3つ数えて目をつぶれ

映画と本の感想のみを綴ります。特に映画。ご連絡はhoto5now★yahoo.co.jp(お手数ですが★を@に変えてください)まで。

2013年11月

『喜劇 女もつらいわ』

 特集上映「日活レアもの祭り」にて。東京の下町、江戸っ子寿司の大将・松造(森川信)と、向かいのレストラン・フランセのマダム・咲江(清川虹子)は犬猿の仲。しかし松造の娘・光子(高田美和)と咲江の息子・和男(浜田光夫)は愛し合っていた。ある日、トラブルメーカーの竜太(宍戸錠)が大手企業ヒカリ産業の二代目だという青年を光子に引き合わせたことで、松造は玉の輿のチャンスとはしゃぐ。監督は江崎実生。1970年の作品。
 『男はつらいよ』ブームを受けての題名だろう。本作で宍戸が演じる竜太は、寅さんのパロディともいえるキャラクター。他人の問題に首を突っ込んでは余計にこじらせる、しかし本人悪気がなくて憎めないというものだ。宍戸錠って、こういう役もやっていたんだと何か新鮮だった。
人情コメディ+ロミオとジュリエットというベタもベタな話だが、ベタはベタとして楽しい。ただ、今現在見て笑えるかというと微妙。一つには、てんぷくトリオをはじめ、当時人気があったコメディアンが何組か出演しており、当時のオフィシャルイメージとしてのその人に近いであろうキャラクターを演じているということ。その人の芸風がどういうもので、どういう受容のされ方をしてきたという知識がないと、何が面白いのかわからない(いわゆる「お約束」的ギャグもあるので)。もうひとつは、冒頭の「ボインコンテスト」に始まり、今だったらこれセクハラ(セクシーではなく)だよなーというギャグがかなり多いということ。当時の感覚ってこんなもんだったのかと思うと、ちょっとげんなりする。極端に女性を見下しているとかいうわけではないが、あんまりいい気分はしない。


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『悪の法則』

 美しいフィアンセ・ローラ(ペネロペ・クルス)の為に高価なダイヤモンドを買った弁護士(マイケル・ファスベンダー)。妻となるローラとの満ち足りた生活の為、裏社会に通じる友人ライナー(ハビエル・バルデム)とその知人ウェストリー(ブラッド・ピット)に加担し、麻薬売買に手を染める。しかし麻薬の運び屋が殺され、麻薬が何者かに奪われた。卸元のマフィアは弁護士らが裏切ったと見なし、命を狙ってくる。監督はあリドリー・スコット。脚本をコーマック・マッカーシーが書き下ろしたことでも話題になった。
 原題は「The Counselor」。顧問弁護士のことをLawyerだけではなくカウンセラーとも言うらしい。ファスベンダー演じる弁護士は、本名ではなく「カウンセラー」と呼ばれている。カウンセラーという呼び方だと、いわゆる心理カウンセラーみたいだけど、確かに本作のファスベンダーは人の話を聞いてばかりだ。彼が事件の当事者であるはずなのだが、どこか他人事みたいに見えるのはそのせいかもしれない。
 実は私は、リドリー・スコット監督作品とどうも相性が悪くて、今まで面白いと思ったことがなかった。今回、リドリー・スコット監督作品を初めて面白いと思った。脚本を書いたマッカーシーのテイストがかなり濃い目に出ているのが(私にとっては)勝因だったのかもしれない。ここまでマッカーシー印が濃いとは予想外だった、ある人物の怪物性、人情や倫理を排して欲望に忠実に動いていく様は、マッカーシーの小説に登場する(善悪関係なく)超越的な人物を思わせるものだ。セリフの思わせぶりなところ、徐々に神話めいた雰囲気になっていくところも。一見関係なさそうな小話やふとした会話の内容が、全て後々の伏線になっているのは、見ようによってはしつこいが、見事と言えば見事。パーツが全て意味を持っていて(見る側が意味があると勝手に読み取れるようになっていて)、意味の飽和状態が起きているようにも思ったが、それも計算のうちか。
 弁護士は何度も、自分が何をしようとしているのか、なにをしているのかわかっているか、こうなっているのは自分が選んだからだと周囲に指摘される。自分の運命は自分の選択の結果であり、選び直しはできないということが念を押されるので、なんとも息苦しい。そこまで自分で直視できるほど、人間は強くないのではないか。弁護士は裏社会との関わりがどういう結果を招くか見込みが甘いし、妻は夫の仕事の内容も彼がプレゼントしたダイヤの値段も聞かない。だから辿るべくして辿った運命とも言えるが、そこをつまびらかにしてしまうと、いわゆる人間味のある人間としての生活って成立しなくなってくるんじゃないかという気もする。本作でキャメロン・ディアスが演じた女性のような、どこか一線越えたような存在になるのではないかと。


