小さな港町。帳簿係のジェボ(マイケル・ロンズデール)は妻ドロティア(クラウディア・カルディナーレ)と息子の妻ソフィア(レオノール・シルベイラ)と、つつましく暮らしていた。息子のジョアンは8年前に姿を消し、ドロティアはひたすらにジョアンを待ち続けていた。ある日ジョアンが突然帰宅し、一家に動揺が走る。監督はマノエル・ド・オリヴェイラ。
ファーストショットが非常に美しく、絵画のよう。しかし夕暮れで徐々に暗くなっていくからか、どこか不穏な気配も漂う。絵画のようなきっちりとした画がその後も続き、1ショットがすごく力強く、あるべきところにあるべきものがあるという感じ。正面から固定カメラで長回しをしているシーンが多いので、出演者は大変だったと思うが、これが演劇的な緊張感を生んでいた。元々、舞台劇の戯曲を原作としているそうなので、そういうフレームのきっちりとした撮り方にしたのかもしれない。
映像は美しく、予告編はなにやら感動的な文芸作品のようなニュアンスで作られているが、この予告編の雰囲気を信じて見に来た人は裏切られた気分になるのではないかと心配になってしまった。確かに優れた文芸作品で感動もする、が、いわゆる「いい話」に感動するのではないのだ。えっここまで冷徹な話なの?!という部分に感動、というとちょっとニュアンスが違ってしまうのかもしれないが、心揺さぶられた。
ジェボの行動は傍から見ていると実にもどかしい。彼は妻を思うが故に、ドロティアにあることを隠しており、ソフィアにも絶対にドロティアには言うな、弱い女だから真実を知ったら耐えられないと言う。しかしその思いやりが、更にドロティアを弱くしているのではないかという気がしてならない。実際、ドロティアは(カルディナーレが演じているからかもしれないけど)そんなに弱い女には見えないのだ。また、彼は頻繁に義務という言葉を口にする。彼は義務と信じたことを全うしようとするが、その「義務」という概念は息子には通用しないだろうし、ジェボが義務を全うすることで守ろうとしている誇りも、息子は理解しないだろう。2つの世代間の断絶を感じるとともに、理解されない義務、誇りをジェボが守ろうとする姿が辛い。オリヴェイラ監督は既に100歳を越えているが、たどり着いた境地がここかと思うと、容赦ないなと思う。
永遠の語らい [DVD]
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映像は美しく、予告編はなにやら感動的な文芸作品のようなニュアンスで作られているが、この予告編の雰囲気を信じて見に来た人は裏切られた気分になるのではないかと心配になってしまった。確かに優れた文芸作品で感動もする、が、いわゆる「いい話」に感動するのではないのだ。えっここまで冷徹な話なの?!という部分に感動、というとちょっとニュアンスが違ってしまうのかもしれないが、心揺さぶられた。
ジェボの行動は傍から見ていると実にもどかしい。彼は妻を思うが故に、ドロティアにあることを隠しており、ソフィアにも絶対にドロティアには言うな、弱い女だから真実を知ったら耐えられないと言う。しかしその思いやりが、更にドロティアを弱くしているのではないかという気がしてならない。実際、ドロティアは(カルディナーレが演じているからかもしれないけど)そんなに弱い女には見えないのだ。また、彼は頻繁に義務という言葉を口にする。彼は義務と信じたことを全うしようとするが、その「義務」という概念は息子には通用しないだろうし、ジェボが義務を全うすることで守ろうとしている誇りも、息子は理解しないだろう。2つの世代間の断絶を感じるとともに、理解されない義務、誇りをジェボが守ろうとする姿が辛い。オリヴェイラ監督は既に100歳を越えているが、たどり着いた境地がここかと思うと、容赦ないなと思う。
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