石井桃子著
名作『くまのプーさん』の翻訳者である著者の随筆集。今までなかなかまとめて読むことが出来なかった著者の随筆が、河出書房新社からシリーズで発行されたもの。本作では題名の通り、『くまのプーさん』や、ピーターラビットシリーズなどの翻訳作品とその作家にまつわる随筆、また、海外での児童文学・児童図書館活動に関する交流など、翻訳業にまつわる随筆を収録した。評伝で既に読んだことのあるエピソードではあるが、『くまのプーさん』との出会いが著者の人生にとって非常に大きかったこと、作者であるミルンの世界にすっと入っていけた様がよくわかる。一方で、作品としての素晴らしさや作者であるポターへの視線は好意的だが、文章としては翻訳が非常に難しかったピーターラビット、という対比が興味深い。ピーターラビットの原文てそんなに難しい印象はない(私は英語苦手なのでほんとに印象なんだけど)し、言葉遊びを多用したプーさんの方が翻訳するには面倒そうだけどなぁ。著者にとっての相性の問題だったんだろうか。ポターの文は非常に完結でかっちりしているらしく、自分サイドに引き寄せる手がかりが乏しかったということかな。また、アメリカの児童図書館に関する一編の中に、ある児童文学推薦書リストをまとめた人は、子供に良書をという一心で図書館にあった流行の通俗小説など破いてしまった、というくだりがあったのだが、別に通俗小説読んでもいいじゃない、そんなに目くじら立てなくても、清濁併せて読む方がいいと思うけどなーとひっかかった。ただ、当時は児童書というジャンル自体が未発達で、子供用の本を選ぶという概念自体があやふやだったろうから、現代とは大分事情が違うというのはわかるが。
名作『くまのプーさん』の翻訳者である著者の随筆集。今までなかなかまとめて読むことが出来なかった著者の随筆が、河出書房新社からシリーズで発行されたもの。本作では題名の通り、『くまのプーさん』や、ピーターラビットシリーズなどの翻訳作品とその作家にまつわる随筆、また、海外での児童文学・児童図書館活動に関する交流など、翻訳業にまつわる随筆を収録した。評伝で既に読んだことのあるエピソードではあるが、『くまのプーさん』との出会いが著者の人生にとって非常に大きかったこと、作者であるミルンの世界にすっと入っていけた様がよくわかる。一方で、作品としての素晴らしさや作者であるポターへの視線は好意的だが、文章としては翻訳が非常に難しかったピーターラビット、という対比が興味深い。ピーターラビットの原文てそんなに難しい印象はない(私は英語苦手なのでほんとに印象なんだけど)し、言葉遊びを多用したプーさんの方が翻訳するには面倒そうだけどなぁ。著者にとっての相性の問題だったんだろうか。ポターの文は非常に完結でかっちりしているらしく、自分サイドに引き寄せる手がかりが乏しかったということかな。また、アメリカの児童図書館に関する一編の中に、ある児童文学推薦書リストをまとめた人は、子供に良書をという一心で図書館にあった流行の通俗小説など破いてしまった、というくだりがあったのだが、別に通俗小説読んでもいいじゃない、そんなに目くじら立てなくても、清濁併せて読む方がいいと思うけどなーとひっかかった。ただ、当時は児童書というジャンル自体が未発達で、子供用の本を選ぶという概念自体があやふやだったろうから、現代とは大分事情が違うというのはわかるが。