パトリシア・ハイスミス著、上田公子訳
妻とパリ郊外の屋敷で優雅な生活を送るトム・リプリーの元に、ロンドンの画廊から連絡が入る。天才画家ダーワットの個展開催を目前にして、収集家が贋作を掴まされたと騒いでいるというのだ。実はダーワットは数年前に亡くなっており、トムとその仲間が贋作を作り続けていたのだ。トムはダーワットに変装して収集家と面会することになる。
リプリーシリーズ2作目だそうだが、いつの間に結婚を!案外普通の夫婦生活を楽しんでいるっぽい所が面白い。本作でも「なりすまし」癖は治っておらず、変装をして収集家と会うくだりではちょっと笑いそうになった。むしろ不自然だよ!ディッキーの事件の時もそうだったけど、上手いことやったつもりでやらなくていいことをどんどんやっている気がする。余計な手紙書いたり、余計な変装したりするから更に面倒くさいことになるんじゃ・・・。他にも、来客断れよ!とか電話出るなよ!とかいろいろと指摘したくなる(笑)ミステリとしては決して精緻な作品ではないのだ。しかしトムのつい色々やってしまう小物っぽさ、犯罪者としての不完全さが、このシリーズの面白さなのだろう。
ダーワットの贋作を製作する画家のバーナードは、贋作を作り続けることに限界を感じている。彼はトムとは逆で、本来の自分から逃れることができない。「なりすまし」は苦痛なのだ。トムはバーナードに好意を持っているが、おそらく彼が本来の自分から逃げようとしない=核がある所に敬意のようなものを感じているのではないか。とは言え、そんな彼の苦しみは理解できず、徐々に疎ましく思うようになる(もちろん彼らの商売上も、バーナードは厄介な存在になりうる)。よく「自分をだますことは出来ない」とか言うけれど、トムに限ってはそういうことはなさそう。その時のシチュエーションに都合のいい「自分」が彼にとっての「自分」で、核らしきものは見当たらないのだ。
妻とパリ郊外の屋敷で優雅な生活を送るトム・リプリーの元に、ロンドンの画廊から連絡が入る。天才画家ダーワットの個展開催を目前にして、収集家が贋作を掴まされたと騒いでいるというのだ。実はダーワットは数年前に亡くなっており、トムとその仲間が贋作を作り続けていたのだ。トムはダーワットに変装して収集家と面会することになる。
リプリーシリーズ2作目だそうだが、いつの間に結婚を!案外普通の夫婦生活を楽しんでいるっぽい所が面白い。本作でも「なりすまし」癖は治っておらず、変装をして収集家と会うくだりではちょっと笑いそうになった。むしろ不自然だよ!ディッキーの事件の時もそうだったけど、上手いことやったつもりでやらなくていいことをどんどんやっている気がする。余計な手紙書いたり、余計な変装したりするから更に面倒くさいことになるんじゃ・・・。他にも、来客断れよ!とか電話出るなよ!とかいろいろと指摘したくなる(笑)ミステリとしては決して精緻な作品ではないのだ。しかしトムのつい色々やってしまう小物っぽさ、犯罪者としての不完全さが、このシリーズの面白さなのだろう。
ダーワットの贋作を製作する画家のバーナードは、贋作を作り続けることに限界を感じている。彼はトムとは逆で、本来の自分から逃れることができない。「なりすまし」は苦痛なのだ。トムはバーナードに好意を持っているが、おそらく彼が本来の自分から逃げようとしない=核がある所に敬意のようなものを感じているのではないか。とは言え、そんな彼の苦しみは理解できず、徐々に疎ましく思うようになる(もちろん彼らの商売上も、バーナードは厄介な存在になりうる)。よく「自分をだますことは出来ない」とか言うけれど、トムに限ってはそういうことはなさそう。その時のシチュエーションに都合のいい「自分」が彼にとっての「自分」で、核らしきものは見当たらないのだ。