ローリー・ロイ著、田口俊樹・不二俊子訳
1958年、デトロイトの小さなコミュニティで若い白人女性エリザベスが失踪した。コミュニティあげての捜索が行われるが、彼女は見つからない。同じころ若い黒人女性が撲殺される事件が起きていたが、殆どの白人はこれには無関心だった。ただ一人、マリーナを除いては。
時代背景や土地の雰囲気が感じられとても面白い。舞台はデトロイトでそんなに田舎というわけではないが、舞台となるコミュニティはお互いが顔なじみのごく小さく緊密なもの。しかし、それぞれの家庭には外には出せない事情があり、表面上の和やかさとはうらはらに主婦たちには秘密がある。家の中のことが意外と外に漏れない、だからこそ密室状態で不穏さが膨らんでいく。マリーナにしろグレースにしろ、夫の影が濃くそれが彼女らの問題をどんどん悪化しているように思う。夫の機嫌を損ねてはいけない、夫を満足させなくてはいけないというプレッシャーが常にある。本作は妻たちの視点でほぼ描かれ夫らの内面はさほど見えてこないので、妻側が感じているギャップがより強く感じられる。しかしそのギャップは、人に言ってはいけないものとされているのだ。この「言えない」ことがある人にとってもあまりに重荷だったのではないか。唐突に明かされる真実はやりきれない。
1958年、デトロイトの小さなコミュニティで若い白人女性エリザベスが失踪した。コミュニティあげての捜索が行われるが、彼女は見つからない。同じころ若い黒人女性が撲殺される事件が起きていたが、殆どの白人はこれには無関心だった。ただ一人、マリーナを除いては。
時代背景や土地の雰囲気が感じられとても面白い。舞台はデトロイトでそんなに田舎というわけではないが、舞台となるコミュニティはお互いが顔なじみのごく小さく緊密なもの。しかし、それぞれの家庭には外には出せない事情があり、表面上の和やかさとはうらはらに主婦たちには秘密がある。家の中のことが意外と外に漏れない、だからこそ密室状態で不穏さが膨らんでいく。マリーナにしろグレースにしろ、夫の影が濃くそれが彼女らの問題をどんどん悪化しているように思う。夫の機嫌を損ねてはいけない、夫を満足させなくてはいけないというプレッシャーが常にある。本作は妻たちの視点でほぼ描かれ夫らの内面はさほど見えてこないので、妻側が感じているギャップがより強く感じられる。しかしそのギャップは、人に言ってはいけないものとされているのだ。この「言えない」ことがある人にとってもあまりに重荷だったのではないか。唐突に明かされる真実はやりきれない。