハンガリーのとある村。死んだはずのイリミアーシュが村に帰ってくるという噂が流れ始める。村人たちは彼が現状を変えてくれるのではと、期待と不安に駆られる。彼は救世主なのか詐欺師なのか。原作はクラスプホルカイ・ラースターの小説。監督・脚本はタル・ベーラ。
 438分という超長尺かつ全約150カットという長回しの連打。だいぶどうかしている、なぜやろうと思った⁈というくらいの力業だが、無理やり感がない、かつエネルギーが途切れないところがすごい。全12章から成る構成は、一見ゆるゆると進むようでいて、あの時実はこういうことが、というパズルのような部分もある。意外とタイト(というには上映時間的に語弊があるんだけど…)だ。モノクロ映画なのだが、4Kデジタルレストア版だと非常にクリアで美しい。白黒なのにどことなく色づいて見えてくるのが不思議だ。
 不思議といえば、構成も撮影も厳密に練りこまれていると思われる(でないとあんなに長回しばかりできないだろう)のに、大雨の後のシーンなのに地面が乾いていたり、ナレーションでは暗闇と言っているのに映像は昼間のようだったりと、整合性のないおおざっぱなところもある。どこを精緻にしてどこをおおらかにするのかという判断基準が見えそうで見えない。
 長時間という体力的な負荷よりも、精神的な負荷の方がきつかった。とにかく精神を削られる。冬の雨が降り続き、町へ出るバスもなくなり、経済も人間関係もどん詰まり、どうにもならない世界なのだ。降り続く雨には世界の終末の気配さえ漂い、神話的な雰囲気が濃厚なのに、どうかすると泥臭くちっぽけな人間同士のいさかいや欲が転がりだす。壮大さと卑小さが同居している。いわゆる人間固有の美点とされるもの、知性や倫理、理性や善良さといったものにあまり信頼をおいていない(本作のような作品を作るという点で観客の知性・感性は信用しているんだろうけど)作品内世界なので、なんとも気が滅入る。気が滅入る話を大変な強度と美しさで見せてくるので破壊力がなんだかすごい。

ニーチェの馬 [DVD]
ボーク・エリカ
紀伊國屋書店
2012-11-24





Satantango
Laszlo Krasznahorkai
Atlantic Books
2013-07-04


『アド・アストラ』

 ベテラン宇宙飛行士のロイ・マグブライド(ブラッド・ピット)は軍上層部から極秘指令を受ける。地球外生命体の探求に人生を捧げ、その探索途中に太陽系の彼方で行方不明になった父(トミー・リー・ジョーンズ)が生きている、しかも太陽系を滅ぼしかねない「リマ計画」にかかわっている可能性があるというのだ。ロイは父へのメッセージを伝える為、宇宙へ旅立つ。監督はジェームズ・グレイ。
 前半は「ちょっと先の未来」の感じがすごくよく出ている。今より頻繁に宇宙に行けるし、月や火星に人類は進出している。しかし月面にコロニーを作れるほどではないし、スペースシャトルに乗るには宇宙服必須だし搭乗人数も限られている。月面カーチェイスの泥臭さもよかった。このくらいなら遠からずできるようになるかも、という手応えを感じさせる。
 一方後半はロイの内省が色濃くなる。ロイは父親に対して複雑な感情を抱いている。確執があるというよりも、父親は家族を愛していたのか、父親の心がどこにあるのか彼にとっては謎のまま年数が経ってしまったのだ。父親は自分と母親を捨てたのではないか、そしてまたロイ自身も父親と同じように身近な人を大切にできない人間になってしまったのではないかという恐れが、彼を苛んでいく。父という謎と、自分に対する恐れと向き合う過程が、太陽系の果てへの旅と重なっていく。ロイがどんどん不安定になっていく様は不穏だ。地球から離れるほど、内面へ内面へと向かっていく、それはどちらも不安だし危険を伴うものだという構成が面白い。
 ただ、ロイの父が遠くまで行けた、宇宙飛行士としてヒーローになれたのは、愛=自分の精神を揺さぶるものを地球に置いてきたからだとも言える。ロイが度々受けるメンタルテストは心の揺らぎをチェックするものだ。感情が大きすぎてはいけない、しかしその状態を保ち続けると親密な関係の人間は疎外感を感じ耐えられない。遠く遠くまで行くには、人間性を手放さなければならないのかもしれない。ブラッド・ピットは最近、どこか幽霊のような、あの世とこの世の境にいるような役をよく演じているように思う。本作も幽霊がこの世に復帰してくる話のようだった。