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『ばしゃ馬さんとビッグマウス』

 脚本家を目指しているが、コンクールに応募しても落ちてばかりの馬淵みち代(麻生久美子)は34歳。焦るあまりに今更のように脚本講座に通い始める。その教室で知り合った28歳の天童義美(安田章大)は、自分では何も発表しないのに他人の作品を酷評してばかり。みち代に一目ぼれしたらしく何かとかまってくる天童に、みち代は「じゃあ作品を見せてよ」とキレる。監督は吉田恵輔。
 タイトルの通り、ばしゃ馬のごとく、私生活をなげうち脚本に全てを注ぐ女性と、ビッグマウスで実績のない男性との騒動を描く。騒動というと恋愛騒動?ラブコメ?(予告編でもラブコメっぽく見せてたし)って思うが、本作は一見ラブコメっぽいがラブコメではないと思う。確かに1組の男女の交流が描かれてはいるのだが、それは恋愛ではなく、「脚本」という自分にとって大切なものを他の誰かと分かち合う、共に戦う、相手に何かを託す、という行為だったのではないかと思う。話が進むにつれ、恋愛要素はどんどん後退していくのだが、2人の関係性としては深まっていく。
 「諦め方がわからない」というみち代のぼやきは、上手い表現だなと思った。多分、同じような気持ちでいる人は多いんだろうなと思える。かわいい麻生久美子が演じているから耐えられるけれど、みち代の行動は、実際には必死すぎて痛々しくも見えるだろう。友人に「美人なんだからもうちょっとオシャレにお金かけたら」と言われるのはともかく、合コン中にも脚本執筆というのは、合コンに気分が乗っていないとはいえあんまりだろ!と突っ込みたくもなる。また冒頭、コンクールに落選したみち代は悲壮な音楽をバックに号泣するが、途中で音楽が景気のいいものに変わると、わざわざ元の曲に戻して泣き直す。要するに元々ちょっとナルシズムの強い人なのね、という理解を最初にさせるあたり、上手いし意地が悪いなと思った。後に脚本がきれいごとだ、悲劇のヒロインぶっていると指摘されることへの伏線になっている。
 みち代が目指しているのが脚本家という設定も上手いと思った。これが小説とかマンガ、あるいは芸術関係だと、生活の為の仕事は別にあって、半趣味として個人的に発表、という選択肢があるが、脚本の場合は、あまりそういうコースが考えられないように思う(やっている人はいるんだろうけど、人口としてあまり多くなさそう)。というのも、脚本は前出のジャンルより、単体としての成立度が低いのではないかと思うからだ。映像化された時点で初めてどういうものかわかる、完成形となるのではないかと思う(脚本を読めば良し悪しはわかるのだろうが、読む能力を持っている人はそもそも映像畑の人で、一般人が読みこなすのは難しいんじゃないかなと)。まず商品として売れないとどうしようもない、という度合いが強いジャンルにすることで、やるかやめるかの二択というコースになってくるというわけだ。人生のある季節の終わりを描く為には、こういった縛りが必要だったのかも。


