ナサニエル・ウエスト著、柴田元幸訳
仕事を得る為にハリウッドにやってきた青年画家が、夢を追ってハリウッドにやってきた女優の卵や怪しげなセールスマンらと交流する『いなごの日』、立身出世を目ざし上京する青年の暗黒アメリカン・ドリームを描く『クール・ミリオン』他短編2編を収録。
『いなごの日』の題名は本編終盤の暴動の様相と、黙示録のいなごのくだりからなのだろうが、何とも不吉な雰囲気を醸し出す。アメリカでいなごと言ったら、嵐のように大群がやってきて作物を食いつくして去っていく、という悪夢のようなイメージが自分の中であるからだろうか。しかし本作に登場する人たちはハリウッドのセレブなどではなく、何とか夢を掴みたいと集ってき、しかし夢潰えそうになっている貧しい人たちだ。食いつくすのではなく食いつくされる側だろう。食いつくのはむしろ、ハリウッドそのものだ。夢がかなうかもしれない、と思い続けてしまうことの残酷さを感じる。
また、『クール・ミリオン』はアメリカン・ドリーム的な立身出世物語の悪意しかないパロディ。青年が成功を目指す度に失敗し、様々なものを奪われ文字通り全て無くしていく様を、笑いのめしていく。ブラックジョーク的おとぎばなしのようだ。主人公をはじめ登場人物の運命は悲惨なものなのだが、本人が徹底した善人でその悲惨さを自覚していないところがまたおかしくも哀しい。2編ともアメリカン・ドリームに中指立てて全否定している。夢を持つことに異を唱えているのではなく、それが叶うかのように思わせてしまうものに対してのアンチテーゼだ。
仕事を得る為にハリウッドにやってきた青年画家が、夢を追ってハリウッドにやってきた女優の卵や怪しげなセールスマンらと交流する『いなごの日』、立身出世を目ざし上京する青年の暗黒アメリカン・ドリームを描く『クール・ミリオン』他短編2編を収録。
『いなごの日』の題名は本編終盤の暴動の様相と、黙示録のいなごのくだりからなのだろうが、何とも不吉な雰囲気を醸し出す。アメリカでいなごと言ったら、嵐のように大群がやってきて作物を食いつくして去っていく、という悪夢のようなイメージが自分の中であるからだろうか。しかし本作に登場する人たちはハリウッドのセレブなどではなく、何とか夢を掴みたいと集ってき、しかし夢潰えそうになっている貧しい人たちだ。食いつくすのではなく食いつくされる側だろう。食いつくのはむしろ、ハリウッドそのものだ。夢がかなうかもしれない、と思い続けてしまうことの残酷さを感じる。
また、『クール・ミリオン』はアメリカン・ドリーム的な立身出世物語の悪意しかないパロディ。青年が成功を目指す度に失敗し、様々なものを奪われ文字通り全て無くしていく様を、笑いのめしていく。ブラックジョーク的おとぎばなしのようだ。主人公をはじめ登場人物の運命は悲惨なものなのだが、本人が徹底した善人でその悲惨さを自覚していないところがまたおかしくも哀しい。2編ともアメリカン・ドリームに中指立てて全否定している。夢を持つことに異を唱えているのではなく、それが叶うかのように思わせてしまうものに対してのアンチテーゼだ。