インターステラー [Blu-ray]
マシュー・マコノヒー
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2015-11-03


ツリー・オブ・ライフ [Blu-ray]
ブラッド・ピット
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2013-01-23


『グッド・ヴァイブレーションズ』

 1970年代、紛争の真っ只中にある北アイルランドではツアーにやってくるミュージシャンは激減し、ナイトクラブにも人は来なくなっていた。そんな中DJを続けるテリー・フーリー(リチャード・ドーマー)は、ベルファストにレコード店「GOOD VIBRATIONS」を開店する。ある日チラシを持ち込んできた若者に興味を持ったテリーは、興味本位で地元のライブハウスを覗く。そこで演奏していたパンクロックとそれによって団結し世の中に抵抗す若者たちに心打たれたテリーは、自ら音楽レーベルを立ち上げ彼らのレコードをリリースする。テリーの元には様々なバンドが集うようになるが。監督はリサ・バロス・ディーサ&グレン・レイバーン。実話を元にしたストーリー。クライマックスとなる2つのライブシーンに「いいライブ」感が満ち満ちておりちょっと泣いた。
 70年代~80年代初頭のアイルランドなのでIRAによるテロが続発しており、テリーのかつての友人たちも主義主張により袂を分かっていく。テリーは共産主義者や起業家や芸術家、様々な人たちがカソリックかプロテスタントかに二分されてしまったとぼやく。中立は許されず、どちらにも属さないテリー自身もかつての仲間に狙われ始めるのだ。そんな中、ベルファストでレコード店を開くという計画はかなり能天気に思えただろう。カソリックもプロテスタントも関係ない、ロックへの愛は境界を越え生きる希望になるのだという彼の生き方に、目を覚ませという人もいる。しかしテリーは無鉄砲とも言える行動力と楽天性でどんどん実現していく。一緒にいる人は経済的にも精神的にもかなり大変そうだけど、彼みたいな人が世の中を変えていくのかもしれないなと思った。
 レコード店立ち上げの時にカソリック派とプロテスタント派を集めたときのやりとりや、バンドのツアー中に「カソリックとプロテスタントがつるんでいるのか」と警官に驚かれる様は、彼の理想が現実になった瞬間だろう。それはすぐにとん挫するかもしれないが、そしたらまたやり直せばいいのだ。エンドロール前のテロップで実在のテリーのその後が説明されるが、「やりなおせばいい」精神が一貫していて笑っちゃうくらい。なかなかここまでできないよな。負けつつ勝つ、みたいな生き方だ。
 とは言え、テリーが目の前の責任や現実から逃げがちな人だというのも、金策や妻子との関係に如実に表れている。ここは決して褒められたものではない。面白いもの、すごいものの方に夢中でそれ以外には目がいかない。彼はパンクキッズらの信頼を得るが、彼自身も子供だったからだろう。もうちょっと立ち回りや周囲への目配りが「ちゃんとした大人」だったらレーベルもショップも長持ちしたかもしれないけど、パンクキッズらの信頼を得られていたかはわからない。




『サウナのあるところ』

 自宅や別荘などプライベートなサウナから、街中の公衆サウナまで、様々なサウナが息づく国フィンランド。その様々なサウナで語らう人たちの会話を追ったドキュメンタリー。監督はヨーナス・バリヘル&ミカ・ホタカイネン。
 フィンランドはサウナが盛んという話は聞いていたが、サウナの形態が本当にそれぞれでバラエティに富んでいる。いわゆる北欧の「サウナ」と聞いて連想するようなウッディでこじんまりとした個人宅のものから、森の中の小屋、テント風、キャンピングカーや電話ボックスを改造したもの、街中にある公衆サウナや軍や企業の設備まで。日本のお風呂みたいな感覚で使っているんだろうな。中の温度湿度もまちまちみたいで、サウナといえば汗!というわけでもないみたい。サウナの中では暑すぎ湿度高すぎでゆっくり語らうなんて無理では?と思っていたけれど、これなら大丈夫かなと納得。あまり汗をかいていない人もいる。
 最初に登場する夫婦を除き、登場するのは男性ばかり。そして、かなり立ち入った、その人にとってデリケートなものであろう話をする人が多い。映画の構成として編集時にそういうエピソードをピックアップしているのかもしれないが、サウナだとそれこそ裸の付き合いで話しやすいのだろうか。他にすることないしな…。家族との死別や、子供に会えない(親権を取り上げられた)という話が多い。皆普通の人だし意識してうまく話そうとしているわけではないから、ぽつぽつとエピソードが出てくるという感じなんだけど、ぎこちないからこそダメージの深さの深刻度がわかる気がした。
 北欧は男女平等、ジェンダーのフラット化が進んでいるというイメージがあるが、フィンランドでは男は男らしく、人前で泣くなんてみっともない、弱音をはくな、という文化が根強く残っているようだ。喪失による痛み、悲しみなど心のやわらかい部分を明かせる場がないのだろう。サウナのような密閉空間だと、かろうじてそういう話がしやすいのかもしれない。