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『THE ICEMAN 氷の処刑人』

 1960年、ニュージャージー州で妻デボラ(ウィノナ・ライダー)と2人の娘と暮らすリチャード・ククリンスキー(マイケル・シャノン)は、良き夫であり、良き父親であった。しかし彼の本業は凄腕の殺し屋だった。死亡日時を判定されないよう、遺体を冷凍保存することから「アイスマン」の異名をとった彼は、20年間で100人以上を殺したとも言われていた。実在の殺人犯をモデルに、アリエル・ブロメンが監督したサスペンス。
 冒頭、夜のカフェや路地、ククリンスキーが当初勤めていた映画のダビング工場など、薄暗さと黄緑がかった色調が、いかにもちょっと昔の犯罪映画っぽく、ぐっと惹き付けられた。アメリカの犯罪映画ってこういう雰囲気だよなぁと。また、覗き見をしているようなショットが頻繁に出てきたところが気になった。あれは、誰の視線なんだろう。ククリンスキーの生業が「秘密」であるという雰囲気が強まっていたとは思うが。
 ククリンスキーは殺し屋ではあるが、いわゆる悪人というよりも、特技が殺人という人に見える。普通の人の生活をしようと思えばできるのだ(殺し屋になるまでは普通に映画ダビングの仕事をしていた)。殺し屋であることと、妻や子供を愛する家庭人であることは、必ずしも矛盾しないのだろう。
ククリンスキーが神を信じていない、というのが印象に残った。殺さないでくれと祈るチンピラにかける言葉には笑ってしまった。何でも自分の力でやるのが信条の人なんだろうが、だからこそ、事態が自分の計画からズレはじめると、がたがたと瓦解していく。
 ただ、時々、その「普通」からはみ出るような行動に出る。冒頭、自分をバカにした男をあっさり殺し、ギャングに銃で脅されても(ぱっと見は)臆さない。どこかがズレているようにも見えるが、それが殺し屋の資質ということなんだろうと思う。彼は家族を愛しているし、家族に危険が及びそうになるとうろたえるのだが、それも家族を愛している、というよりも「家族を愛している」という行為をしてみたかった、という風に見えてくるのだ。結婚前のデボラとのデートも、デートというものをしてみたかった、ということで、相手はデボラじゃなくてもよかったのかなとも。ただ、ククリンスキー当人はデボラじゃないとだめだと思っていたんだろうけど。
 マイケル・シャノンの存在の奇矯さを味わう為に作られたような作品で、シャノンのファンであれば十分に楽しめると思うし、彼に興味がなくてもタイトな作りの「奇妙な話」といった雰囲気で面白いんじゃないかと思う。また、脇役が意外に豪華で驚いた。なぜこんなに豪華なのか解せない地味な作品なのだが・・・。特に殺し屋仲間役のクリス・エバンスは、彼だと言われないと気付かなかったくらいの変貌。そんな役も出来るんだ!とびっくりした。また、えらくジェームス・フランコに似た人がいるなーと思ったら本人だった。しかもそんなに重要な役ではない。なぜ出演してたんだ・・・。


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『いとしきエブリデイ』

 ステファニー、ロバート、ショーン、カトリーナ4人子供達は、母カレン(シャーリー・ヘンダーソン)と暮らしている。父イアン(ジョン・シム)は刑務所に入っている。カレンは毎朝子供達を学校に送り、定期的にイアンとの面接に行く。月日は流れ、子供達は徐々に成長していく。監督はマイケル・ウィンターボトム。
 実際に兄弟な子役4人を使って、5年間、彼らの成長に合わせて撮影したそうだが、子供の演技が素晴らしく自然。あざとくならないぎりぎりのところだと思うのだが、寸止めできるのがウィンターボトム監督の腕なんだろう。ドキュメンタリータッチな部分と、非常にフィクショナルな部分との匙加減が上手い。音楽の使い方を控えめにして(人が動いている時にはあまり入れていない)、風景のみの映像でマイケル・ナイマンの音楽をぐわっと流してエモーショナルさを煽る。この使い方はあざとい!(「ひかりのまち」の時も思った)とは思ったけど、これがないとそっけなくなってしまうかも。メリハリがきいていたと思う。
 子供たちは皆生き生きとしているが、特に長男が成長するにつれ不機嫌になり、ぶすっと黙り込む、母親に対して素直ではない姿が、実に男の子らしくて、いらいらするレベル。自分の弟もこんな感じだったなーと思いだして、苦笑いしてしまった。それぞれがどういう性格で、今までどういう関係性があって、という部分は、具体的にはあまり説明されない。イアンが何をして刑務所に入っているのかもわからない(パブでの会話で「おかしな話で~」と話し出すシーンはあるのだが、そこでカットされている)。ずっと見ているうちに、会話や行動から部分的に、なんとなくこうだったんだろうとわかる程度だ。その情報の控えめさ、どこを出してどこを出さないかという部分の兼ね合いが上手いなと思った。ロバートが遊びに行ったまま帰宅しなかった時、「男の子なんだから大丈夫、そのうち帰ってくるわよ」と無頓着なイアンの母親に、「だから息子(イアン)があんなふうになるのよ」とそっと毒づくあたり、家族の背景が垣間見えて興味深い。おいおいロバートは5歳児だぞ!と私も突っ込みたくなったけど(笑)
 5年の間には、イアンとカレンの関係も変わってくる。イアンがカレンの浮気に怒るシーンがあるのだが、彼はカレンの大変さ(1人で働きながら子供4人を育てる)がどういうものか、頭ではわかっていても実感は出来ないんだろうなと思った。逆に、カレンはイアンが刑務所内でどういう思いでいるのか、彼が体験しているキツさはわからないだろう。2人は愛し合ってはいるのだが、お互いに理解できない部分が徐々に大きくなっていく。ラストシーンからは、それでも「家族」を維持しようという危うさと希望みたいなもの、両方が感じられた。
 風景がすごくよかった。カレンたちが住んでいるのはかなり田舎みたいで、ロンドンに出るのには朝の4時起きだったりするのだが、丘や林が広がっていて魅力的。寂しいと言えば寂しいが(天気も曇天模様が多い)、こういう土地をずっと歩いてみたくなる。カレンは自動車を持っておらず子供達共々実に良く歩くのだが、風景を見せる為に歩くシーンを増やしたのかなとも思った。車移動だと、あまり頼りなさみたいなものが出ない気がする。


