11歳の少年アレクサンデル(バッティル・ギューヴェ)と妹ファニー(ペルニラ・アルヴィーン)は、父である劇場主で俳優のオスカル・エクダール(アラン・エドクール)、母で女優のエミリー(エヴァ・フレーリング)、元有名女優の祖母ヘレナ(グン・ヴォールグレーン)と暮らしていた。1907年のクリスマスイブ、エクダール家には叔父叔母に従兄弟ら一族が集まり、毎年恒例の賑やかさだった。しかし年明けにオスカルが急死。エミリーは色々と相談に乗ってくれたヴェルゲルス主教(ヤン・マルムシェー)と再婚することになる。監督・脚本はイングマール・ベルイマン。1982年の作品をベルイマン生誕100年映画祭にて鑑賞。
 何と5時間11分という長さで、体力的にはさすがにきつい。しかし映画的喜びに満ち溢れている。序盤、一人遊びから幻想の世界へと足を踏み入れるアレサンデルの世界といい、クリスマスパーティーで皆が並んで屋敷中を踊りまわるシーンのめくるめくような映像といい、映画の醍醐味ってこういうことだな!という豊かさに満ちている。撮影も美術も大変豪華。全5章の構成だが、各章タイトルの背景は水の流れの映像。これはアレクサンデルが主教館から見下ろす川なのだろうとわかってくるが、流れの止まらない時の流れの象徴のようにも見える。喜びも悲しみもその時その時のもので、全て過ぎ去っていく。華やかだがどこか寂しい。
 ドラマ部分は予想外にベタ。子供の視点を中心に、父の死、母の再婚、義父との不仲と虐待、そして大団円を大河ドラマのようなスケール感で見せていく。夫の死により気弱になったエミリーにつけこむヴェルゲルスと、彼のいいなりになってしまうエミリーのドラマはある意味非常に下衆いのだが、そこに信仰の問題が絡んでくる。ヴェルゲルスは非常に厳格なキリスト教者として振舞い、エミリーや子どもたちにもそれを強いる。しかし彼の信仰は信仰の形式のみを厳格化した、形骸化したもので、精神は伴っていないように見えるのだ。頼るものがなくなり不安なエミリーにとってはその形こそが頼もしく見えたのかもしれないが、アレクサンデルやエクダール家の叔父たちはヴェルゲルスの欺瞞を察知する。アレクサンデルがヴェルゲルスに嘘をつき続けるのは、ヴェルゲルスの内実のなさ(と本人は思っていないだろうが)、嘘に対抗しているようにも見えてくる。アレクサンデルの「嘘」は彼を守る物語のようなもので、彼の前に現れる死者たちもその一部。力を持たない子供である彼は、自分の物語でヴェルゲスに反発するのだ。
 エグダール家とその周囲の人々の描き方がとても面白い。クリスマスパーティでは和気藹々としているが、帰路につくと、実はお互いに諸々思う所もある。必ずしも愛情深いわけではない。一族の要であるヘレナは、いつも強気で女王然として見えるが、息子たちには少々失望している。好色な叔父はメイドを愛人にして子供まで作る。そのメイドと子供も一族として迎え入れるという、おおらかさというか底なし感というか。もう1人の叔父はドイツ人の妻をなじってばかりでてんでいくじがない。しかしエミリーと子どもたちが危機に陥ると一致団結して教会と闘う。彼らが劇場主と役者という、世俗の祭りと娯楽の世界の人たちだから、厳格なヴェルゲルスには余計に反感を持つのかもしれない。

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