旅人は夢を奏でる [DVD]
ヴェサ・マッティ・ロイリ
エプコット
2015-03-06



『屍人荘の殺人』

今村昌弘著
 神紅大学ミステリ愛好会のは明智恭介とその「助手」葉村譲は、同じ大学に通う探偵少女・剣崎比留子に頼まれ映画研究部の合宿に同行する。宿泊先は山の中のペンション。しかし映画研究部の合宿にはよくない噂があり、さらに予想外の出来事が勃発する。混乱の中、部員の1人が密室で惨殺死体となって発見される。
 本格ミステリと思って読んでいたら、いきなり別ジャンルとマッシュアップし始める。しかし、その別ジャンル要素を本格ミステリの文法に落とし込んでいるあたりが見事。特殊ルール下本格の一種なのだが、本作の場合特殊ルールのジャンルがかなり強力というか、その道の方が読んだら諸々言いたくなるのかもしれないけど…作中に「その道の人」がちゃんと登場してルール説明をしてくれるあたりはジャンル初心者にも親切だ。小説としての達者さとはちょっと違うのかもしれないが(登場人物の話し言葉の「キャラ付け」感はもうちょっとこなれてもいいと思う)、捨て設定がほぼないように思う。青春ぽいほろ苦さや青年の至らなさも悪くなかった。
 ただ、本作シリーズものらしいけど、この世界観でシリーズ化するのって結構難しいと思うんだけど…毎回特殊ルールを想定しないとならないってことですよね?どこまで「あり」なのかというジャッジが厳しそう。

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)
今村 昌弘
東京創元社
2019-09-11


『アイネクライネナハトムジーク』

伊坂幸太郎著
 「出会い」って何なんだろうと考える会社員、妻に愛想をつかされたその先輩、電話だけでやりとりする男女、元いじめっ子への復讐を企てる女性。ごく普通の、様々な人たちの愛がある地点で交差する連作短編集。
 あの時のあれはこの人か!こことここがこうつながるのか!という著者の得意技が繰り広げられる。ちょっと仕掛けがやりすぎな感じもしてくどいといえばくどいのだが、そこが楽しくもある。予想外に直球かつかわいさのあるラブストーリー集。妻に出ていかれた男性の話が個人的には一番好きかもしれない。あーこういうものかもしれないなーというあきらめ感があって(笑)。
 ただ、登場人物の1人である織田一真の言動がどうにも受け付けなかった。特に最初に収録されている「アイネクライネ」で顕著なのだが、言動がモラハラぎりぎりだと思うんだよな…これを愛嬌とか可愛げとしてとらえているっぽい筆致には違和感がある。DVDの散らかし方とか妻が財布を落とした時のリアクションとか、私が妻ならキレてる。
 なお本作、斉藤和義小説でもある。本作映画化されたそうだが、映画の中ではちゃんと曲を使っているのかな?



『ゴリラに学ぶ男らしさ 男は進化したのか?』

山極寿一著
 人間の男、女という存在は生物としてのオス・メスの違いだけではない。社会的・文化的に区別されたジェンダーである。いわゆる「男らしさ」、男性像とはこれまでの文化・習慣の中で形成されたもので、社会が急速に変化していく中では、段々「男らしさ」が硬直し男性も女性も苦しめることになる。そもそも男、オスの特徴とはどういうものなのか?霊長類学者であり著者が霊長類の生態から、「男」が形成される軌跡を追う。
 同じサルの仲間でもオスのふるまいやオス・メスの関係性はだいぶ違う。子育てへの参加の仕方は群れの成立(そもそもオラウータンのように群れを作らないサルもいる)の仕方によってによって変わってくる側面が強い。ただ、サルにとっての子育ては子供をかわいがる、自分の子供を愛するというものとは似ていても基本的に異なる。あくまで自分のオスとしての存在価値や群れを維持し、自分の子孫を残すためのシステムの一部だ。似ていても、やはり人間とは違う。ということは、いわゆる生物上の「男らしさ」と人間の男性に要求される「男らしさ」は離れていかないとならないのでは。