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『愛の記念に』

 特集上映「フランス映画の知られざる巨匠 モーリス・ピアラ」にて。モーリス・ピアラ監督作品(1983年)。15歳の少女シュザンヌ(サンドリーヌ・ボネール)は恋人のリュック以外の男性とも、奔放に付き合っていた。そのことを家族から疎ましく思われていたが、ふとしたことで父親との間に暖かい気持ちが通い合う。しかし父親は家を出、母や兄とシュザンヌの関係は悪化していく。
 「愛の記念」とは、恋愛ではなく家族の愛であったか、と腑に落ちる。一つの家族の崩壊していく様が、というよりも、既に崩壊していて、修繕の仕様がない様があからさまになっていく。その無残さが痛ましい。父親と母親には愛し合っていた時期もあっただろうに、子供たちに愛情が注がれていたこともあっただろうにと、その名残は見える(それこそ「愛の記念」のように)為により残酷に思えた。ピアラ監督ってちょっと露悪的なくらい、こういうところに容赦ないな・・・。ここまで愛が成立していないのに題名に「愛」が含まれる映画は久しぶりに見た。
 シュザンヌは恋愛に奔放なようでいて、他人を愛さない女性として描かれている。『ポリス』のヒロインであるノリアにちょっと似ているかもしれない。ただ、シュザンヌはノリアのように一人歩いていくというわけではなく、誰かが愛していくれる=自分を評価してくれることを求めている。だから次々と、自分を求める男性の傍に言ってしまう。彼女が一番愛されたい=評価されたいのは両親なのだろうが、父親は親としての責任を放棄し、母親はシュザンヌの男性遍歴故に嫌悪する。兄もまた、彼女を愛するが故に彼女の男性関係を嫌悪する。愛情がこじれまくっていて、見ていてげんなりするレベル。これは家から飛び出しちゃう父親の気持ちもわかる・・・とは思うが、ひょっこり帰ってきて家族をひっかきまわすあたりはろくでもない。そもそもあなたにも責任が!と突っ込みたくなる。見るからにひと癖ありそうなのだが、演じているのはピアラ監督本人だと知ってびっくり。