『荒野の誓い』

 1892年、アメリカ、ニューメキシコ。戦争の英雄で今は看守をしているジョー・ブロッカー(クリスチャン・ベール)は、かつて戦争で宿敵だったシャイアン族の酋長イエロー・ホーク(ウェス・ステューディ)とその家族をモンタナに護送する任務を受ける。イエロー・ホークは病を患い余命いくばくもないのだ。道中、コマンチ族の襲撃によって家族を殺されたロザリー・クウェイド(ロザムンド・パイク)と出会い、彼女も旅に加わるが。監督はスコット・クーパー。
 産業革命が進み、開拓地が広がっていく時代のアメリカが舞台。時代背景と場所は西部劇といえば西部劇だが、もう旧来の意味合いでの「西部劇」は成立しないんだよなと実感した。ブロッカーは土地の奪い合いのためにアメリカ先住民と熾烈な戦いを繰り広げ、その戦争で仲間を大勢亡くした。そのため、イエロー・ホークはじめ先住民らを強く憎んでいる。家族を殺されたクウェイドも同様だ。とはいえ、仲間を殺され憎しみにかられるのはイエロー・ホーク側も同じだろう。
 そもそも、この土地にとってはブロッカーら白人の方がよそ者のはずだ。ブロッカーにとっては自分たちの開拓を邪魔し生活を脅かす存在との闘いだったろうが、先住民側にとっては自分たちを追い立て迫害する存在からの自衛のつもりだろう。旅の道中、ブロッカーはシャイアン族の人たちにもそれぞれ人としての人格や尊厳があることに気付いていく。派閥同士は敵対していても、一緒に苦境を乗り越えるとその人の尊敬すべきところや信頼できるところが見えてくるのだ。それは、群れ対群れとして憎しみ一辺倒でいるよりも、心の中に矛盾や葛藤を抱えることになりしんどいかもしれない。相手の立場を想像できるようになると、自分たちの戦いに正当性があったのかわからなくなっていく。ブロッカーの友人のようにいち早くそれに気づき、自責の念に堪えられなくなる者もいる。正当性のない戦争を勝者として生き延びてしまった者はどうすればいいのか、ブロッカーの肩にも重くのしかかってくるのだ。
 クーパー監督とベールは相性がいい。私はクーパー監督作が割と好きなのだが、映画としてそんなに尖っていたり洗練されていたりするわけではない。わりとオーソドックスだ。ただ、ストーリーのハッピー度とは関係なく、毎回どこか地獄の一丁目をさまよっているような部分がある。ここはつらい、しかし他に行くところもないというような。その地獄感とベールのともすると悲壮な雰囲気がよく合っているのだ。

ファーナス/訣別の朝 Blu-ray
クリスチャン・ベイル
ポニーキャニオン
2016-03-16



『休日はコーヒーショップで謎解きを』

ロバート・ロプレスティ著、高山真由美訳
 ピザショップの常連客である正体不明の男。彼を探しにあやしい奴らがやってきた、「ローズヴィルのピザショップ」。ある家族とアメリカという国の姿が垣間見える「消防士を撃つ」、コーヒーショップで起きた殺人事件を饒舌な名探偵が解決する「赤い封筒」。ノンシリーズの中短篇を収録した作品集。
 味わいも方向性もそれぞれ違う作品を収録しており、統一感はそれほどない。ただ、殆どの作品で本格ミステリならではのロジカルなトリックが仕込まれている。こういう翻訳ミステリの短篇集って近年あまり日本で出版されないので(特に文庫という手に取りやすい形態では)結構貴重なのでは。軽快なアクションサスペンス映画の1シーンのようでもある「ローズヴィルのピザショップ」は楽しい。出てくる人全員が老若男女ちゃんと活躍する。また、軽快で軽めの作品が多い中、アメリカの負の歴史が背景にある「消防士を撃つ」は、少年の語りの瑞々しさがある一方で深い陰影を見せる。個人的に気に入っているのは一風変わった一人称語りの「宇宙の中心」。幻想小説的な側面が強いのかと思ったら、ちゃんと本格ミステリとしての仕掛けがされている。なおボリュームのある「赤い封筒」は探偵役が非常にうざいところも含め伝統にのっとった名探偵小説だと思う。

休日はコーヒーショップで謎解きを (創元推理文庫)
ロバート・ロプレスティ
東京創元社
2019-08-09






日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)
ロバート・ロプレスティ
東京創元社
2018-05-11

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