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『ポリス』

 特集上映「フランス映画の知られざる巨匠 モーリス・ピアラ」にて鑑賞。麻薬捜査担当の刑事マンジャン(ジェラール・ドパルデュー)は麻薬売買の容疑者ノリア(ソフィー・マルソー)の取調べをする。後日、仮釈放されたノリアと再開したマンジャンは、彼女に惹かれていく。カモーリス・ピアラ監督作品(1985年)。フランスでは動員数183万人越えで、ピアラ監督作としては最もヒットした。
 一見ぶっきらぼうでごつごつとした肌触り。情感は抑えられた、冷ややかな感触だ。警察とその周辺をとらえた群像劇という趣で、どの登場人物に対しても距離をとられており、親密な視線は感じられない。体温が低い作品だ。余計なセリフや状況説明を排しているのも一因か。『ヴァン・ゴッホ』もちょっとそういうところがあったが、ピアラ監督は登場人物に対して見ている側があまり共感できないように意図しているのかなとも思った。
 そもそも、刑事たちも犯罪者たちも、荒っぽく喰えない奴ばかりだ(むしろ警官の方が言動が下品だったりセクハラの嵐だったりする)。いわゆる善良な人間は登場しないし、皆どこかこすっからい。全員が腹の探りあい、パワーゲームをし続けているような緊張感が漂う。マンジャンの友人である弁護士にしても、クライアントは犯罪者ばかりで、マンジャンとは単純に友人とは言い切れない。ただ、パワーゲームといってもかなり雑で、あまり頭が良さそうではないところがご愛嬌なのだが。
 刑事のマンジャンにしても、決して清廉潔白というわけではなく、捜査のやり方も(会話から垣間見られる限りでは)かなり強引そうだ。酒癖・女癖も悪そう。そんな彼が、ノリアに対しては妙にセンチメンタルなことを言ったりする、また死んだ妻のことを今でも思っているらしいというのが面白い。対するノリアは、そういったセンチメンタルさや愛を持たない、どこまでも一人で進む人だということが、徐々にわかってくる。演じるドパルデューとマルソーがとてもいい。特にマンジャンは、ドパルデューが演じたのでなければ、もっと単純で面白みのないキャラクターになっていたと思う。ドパルデューの特徴的な顔と身体(妙に大きい!)によって愛嬌といやらしさが同時に出ていたと思う。


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『ヴァン・ゴッホ』

 療養の為に田舎町オーベル・シュル・オワーズに滞在するゴッホ(ジャック・デュトロン)は、世話になっている医者ガシェ(ジェラール・セティ)とその娘マルグリット(アレクサンドラ・ロンドン)と親しくなっていく。ゴッホはマルグリットを絵のモデルにし、2人の仲は深まっていくが。監督はモーリス・ピアラ(1991年)。特集上映「フランス映画の知られざる巨匠 モーリス・ピアラ」にて。本作デュトロンはセザール賞男優賞を受賞している。
 史実に忠実な歴史劇・伝記映画というより、ある「お話」としてゴッホとその周囲の人たちを描いていると思う。ゴッホの死までの数年間を描くが、途中途中で思い切った時間、空間の省略がされていてだらだら感はあまりない。作中には、ゴッホの作品にこんな感じの人の肖像画があったな!とはっとさせる、モデルとなったと思しき人達も登場する。また、風景や建物には、ゴッホのあの作品の現場はここだな、と特定できそうなものも。ゴッホの部屋も、絵に描かれた部屋に忠実に作りこんでいる。実在の絵画作品と呼応するように配慮されており、ゴッホ作品好きには楽しいのではないかと思う。
 また、私にとっては風景にまず心を捉まれた作品だった。光線がきらきらと眩しく、この地が画家たちに好まれたというのも頷ける。ゴッホの作品だけでなく、同時代(だけじゃないけど)の他の画家の作品ぽいなと思った所が多々あった(川辺でのダンスはルノワールのようだし、野山や農家は実際にこの地を訪れていたドーミエやピサロの作品を彷彿とさせる)。
 登場する人々がゴッホを筆頭に生き生きとしている。ゴッホの存在にはもちろん力があるのだが、むしろ周囲の人たち、特にちょっとしか出てこない人たちの魅力が強い。個々の登場人物に関する情報はそんなに提供されないのだが、ちょっとした部分の見せ方で、その人が実際にそこにいる、という説得力を感じさせる。マルグリットのピアノの教師にしろ、ゴッホのルームメイトにしろ、本当にちょろっと出てくるくらいなんだけど、妙に造形が具体的でくっきりしている。だからなのか、ゴッホを主人公とした物語というだけでなく、群像劇のようにも見えた。特に女性たちのたたずまいがよかった。マルグリットを含め、出来すぎではなく、普通の(ちょっと魅力的な)女性としてそこにいる感じがした。


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『読みだしたら止まらない!海外ミステリーマストリード100』

杉江松恋著
過去現在の海外ミステリーから、必読の100作を紹介するブックガイド。単なる代表作紹介ではなく、現在入手できる作品を挙げていること、さらに興味を持った読者への同作家の他作品、あるいは他作家の類似作品を関連付けて紹介しているところが目配りきいている。更に、これが文庫書き下ろしだというところが素晴らしい。「ガイド」である以上、コンパクトで、初心者にも手にしやすいお値段であってほしいもんね~(ハードカバーの書評本を読む人はそもそも「ガイド」としては必要としていないと思うし)。かなり実用志向の作りだと思う。概ね、まあこの作品は出るよな~という納得の内容なのだが、この作家でこの作品を選ぶの?あれとかあれじゃなくて?という意外さはあった。そこに著者の視線が反映されているのだろう。項目立てはされていなかったけど、アガサ・クリスティの『謎のクィン氏』を何度か挙げていてうれしい。あれ好きなんだよなー。ハーラン・コーベンが紹介されていないのはちょっと納得できないんだが・・・。それはさておき、一番嬉しかったのはスチュアート・(M)・カミンスキー『愚者たちの街』を紹介してくれたこと。これ、知名度低いけど本当に名作ですよ!今ならまだ入手できるみたいだから、ぜひ!


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これだけは読んでおきたい 名作時代小説100選 (アスキー新書 93)

『恋するリベラーチェ』

 派手なパフォーマンスと超絶技巧で大人気のエンターテイナー、リベラーチェ(マイケル・ダグラス)。1977年、犬の調教師スコット(マット・デイモン)は彼のショーを見て恋に落ちる。2人はパートナーとして生活を共にすることになるが、やがて亀裂が生じ始める。監督はスティーブン・ソダーバーグ。実在のスター、リベラーチェと彼のパートナーとの10年間を描く。
 題名だと恋しているのはリベラーチェだけど、本編見るとどちらかというと恋しているのはスコットの方で、彼がリベラーチェに振り回されているように見える。スコット自身はどちらかというと素朴な人で、元々はセレブな生活にあこがれるようなタイプでもなかったのだろう。それがリベラーチェに魅せられ、彼の為に無理なダイエットをし、整形までして、派手なファッションを纏うようになる。デイモンにそのファッションが全然似合ってないから笑っちゃうんだけど、その似合わなさに、彼が惚れてるんだろうなぁと実感させられる。スコットとリベラーチェの出会いと別れ、そしてその後少しが描かれるが、スコットは最後に、リベラーチェの一番美しかった姿を思い出す。しかしその姿は、スコット一人に向けられたものではない。だからこそのスターだし、だからこそスコットは彼に魅了されたのだろう。そこがちょっと切ない。
 リベラーチェはスコットのことを愛してはいるんだろうけど、スコットだけじゃ足りない、もっともっと欲しくなってしまうんだろう人なんだろうなと。それをスターのわがままというでもなくビッチ扱いするわけではなく、「そういう人」だからしょうがない、という見せ方だったと思う。なので、2人の幸せな時期も、すったもんだしていたりギスギスしたり、上手くいかなかったりという過程も、普通のカップルのそれという感じだった。リベラーチェはスターなんだけど、ショーのシーンでも私生活のシーンでも、あまり「スター」という視点で描かれていない気がする。私が実際のリベラーチェについて全然知らないからそう思うのかもしれないし、ソダーバーグがそういう部分にあまり興味がないというだけかもしれないが・・・。
 ともかくダグラスとデイモン、2人の演技力が存分に発揮されている。ダグラスってエロいおっさんというイメージしかなかったんだけど(笑)上手かったんだな!2人とも脱ぎっぷりがいいのだが、デイモンはちゃんとダイエット前、後の体型が変っていて(映像加工してるのかもしれんが)感心した。また、老けメイク、若作りメイクの進歩にも唸りました(笑)。なお、リベラーチェは字幕上は時々おネェ言葉になるんだけど、英語のおネェ言葉ってどんな感じなんだろう・・・。聞いてるだけだとどこがどう違うのかあんまりわからないんだよな・・・(英語がわかる方には当然わかるんだろうけど)。


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